« 春なのでちょっとルールを変えてみたくなりました的な話なのかも | トップページ | TIME誌の小沢記事を読んでみたけど »

2009.03.09

米露外相会談なのだが大手紙社説のポイントはちょっと違うかなのメモ

 オバマ政権下で初の米ロ外相会談が先週末行われ、大手紙社説では朝日、産経、日経が扱っていた。社説批判ということではないが各紙の論点に疑問に思っているなか、今朝のNHKおはようコラムで、ロシア正教を信じるロシア人なら誰でも親近感を持ちそうな風貌の石川解説委員の話があり、まあ、そっちだよねと思った。それと、今後の世界情勢を見るうえで重要かなと思うことがあるので、ざっとメモ書き。
 ざっと各紙社説をなめておく。朝日新聞社説「米ロ関係―核軍縮へリセットを」(参照)では核兵器削減に視点をおいて第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継から核拡散防止条約(NPT)からみに焦点を当てていた。朝日新聞にありがち。


 いまだに両国は、合わせて9千発以上の核弾頭を保有しているという。何のためにこれほどの核兵器が必要なのか。キッシンジャー元国務長官やペリー元国防長官らも「核のない世界」は可能だと論じているのだ。
 オバマ大統領が、核廃絶を目標に掲げて、核不拡散条約(NPT)体制を強化しようとしていることは心強い。来春にはNPT再検討会議がニューヨークの国連本部で予定されている。核廃絶への決意を再確認する絶好の機会だ。米ロによる新たな核軍縮条約の締結は、大きな弾みになるだろう。

 キッシンジャーがこの文脈に出てくるあたりでちょっと含み笑いするものがあるが、いずれにせよそのあたりが論点。あとでも触れるがイランへの言及はこんな感じ。

 米ロ間には、難題も多い。ブッシュ政権がミサイル防衛(MD)システムの東欧への配備を進めようとしたのに対し、ロシアは激しく反発してきた。オバマ大統領は、イランの核問題の解決にロシアが協力すれば、東欧へのMD配備も見なおすことを示唆した、と報じられている。この案を土台に歩み寄ってほしい。

 朝日としてはイランはMDの関連というスジなのはいいが、オチは東欧のMDのほうに置いていた。
 産経新聞社説「米露外相会談 各論で問われる協力関係」(参照)は最近の傾向どおり大手紙のなかでは表層的なイデオロギー的のベクトルが逆でも同カテゴリーで同構造の朝日新聞と論調と似てきている。違いは北朝鮮に言及があるくらいか。対露問題の大筋では毎度毎度の論調で済ましている。

 新条約の協議は来月開かれる米露首脳会談に引き継がれる。アフガニスタンや北朝鮮、イラン問題で前向きな連携を進めることで一致できたことも一応の成果といってよい。国際社会の大きな公益を視野に置いて、米露の協力分野をさらに広げてもらいたい。
 しかし、両国の新たな協力関係はまだ総論にとどまっている。各論では米露の間に重要な対立が多いことも忘れてはならない。
 ロシアはグルジアやウクライナのNATO加盟を妨害し、イランのミサイル脅威に備えるポーランド、チェコへのMD配備にも強硬に反対している。キルギスなど中央アジアから駐留米軍を締め出す動きも進んでいる。こうした背景には、旧ソ連地域への「勢力圏」再興を狙うロシアの戦略的意図があるとみられている。

 日経新聞社説「米ロは大胆な核兵器削減を」(参照)は卒がない分、特に論点もないように思えた。
 で、コンスタンティン・イシカワの「オバマを見るロシアの視線」(参照)だがずばりと論点を絞っている。

・イランの核問題
・戦略核削減
・ミサイル防衛
・アフガニスタンでのテロとの戦いそして
・経済危機への対応

 筆頭にイランの核問題がくる。そして、MDのスジも名目のイラン核に置いている。

Q:アメリカはどのように米ロ関係をリセット再起動しようとしているのですか?
A:イランの核開発については、オバマ大統領は「ロシアがイランの核問題解決に協力してイランの脅威が減れば、ミサイル防衛システムのヨーロッパ配備の必要性も減る」としてロシアが反対するミサイル防衛システムと絡めてロシアにより積極的な役割を果たすよう促しています。

 そこまでは朝日新聞社説と同じだが、石川の論点はこちらだろう。

Q:ロシアはどう対応しますか?
A:ロシアは来月ロンドンでの米ロ首脳会談が、米ロ関係が本当にリセット再起動するかどうかの試金石と見ています。
 イランとの問題については、ロシアは独自のチャンネルを活かしてアメリカとイランの対話を助けて、またイランが進めるウラン濃縮についてはロシアが請け負って生産するとして断念するよう説得するでしょう。
 ただロシアの支援で完成したイランの原子力発電所などの利権は手放そうとはしないでしょうし、またミサイル防衛についてはイランの核開発とは切り離し、あくまでアメリカに配備断念を求めるでしょう。

 ざっくばらんに言って、対露交渉のポイントはロシアを協力させ、かつ西側の思いをロシアに迂回させることでイランの核を制御下に置くことにある。つまり、それがオバマの方針なのではないか。加えて、ロシアの利害についても石川の見立てであっていると思う。
 石川の話はそこまでなのだが、この背景は、話を端折ると要するにイスラエル問題だ。フィナンシャルタイムズ”Obama woos Putin”(参照)がさっくり述べている。

America’s intentions are easy to understand. Iran is pressing ahead with uranium enrichment and now has enough material to build one nuclear weapon.
(米国の意向は単純明快だ。イランはウラン濃縮を敢行中であり、すでに原子爆弾一個分は濃縮し終えている。)

If enrichment continues into 2010, Israel may attack Iran’s facility at Natanz, an event that would be a calamity for the world. The US and its European allies have urged Iran to suspend the programme without success.
(ウラン濃縮プロセスが来年である2010年まで続けば、ナタンズにあるイランの該当施設をイスラエルは空爆するだろうし、その事態に至れば世界中の災厄となる。米国と欧州は同盟して、イランがこのプロセス中断を促してきたが成功していない。)

However, if Russia can be persuaded to wield a stick – demonstrating to the Iranians that the world is united in opposing their flirtation with nuclear weapons – then a crisis may be averted.
(とはいえ、もしロシアが、その力を振るうべく説得されるなら、つまり原子爆弾を使った火遊びに世界が一致して反対しているのだということをイラン国民に示すことができるなら、危機は回避可能だ。)


 そこまでロシアに世界の命運を預けてよいか、またそれ以前にそれをロシアに頼むべきことなのかわからないが、危機の本質は、要するに、イスラエルが引き金を引くだろうということにある、来年に。

|

« 春なのでちょっとルールを変えてみたくなりました的な話なのかも | トップページ | TIME誌の小沢記事を読んでみたけど »

「時事」カテゴリの記事

コメント

一昨年9月にイスラエルがシリア東部の核施設と疑われる施設を空爆しました。空爆当時は、核施設かどうか国際社会(いい加減なひょうげんですが、、、)の多数意見は半信半疑でしたが、イスラエルの空爆を強くは非難しませんでした。アラブ穏健派諸国もシーア派でかつ非アラブ(ペルシャ)のイランが核を持つことに内心では懸念を持っているでしょう。米国は表面的にはイスラエルのイラン空爆に反対の姿勢を見せていますが、米国をはじめ国際社会の多くは、空爆を黙認してしまう可能性が高いと私は考えています。ミケ

投稿: 屋根の上のミケ | 2009.03.09 23:34

>とはいえ、もしロシアが、その力を振るうべく説得されるなら、つまり原子爆弾を使った火遊びに世界が一致して反対しているのだということをイラン国民に示すことができるなら、危機は回避可能だ。

 「結果的な回避」は可能だろうと思いますが、↑上記見立てによる「回避」はイラン国民・指導層がどの程度世界の趨勢を弁えているか次第で、必ずしも望み通りの結果には、ならないと思います。こじれる可能性も。

投稿: 野ぐそ | 2009.03.09 23:57

日米関係、日露関係なんていうと、当事国の課題についての妥協とすり合わせが中心ですけれど、米露関係というと、イランとイスラエルの話が中心になるんですか。

2国間外交が実は多国間外交である。

日本以外の大国はそういうセンスで外交しているのだけれど、日本の場合はまだ当事国の2国間関係以上を考える外交が当たり前にならない。

遅れているといえば遅れているのだろうけれど、実はすごく幸せな境遇に恵まれているということなのだろうと思います。

投稿: enneagram | 2009.03.10 09:35

ファイナルさん、僕が非常に興味深いことはね、

まず、今回の西松建設の事件が存在しない世界を想像してみて下さい。
そして、共産党か社民党の、名の知られていないある議員の秘書が「政治とカネ」の問題で逮捕される、という事件が発生したとします。
そのときあなたは、今回のように「小沢擁護」かと疑われるほどの、事件の詳細に対する慎重な考察を展開なさっていたと思われますか?自信を持ってそう思えますか?
本当に、純粋に、民主主義やマスコミの「システム的」
な側面の失調にのみ関心があるのですか?「小沢が」という要素は「全く」関係ないのですか?
誰かを擁護しているわけではない、と、しれっと言ってのけていますが、「誰かにとって不利な情報の真実性に疑義を呈す」という振る舞い自体が、その誰かを間接的に擁護する効果を持ってしまったり、その誰かを批判しようとする勢いに対する防波堤的な機能を持ってしまうということは、容易に想像できると思います。
とにかく非常に興味深い。もし「小沢さん」じゃなかったら、ファイナルさんや、諸マスコミや諸ブロガーに、ここまで「守ってもらえた」だろうかと。ちなみにこの件の場合、守る、というのは、「騒ぐな、まだ真実は分からないぞ。権力の暴走かもしれないぞ」と呼びかける、という形を取っているわけです。

投稿: 送信 | 2009.03.10 12:10

米露関係は現在でも対立が基調であるみたいですが、日中関係は口先だけはいつも友好基調にする努力をしています。

米露より日中のほうが大人なのでしょう。

日中関係では、日本は、これまで基本的に中国を大国として立ててきたし、北朝鮮のことは公然と論議しても、台湾とチベットの話は極力公然としては交渉しない態度をとってきたからお互い、「友好、友好」を建前にできるのだろうと思います。

ただ、今後の大国間関係というと、米露より日中を模範にする国は増えるのではないかと思います。小国間関係でも、日中関係はよいお手本になるのかもしれません。

そういうわけで、小泉首相時代のように、日中関係が自作自演でもひどく悪化したように見えると、世界中が驚くのかもしれません。

投稿: enneagram | 2009.03.14 12:49

米露関係は、アングロサクソンプロテスタントとロシア正教の関係。

日中関係は、中国仏教と日本仏教、あるいは中国朱子学と日本朱子学の関係みたいなものかもしれません。

米露は、対立していても、相互理解はしっかりしている。

一方、日中は、おもてむき同じ言葉を使うから、双方意思疎通できているつもりで、いつも相互誤解を繰り返している。

米露は、ローマ帝国が東西に分裂した時代からの敵対関係。でありながら相互依存関係。

日中は、日本側の単なる祖述と復唱。でも、いつの間にか日本のほうが徹底的に内容を咀嚼して消化してしまった関係。

まあ、よその国は、米露外交の真似も、日中外交の真似も、すごく難しいだろうと思います。

投稿: enneagram | 2009.03.18 09:54

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 米露外相会談なのだが大手紙社説のポイントはちょっと違うかなのメモ:

» 表と裏とカフカスとメソポタミア [セカンド・カップ はてな店]
とても面白かった。 米露会談の意味について、NHKの解説を含めてfinalventさんがまとめてくださったエントリー。 米露外相会談なのだが大手紙社説のポイントはちょっと違うかなのメモ http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/03/post-e5a2.html 日本の大手社... [続きを読む]

受信: 2009.03.11 21:30

« 春なのでちょっとルールを変えてみたくなりました的な話なのかも | トップページ | TIME誌の小沢記事を読んでみたけど »