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2008.07.24

[書評]イーゲル号航海記 1 魚人の神官(斉藤洋)

 斉藤洋の西遊記シリーズ「西遊記7 竜の巻」(参照)の結末がちょっと、というかけっこう心に引っかかっていて、次の巻はどういう展開になるのだろうwktk。

cover
イーゲル号航海記1
魚人の神官
斉藤洋
コジマ ケン
 そろそろ次の巻が出るんじゃないのと検索したら、「イーゲル号航海記 1 魚人の神官(斉藤洋)」(参照)をめっけた。昨年11月に出ていたのか。知らなかったな。というか、これが出るってことは、西遊記のほうが終わるのかなとかも思った。
 偕成社の紹介(参照)を見ると。

 第一次世界大戦と第二次世界大戦のあいだの、平和とはいえ、ヨーロッパが怪しくうごめいていた時代、そんな時代を舞台にした冒険物語です!
 科学技術がガガガーンと急速に発達しているさなか、時代の技術から見ればさらに何歩も先をゆく潜水艇に、たまたま乗りこんでしまった日系ドイツ人の少年、カール・キリシマ・キルシュが主人公です。

 うぁ、それって俺のめっちゃツボじゃないですか。ぽちっと。ということで読んだ。
 面白かったか。面白かった。文章はなんかもうさすがの美文。そして話の展開は、ある意味しっとりというか、カール・キリシマ・キルシュの心の動きが、密に織った布の手触りのようによくわかるし、不思議な話の展開も、いわゆるこの手のファンタジーにありがちな展開とは違って、ポストモダン的でポストコロニアル的な展開。まあ、現代の物語だからねという感じで、これはこれでいいか。このシリーズも読むかなという感じでいた。

天才科学者ローゼンベルク博士のつくった最新式の潜水艦。そして、奇妙きてれつな5人の乗組員。その一行が、北海で巨大渦にのみこまれ、世にも奇妙な場所にたどりつく。波瀾万丈のストーリーのなかで、少年の成長を描くSF海洋冒険小説。

 で、読後少しして感想が変わってくる。なんつうのか、静かな不思議な感動がこみ上げてくるというのも違う、なんだろかね、潮が満ちてくるみたいに、静かなそれでいてしっかりした感動の核みたいなものが出てくる。いやはやとても不思議な感じだ。
 なぜなのか。心を探ると、やはり、時代背景が、読書時はさりげなさすぎるなと思っていたのだが、それなりにきっちり届く。大鳥の描写の比喩や、ハンス・ハンスのちょっとした言葉使いとか。当たり前なんだけど、ドイツとフランスは戦争していたし、この時代のあとも戦争をした。そしてでも彼らは和解している。そのなんか心情の核の部分のようなものが淡く色づけられている。
 と同時に、これはたぶん長編をかなり意識して書いているのだろうなと思った。キャラの深みは使い切ってないし、日系という伏線もありそうだし、カールの母の描写もちょっと意外といえば意外というか、とても現代的な意味をこれから持つようになるのかもしれない。というか、この本、「対象年齢:小学上級から」ということで、私などはその父親の世代であり、カールの母には私の同世代に近い女性のイメージがたぶん寄せられていくのではないか。
 偕成社のサイトにある著者の話では。

 あ、そうそう。ひょっとするとみなさまのなかには、
〈新シリーズなんていったって、斉藤洋のは次が出るまで、長いからなあ。白狐魔記シリーズなんて、第一巻と第二巻のあいだは二年半近くあいていたし……。〉
なんて思っていらっしゃる方がおられるかもしれません。
 でも、だいじょうぶ! ご安心ください。第二巻はもう書きあがっていて、原稿は偕成社にありますから!

 とかいってもう半年以上出ないわけですよ。一巻目のインパクトが弱かったというのはあるかもしれないけど、コジマケンの絵のこともあるのかもしれない。西遊記のイラストの広瀬弦もかなりのものだけど、イーゲル号航海記のコジマケンのイラストもかなりいいです。というか、どっちもけっこうアート。
 未来というのはよくわからないけど、こういう物語を子供時代に読んだ人間たちはきっと新しい世界を作り出していくのだろうなと思うし、子供たちの心や魂を新しい物語で捕まえようとする文学の試みというのは希望というものによく似ている。

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