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2008.09.13

[書評]NHKテレビ英語が伝わる!100のツボ (西蔭浩子)

 「NHKテレビ英語が伝わる!100のツボ」(参照)はNHKで放映している語学番組。レベルはそれほど高くない。今月に入ってたまたま一回見ることがあり、そのときはふーんと思った。気になって数回見て、これはとても面白いんじゃないかと思いテキストを買った。テキストはある意味でよくある英語のテキストとも言えるのだが、テキストを見てこの番組が今月で終わることを知った。4月からやっていて6か月間経った今月で終わり、再放送はなさそうだ。100のツボということで100回で終わってしまうわけか。それは残念と思いバックナンバーも注文し、こういうの好きな人もいるかもしれないなと、あわててブログのネタにという次第。

cover
テレビ英語が伝わる!
100のツボ
 なにが面白いのか。普通に語学の番組として面白いというのはある。いろいろ口語的な表現も面白い。「おせっかいはよしてよ!」は"It's none of your business."あたりは普通に学校でも学ぶし、昔から使われている言い回しだが、「さすがピエール!」が"Just like Pierre!"あたりが普通の口語の言い回しなのは知らなかった。「彼女に断られたらどうするの!」は"What if she says,“No”?"というのもへぇと思った。What should I doを私は省略しないだろうなというか、省略していいのか、など。ちなみにこうしたキモになる表現はちょっとぐぐったら”おさらいフレーズ バックナンバー”(参照)というページにまとまっていた。
 そうした表現もだけど、若い人の会話が生き生きした感じがいい。米人だけの会話だと地方や年代でかなり複雑になったりテレビの言い回しとかなんだかわからない表現が多いのだけど、この番組では、米人女性の他にフランス人男性、台湾人女性、バングラディシュ男性と、昨今流行の国際的英語になっているのでそのあたりはプレーンな感じがする。そしてこのみなさんのキャラが立っているのが面白い(参照)。
 キャラを生かすのがドラマ仕立てのシチュエーション。日の出ハウスという純和風の家のちゃぶ台がある居間のシーンが多い。「もちつもたれつ」という書が泣ける。この設定はべたに「メゾン一刻」の影響ではないかなと思うが、あるいはそれらもすべて昭和30年代的な日本のパロディなのかもしれない。
 ピカイチのキャラはPierre役のRichard Gazzo(リチャード・ガッソ)だろう。フランス人のオタクという設定。ざっと見ているかぎり、こ、これは純正なオタクじゃないオーラが出ているのだけど、演技がいい。経歴はこう。

フランス・パリ出身。4歳から13歳までプロヴァンスで育つ。ソルボンヌ大学美術映画学科で監督と芝居を学ぶと共にモデルの仕事を始める。2002年に来日、モデルや俳優として活躍中。

 ということで、がッソのホームページがこれ”Richard Gazzo Official Homepage”(参照)。え、別人だろ?と思ったが、当人だよな、これ。プロフィールを見ると、1979年生まれで、父親はスペイン系イタリア人、母親はイギリス系ベルギー人とのこと。ほぉ。CMなどにもいろいろ出ているということで有名なのか。この手の男性に萌えの日本女性は多いと思うのだが、100のツボのピエールの落差がまた萌えのツボかも。
 萌えでいうと、私は全然知らなかったのだが、優木まおみがよい。英語学習者として出てくるのだが、普通に大卒程度の英語は身に付いているようなので、どういうポジションのアイドルなんだろうか。エミージョことはしのえみ的なポジション? 年も微妙かと、この手の情報に強いウィキペディアを引いたら案の定ある(参照)。情報に「要出典」とあるのでほんとかなとは思うが、ほんとだとするとへぇな感じ。

1980年3月2日、佐賀県佐賀市に生まれる。ロシア・中国のハーフの母と中国・日本のハーフの父を持つ。[要出典]1998年佐賀県立致遠館高等学校、2003年東京学芸大学卒。同校在学中にハワイ大学に半年間の語学留学経験もある。

 お、これはワタシ的にツボだな。

第四級アマチュア無線技士と小学校教員免許の資格を持つ。アマチュア無線技士の資格は小学生の時に家族に無理やり取らされ、おつかいに行くときは無線機を持たされた。コールサインはJM6CRT。

 年は28歳とのこと。最近自分が年食いすぎて40歳以下の女性の年がわからなくなっているで、このあたりもへぇと思った。
 英語の指導と脚本は西蔭浩子による。おばちゃんふうに見えるし、演技はぎこちないのだが、どことなくセクシーな感じが漏れてるのもなんかツボという感じだ。お年はわからない。今回の番組には英語学習の理論的な背景もありそうだが、そのあたりもよくわからない。
 が、なにかと考えさせられるものがあった。そういえば、私は小学六年生のとき当時まだ筆記だった第四級アマチュア無線技士の免許を取ったのだが、父の薦めで田崎英会話のNHKテレビを見ていた。田崎清忠先生の英語指導は当時はなかなか革新的だった。田崎先生のアイデアではなかったのかもしれないが番組は早野凡平を起用していて面白かった。早野凡平の享年を見ると50歳。田崎先生はお元気かなとググってみるにあまり情報はない……と思ったら16日の講演の情報があった(参照)。お元気なご様子。

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2008.09.12

ファニーメイとフレディマックと中国の物語

 米国政府系住宅金融、連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)への公的資金投入が決まったことについて、経済音痴の無名ブロガーがちょっとメモを書いてみるといった趣向。読まれるかたいたら、ちょっと陰謀論臭くなるかもしれないので、その点はご注意あれ。
 私はFF兄妹救済は実際にはないんじゃないかと思っていた。日本の新聞は早々に日本の失敗から学んで公的資金投入せよと言っているのも、日本の失敗をせせら笑った米国への意趣返しではないか、と。
 G7後のころは産経記事”「公的資金注入は非現実的」 ポールソン米財務長官”(参照)のような話を私はけっこう真に受けていた。


ポールソン米財務長官は11日夜、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後に記者会見し、低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融危機への処方箋をめぐり、公的資金の注入や大規模な政府介入は「現実的な計画として検討されているとは思わない」との認識を示し、米国として採用する考えがないことを強調した。
 ポールソン長官はまず、米経済について「長期的には堅調だが、住宅・金融市場の下振れリスクは依然残されている」との認識を示した。会議では、連邦住宅局(FHA)による融資保証の拡大など、政府の住宅ローン対策を各国に説明し、そのなかで「プログラムには公的資金や大規模な政府介入は含まれていない。有益よりも害のほうが多い」との立場を表明した。

 三十六計瞞天過海(参照)というか、ポールソンは北京オリンピック中も同じ念仏を繰り返していた。時事”公的資金注入を改めて否定=政府系住宅金融問題で - 米財務長官”(参照)より。

休暇のため中国・北京を訪問中のポールソン米財務長官は10日放映されたNBCテレビのインタビューで、米政府系住宅金融会社の連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)と連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)の赤字決算について、住宅市場の調整の大きさを考えると「驚くほどではない」と述べるとともに、「(公的)資金の投入は計画していない」と改めて強調した。収録は9日行われた。

 今にしてみると「休暇のため」が絶妙な意味があったわけだが。
 北京オリンピックも大過なく終わり、黙示録のラッパが黄土に鳴り響くかと思ったら米国からか。声東撃西。さすが紫禁城、カラフ王子の歌声を聞いて、ポールソンは、その長い修羅場のキャリアで初めて眠られぬ日々を過ごすことになった。9日のテレグラフ”Fannie Mae and Freddie Mac: After the rescue, Paulson's real work begins”(参照)より。

In the days leading up to Sunday's unprecedented rescue of Fannie Mae and Freddie Mac, Hank Paulson couldn't sleep.

"This is the first time in my career I had trouble sleeping," admitted the US Treasury secretary, who led the swarm of government agencies and regulators who surrounded the two ailing mortgage agencies and delivered their poison - in the form of an all-consuming nationalisation unlike any seen in financial history.


 テレグラフの論調は好意的ともいえるが、そうでもない意見もあるブルームバーグ寄稿コラム”ポールソン殿、「眠れぬ夜」に同情できません-Mギルバート”(参照参照)より。

 同長官の罪はほかにも数多い。まず、米住宅公社のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が会計規則を都合良く使って資本不足を糊塗(こと)していたことを、ウォール街のお仲間のモルガン・スタンレーが確認してくれるまで認めなかった。そんなことは、当局者も知っていたか少なくとも疑っていたに違いないし、それが当局の仕事だろう。
 何よりの罪は7月に、他人(納税者)のカネを使うことなく危機を乗り切れると議会を丸め込んだことだ。同月の「バズーカ砲」理論は、伝説的魔術師、ハリー・フーディーニも顔負けの奇術だった。ポールソン長官は2大住宅公社に無制限に投資する権限を議会に求めたとき、「水鉄砲をポケットに入れていれば使わなければならなくなる公算が大きいが、バズーカ砲ならば取り出さずに済む場合が多い」と説明した。

 好意的に見れば、ポールソンはばっくれでやっていける絵を描いていただろうし、その絵のリスクの対処もしていた。というか、そこまでだったら、快便・快眠だったのではないだろうか。
 コラムニストMギルバートはその意図をこう見ているが。

 多分、ポールソン長官は両社株を空売りしている投機筋をけん制しようとしたのだろう。しかし、根本的な住宅危機を解決する新たな取り組みなしに投資家が両社株について見方を変えるはずもない。むしろ、財務省が両社を救済する権限を確保したことで、両社株が間もなく紙くず同然になる公算は大いに高まったかもしれない。
 あるいは、長官は米政府の「暗黙の保証」がかつてないほど「明示的」になったのだから、債券投資家が両社に、より低金利で資金を出せば良いと考えたのかもしれない。しかし、実際にバズーカ砲を発射しなければ明示的に保証したことにはならないだろう。発射する必要がないと言うのは無理

 違うんじゃないだろうか。いや違うというのも違うのだが。
 北京オリンピックは瞞天過海だったのか。このあたりちょっときな臭い感じになるだが中央日報コラム、9日”【噴水台】天国と地獄”(参照)が興味深い。まず前提。

 米財務省は通貨危機に陥った外国に対しては露骨に押さえつける。そうでありながらも自国の金融危機は手を出さないのが常だ。道徳的弛緩を問う米議会の鋭い追及を恐れているからだ。それでついた別名が「ヤヌス」。その米財務省が一昨日、ファニーメイとフレディマックに2000億ドルの公的資金を注ぎ込むことにした。国有化の措置が始まったのだ。「非常に規模が大きく、このまま破産すれば金融システムの崩壊を引き起こす恐れがある」。ポールソン財務長官は世界金融市場の混乱を意識した不可避な選択として説明した。

 だがこれをコラムは否定する。

 しかし事実は違う。もともと米財務省がこだわった戦略は現状維持だった。こっそりと非常金を充てながら両社の正常化を待った。こうした努力に中国が決定打を飛ばした。中国銀行が両社の債券を売却し、手を引き始めたのだ。8月に中国銀行が売却した債券だけでも4兆ウォンを超える。このニュースが伝えられると、バフェットは「ゲームは終わった」と語った。米財務省も海外資金の脱出を防ぐには他に方法がなかった。

 この先が快調すぎて洒落っぽい。

 天国と地獄が入れ替わるのにかかった時間はわずか5年。2003年、中国では新型肺炎SARSが広がり、海外金脈が枯渇した。慌てた中国共産党は米財務省の顔色をうかがった末、改革カードを取り出した。憲法を改めて私有財産を保障した。国有資産を売却し、勇敢に金融市場も開放した。今は逆だ。一人で世界金融を料理していた米国があわれな身分だ。中国の恐るべき威力の前に周囲の視線をうかがっているところだ。「今では派生金融商品こそが大量破壊兵器」というバフェットの言葉を実感する。世界金融は断崖上の戦地と変わらない。

 この面白い過ぎるお話がどのくらい信憑性があるのか、洒落を楽しむネタなのか。
 前兆はあった。7月24日付けレコードチャイナ記事”中国銀行頭取「米住宅公社債券はコントロール可能」”(参照)より。

24日付中国証券報によると、中国の4大商業銀行の一つである中国銀行の李礼輝頭取は23日の会見で、保有する米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の発行債について「リスクは完全にコントロール可能だ」と述べた。同行が同債券についてコメントするのは初めて。ただ具体額は言及しなかった。

 これがけっこう重要だと思うが。がというのはさて、実際のところどのくらい中国は兄妹に入れ込んでいたか?

建設銀行でも広報担当が23日、同行のファニーメイとフレディマックの債券保有額が70億米ドルに上るとする一部報道は、根拠がなく事実と反するものだとコメントしている。

米住宅公社債券を巡っては、中国の大手6銀行の保有額が約300億米ドルに上るとの報道がある。なかでも中国銀行の保有債券は総資産の2.6%を占める200億米ドルに達するとされている。


 瞞天過海の売り飛ばしはあったのか?というネタが活きるのは、その実態がどのくらあるのかによる。
 9日のサーチナ記事”サブプライム直撃の住宅金融 中国が債券大量保有”(参照)ではこう。

米国政府が政府系住宅金融の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に対して公的資金投入を含む救済策を発表したことに絡み、ことし6月末現在で中国系銀行が2社の債券を計240億米ドル(約2兆5785億円)保有していることが分かった。

 微妙という感じだ。
 というか、中国系銀行に限らない中国からのカネが、7月以降、単に損失をびびってパニック売りに出たんじゃないか。
 とすると、ポールソンの「休暇」もそのあたりが目的だっただろうし、その後は統制が取れない中国に眠れぬ日がやって来たという感じもする。
 というか、この話、つまりはあの話題の変奏というか序奏なんじゃないか。あの話題というのは「極東ブログ: ポールソン&ウー、国際熟年男女デュエット、熱唱して引退」(参照)だ。読み返すと、アルファブロガーぐっちーさんがなかなか香ばしい感じがするが、それでもこの話が兄妹あたりから炎上するとはなんだが、三十六計打草驚蛇か。というので、ポールソン北京の休暇の話に戻ると、テレグラフのコラム”China threatens to trigger US dollar crash”(参照)がきつかった。概要はこう。

The Chinese government has begun a concerted campaign of economic threats against the United States, hinting that it may liquidate its vast holding of US Treasury bonds if Washington imposes trade sanctions to force a yuan revaluation.

 中国がドルを使って国策をやるということだ。

Two Chinese officials at leading Communist Party bodies have given interviews in recent days warning, for the first time, that Beijing may use its $1,330bn (£658bn) of foreign reserves as a political weapon to counter pressure from the US Congress. Shifts in Chinese policy are often announced through key think tanks and academies.

Described as China's "nuclear option" in the state media, such action could trigger a dollar crash at a time when the US currency is breaking down through historic support levels.


 とはいえそんなことをすれば米中共倒れではないか、ついでに日本も。なので。

Xia Bin, finance chief at China's Development Research Centre (which has cabinet rank), kicked off what appears to be government policy, with a comment last week that Beijing's foreign reserves should be used as a "bargaining chip" in talks with the US.

"Of course, China doesn't want any undesirable phenomenon in the global financial order," he said.


 マジに受け止めると、脅し程度でということだろう。が、中国を見ていると、彼らは内部の権力闘争のために外の世界にお構いなしみたいなことをやりかねないが。
 このあたりの話が、そう妄想とも言えないのは、フィナンシャルタイムズ”China's two trillion dollar question”(参照)でも指摘しているが、巨大なドルを何に使ったのかよくわからないことだ。

How do you spend $1,810bn? That is the question facing China's State Administration of Foreign Exchange. The world's largest investment fund, it has grown by $400bn this year alone. Having reserves far in excess of what it needed for insurance and currency interventions, it rightly decided to diversify and set up the China Investment Corporation, the country's $200bn sovereign wealth fund. As the Financial Times reveals today, however, Safe itself has been investing abroad. Its foreign equity positions are greater than those of CIC. This raises questions for the developed world and China.

 話がちょっと粗くなってきたが、要するに。

  1. 兄妹救済は中国とは関係ないよ。
  2. 中国に関係ありだけど、中国政府は米国になんとか協力したかったんだよ。
  3. 中国に関係ありで、パニックが始まったんだよ。

 さてどの筋書きか。
 3番目じゃないかな。そうかどうかは、ここから中国がどう米国を支える行動に出るかということからわかるはずだ。
 この図柄のなかで日本はというと、日本はFF兄妹にはあまり関わってないっぽいから、ドル資金防衛の問題かもしれない。

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2008.09.10

三笠フーズの事故米、雑感

 大阪市のコメ卸売加工「三笠フーズ」による事故米の偽装転売問題について、問題は問題なのだがここまで世間の話題になるとは思わなかった。仔細を追ってないのだけど、ここまで世間の話題になるようなら、世間のログのブログとして無名のブロガーの印象なども記しておいてもいいかもしれない。というくらいのメモ書き。
 この問題だが、それほど話題にはならないんじゃないかと当初思っていたのは、毒性という点ではそれほど問題ではないことを農水省がアナウンスしていたからだ。5日付け朝日新聞記事”工業用の米、食用と偽り転売 農薬・カビ含有”(参照)より。


 事故米は菓子や焼酎の原料として加工されたとみられるが、農水省は、アフラトキシンについて「三笠フーズがカビの塊を取り除き、米粒を洗浄するなどして出荷しており、健康被害の心配はない」、メタミドホスについても「検出されたのは残留基準(0.01ppm)の5倍の量で、この程度なら体重50キロの大人が1日600グラム食べ続けても国際基準の許容摂取量を超えることはない」としている。

 アナウンスの効果なのか、7日付け読売新聞社説”汚染米転売 流通経路を総点検せよ”(参照)では、少しピントがずれているように思えた。

 大阪市のコメ卸売加工業者「三笠フーズ」が、有害な農薬やカビが残留している工業用米を食用と偽って転売していたことが明るみに出た。
 農薬は、中国製冷凍ギョーザ事件でも問題になった有機リン系の「メタミドホス」だ。少なくとも約300トンの汚染米が焼酎などに加工され、すでに流通している可能性が高いという。
 食の安全への信頼を裏切る行為だ。農林水産省は、健康被害の有無にかかわらず、どこに、どれだけ転売されたのか早急に解明し、回収を急がねばならない。
 汚染米は、世界貿易機関(WTO)協定に基づき、国が中国やベトナムから輸入したコメの一部だ。基準を超える農薬が検出されたり、カビが生えたりしたため、のりなどの工業用に使うという条件で農水省が民間に売却した。
 三笠フーズはこのコメを2003年度から計1779トン仕入れ、一部を焼酎メーカーや米菓メーカーなどに転売したという。

 読売新聞社説にはこれ以降の部分にもアフラトキシンの名前は出てこない。「カビが生えた」というのと「カビ毒」とは安全の次元が違うのだが、社説の執筆者はアフラトキシンの知識が十分ではないか、あるいはあまり世間をヒステリックにしないという配慮だったか。どっちかなと思った。メタミドホスに着目しているようなので前者かなという印象はあった。さらに。

 「転売前に洗浄、検査したので食用にしても問題ない」という会社の説明にもあきれる。

 と、「あきれる」としているが、なぜ「あきれる」のかは私にはよくわからなかった。むしろ私は別のことを思った。それは後で触れる。
 同日の毎日新聞社説”汚染米転売 業者も農水省も無責任だ”(参照)は読売に比べて煽りぎみではあったが、こちらは単純に知識面で稚拙な印象を受けた。

 この米は中国製の「毒ギョーザ事件」で検出された殺虫剤「メタミドホス」や発がん性の強いカビ「アフラトキシンB1」に汚染されていた。それだけでおぞましさが募る。
 三笠フーズ側は「外部での検査やカビの除去で安全を確認した」と弁明している。だが、とても消費者が安心できる説明にはなっていない。

 稚拙というのは、「それだけでおぞましさが募る」や「とても消費者が安心できる説明にはなっていない」というあたりだ。たぶん、それほどおぞましい問題でもないし、不安に駆られるような問題ではないだろうに。
 同日の産経新聞社説”汚染米の転売 農水は事後監視の徹底を”(参照)はそのあたりについての言及があって好ましい。

 転売された汚染米については、事前に洗浄やカビの除去作業が行われていたとして、農水省は「ただちに健康被害につながる恐れはない」と消費者に冷静な対応を呼びかけている。

 アフラトキシンについて日本人もきちんとした知識を持つべきだが、当初の農水省のアナウンスのように、今回の事件ではそれほど危険性を煽るべきではないだろう。
 むしろ以前「あるある大辞典」でピーナッツの甘皮にはレスベラトロールが含まれているから積極的に食べようという番組があって、私はのけぞったことがあった。国内に流通しているピーナッツは安全だとはいえ、それでもアフラトキシンの危険が発生しそうな部位を積極的に食わせるというのはどんだけと思ったものだった。
 また2005年12月米国サウスカロライナ州ガストンの工場で製造されたドッグフードとキャットフードにアフラトキシンが検出され、全米でペットを死なせる事件があったが、このときもアフラトキシンについてはそれほど国内の話題にはならなかった。幸い同工場の製品は日本には輸入されていないとのことだが(参照)、このあたりから危険性は迫っているなと思ったものだった。
 今回の事故米のメタミドホスについてだが、農水省のアナウンスに加え、次の指摘が興味深かった。朝日新聞記事”事故米1年保管後に出荷 毒性薄める目的、計画的な転用”(参照)より。

 大阪市の米販売会社「三笠フーズ」が工業用に限定された事故米を「食用」に転用していた問題で、同社が有機リン系の農薬成分・メタミドホスが検出された事故米について、約1年~1年半にわたって倉庫で保管した後に出荷していたことが8日、わかった。農薬成分が分解するのを待ち、毒性を薄める目的だったとみられる。


 本山直樹・東京農業大客員教授(農薬毒性学)は、「メタミドホスは時間がたてば分解され、毒素が弱まる性質をもつ。ルール違反で売ったのは問題だが、1年も置けば人体への影響はまったくないだろう」と話している。

 おそらく三笠フーズは、メタミドホスの問題を熟知していて、だからこそ安全性の対処を行っていたのではないだろうか。
 関連して気になるのは、先ほどの朝日新聞記事”工業用の米、食用と偽り転売 農薬・カビ含有”に言及があるのだが、ポジティブリストの関連だ。

 メタミドホスが検出されたのは、もち米で、ウルグアイ・ラウンド合意に基づき03年度に政府が中国から輸入した。その後、導入された残留農薬を厳しく規制する「ポジティブリスト制度」によるサンプル検査で、基準値を超える量が検出された。

 穿った読み方になるが、メタミドホスは2003年度以前は実際にはかなりの部分が野放しだったのではないか。
 以上を薄目で眺めてみると、三笠フーズは、明白に違法であるとは知りつつ、メタミドホスもアフラトキシンの問題もわかった上でそれなりの食の安全性の対処をしていたように見える。故意に毒を混入するということでもないし、利益のためには毒に目をつぶったというのとも多少違うようにも見える。
 話が少し複雑になるが、私は今回の事件で、なぜ米のアフラトキシンかなとは奇妙に思った。タイ米を輸入せざるを得ないからその混入はありうるとはわかるのだが。というあたりで、三笠フーズが、アフラトキシン米をどう流通させたかと簡単にニュースから追ってみた。
 朝日新聞記事”工業用の米、食用と偽り転売 農薬・カビ含有”では次のように言及されている。

 三笠フーズは、アフラトキシンが検出され事故米となったベトナム、米国、中国産の米計約9トンも仕入れていた。このうち、少なくとも鹿児島、熊本両県の焼酎会社3社にベトナム産が計3トン弱、福岡県の肥料会社には米国産が390キロ売られていた。

 私が気になったのはアフラトキシンが検出された事故米は焼酎の原料か肥料になったのか、というあたりだった。同記事には解説の図があるのだが、アフラトキシンとメタミドホスがごっちゃになって奇妙なほどわかりづらい。
 読売新聞記事”汚染米転売は10年前から、三笠フーズ顧問認める”(参照)にはもう少し詳しい解説図がある(参照)。これを見ると、焼酎と肥料以外に、米穀店(大阪)から仲介業者(鹿児島)を経て仲介業者(大阪)に流れたルートが不明になっている。これは何に使ったのだろうか?
 というのは、「アフラトキシンに汚染されたうるち米9トン(4万円)」の大半は焼酎の原料と肥料に流れており、肥料もだし、これは焼酎の製造過程から見みても、毒性はそれほどは問題にならないだろう。というか焼酎に長米を使っているのかとしみじみ私は思ったが。いずれにせよその不明ルートは問題といえば問題ではある。
 うるち米の事故米については先の朝日新聞記事”事故米1年保管後に出荷 毒性薄める目的、計画的な転用”の次の部分にも関連している。

 同社が購入した事故米は、もち米のほか、劣化が早いとされる「うるち米」もあったが、同社関係者は「うるち米はカビを除去する手間と人件費などがかかるが、もち米は農薬成分が自然に消滅するのを待つだけだった。費用は、サンプル検査代や袋代くらいで、うるち米よりコストは安かった」などと話した。

 少し話の向きを変えて、今回の不正だが、読売新聞記事”汚染米転売は10年前から、三笠フーズ顧問認める”にもあるように、10年前からやっていたことのようだ。

 米穀加工販売会社「三笠フーズ」(本社・大阪市北区)が、発がん性のあるカビ毒や基準値を超える残留農薬が検出された工業用の「事故米」を食用と偽って転売していた問題で、同社の非常勤顧問(76)が6日、福岡市内で読売新聞の取材に応じ、約10年前、冬木三男社長からカビの生えたコメの販売について相談されて不正転売を勧め、自ら主導して始めたことを認めた。
 そのうえで「事故米の転売は他の複数の業者も行っていた」と話した。業界で不正が横行していた証言が出たことで、農林水産省のチェック体制のあり方も問われそうだ。
 この顧問は、冬木社長が同日の記者会見で、不正転売を提案した一人と指摘していた。不正転売が始まった時期について、冬木社長は「5~6年前から」としており、顧問の説明と食い違っている。

 業界的な噂もあったようだ。読売新聞記事”汚染米、全国から高値で買いあさり…三笠フーズ”(参照)より。

 「事故米がある所なら全国どこにでも顔を出す」「なぜ普通の米卸業者がわざわざ買い占めるのか」。業界では突出ぶりを不審がる声が以前から上がっていたという。
 他の16業者は、自社で工業用のりや飼料などを製造する業者がほとんどで、食用米を扱う三笠フーズは異色の存在。このため、「何年も前から食用転売がうわさされていた」と、中部地方のある業者は証言する。
 事故米は販売時期や量が予想できないため、各業者は「まとまった量が売り出されれば、たまに買う程度。運送費がかかるので遠方であれば買いにくい」と口をそろえる。
 少量の時は、買い手がつかず、各農政事務所の職員が「買ってほしい」と業者に電話をかけることも。そんな時、三笠フーズは「関東でも九州でも取りに来てくれる、ありがたい存在。各事務所とも事故米が出ると必ず声をかけていたようだ」と、農水省担当者は明かす。
 事故米を扱うある業者は「うわさになっているのに、農水省が不正に気付かなかったというのは不自然」と首をかしげ、こう推測する。「三笠フーズと持ちつ持たれつの関係だったのでは」

 こうした読みは穿ち過ぎなのかもしれないが、今までわからなかったというのも不自然だ。農水省としても、最低でも三笠フーズへの信頼感のようなものはあったのではないか。というか、農水省も三笠フーズもこれをそれほど食の安全性の問題とは認識してなかったのではないか。実際、この事件に限定すればそれほど安全性という点で被害は出そうになさそうだ。
 さて。私は、ニュースの報道をほとんどテレビで見ない。というか映像では見ないというべきか。音声だけ聞くことが多い。それでも、この事件で三笠フーズの社長冬木三男社長(73)の会見をたまたま見た。人生を擦り切らしたような老人が違法性をあっさりと認めていた。その後の経緯を見ていると会社も畳むようだ。ごく印象に過ぎないのだが、冬木社長はこの一山で会社も人生も終わりにしようと覚悟していたのではないか。この事件にはもうちょっと深い部分がありそうにも思えた。

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2008.09.08

バグダッドでも話題のメロドラマ「ヌーア(Noor)」

 「そういえば今、イラクはどうなっているのか?」に答えるのは簡単ではない。平和な状態は回復されたのかといえば、概ねそうだとも言えるが、テロは継続もしている。ので、どこに平和があるのか、とも言える。こんな戦争を引き起こした米軍が悪いのだという声もいろいろ聞かれるが、現実問題としてはその米軍で小康を持っているのも現実の一面だろう。まあ、そういったむずかしい話をこのエントリでしたいわけではない。

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 今イラクで一番の話題は何か、といえば、ソープオペラ(メロドラマ)の「ヌーア(Noor)」だろう。イラク全土でというわけにはいかないかもしれない。バグダッドなどが中心だろうか。もっとも私自身がそのようすを見ているわけではなく、ラジオやネットで聞いた話を総合して、そう認識しているだけだ。ということで、ソープオペラの「ヌーア(Noor)」について、ある意味でこれはとても興味深い文化的かつ社会的現象でもあるので、エントリにメモしておこう。
 ざっと見たところあまり日本語での情報はあまりないようだが、「J-WAVE GOOD MORNING TOKYO」の7月28日エントリ”ロサンゼルス・オリンピックが開幕した日”(参照)が言及していた。

【World Tips from Saudi Arabia】
日本で大旋風を巻き起こした、韓国のドラマ「冬のソナタ」。
多くの日本人女性がヨン様ゆかりの地を一目みようと韓国へ駆けつけましたがどうも似たような現象がアラブ諸国で起きているようなんです。

アラブ諸国の女性たちの間で人気急上昇中なのはトルコのテレビシリーズ「Noor(ヌーア)」。
このドラマの中で、妻ヌーアのファッションデザイナーとしてのキャリアを支える理解ある夫、ムハンナド役を演じる金髪に青い目のトルコ人スター、キバンク・タリトゥの甘いマスクにアラブ人女性たちの目は釘付けの様子。自国トルコで放映された時にはさほどのヒットは飛ばさなかったようですが、お近くのサウジアラビアで放映が始まると、女性たちのハートをわしづかみ。なんと、サウジアラビアからトルコへの観光客が2倍以上に増えたそう

また、伝統的価値観にしばられた結婚生活を送ることが多いサウジアラビア人女性たちの間ではこのドラマがきっかけで夫に離婚を切り出すケースが増えているんだとか。


 ドラマの概要としてはそんな感じ。「アラブ諸国の」とあるが、これがイラクにも及んでいる。
 アラビア語版と英語版のウィキペディアにはNoorで簡単な解説項目がある(参照)。

Noor is the Arabic title of the Turkish soap opera Gümüş, launched in 2008, dubbed in Syrian Arabic. The title of the show means 'light' in English. The original Turkish-language version is called Gümüş and was broadcasted in Turkey from 2005 to 2007.

 出だしからちょっと記述の混乱があるようだが、タイトルはトルコ語"Gümüş"ということで、これで別途ウィキペディアの項目もある(参照)。「Noor(ヌーア)」はシリア・アラビア語の訳で主人公の名前。日本語なら「ヒカル」だろうか。キティちゃん好きのヒカルは……といった感じか。元もとはトルコの番組だがシリア・アラビア語で吹き替えになり、衛星放送でアラブ圏一帯に広まっている。特にイラクの場合、フセイン政権下では衛星放送が禁止されていたが、戦後解禁となりその広がりを得たようだ。
 旦那の名前ムハンナド(Mohannad)というが語感がよくわからない。Mohammadだと姓になるのだろうか。ウィキペディアによれば、このソープオペラのおかげで、ヌーアとムハンナドという名前の赤ちゃんが増えたとのこと。
 当然と言うべきか、アラブ諸国に問題も引き起こしている。

The television show about Noor and her romantic, idealized husband Mohannad is both controversial and wildly popular, especially with teenage girls and young women. The most conservative of Muslim religionists argue the show is un-Islamic, even though some scenes are toned down for consumption in Arab countries.

 イケメン男性に夢中になる若い女性はどこの国でも同じようなものだろうが、イスラム教国では問題にもなるだろうというか、イラクでも問題になっているようだ。という以前に、チャドもベールもなくすっぴんの女性が出てくるわけだから、問題にならないわけもない。
 以上を見ている限りでは文化現象といってもサブカルチャー的にも見えないこともないし、アラブ圏の問題にクローズしているようでもあるのだが、が、というのは、この話題、8月29日のフィナンシャルタイムズにも注目すべきコラム”Viewers fall for soap’s Turkish delight”(参照)として掲載されていた。出だしの紹介はごく普通。

Millions of viewers will be glued to their television screens on Saturday night for the double episode finale of a soap opera that promises to be the highest rated drama on Arab television.

Its actors speak Syrian Arabic, and look like Arabs from the Levant, but Noor is a Turkish import, part of a genre of dubbed series that has become all the rage in many parts of the Middle East this year.


 そしてこれがアラブ圏に問題を起こしているという指摘もある。

More significantly, the craze has been seen as a socio-cultural phenomenon, exposing the frustrations of Arabs living in conservative societies, especially women, many of whom are desperate for more openness, and romance.

 問題については、ウィキペディアより記載が深い。

A passionate romance that depicts the hero as a doting husband to his professional wife, albeit through an arranged marriage, Noor mixes family values that are familiar to the Arab world with taboos, including sex before marriage and abortion.

 つまり、ヌーアは職業婦人であり、親たちが決めた結婚を排して自由に恋愛をする。しかも、ドラマでは婚前交渉や中絶も出てくる、と、書いて用語が昭和の香りだな。
 もっともアラブ圏にこれまでソープオペラがなかったわけではない。が、それまではメキシコのドラマといった別の文化圏のドラマという枠組みがあった。

Mazen Hayek, director of marketing at MBC group, says Turkish series are the first to be dubbed into colloquial Syrian, contributing to their success and making them more accessible than soaps from other origins, such as the Mexican dramas popular a few years ago but dubbed into classical Arabic.

 ヌーアが話題になったのは、ソープオペラがアラブの文化と言語によって文脈化されたためだ。
 元もとトルコはアラブ諸国では世俗化が先んじているし、イラクもバグダッド地域は世俗化が進む地域でもあった。トルコは大衆に根付いた形のイスラム原理主義的な傾向を見せつつ、こうしたソープオペラを産出する。そしてそれらをアラブ圏の女性たちが消費していく。こういう動向は結局のところ留めることはできないのだろう。

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