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2008.10.18

ウォーレン・バフェットのありがたいご託宣

 ウォーレン・バフェット(参照)のありがたいご託宣がニューヨークタイムズに掲載されていた。”Buy American. I Am.”(参照)。とてもありがたいのだけど、タイトルが今一つよくわからない。「アメリカ製を買え。私あり」なのか。まあ、いいや。
 いつもみたくいちいちめんどっちい英文をたらっと引用すると、そうでなくても読まれねーブログなんで、多く人に大明神のお言葉を伝えるべく、今日はライフハックみたいに責めてみたいと思います(鬱)。
 アリガッチなわかりやすい文章の書き方みたいに結論から書くと、バフェット大明神の話は、「当面、株価の動向はわからないけど、長い目で見るならアメリカは成長するんだから、アメリカの株を買えよ、アメリカ人」ということ。大明神、個人マネーは全部アメリカの未来に突っ込んだそうだ。20年先の明るい未来に輝く瞳、78歳。
 「アメリカ」のところを「日本」に置き換えるとどっかのブログにありそうな威勢のいい話になるが、それはさておき、やっぱ、ここは心に染みるお言葉で。

Be fearful when others are greedy,
and be greedy when others are fearful.

人が貪欲なときは恐る恐る行け、
人が恐る恐る行くときは貪欲に行け。

 FXで儲かったぜと人が騒いでいるときは、びくびくとガチな債券とか買って、人がガーン損こいたぁとわめいているときに株を買え、と。
 株だけじゃない。これは人気のラーメン屋のスタンドでもあてはまりそうだ。美女を落とすときにもあてはまるという人もいる。つ、使えるぜ。
 次。

if you wait for the robins,
spring will be over.

春を告げる鳥を待とうとすれば
春は過ぎ去る。

 株式市場ずんどこの冬の時代はいつ終わるのだろうと待っていると、儲けのタイミングなんか過ぎさっちゃうものね、ということ。
 これも株だけじゃない、人生の青春にも、モテ期にもいえることだ。もっとウマーな相手がみつかるんじゃないかと思っているうちに、魔法使いになれるお年になるとか。

In short, bad news is
an investor’s best friend.

手短に言えば、悪い知らせというのが
投資家の最善の友なのだ。

 株式市場がさらにひどくなると騒いでいる状態というのは、投資家にしてみれば心開いていける友情の時間。
 アンパンマンのテーゼにも通じる。愛と勇気だけが友だちさ♪ である。ジャムおじさんだってバタ子さんだってチーズだって本当は信用できない。本当に好きなのは、バイキンマン、君だけだ、ってことだよ。

The hapless ones bought stocks
only when they felt comfort in doing so
and then proceeded to sell
when the headlines made them queasy.

救いようのない奴は心地よいときにだけ株を買う
そして、新聞の見出しでゲロ吐きそうなときに
いそいそと売り払ってしまう。

 世の中絶好調とかいうとき気分で株を買っている奴は救いようがない。株価の低迷で吐きそうなゲロ抑えて、塩漬けにせよとか。

Indeed, the policies that government will follow
in its efforts to alleviate the current crisis
will probably prove inflationary
and therefore accelerate declines
in the real value of cash accounts.

ぶっちゃけ、目下の危機の緩和に政府がやっていることは、
インフレということになる。
だから、現金の価値は加速度的に低下していく。

 おお、どっかのブログでこそっとつぶやいていたようなことも大明神がつぶやいている。大丈夫か? 大丈夫なのか。

Equities will almost certainly outperform cash
over the next decade,
probably by a substantial degree.

ガチな話だが、株の価値はむこう10年で
かなり現金を上回ることになる。

 カネを溜め込んでいる奴は向こう10年ですってんてんになるよということだ。そうかもしれない。それを国という単位で考えるとろくな絵が浮かばないので、おしまい。

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2008.10.17

「サブプライム問題に端を発する」のか?

 あらかたシステミックな金融危機は峠を越したようだ。英金融サービス機構(FSA)ターナー長官のアナウンスメント(参照)やフィナンシャルタイムズの”Panic passes but the causes remain”(参照)などからはそんな印象を受ける。そして、以前なんとなく予想していたように原油も下がってみると、株価の乱高下もありがちなマネーゲームのようにも見えるし、普通に不況になっていくということではないか。とりあえず。と、いうのはまだまだ闇があるからみたいに曖昧なことを言いたいのではなく、チャイナリスクは消えたわけでもないだろうなという思いが残る部分があるからだ。もっともことさらに騒ぎ立てるような話でもない。では今日のお題はというと。
 世界経済の沈没や米国金融問題を騒ぎ立てる話の枕詞に、「サブプライム問題に端を発する」というのがある。変な表現だなと思うのだが、サブプライム問題が要因ではなくて引き金だったとか、たまたまそこから問題が吹き出た、とかいう曖昧な思いを込めているのだろうが、曖昧なわりに、どうしてかくもこの枕詞が定着しているのか、というのにこの間変な感じがしていたいので、ちょっとこれもメモ程度の話。
 「サブプライム問題」というのもいろいろ解説されるのだが、ようするにプライムじゃない人へのクレジットの問題というふうになる。あからさまに言えば、貧乏人にカネを貸すときの信用問題で、最初から貧乏人に貸しているんだから貸し倒れすんだろ、われ、みたいな含みがある。
 が、そうなんだろうか? と気になっていたのだが、今週の日本版ニューズウィーク10・22、ダニエル・グロスのコラム”「諸悪の根源」は大誤解”が興味深かった。オリジナルは”Subprime Suspects”(参照)で無料で読める。
 話は、FF兄妹の経営もだが、CRA(Community Reinvestment Act:地域再投資法)が諸悪の根源ではないという主張だ。同法は、地域の金融機関に対して、その地域への融資を積極的に行うことを義務づけるものだ。日本でも共産党が望んでいるようだ(参照)。


アメリカの「地域再投資法(CRA)」(一九七七年)は、低所得者層などが多く住む地域への金融機関の融資差別をなくすためにつくられた法律で、地域の活性化に効果を発揮しています。

 全文六条からなり、銀行など預金を扱う金融機関に対し、低所得者や中小企業を含め、営業地域の資金需要に適切にこたえる責任があることを明らかにし、監督官庁は、CRAの評価基準にそって銀行の合併や支店の開設などの可否を判断します。


 米国で作成されたのはカーター民主党政権でクリントン時代も推進された。今後のオバマ政権でどういう扱いになるのかわからないが、ネットをざっと見ると、グロスのコラム以外にニューヨークタイムズも似たようなことを書いている(参照)ので、ありがちな政局ネタだったのかもしれない。話としては、CRAがサブプライムを産んだのだろうという右派からのバッシングに、左派が抗弁するという図のようでもある。
 グロスのコラムに戻ると、CRAが問題ではない理由が三つあげられている。三番目からがわかりやすい。いわく「貧困層やマイノリティへの融資は本質的にリスクが低い」。日本のサブプライム問題解説の多くの前提とは逆のように思える。が、実態はリスクは低いのではないか、悪い言い方だが、所詮は貧乏人である。大損こけるほど貸してもらえるわけがない。
 二番目は不動産大手の破綻の多くはサブプライムローンと関係がない。これもそのようだ。
 そして私にとってはわかりづらいのが一番目の理由だ。CRAの規制は預託銀行を対象としていたが、住宅ローン会社や投資銀行には適用されず、こいつらがローンを証券化して損を出した、ということだ。
 そのあたりは、なんとなく日本で語られるサブプライムローン問題の説明にもあるのだが、あまりすっきりしない。というのは例えば。

 6日の公聴会で、ファニーメイとフレディマックの経営危機が、リーマン破綻にどの程度影響したか聞かれて、フルドは答えた。「微々たるものだ」

 フルドはリーマンのCEOである。
 「サブプライム問題に端を発する」といってもサブプライムローンそれ自体は、証券化のネタというくらいの意味合いであって、今回の金融危機は一般的な証券化とそのレバレッジの仕組みのドジということなのではないか。
 だとすると、こういうときに「サブプライム問題に端を発する」という枕詞にどれほどの意味があるのか、って、枕詞なんだから意味はないのだよといえばそうかもだが。

追記
 この分野でご活躍中の切込隊長さんによるコメントをいただいた(ありがとう)。

 「切込隊長BLOG(ブログ) Lead‐off man's Blog: 池田信夫氏はいったい何を言っているのだろう」(参照


 これに関連して、最終爺老師が疑問に思っている部分は「ほんとにサブプライムが引き金なんすか」という話であるが、クライシスという点では、まあ実際そのサブプライムが引き金なので間違いではない。

 とのこと。

本件記事におけるリスクが低く見えている理由は、家(不動産)を担保に入れて、焦げたら家を剥がして転売する、その転売することでデフォルトリスクの金利の一部を相殺できるほど不動産市況が上がっていた(地域もある)からで、貧乏人に対する与信自体はあまり問題にならず、貧乏人が買う家など担保物件の相場が上がり続けていたから過去のリスク評価は低く見積もれるというだけだ。

 したがって「不動産バブルが崩壊しました」といった瞬間に、不動産に依拠しない貧乏人のナマのリスクをまとめて引き受けていたのがFMだのFMcだのだったし、それらの決済や信用補完で裏書してた金融に波及して、というのは致し方のないお話。


 つまり、不動産バブルが崩壊するまではOKだったけど、不動産バブルが崩壊してしまうとそうでもないよとのこと。
 なるほどねと思う反面、ちょっと腑に落ちない感は残るというのが正直な印象。

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2008.10.16

中期的な展望というか幻想というか

 少し上がったかに見えた株価がまたがくんと下がった。ワロス曲線のように上げたり下げたりで利鞘稼ぎの人にはまたとない好機だろうが、普通の人にはちょっと近づけない相場だろう。しばらくはこんな調子で、しかしじり貧に下がって、そしてなんとなく長期不況ということになるのか。世界的な信用縮小が急激に発生しなければ、そういうことなんじゃないか。
 御手洗冨士夫日本経団連会長もこう言っていた。


御手洗会長は「米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)の問題に端を発して、米国の株価が下落した。それに加え、急激な円高が進行したことが要因で株価が下げた」と分析したうえで「短期的な調整で、このことが世界全体の信用を縮小させることにはならない」との見方を示した。ただ、このところ国際商品市況や新興国の株価が上昇していたことを挙げ「これをきっかけに調整に入り、この調整はしばらく続く。従って、注意深い対応が必要だ」と述べた。

 サブプライム問題が米景気失速につながる懸念については「米景気は底堅い。サブプライム問題が米国の金融業界や景気に長期的なダメージを与えるとは思わないし、ファンダメンタルズを壊すとは思わない」と述べた。


 おっとぉ、7月27日の記事だった(参照)。
 しかし、案外そう大局観が違っているわけでもないのかもしれない。
 10月16日ではどうか。7月末の時点ですらなんも見えなかったが、この先もまるで見えない。それでもなんとなくこんな感じかなという線はある。14日付けのフィナンシャルタイムズ社説”Stimulating Asia”(参照)が参考になるのではないか。アジアについて触れたものだが。
 結論を先にいうと日本についてあまり触れてないが、こんな感じ。

China’s stock market bubble and Japan’s miniature real estate boom have both imploded with little effect on their domestic financial systems so far, but neither can escape the effects of the international crisis on their trade.
(中国の株式市場バブルと日本の不動産ミニブームは両方とも破裂したが、彼らの国内経済システムにはそれ以上大きな影響を与えなかった。にも関わらず、どちらも貿易面では国際危機の影響を逃れるべくはない。)

 日本については概ね問題なしということ。中国の不動産バブルも気になるが、しいていうと中国同様、これからは外需牽引では成長できないというのはガチだろう。

There is debate about how much of China’s growth relies on net exports, but little doubt that, for the region as a whole, the expansion of the US trade deficit towards $1,000bn a year has been an important source of demand. It has now gone into reverse.
(中国の成長が外需の純輸出高に依存している度合いについては諸議論があるが、この地域全体として見れば、1兆ドルに迫る年間対米貿易赤字拡大が重要な需要の源泉であったことに疑念はほとんどない。状況は終焉し逆転した。)

 世界経済構造としては日本もひっくるめての中国という含みがありそうだが、今後はそうした外需頼みは無理だから、内需を考えろということ。そりゃそうだくらいか。
 いや、中国が内需の構造を見つければ日本はまたそっちの汁を吸うということか。このあたりは微妙に中日友好ってことになるのか。
 日中にアジアとしてひっくるめられているのは、台湾とシンガポールも同じ。
 そうではないのは、韓国とインドネシア。

Many Asian countries had some kind of domestic financial bubble but few are vulnerable to the crisis itself. South Korea, which had a domestic debt boom, and Indonesia, where leveraged investors were playing the stock market, are two exceptions.
(多くのアジア諸国がある程度国内経済バブルに浴していたが、危機に弱い例外が、国内借金ブームだった韓国と、株式市場でレバレッジ投資しまくったインドネシアだ。)
In both cases there is some risk of flight by foreign investors, but unlike in their 1997 crises South Korea and Indonesia have the foreign exchange reserves to fight back. Policymakers must show that they know how to use them and ensure that no solvent institution fails because it cannot borrow dollars.
(どちらの事例も外国資本のキャピタルフライトのリスクがあるが、1997年危機とは異なり両国には対応できるだけの外貨準備がある。為政者は、その使い方を知っていることや、ドル借入れ不能で返済できなくなる機関がないことを明示する必要がある。)

 韓国とインドネシアには危機の懸念はあるにせよ、それほど重篤なことにはならないだろうということだ。
 言い方を変えると、ダラダラと衰退していくということではないかな。
 オイルマネーとはどうかというと、対中国への示唆だが。

With oil prices also falling, to depend on Middle Eastern or Russian markets would be false hope, as would be to wait for the US and Europe to stimulate consumption and suck up exports.
(石油価格の降下が進行しているのだから、中東やロシア市場に依存することは、米国や欧州が消費刺激をし、輸出から吸い上げようとするのを待つの同じくらい、期待の方向が間違っている。)

 石油が下がるから、オイルマネーも大したことないよというのは、そうかもしれない。
 世界の風景は、けっこう変わる。索漠としてくるかな。あるいは、フィナンシャルタイムズの夢のように、中国で消費経済が活性化するとか。真っ赤だなぁ真っ赤だぁ沈む夕陽に照らされて♪みたいな夢とか。

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2008.10.15

ポール・クルーグマン、ノーベル財団による経済学賞受賞ってことで

 クルーグマンがノーベル財団による経済学賞を受賞と聞いてそれほど驚いた気もしなかった。一つはそう言われてきたし、率直に言ってもう米国大統領選挙は終わっているからだ。これが接戦とかだと、えげつないことするなと思うが、いやまあ、受賞者が一人っていうことからして、実態はそうなんだろうが、時期がよかったねということか。そのあたり微妙な部分があるなと思っていた。
 彼のコラムの拠点ニューヨークタイムズが万歳っていうのもわかるがワシントンポストや、それにウォールストリートジャーナルあたりはどうかとざっくり見たが、プレーンにええんでないのという感じだった。フィナンシャルタイムズもそうかなと言えば言えるし、フォーブスはちょっとくぐもっていた(参照)。というあたりで、もう一度フィナンシャルタイムズに戻ると、なかなか微妙な感じに気が付いたので、ちょっくらネタに拝借。”Why Mr Krugman deserves his Nobel”(参照)。


The usual response to the announcement of the Nobel memorial prize winner is "who?". Not yesterday. Paul Krugman, a columnist for The New York Times, is (along with the late Milton Friedman) the most recognisable man ever to receive the honour.
(例年のノーベル賞経済学受賞者への反応は、「誰、その人?」というものだが、昨日は違った。ニューヨークタイムズ・コラムニストのポール・クルーグマンは(故ミルトン・フリードマン同様)栄誉を得た人としてはもっとも知名人であった。)

 そりゃね。「嘘つき大統領のデタラメ経済」(参照)だものね。

He was awarded his prize "for his analysis of trade patterns and location of economic activity"; he could with equal justice have been awarded it for reminding the world that rigorous economic ideas matter.
(受賞は「経済活動における貿易類型と拠点分析」だが、同様に称賛されるべきは、現実世界に対して経済学の学問的思考法を想起させてきたことだ。)

cover
クルーグマン教授の
経済入門
ポール クルーグマン
山形浩生訳
 あれです、「 経済学を知らないエコノミストたち(野口旭)」(参照)みたいな感じだ。余談だが、このところ英文記事を読んでいるとバーナンキ僧正なんかもエコノミストと呼ばれているわけで、日本語のそれとは語感がだいぶ違っていそう。
 フィナンシャルタイムズの出だしに若干皮肉っぽいトーンがあるがと読み進めると、そこにきちんと応えているともいえる。

The timing is provocative, three weeks before the US presidential election, because Mr Krugman has been a trenchant and influential critic both of the Bush administration and of John McCain.
(米国大統領選があと三週間というタイミングは挑発的だ。というのは、クルーグマン氏は辛辣かつ影響力をもつブッシュ政権及びジョン・マケインへに批判者だったからだ。)

 それはお約束なだけなんだけど。

Then there is the Nobel committee's decision not to split the prize - as is common - with economists whose work is related. Men such as Avinash Dixit made Mr Krugman's research possible.
(通常なら他に関連の経済学業績者がある場合は受賞者を分割するのに、今回のノーベル財団の決定はそうではなかった。たとえば、アビナッシュ・ディキシット教授はクルーグマン氏の研究を可能にしていたのに。)

 これってようするに褒め殺しのレトリックってやつかな。読みようによっては今回の受賞の異様さを物語ったディテールでもある。アビナッシュ・ディキシット教授ってとアマゾンを見ると「経済政策の政治経済学―取引費用政治学」(参照)がある。

Yet while Paul Krugman's talents as a theorist are shared by a handful of his peers, his gifts as a communicator are not. It seems that the Nobel committee felt that Mr Krugman's role as a public intellectual was a stepping stone to the prize, not a stumbling block.
(理論家としてのポール・グルーグマンの才能なら四、五名くらいは共有しているものだから、彼の才能は伝達者かどうかということだ。ノーベル財団としては、公的な知性としてのクルーグマン氏の役割は、受賞の足がかりであって、障害ではなかった。)

 さらっと読むと褒めているみたいだけど、これって、高度なレトリックによる反語表現っていうことジャマイカ。
 そして"That is no bad thing."と、そんなひどい話じゃなよ、彼はアジア危機も当てたし、ドットコム狂乱や住宅バブルに警戒したと続く。当たったというのだけどね、まあ、時期のずれを別にすれば。まあ、その論法だと以下略。

Few economists will deny that Mr Krugman's research deserves this prize, but some regret the fact that he is now far more likely to demolish a Republican campaign tactic than to build an insightful economic model.
(クルーグマン氏の研究が受賞に値しないと否定する経済学者はほぼいないが、現状の彼が、洞察に溢れた経済学モデルの構築よりも、共和党戦略粉砕にはるかに傾倒していることに嘆く経済学者はいるだろう。)

 いやさすがなレトリック。さすがにここまでこの社説を読んでくると、嫌味というのが実に高度なレトリックを要することがわかって勉強になります的だな。
 そしてここが要点。

There is truth in that. While his criticisms of the Bush administration's woeful policies have tended to ring all too true, his rage can diminish the persuasiveness of his argument.
(その嘆きに真実もある。ブッシュ政権の政策が悲惨だとする彼の批判はどれも正しいとはいえ度を超えていたから、彼の怒りはその議論の説得力を削いでしまったようだ。)

 それは私も感じたな。れいの本とかで。

In any case, many journalists can shoot the fish in that particular barrel, but only one economist can pen a whimsical "theory of interstellar trade". Even when the polemicist is at the top of his game, the witty populariser of economic logic is occasionally missed.
(多くの場合、ジャーナリストが集まって限定された領域にいるお目当ての獲物を狙うものだが、一人の経済学者ができるのは、気まぐれな「恒星間の取引の理論」を書くくらいだ。彼のゲームの頂点に立つ論客としていても、気を利かせた経済理論の大衆化はしばしば的をはずす。)

 このところの英文がよくわからない。まあ、雰囲気だけはわかる。私がコラムニストのサミュエルソンを好むのそこだ。プロパーな経済学者さんや、それに連なる書生さんの議論にはちょっとついてけないなとよく思う。
 このあと、フィナンシャルタイムズは、オバマ政権に早速クルーグマンを引き出させ、仕事をさせろというふうに結ぶ。
 それはどうなんだろうか。エンロンの顧問を終えてエンロンバッシングをしているという批判とか読むと(参照)、チョムスキーがタックスヘブンを使って利殖をしていた(参照)ような興醒め感はあるんだけど。

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2008.10.14

デレバレッジを急ぐのはよくないぞというご意見とか

 エジプトからの旅団が遠くバビロンを眺めるとあたかも風にたなびくこともなく天から一本の細い糸が垂れているようにその塔を思うように、物事は遠目で、薄目で見ていると、簡単な図だけが浮かび上がることがあるし、人が死んでみてその人生という短い期間に想起できることといえばごく僅かな単純なできごとでしかない。2008年米国で突然投資銀行が消えた。
 つまりはそういうことなのだが、それは目に見える一つの結果であってその時代に生きていた人がその塔の頂上に望んだこととは違うように、別の結果に翻弄されるものだ。株が、落ちたとか。いや随分落ちたね。こんなに落ちたのは、八〇年くらい前のことだなと言えるのは日野原重明先生くらいか。
 なぜ投信銀行が消えたのか。なんとなくわかっている気がするが、そのわかった気分の中心にある感覚は、バカじゃねーの下手な博打を打ちやがって、くらいなものではないか。そしてそこから貪欲なカネの亡者は消えて当然とか、あるいはそれでも消えたら銀行が不安になるとか通常の銀行と投資銀行の差なくふかすポジション発言などが出てくる。ただ、それは構図が違うのではないか。
 例によってロバート・サミュエルソンのコラム”The Engine of Mayhem”(参照)を読みながら、経済学に無知でよくわからないなと思う部分もあるが、そうだよねと思うことも多い。


It's easy to explain the continuing financial chaos -- and the failure of governments to control it -- as the triumph of psychology. Fear reigns, and panic follows.
(継続している経済混乱と政府による制御の失敗を説明するのはたやすい。心理学の勝利ということだ。恐怖が君臨し、パニックが続いた。)
Everyone dumps stocks because everyone believes that everyone else will sell. Only rapidly falling prices attract sufficient buyers. All this is true. But it ignores the real engine of mayhem: "deleveraging." That's economic shorthand for purging the financial system of too much debt.
(みんなが売りに走ると信じたことでみんなが株を手放した。急速降下する価格だけが十分な買い手を魅了する。こんなことが起きているのだ。しかし、本当の騒乱の動力をもたらしたのは「デレバレッジ」だ。つまり、負債を過剰に手放そうとする拙速な経済行為である。)

 試訳がちょっと恣意的だけど、そういう語感か。つまり、現在の株価の乱高下は心理的な問題だし、それを引き起こしたのは、「デレバレッジ」だというのだ。
 「デレバレッジ」というのが私にはよくわからない。掴んだババを早急に手放そうとするというふうにサミュエルソンの説明は読めるが、他のソースInvestopedia(参照)とか見ると。

A company's attempt to decrease its financial leverage. The best way for a company to delever is to immediately pay off any existing debt on its balance sheet. If it is unable to do this, the company will be in significant risk of defaulting.
(経営上レバレッジを会社が減らそうとすること。会社がデレバレッジする最善の方法は、既存の負債をバランスシートから早急に償却することだ。それができないと、会社は債務不履行の深刻な危機になる。)

 どうということが書かれているわけでもないように思うが、要点は、"immediately"(急速に)ということかもしれないと、サミュエルソンのエッセイを読んで思ったのだが。
 同ソースではこうコメントが続く。

Companies will often take on excessive amounts of debt to initiate growth. However, using leverage substantially increases the riskiness of the firm. If leverage does not further growth as planned, the risk can become too much for the company to bear. In these situations, all the firm can do is delever by paying off debt.
(会社は初期成長に過大な負債を追うことがある。しかし、レバレッジを使うことで会社のリスクを実質的に増大させる。予定通りにレバレッジが成長しないなら、会社は負担に耐えられなくなるだろう。こうした状況で、会社というものは負債解消にデレバレッジを行いうる。)
Any sign of deleverage shown by a company is a red flag to investors who require growth in their companies.
(デレバレッジをする会社というのは、会社の成長を求める投資家にとって危険信号が点ったことになる。)

 これもどうということではないが、やはり、要は期間ということなのだろう。サミュエルソンのコラムの副題が”There Are Dangers in Deleveraging Too Fast”(デレバレッジが急速過ぎることの危険性)ともあるし。
 サミュエルソンのコラムに戻ると、まず彼はサブプライムローン自体の問題性を再考する、というかまいどのサミュエルソン節だが。

Alone, American subprime mortgages should not have triggered a global crisis.
(アメリカのサブプライムローン自体では全世界的な危機を引き起こすはずはなかった。)

 このあと、それに結びつけられた資産価値が問題だという話になる。ま、それも要するにありきたりのバブルということだけのように私には思える。
 サミュエルソンとしてはこの問題には十分対応できたのではないかと筆を進めるのだが、その先でいったい何が起きたのかと疑問を再提出する。

What we've discovered is that the real problem is bigger. Large parts of the financial system are too thinly capitalized and too dependent on unreliable short-term debt.
(私たちが発見したことは本当の問題は大きいということだ。経済システムの大半において、資本の支えは薄く、信用しがたい短期負債への依存が大きすぎる。)

 現況の認識しやすとしては、これもごく普通のことだし、日本人にはさらにそうだ。

Deleveraging -- a shift from excessive debt toward more capital -- is inevitable and desirable in the long run. The trouble is that, in the short run, it could destabilize the economy if it proceeds too rapidly.
(過剰な負債から資本を求める変化であるデレバレッジは、避けがたく長期経営にも好ましい。問題は、短期で見た場合だ。それがあまりに急速に進行すると経済を不安定にしてしまう。)

 サミュエルソンはその説明を続けるのだが、そのあたりにはなるほどと思う。そう見ると遠目で見たようなわかりやすさはあるし、昨今語られている危機の説明のいかがわしさにも示唆的ではある。反面、それもまたトンデモ経済学かなという疑念もないわけではない。
 マスメディアの騒ぎを見ていると早急な解決が叫ばれているが、むしろ状況はずるずるとした不況に流れ込んだほうが、中期的な経済安定にいたるのかもしれない。というか、公的資金投入が解決だと騒ぐ日本のマスメディアは結果として、これからだらだらと世界不況続くことにコミットしているんじゃないか。結果的にそれでよいのだとしても。

追記
 サミュエルソンの今回のコラムで実は一番重要なのは以下の部分。重要なのであえてそこはリンク先の原文を読んでいただきたいと思ったが、やはり日本にとっても重要なので追記。


Consider stocks. Their plunge has been driven in part by hedge fund selling. Hedge funds often buy stocks by borrowing from their "prime dealers" -- firms such as Goldman Sachs and Morgan Stanley, which in turn borrow from commercial banks. If banks "deleverage" by reducing loans to prime dealers, then prime dealers tighten up on hedge funds, which react by selling stocks. "It's a big piece of why the stock market is down," says Michael Decker, former chief economist for the Securities Industry and Financial Markets Association and now co-head of the Regional Bond Dealers Association.

All around the world, we see variants of this cycle. Countries could face crippling capital outflows. The yen "carry trade" -- borrowing at low interest rates in Japan and lending at higher rates in other countries -- is reportedly contracting. Iceland's main banks have been nationalized because they couldn't renew their short-term borrowings. But if credit is withdrawn too abruptly, the prices of stocks, bonds and other assets that it propped up -- and also the real economy of production and jobs -- will fall. And the effects feed on themselves. Hedge funds, for example, have been hit with high redemptions from investors: about 5 percent in September, 2 1/2 times normal, says Charles Gradante of the Hennessee Group. These compound selling pressures.


 ちょっと強引な敷衍になるかもしれないけど、いわゆる「円キャリー」によって世界経済において日本が実質的な投資銀行の旦那の役割をしていたとサミュエルソンは見ているに等しい。この見解はそう簡単に諾とできるものではないが、広義にはそうだし、日本政府がまさにその旦那だったと見ることもできるだろう。で、そうだとすれば、目下の危機において重要なことは、円キャリーが継続できるように、日本は円安を誘導することが重要になるはずだ。ただこれはむやみにやればいいわけはないだけど。

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2008.10.12

こんにゃくゼリー、メモ

 先月30日国民生活センターは、兵庫県の1歳9か月の男児がこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせ窒息したことをアナウンスした。事件自体は、7月29日、男児の祖母が凍らせたこんにゃく入りゼリーを食べさせようとして、喉に詰まらせたものだ。死亡は9月20日に死亡とのこと。この事件をきっかけにこんにゃくゼリーの危険性がまた社会問題化した。
 報道を見ると、1995年以降窒息死は17件目とのことだ。気になってそれ以前の事例はないか少し調べてみたのだがわからない。ただ、95年以降は継続的に事件は発生し、その問題が裁判にもなっている。
 11日付け産経新聞記事”形は国が決める? こんにゃくゼリー 自民、議員立法へ 消費者行政迷走”(参照)によると、規制は形状がポイントのようだ。


こんにゃく入りゼリーを食べた子供が窒息死した事件を受けて、自民党内で10日、ゼリーの形状などを規制する新法制定を検討する動きが出てきた。消費者庁設立のきっかけともなったゼリー被害の防止に焦点を絞った新法だが、窒息による死亡事故が多いモチの規制との兼ね合いなど課題は山積する。新法制定の背景には、政府が消費者の安全をはかるため国会に提出した「消費者安全法案」でも根本的解決にはならないとされる事情があり、ゼリー規制の議論は政府・与党肝いりの消費者庁構想にも影を落としそうだ。

 こんにゃくゼリーが「消費者庁設立のきっかけともなった」という経緯は私は知らなかった。今後どのような法的な規制になるのかは、よくわからない。
 国会では怒号がわいていたそうだ。

 国外では、EU(欧州連合)が独特の硬度を生み出すこんにゃく成分を添加物とし、ゼリーへの使用を禁止しているのに対し、日本国内では食品衛生法の対象は食中毒などに限られる。
 このため、今回のような死亡事故を防止する取り組みが「生産者重視から消費者の安全を重視する行政への転換の象徴」(中堅)と位置づけられている。
 そのためか、この日の会合では厚生労働省側が「製造中止や回収させる法制度はなく、強制力のない指導が限界」と説明しても、議員の怒号は消えなかった。

 私はこのあたりの経緯で少し気になることがあるのでエントリを書いてみようかなと思った。
 世間的には、餅との関連が話題になっているようだ。

 だが、新法でゼリーの形状などを規制するには「法の下の平等」という点で大きな壁が立ちはだかる。こんにゃく入りゼリーはだめで、モチは規制しなくてもいいのか-という問題だ。
 実際、10日の調査会でも谷公一衆院議員が「モチは昔から死亡事故が多い」と指摘した。一方、野田聖子消費者行政担当相は10日の会見で「モチはのどに詰まるものだという常識を多くの人が共有している」と強調したが、「ゼリーだけを規制し、モチやアメを規制しない合理的な根拠は見つかりにくい」(厚労省)というのが実態だ。
 厚労省の調査では、平成18年中に食品を原因とする窒息で救命救急センターなどに搬送された事例は、把握できた計803例のうち、モチの168例が最多で、「カップ入りゼリー」は11例だった。

 少し余談になるが、たしか韓国でもこんにゃくゼリーは禁止に相当する扱いになっているはずだが、韓国でも喉に詰まりそうな伝統的なトックという餅がある。あれはどういう状態になっているのだろうか。うるち米なので問題ないのだろうか。
 日本の現状では、餅とこんにゃくゼリーの線引きということになるのだろう。実際のところ、餅は規制できないが、こんにゃくゼリーは規制できるかという問題設定になりそうだ。
 国内報道を見ていると、EUでは規制しているという話がよく引かれている。この報道でも「EU(欧州連合)が独特の硬度を生み出すこんにゃく成分を添加物とし、ゼリーへの使用を禁止している」とある。間違いではない。2003年2月12日付けFoodNavigater.com記事”EU votes for permanent E425 ban in jelly confectionery ”(参照)より。

The European Parliament yesterday voted with an overwhelming majority for a permanent ban on the use of the food additive E425, otherwise known as konjac, in jelly confectionery.
(欧州議会は昨日、ゼリー菓子に含まれる、こんにゃく呼ばれる食品添加物E425の禁止を圧倒的多数で可決した。)

 つまり危険な添加物問題としてEUは処理している。
 さらに関連して。

Regulatory bodies from Australia to the United States have banned mini-cup jelly products, traditionally manufactured in South-East Asia, that contain konjac. The legislative steps were taken after the fruit gel sweets were linked to several deaths around the world. But the regulatory bodies have not banned konjac.
(オーストラリアから米国まで規制機関は、こんにゃくを含む伝統的製法のミニカップ入りゼリー製品を規制してきた。法規制への階梯は、この甘味フルーツゼリーが世界中で死をもたらした後に取られた。しかし、規制期間はこんにゃくは禁止してこなかった。)

 含みがよくわからないが、こんにゃく自体は規制できなかったが、すでに死者をもたらしているのに今回の規制は遅きに失したという印象はある。まあ、それを言われると諸外国から日本がどう見られているかは多少想像は付く。
 いずれにせよ、EU式に考えるなら、E425という食品添加物を規制してしまえばよいということになるが、そのあたりは日本での窒息被害の実態とどう関係しているか、いまひとつはっきりしない。というのは、今回、9月の事件の製品のせいか、槍玉に上がっているマンナンライフの製品以外にも窒息は発生しており、それらの製品はE425の問題というより他のローカストビーンガムやカラギーナンによるようにも見えるからだ。あまりこれは騒ぎ立ててはいけないが、カラギーナンには発癌物質(プロモーター)の疑念やクローン病との関連も疑われている。EUでは使用量に規制がある。
 日本の報道ではEU側が着目されるが、米国では輸入品として窒息被害を出したため、米国食品医薬品局(FDA)がかなりしつこく実質の市場規制を行っており、2002年でこの問題は実質終了しているようだ。先の2003年のEU規制の含みは、米国より1年も遅れているではないかもっときちんと食品の安全性を考慮せよという含みもありそうだ。かくして、実質欧米諸国ではこんにゃくゼリー問題はすでに消え、過去のこととなっている。
 米国食品医薬品局のアナウンスだが、”Konjac Candy Recalls”(参照)にまとめられている。興味深いのは、最初のアナウンスメントが英語の他に日本語と中国語でなされていることだ。
 2001年時点で米国に輸入されたこんにゃくゼリーの消費者として日本人・日系人と華僑が考慮されていたのだろう。恐らく輸入ルートとの関係ではないだろうか。
 以下が2001年8月17日時点での米国食品医薬品局による警告である(参照)。

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 繰り返すが米国ではすでにこの問題はほぼ終了している。

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