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2009.03.20

ガダルカナル島からの退却、かな

 一夜明けて驚いた。ガダルカナル島からの退却のようなリークが飛び交っている。逆になんだよそれ、とも思うが、とりあえずログって、そして思うところもあるので書いておこう。
 昨晩、さらりとエントリを書いたあと、読売新聞記事「小沢氏「検察と徹底的に戦う」…秘書起訴でも代表継続か」(参照)を見て、率直なところ、嫌な予感がした。


 民主党の小沢代表は19日夜、東京・銀座の日本料理店で鳩山幹事長と会い、自らの資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件への対応を協議した。
 鳩山氏によると、小沢氏は「検察がどういう判断をしようと徹底して戦う。自分の身分に関して未練があるとか、そういう話ではない。検察の大変ひどいやり方に国会議員が屈したら、政権を取ったとしても同じようなことが続く」と述べ、東京地検特捜部の捜査を強く批判した。「一番大事なのは、政権交代を実現させなければならないということだ」とも語った。
 党内では、逮捕された小沢氏の公設第1秘書が起訴されても代表を続ける意向を示唆した発言だという受け止め方が出ている。

 時事の報道「検察との闘争宣言=「屈すれば同じこと続く」-民主・小沢氏」(参照)はもっとひどかった。

 民主党の小沢一郎代表は19日夜、都内の日本料理屋で鳩山由紀夫幹事長と会談した。西松建設の違法献金事件で自身の公設秘書が逮捕されたことについて、小沢氏は「検察がどういう判断をしようと、これからも徹底して戦う。もし国会議員が屈したとなれば、政権を取ったとしても同じようなことが続くだけだ」と述べ、秘書と自らの「潔白」を改めて主張した。
 鳩山氏によると、小沢氏は「この身はどうなっても構わない。自分の身分に未練があるとか、そういう話ではない」と強調。その上で「ここで戦わなければ、国民のためにならない。政権交代を阻止したいというさまざまな力に対しては、徹底的に戦う」と語った。 

 もちろん見方によっては以前も同等のことを言っているし、今回のこの発言には別の文脈もあるのだろうが、この発言だけ見れば、この決死の覚悟というか、昭和な人間には三島事件の檄を連想させるような、同じく元田中奉行の一人渡部恒三も、直接の言葉ではないけど、乱世の小沢はこれで憤死するはずだから死なせてやれみたいな思いを伝えていて、ああ、嫌な感じだなと思った。まあ、死ぬ気なら、手向けの心っていうのもあるよとも思っていたが、こんなのはもうやめたほうがいい。
 人にとって大切なことは個人がその人ならではの人生を生きることであって大義とか公に生きることではないと私は思う。政治なんてくだらないものだ。余程の馬鹿が悪魔に魅入られてやる奇特なドブ浚いだとくらいしか私は思わない。が、やる人がいるなら、その糞掃衣の一部を自分が被るくらいの共感と支持をしなくてはならないとも思う。まあ、率直に言うと、小沢さん、残念でしたね、あなたの天運はここまですよ、大連立の失敗でもそう思っていたじゃないですか、いくら南洲に憧れても田原坂で若者を骸の山に巻き込むことはやめくださいよと。そう思っていた。
 だが、日経の報道「小沢氏「徹底して闘う」 検察との対決姿勢鮮明」(参照)では、胸が熱くなったし、泣けた。

 小沢氏は秘書の拘置期限が切れる24日にも進退を判断する意向。「自分の身分に未練があるとかそういう話ではない」としたうえで「ここで闘わなければ国民のためにならない。一番大事なのは政権交代の実現だ」と強調。鳩山氏は「党としても団結して代表の思いを理解して闘っていきたい」と応じた。
 小沢氏は「麻生太郎首相も気づいていないだろうが、検察のひどいやり方に国会議員が屈したとすれば、次は政権与党側に来る。政権を取っても同じようなことが続くだけだ」とも語った。

 私は小沢さんが、国民新党や社民党まで連帯していくと言ったとき、それは支持できないと思った。ひどいと思った。いくら政権交代が生涯の夢であったとしても、そして政治家なら何がなんでも形振り構わずそれをやるというというのも理解でないことはではないが、私はそんなことをしても国民を混乱させるだけの迂回になるだけだし、迂回路なら静かに死後の思いを託すように迂回したらどうかと思った。引退してくださいよと思った。そのあと民主党がきちんとマニフェストを掲げるなら読むけど、目下の日本の経済状況をまるで理解していないような同党には関心は薄れていた。
 が、「麻生太郎首相も気づいていないだろうが」というところで、小沢さん、ちゃんとわかっていたのだなと思って泣けた。問題は検察の暴走を今止めることだ。それに向かって憤死するというなら、それだけの価値はあるだろう。親父さんの供養にもなるだろう。政治に命を賭けるなど愚かしいとは思うが、誰かがこの検察の暴走を止めなくてはならないし、元首を屠った呪いを誰かが解かなくてはならない。
 「麻生太郎首相も気づいていないだろうが」という思いには、麻生さんとも連立しうるという高い志はあるだろうし、しかしその志ゆえに、前回は大失態した。そこまでが小沢の天命でしょう。そのあと、南洲のように担がれても……まあ、私の知ったことかとは思ったが、もう少し見ていようとも思った。これが昭和の最後の歴史なのだろうし。
 という報道に続いて、変なリークを見た。ほんとか? 20日付け日経新聞記事「小沢氏聴取見送り 西松事件で地検、関与確認されず」(参照)より。

 西松建設が民主党の小沢一郎代表の資金管理団体に違法献金したとされる事件で、東京地検特捜部が小沢氏の参考人聴取を見送る方向であることが19日、捜査関係者の話で分かった。小沢氏の公設第一秘書、大久保隆規容疑者の捜査の過程で、小沢氏の関与を示す証拠は確認されなかったという。
 特捜部は捜査の進展状況を見ながら、小沢氏の聴取時期などを慎重に検討してきた。大久保秘書が逮捕容疑を否認していることなどから、検察当局は「小沢氏聴取の必要性は見当たらない」との判断に傾いたとみられる。

 また孤立した変な記事なのだろうか。と、他も見る。毎日新聞記事「西松建設献金事件:小沢氏聴取、見送り 監督責任立証難しく--東京地検、24日まで」(参照)より。

 小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は、陸山会の代表を務める小沢氏からの事情聴取を当面見送る方向で検討を始めた模様だ。
 特捜部は、準大手ゼネコン「西松建設」側からの献金を認識していたかどうかを確認するため、小沢氏から任意で聴取する方針だった。しかし陸山会会計責任者の大久保隆規容疑者(47)が容疑を否認し、小沢氏が政治資金収支報告書の虚偽記載にかかわった具体的な証拠もないため、大久保容疑者の拘置期限の24日までの聴取は見送る方向で検討しているとみられる。
 政治資金規正法には会計責任者選任と監督について相当の注意を怠った代表者に50万円以下の罰金を科す規定もあるが、選任で過失を立証するのは難しいことから、立件困難と判断している模様だ。

 ガダルカナル島からの退却なのか。そこまで検察がきちんと思考することができたのか。逆にちょっと信じられない気もするし、あまり推察するのも下品だが、検察内部でも今回のガダルカナル戦には異論もあったのではないか(なのでアレもその線のリークだったのではないか)。さらに下品スジでいうと、自民党が直接関与しているとは考えがたいが、政府内部ではガ島戦を好ましく見ていた愚か者もいたのではないか。
 率直にいえば、検察のためにもガダルカナル島から退却すべきだろう。小沢など、田中系の談合金権政治家であるのは誰もが知っている。が、その捌きは国民に任せるべきだ。というか、検察が悪と見る談合の仕組みは、たしかに悪であるが、国民もまたその悪にまみれてなんとか荒廃した国土にカネを回していたのだった。団塊世代のようにGHQに吹き込まれたまま、父の世代に戦争責任を問うような愚は、もう脱するくらいに、戦後の時間で賢くなるべきだ。
 こう書くとフライングかつポジションだろお前とか非難されそうだが、これで小沢をターゲットとした談合罪と斡旋利得罪は小休止となるだろう。スキームを立て直して検察の再挑戦というのはあってもよいとは思うが、あまりの無理スジは止めるべきだろう。
 ただ、大久保秘書の起訴は避けがたいともいえるだろう。ガ島撤退で空気が晴れれば問題がきちんと局所化されるからだ。20日付け読売新聞記事「献金先「陸山会」へ切り替え、大久保容疑者が西松に指示」(参照)ではそのあたりが読み取れる。

今回の事件は、陸山会が03~06年に、ダミー団体名義で西松建設から計2100万円の献金を受領し、収支報告書に虚偽の記載をしたというもので、大久保容疑者による献金窓口の切り替えが、違法献金に直結したことになる。

 そう、今回の事件は、それだけだったのだ。3年かけて2100万円ぽっちの、そして、収支報告書を誤記したという程度のことだ。大風呂敷を広げて二階産業相に広げ、そして政界の焼畑農業をするような問題ではない。
 民主党には民主党のお家の事情というものがあるだろうし、小沢も小沢で次の総選挙に最後の戦いを賭ける気でもあるだろうが、検察が矛を収めるなら、小沢大魔神もまた石像に戻る時期ではあろう。どのタイミングかは難しいだろうけど。
 そして、今回の一連の騒ぎを、昭和の残照として苦笑できる日が来るなら、日本は本当に民主主義国に一歩近づけたことになると思う。

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コメント

連座制が適用されるのではないの?
トカゲの尻尾切りを許さない制度で、秘書が有罪なら負けだと思うのですが。

投稿: K | 2009.03.20 16:12

こんにちは。いつも拝見して勉強させていただいております。
小沢さんは自爆覚悟で「企業の献金を全面禁止すべきでは」と提案していますが、小沢さんらしい割り切り方の発言をしていますね。今回の疑惑の本質論から言うと、直接指示もしていなし、東北地方の土建業者が、権威に恐れをなして自主的に献金をしていたのかもしれないにしても、また他人もやっているからよいではないかという議論も、一般大衆には通じないでしょう。地方の土木関係以外の一般大衆は、「やはりあったか」と嫌悪感を感じていますし、その認識は正しい。それがたとえ検察のリークにマスコミが乗っているだけにしてもです。

この際本当に「政治献金を禁止する」ことをマニフェストにして民主党が戦えば、ある意味で今度の選挙で圧勝するでしょう。ただし、個人献金なんていう風習がない日本では、国会議員一人当たり10億円くらい国から与えて、30人くらいの真の政策秘書を抱えられるようにしないと、本当の意味での政治は出来ない思いますが。

投稿: kincyan | 2009.03.20 17:57

平成巫蠱の獄、尻切れトンボで「転進」ですか。
水面から月だって釣り上げる酷吏の荒技と「明鏡止水の境地」で退場する大魔神が拝見できるのだろうと思っていたのですが。
けっきょく、この年度末営業成績上積運動は失敗した、ということでしょうか。

投稿: うおずみ | 2009.03.20 23:20

>3年かけて2100万円ぽっちの、

 あのね。金を回す・動かす側からするなら「ぽっち」であってもね。世の中には、100万「ぽっち」で夜逃げしたり首括ったりモロ肌脱いで股開く輩はナンボでも居るのよ。3000円4000円をベアするしないで、いい年こいたオッサンが毎春必死になるでしょ? ボーナスが5万10万上がった下がったで一喜一憂するし、そもそもボーナス貰わない人だってナンボでも居る。

 比較的金持ち優遇系な印象がある自民党さんと違って、民主党さんはむしろそういった「ぽっち」で一喜一憂する面々に強く深くアプローチして今の地歩を築いてきたんじゃなかったでしたっけ? それが、何のことはない一番旧体質だったのが自分で、今までそういうのを散々毛嫌いする風な世相を作りまくってるのも自分で、最後まで居残ってバラされて泡食ってるのも自分なだけでしょ?
 額面の問題や焼畑農業の問題でも無くてさ。存在意義の詐欺性に、根源があるんじゃないんですかね? だからリーク一発で世論が乱高下するんですよ。

 ヤクザもいかんけど、それ以上に詐欺はいかんですよ。(少なくとも「ぽっち」な人々は)嘘吐きは泥棒の始まりって親から子に教えるでしょう? そういう土台からして「意味あるの?」「今のご時世それじゃ駄目でしょ?」で切り返されたら、以後何やっても何言っても無駄に帰すんですけど。

 嘘を吐くなら、騙すなら、そういう縄張りの中でやってれば宜しい。虚業を生業にする人間なんか幾らでも居るし、そうと宣言してから商売する人間だってナンボでも居る。漫画家や、小説家や、奇術師や、芸人や、そういう類の人々は存在からして嘘前提ですよって、ちゃんと自己紹介から入ってるでしょ。それに対してある一定の理解を持つ人間だって居るから、そういう商売は成り立つんでね。

 そういった宣言なしに「それと思しき行為をやっている」のは、バラされたら逆ギレするのは、単なる詐欺師じゃないですか? 世の中、実質そんなもんだってのは分かり切ってても、こうまで赤ら様に「だからどうした?」言われたら、そりゃあ世間の判断としてはnoなんじゃないですかね?

 自民党が「そういう集団」ってのは先刻承知で、だから皆嫌ってて、それを「打倒する」ことに存在意義があった集団が「妥当する」んじゃあ、居る意味無いですよ。だから私は、民主党の方がよっぽど性質悪いって言ってるんです。ギリギリ1000字未満。

投稿: 野ぐそ | 2009.03.21 03:05

「政治なんてくだらないものだ。」

私たちの国はまだずいぶんまともですから、そういうのんきなことがいってられるけれど、植民地になる前の酋長たちの政治がくだらなすぎて、植民地の時代のヨーロッパ人たちの行政がくだらなすぎて、独立後の軍人や政治家まがいたちがみんなくだらなすぎると、ルワンダみたいなことになります。少しでもくだらなくない選良を、政治家にしないといけないのでは?

政治なんてくだらない、っていっていた清談していた道家思想家や道士たちやその系譜の優れた知識人たちが権力に無知で無関心になっていったから、明の洪武帝や永楽帝が朱子学を悪用できたのでは?そしてその結果、中国と朝鮮が知的停滞してしまったので、明治以降の日本は苦しみぬき、いまでもまだ、そのころからの呪縛に東アジア全体が苦しんでいるのでは?

私は、孔孟の徒の末席を汚しまくっている者どもの端くれの何ほどのこともないものと自認していますから、権力の所在と権力者のあり方に対して、無力ではあっても、無関心でも無責任でもあるべきではないと思っています。

本当に、権力をみんながドブに捨てれば、権力を拾い上げるのは、「ドブさらい」の類の連中たちなのです。


「昭和の残照」

これについては、現在の残照は「田中角栄の昭和」の残照だと思うんです。この後には、「中曽根康弘の昭和」の残照がこれから待っているのだと思うんです。それが具体的には何なのかは今はわからないけれど。そして、その残照の後に来る時代の「民主主義」というのは、現在の私たちが「民主主義」という言葉で想定している民主主義とは、とてつもなく定義を変えてしまう民主主義であるような気がしています。

投稿: 洛書 | 2009.03.21 10:49

政治家が地回りのヤクザ並にミカジメ料を取つて平気で、当り前だと云ふ。
政治に金が掛かり過ぎると云はれるが、それにタカル選挙民がゐるからで、都会では(創価学会員などの他には)そんな連中はゐない。
消費税を上げても北欧のやうにきちんと有効に使はれずに、知らないうちに何処かに流用されてしまふのだらう。
delenda est Iaponia!

投稿: あがるま | 2009.03.21 15:25

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