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2008.10.04

最後の行楽地、ラストリゾート、あー、そうじゃないんだってば

 昨晩エントリを書いたあと寝ることにした。数時間起きていたら結果、そう、米国下院に差し戻された金融安定化法案の結果を知ることになる。この期に及んで馬鹿なことにはなるまいと安心して寝た、わけではない。私は人生とこの世界の端役も端役。Blog Action Dayってなんですかぁ?ってなゴミブロガーである。それでも不安で寝れない、ってなこともなく寝坊すらしてしまった。が、いつもようにラジオを付けるよりBSのスイッチを入れた。可決、と即座に出ていた。まあ、よかったんじゃないか。すくなくともそうでないよりは。
 英語でsecond thoughtという言い方があるが、あ、日本語でも「再考」っていいますね、ま、でも日本語のそれは評価を変えるくらいだけど、second thoughtだと"A reconsideration of a decision or opinion previously made."と字引にあるようにちょっと意味合いが強いかもしれない(躊躇といった語感もあるな)。あるいは、scond chance、こちらは字引にはないな。しかし、1日付けワシントンポスト社説”America's Second Chance”(参照)は、それに期待をかけていた。リードは、"The House has one more shot at making financial order out of chaos." つまり、「混乱から家計を立て直すに家はもうワンショットがある(機械翻訳風)」というわけだ。ワンショット? 50円だしね。


AMERICA is the land of second chances, so it is fitting that the House of Representatives should get an opportunity to redeem itself for its reckless rejection of the financial rescue package on Monday.
(アメリカは二度目のチャンスの場だ。だから、だから下院は、月曜日に無謀にも否決した金融救済案をやり直す好機を得るべきだ。)

 余談だがもしこのブログを高校生が読んでいるなら(なわけねーよな)、米国議会の下院というのは日本の衆議院に相当するというのを覚えておくといい。民主国家で一番の権力を持つのは国会であり、そしてさらに下院が決定的な力をもつ。だから、日本も衆議院と言わず下院でいいようにも思うし英語では下院と訳される。というか、"the House of Representatives"は代議員の集会所なので衆議院に近い。なんで下院かって? Lower Houseとも言われるからだ。なぜ下なの? まあ、高校で勉強しておくとよいよ。ついで上院とか、貴族院とかも。
 話戻して。かくしてチャンスを活かすことになったのだが、これで最悪がくっきり想定されるということはないにせよ、めでたしめでたし、それから二人はたくさんの子供を産みましたとはいかない。悪い話は同社説にまとめてあるが。

Make no mistake: This rescue will probably cost the government, i.e., the taxpayers, money -- a lot of money.
(間違いないこと:この救済案はたぶん政府に負担をかける。つまり納税者に負担がかかる。カネの負担が。どっさりと。)
At least initially, the government will overpay for the assets it buys, if only in the sense that there is no market at all for them at present.
(しょっぱなは、通常の意味で現状売り出しされた全資産の市場がなければ、政府がそれらを割高で買い取ることことになる。)
The government will face politically difficult conflicts of interest.
(政府は利害衝突に政治的に直面するだろう。)
Its accumulation of mortgage-backed assets, on top of the de facto nationalization of Fannie Mae and Freddie Mac, means it will be in a position to modify many thousands of loans, but the better the deal Uncle Sam cuts distressed homeowners, the greater the hit to the taxpayer.
(ファニーメイとフレディマックを事実上国有化したことで、住宅ローン資産の累積は、数万もの貸し付け緩和ということになるが、困窮した家主をサム叔父さんが調子よく削減するほど、納税者に打撃を与えることになる。)
And, of course, the government will pay for TARP with borrowed money, adding to this country's already worrisome national debt.
(もちろん、政府は金融安定化法案を借金で払うわけで、すでに憂慮すべき財政赤字の上乗せになる。)
When you strip away all the rhetoric, pro and con, TARP amounts to a deliberate but as-yet-unquantifiable reduction in our future wealth -- for the sake of our present stability.
(賛否両論はぶっちゃけ、現在の安定のために、金融安定化法案は、熟慮したとはいえ、国の未来の富に対して目下のところ数値化しづらい額を削ることになる。)

 そうこと。資産というのはローン証券ということだが。
 金融安定化法案反対はただのバカばっかとも言えない面はあるし、オバマ時代には、"strip away all the rhetoric, pro and con"ということになる。
 でも、ロバート・サミュエルソンも孫引きしていたが、うまく行っちゃう可能性だってある。

Though TARP seeks $700 billion in ultimate authority to buy assets, the likelihood is that the Treasury will pay less than that,
(金融安定化法案は資産買い取りに上限7000億ドルを求めているが、それより定額で済むかもしれない。)
because (a) its purchases might jump-start a private market and (b) the government might be able to resell securities for more than it paid.
(理由は:(a)買い取りによって民間市場が活性化する、(b)政府は買い取り価格より高く証券を売ることもできる。)

 まあ、うまく行くかもよだ。でもちょっと待て、うまく行くには誰かが、高値で買い取る必要あるんだよな。誰が米国を買うのかって、旦那ぁ、極東地域の旦那ぁ、以下略。
 それはそれとして、これから米国はラティーノをがんがん入れて増やして4億人の帝国っていうか国家を作り上げるのだから、住宅とか先行投資しておくと思えばわっはっはってなことになりかねない。そんな光景を私は見るんだろうか。見るとしてもそのとき足下だけは見るなよかもな。
 未来はわからんと言えばわかる、わかる部分もある。なんでこんな事態になったのか、バーナンキ僧正ですらわかってなかった、というのがあっけない真相かもしれない。先月29日のロバート・サミュエルソンのコラム”Bankrupt Economics”(参照)のこれは示唆深い。

Of course, economists recognized that the Federal Reserve should act as a "lender of last resort" and that permitting two-fifths of banks to fail in the 1930s aggravated the Depression.
(もちろん経済関係者は連邦準備銀行が「最後の貸し手(lender of last resort)」となるべきことや、1930年代に猛威を振るった大恐慌で五分の二の銀行を倒産させたことを知っている。)
But the creation in 1933 of deposit insurance (now up to $100,000) was thought to prevent most bank runs, and the "lender of last resort" role never anticipated a worldwide financial system that mediated credit not just through banks but also through hedge funds, private equity funds, investment banks and many other channels.
(1933年の保証金(せいぜい10万ドル)で大半の銀行倒産を防ぐと見なされていたし、現代では国際経済システムは信用を銀行を通じて仲介するだけではなくヘッジファンド、プライベートファンド、投信銀行、その他の経路に及んでいるが、当時は「最後の貸し手」の役割がそこまで及ぶわけではなかった。)
In congressional testimony last week, Bernanke admitted the Fed has been "shocked" at how elastic the "lender of last resort" role has become.
(先週の議会証言でバーナンキは、米国連邦準備銀行がそこまで拡大した「最後の貸し手」を担わされていたことにショックを受けたと、認めた。)

 バーナンキ、がーん、涙目、ってやつですか。大恐慌の国際的研究者でもあるバーナンキも昔と今の違いがわかんなかったんだよぉ、ですか。
 いや、おちゃらかしじゃなくて、そういうことなんだと思うし、マジでいうなら、「最後の貸し手」に米国民以外に同盟国も乗っかることになるしかないでしょ。ヤダって言う?
 それにしても「最後の貸し手(lender of last resort)」か。
 "A last resort"、最後の行楽地、ラストリゾート、あー、そうじゃないんだってば。

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2008.10.03

大恐慌に軍靴の音を聞く……考え過ぎだけどね

 一週間ブログに穴を開けてしまった。気が付くともう10月。この一週間に世界はとんでもないことになったと言ってもいいかと思う。
 今年の年頭、私は北京オリンピックの馬鹿騒ぎが終わったあと、中国経済にめだった失速が始まり、それが不穏な空気を生むのではないかと思っていた。その兆候がなかったわけでもないし、率直なところその兆候は今でもあると思うが、それより先に米国が潰れた。住宅バブルが崩壊して世界経済にろくでもない時代がくることはわかっていたが、ここまでひどい事態を見ることになるとは思っていなかった。
 というか、自分の人生で世界大恐慌というのを見ることになるのかもしれないなと怯えた。よくマスコミでは日の丸だの靖国神社だのという私がさっぱり関心のない話題に軍靴の音が聞こえると表現するが、私は世界大恐慌の可能性にその音を聞く。第二次世界大戦は大恐慌が生んだのではないかと私は思っているからだ。ただ、その見方は歴史学的には正しくはないのかもしれない。まあ、考え過ぎだけどね。
 9月30日、朝いつものようにラジオを付けて目を覚ますのだが、どうも尋常ではない。米国下院を辛うじて通過すると思われていた金融安定化法案が否決されていた。否決? ありえない。呆然とした。25日のロバート・サミュエルソンのコラム”What's the True Cost?”(参照)の不吉な選択がまさか実現するとは。


But the biggest unknown lies elsewhere. What happens if Congress doesn't approve the plan, or something like it?
(最大の未知数は他にある。もし議会がこのプランを認めないとか、それに類することになったら、何が起きるだろうか。)
Zandi, a supporter, argues that the economy will get much weaker, that many more banks and financial institutions will fail, and that the rise of joblessness will be greater, as will the fall in tax revenue and the increase in unemployment insurance and other government payments.
(プラン支持者ザンディは、経済は弱体化し、銀行や金融機関は破綻し、失業の増加しする。同時に歳入の減少と失業保険と政府支出は増大すると論じている。)
Is this scare talk or a realistic threat? The true cost of Paulson's plan hangs on the answer, and if the danger is real and imminent, then the cost of doing nothing would be far greater.
(これは脅しなのか現実の脅威なのか。その答えに、ポールソン案の真価が掛かっている。もし危険が真実で切迫しているなら、なにもしないことの損失はさらに大きくなる。)

 30日の朝、米国株価は落ちていた。BSニュースを付けてニュースを聞いてみると、欧州側の金融不安ですでに下げているところでだめ押しになった感じはある。ブラックマンデーかとマスコミは騒いでいた。
 が、下げ幅は絶対量として見れば大きいが、比率として見ればそれほどの下げでもなく、翌々日にはもち返したかに見えたが、現状そうとも言えないダメダメ領域に突っ込みつつある。というか、雇用も悪くなり実体経済への影響はあるだろう。
 米国下院はバカか、バナナ共和国かといった悪態もあるだろうが、米国民というのはああいうものなのではないか。それもまた民主主義のプロセスでもあるのだろう。
 30日ワシントンポストのコラムニスト、スティーブン・パールスタインが"They Jus Don't Get it"(参照)で嘆くのもよくわかった。

The basic problem here is that too many people don't understand the seriousness of the situation.
(ここでの基本問題は、状況の深刻さを理解でない人が多すぎることだ。)

Americans fail to understand that they are facing the real prospect of a decade of little or no economic growth because of the bursting of a credit bubble that they helped create and that now threatens to bring down the global financial system.
(グローバル金融システム創造をかつて助けいまや脅かしている信用バブルの崩壊によって、向こう10年は経済間経済成長がなくなるという間近に迫った予測を、アメリカ人が理解するのに失敗している。)


 10年に及ぶ期間、国の経済成長が止まるなんて慣れっこさとか言いたいところだが、その国が今度は米国となると話は少し違ってくる。
 メディアはなんとなくブッシュ政権または共和党批判の基調トーンがあるので、その失策を責めるような感じを受けたが、反対228に賛成205という否決の内訳で、たしかに共和党の反対票は133と大きかったが、民主党の反対票も95もあり、私としては率直に言えば次期政権が民主党になるのを読んだ民主党の悪い駆け引きなのではないかと思った。もう少し踏み込んでいえば、メディアはブッシュのレームダック化や共和党のまとまりのなさを責めていたが、オバマが抱えた民主党の亀裂も大きいではないかと。
 法案は上院を経てまた下院に回される。この間の手間取りにユダヤ教の新年をはさみ、金融界のユダヤ人は動けなかった。バーナンキものんびり休んだかな。
 この問題、下院でまた否決される可能性がないわけでもないし、そこはもうわけがわからないという感じはする。まあ、わからないな。軍靴の音にならなければいいと思うが。
 先のサミュエルソンのコラムを読み直すと、いつものサミュエルソンらしく楽観的なトーンもある。実際の損失はポールソンがいうほどじゃなくて、その三分の一くらいで収まるかもしれないと。案外そういう結末になるのかもしれない。
 なんか過剰に深刻に構えてしまうのは、今回の事態で、ポールソンは早々にバズカー砲を用意したこともあると思う。スゲー、使わないつもりだからバズカー砲だと思っていた。が、使った。なので、びっくりした面もある。
 これは考えようによっては、ゴールドマン・サックス出のポールソンだっから算段しえたことで、そこには金融界の論理と、たぶんまだ歴史に明るみに出されない事実のようなものがあるのだろう。それでも、どちらかといえば、金融界の論理だったかもしれないとは思う。ああいう感覚はわからないし、サミュエルソンも率直に今回の対応に経験的には理解しづらい印象をにじませている。
 とはいえ、問題はすでに実体経済にシフトしつつある。サミュエルソンの連発のコラム”Bankrupt Economics”(参照)も29日の時点で雇用の悪化を想定していた。
 話はずっこけるのだが、日本の愚かな戦争は軍部の暴発を止めることができなかったからだという話もあるが、あのころの日本にも議会があり、議会が軍の予算を承認しなければ、軍を止めることはできた。財布の紐を締めるというのは議会の最後の力になる。今回の米下院にはあきれたが。

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