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2008.01.19

NHKインサイダー事件でまたモラルとかちと思う

 ブログを書かないことが定着しそうなので、近況めいた雑談でも書いておこう。当初、そういう部分の話は別所に書いておき、ブログではある程度再読性のある話(軽いけど季節がら「極東ブログ: チョコレート・フォンデュ」とかもね)、あるいは時代のログのような資料性のある話と思っていた。そういうネタのないときや、あるいはあえて世間やネットの空気に言及したくないときは、書籍のこととか料理のこととか書いてきた。現状、ネタがないわけでもない。手間がないというのはあるかな。自分のなかでのブログも変わってきたかもしれないというのはある。また、時事や世界情勢、経済問題で気になることがないわけではないが、振り返るとそれなりに予言的に言及していてそれほど足すことはないように思える。
 じゃということで気分を変えて、このところ気になることと言えば、いわゆるモラルということかな。モラルを持ちなさいという説教めいた話とは少し違う。「極東ブログ: モラルの低い人を傍観する時」(参照)と被るかなとも思うが、よっこらしょ、書いてみる。
 一昨日だったかNHKの記者がインサイダー取引をしていたというニュースがあった。ひどい話だなと思ったが、以前日経の記者もやっていたし、だいたいこういうジャーナリズムに関わる人間だと、関わりかたにもよるかな、たまに「あ、これは株買うと儲かるな」という話はころっとしている。私もある情報分野とか継続的に覗いていたときインサイダーではないけど開発動向から次の手が見えるときがあった。
 でも、それで株を買うとかは、しない。しないのはモラルもあるのだろうが、損得勘定があるからだ。儲かる話は儲からない。いや、ちょっと違うか。そんな儲けをしてもその上のフレームワークで損をするということかな。目先の得の限界や影響を考えるというか。
 NHKの記者の例でいうと、儲けはたかだか50万円くらいのようだし、さっと儲けが出た時点ですっこめたということで、端から小遣い稼ぎだったようだ。が、50万円というのはNHK記者の年収にすればはした金と言っていい。いや、50万円をはした金とかいうとネガコメレッドにすかさず悪口言われそうだが、いやいや私や彼女のような貧乏人じゃない。NHK記者ならねということ。
 それでも50万円ならはした金ではないでしょという考えもあるだろうか。NHK記者の年収といったって1000万円くらいかな。としてもなんだかんだ手持ちのお小遣いは月額20万円あるかないか。ないかな。そう、そこがこの話題の要諦か。たぶん、インサイダーNHK記者は、50万円、うほっ、いいお小遣い、だったのだろう。
 というあたりで、モラルというより、なんか人生設計というかNHK記者をあと何年やってどう生きていくというビジョンが、お小遣いでぐらぐらしてしまうということだった。そのぉ、後の千金の事、じゃないや、その逆か。後の千金的な社会的ステータスというのがその人に課した安定性というものの意味を見失っていたのだろう。
 今回のNHKインサイダーの詳細を知らないのだが、こういうのは常態だったのではないかと思うし、日経の時でもそうだが、他の記者でもあるだろう。当面の対処としてはそういうポジションにある人は株全面禁止というか委託投資という措置しかないようにも思うが、それでもこのしょぼさというのは世間とはそういうものだから残るだろう。お小遣いとか短期的な人生ビジョンにぐらぐらという人は絶えない。
 それって、あれかなと思う。あれというのは、昔宮台真司先生だったか、終わりなき時代は今の強度を生きるというか、そういうのが言葉として語られる時代が終わると、それがある種、あたり前になるだろうし、それに希望格差社会というか、希望が見えない社会になると、長期ビジョンというのは見えないから、今の強度、今のワクワク気分だけで生きるということになるだろう。今の若い人の恋愛とかもすでにそれっぽいし。いや、私より年上の団塊の世代はそれでつっぱしってきたか。

cover
希望格差社会
 自省してみるに、お小遣い悪魔はさておき、そうした今の強度や今のワクワクということで生きている自分というのはいるわけで、他人のことをモラルとかでとやかく言えるものではないな。
 そういえば年末、スェーデンボルグの本とか読みながら、こうした関連のことをいろいろ思った。彼の教義に納得するということではない。結論だけ言うと、なるほどこれがカントの最大の問題かもね、ということだがそこを縷説するとめんどくさいのでとばして、奇妙に感心することが二つあった。一つは大宇宙は人の形をしているということ……それもとばして、もう一つは、人は好んで地獄に堕ちるということだ。
cover
理性の不安
カント哲学の生成と構造
 普通のキリスト教だと審判があって、はいはいゾロリさんあなたは地獄行きとか、胡麻煎餅を食いながら閻魔大王とか正塚婆とか、おっとキリスト教じゃないやね、でもそうした審判を想定するのだが、スェーデンボルグだと、バーナンキ僧正の経済指針のように自動的に決められるというか、いやそれも違うな、人は自分の意志で地獄を選択していくのだということだ。
 普通のキリスト教はさておき、普通に考えると、地獄を自分で選択していくというのはアルカナ、つまらんダジャレはさておき、地獄とわかって自分で選択していくというのはないでしょ。つまり、自分が選択している生き方が地獄行きだとは思ってないから自分で選択しているということだろう。
 スェーデンボルグのこの考えは気に入ったというか、歩道で自転車にひっかけられたり、横断歩道に突っ込む自動車とか見ると、この人たちはモラルが低いとかじゃなくて、そういう選択の人生なんだろうな、さて、それは地獄行きだろうか? 確率的に見ると、そういう行動パタンは長期的に見て人生を利さないとは思うが、地獄行きかどうかは、私にはわからない。
 もちろん、スェーデンボルグのいうような地獄なんてものは、偽科学批判をするまでもなくカントを悩ませることもなく存在しない。というか比喩にすぎない。問題は、そうした自分の自由意志の結果を自分で始末を付けるというのは仏法の定まれるならいなりみたいだが、さて自分はどう免れうるだろうか。つまり、自分がよいと思って選択している生き方が地獄行きじゃないとどうやって自覚しうるのか。
 自分なりの結論を言えば、人や社会を愛するということじゃないかと思うが、それだけ言ってもアレなんで、気が向いたらまた書きます。ブログだし。

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2008.01.13

新テロ対策特別措置法関連の雑感

 ブログを一週間空けてしまったことは初めてなので、自分でも不思議な気がする。別のオンライン日記はつけているので、ネットからそれほど離れているわけでもない。が、今朝、作家の月本裕が亡くなり、その最後のブログを見ながら、ブログってこうして終わるものかなと、自分のブログを死後の自分が見るように少し見つめた。
 ブログに書くべきか気になっていたテーマは、当然といっていいのかもしれないが、新テロ対策特別措置法についてだ。私は今回の衆院通過に矛盾した思いをもった。うまく整理がつかないのだが、そのまま書いておくのもブログならではのことかもしれない。
 どこから書いていいのかわからのだが、これが一年期限の、事実上の暫定的な法案だったことに、私はそれなりに政府と与党に信頼ができた。小泉が残した圧倒的な衆院の勢力でなんでもごりごり押していくというものでもないのだ、と。
 それとこれもネットで書くと反感を持たれるだけになりそうなのでためらうのだが、一連の小沢の心情も理解できた。もちろん、勝手な理解ということかもしれない。小沢は小沢で矛盾した心情を持っていたのではないかと、思ったのだ。
 新テロ対策特別措置法が日本にとって死活問題となるほど重要だったかというと、そこがついに見えなかった。そして、とりあえず向こう一年はそれは問題としないということにした。ドラッカーは日本流先延ばしというのはよい知恵であることもあると、どこかで言ってたように思うが、現状ではこうする他はなかっただろうし、米国側も、おそらく衆院の状況を知って取りあえず待っていたのかもしれない。
 この間、つまり、日本の給油活動が停止している間、ぞっとする事態が起こらないわけではなかったと思うのは、れいのホルムズ海峡におけるイランの威嚇だ。13日付け日経新聞”米海軍、イラン船に警告射撃・ホルムズ海峡で昨年12月”(参照)より。


ペルシャ湾のホルムズ海峡で昨年12月、米海軍艦船が接近してきたイランの小型艇に警告射撃していたことがわかった。米国防総省当局者が明らかにした。ホルムズ海峡では今月6日にも船艇同士が接近して緊張が高まる事態が発生しており、米軍はイランの戦術の変化に懸念を強めている。

 今月6日の事態については、8日付朝日新聞”イラン船、米軍艦船を挑発 ホルムズ海峡”(参照)を引いておく。

米国防総省は7日、ペルシャ湾要衝のホルムズ海峡を航行していた米海軍の艦船3隻に対し、イラン革命防衛隊所属とみられる小型高速船5隻が航行を妨害するように危険な距離まで接近するなどの挑発行動をとってきた、と発表した。米メディアによると、米艦船では艦長が発砲を命じる寸前で、一時緊張したという。

 この事態は、流れから見て、情報戦の陰影もある。13日付けAFP”ホルムズ海峡の威嚇事件、脅迫は無線荒らしの仕業か”(参照)より。

ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)でイランの高速艇が米軍艦艇を威嚇したとする証明として先に米国防総省が公開した威嚇を含む音声が、「フィリピーノ・モンキー(Filipino Monkey)」と呼ばれる現地の無線荒らしによって発せられた可能性が持ち上がっている。米海軍の機関紙Navy Timesが伝えた。

 つまりイランによる徴発ではないというのだ。

 これに対しイラン政府は13日、米政府は「面目を失った」とし、イランに謝罪するべきだと述べた。イラン外務省のムハンマド・アリ・ホセイニ(Mohammad Ali Hosseini)報道官はジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領の中東歴訪に触れ、「中東地域をだますために」誇張したと非難。「米国はまたもや面目を失った」とし、「米国はこの1件を大統領の中東歴訪と同時に持ち出すことでわが国の悪い印象を植え付けようとしたが、その計画は失敗した」と述べ、さらに「米国は中東の人々をだます政策を取らないよう忠告する。米国は中東と米国の人々に陳謝すべきだ」とした。

 私の印象に過ぎないが、フィリピーノ・モンキーの可能性はすでに米軍で当初から理解されていたのではないか。そして、イランもまたまったく無関係というわけでもないようにも思える。そうした印象を持つのは、気になることがあるからだ。
 9日ニューヨークタイムズ”A Dangerous Game in the Strait”(参照)での提言だ。その前にこの時点だからということかニューヨークタイムズはある程度慎重に事態を見つつもイラン関与の印象を得ている。

Iran played a reckless and foolish game in the Strait of Hormuz this week that -- except for American restraint -- could have spun lethally out of control.


On Tuesday, the Pentagon released a recording of the interchange that appears to substantiate Washington’s narrative.

 もちろん、留意はしている。

It is not clear what game the Iranians were playing or even who was giving the orders.

 重要なのはこの先の議論のほうだ。

At a minimum, the administration should use this incident to engage Iran in formal talks on conduct in the strait.

 つまり、ホルムズ海峡についての会議にイランも関与すべきだということだ。別の言い方をすれば、イランは現状関与してないのであり、先の米国を嘲笑するアナウンスもその関与の拒否という意味を持っている。
 話が前後するのだが、ニューヨークタイズムがこの提言をしているのは、前段にこういう含みがある。

Iran must also get the message about the risk of future provocations. As the 2000 attack by Al Qaeda on the Navy destroyer Cole proved, American forces must be vigilant about defending themselves. Feints by Iran, or anyone else, to bait America can go dangerously awry.

 表向きはアルカイダの文脈のようだが、ここで重要なのは、"American forces must be vigilant about defending themselves"という点、つまり、ホルムズ海峡の安全について米軍は尽力せよということだ。
 なぜ? この点については、「極東ブログ: [書評]石油の隠された貌(エリック・ローラン)」(参照)でも触れた。大きな問題となれば日本をも巻き込むだろう。
 私が大ボケしているのでなければ(しているのかもしれないが)、新テロ対策特別措置法はアフガニスタンでの戦争というローカルよりも、こうした大枠でのテロとの戦いにおける日本の位置を示している。そのことをどう日本は、また日本人は考えるべきだったか。
 この海域での米軍活動で、考えようによっては些細なことだが、連想したことがある。日本でも多少報道されたがネットソースとしては中央日報”「北朝鮮船を救出しろ」…米海軍の特別な作戦”(参照)がわかりやすい、この事件だ。

米軍が30日、アフリカ北東部ソマリア海域で襲撃された北朝鮮船を救出する作戦を展開した。 米海軍は支援要請を受けた後、直ちに駆逐艦を派遣するなど速かに行動し、負傷した北朝鮮船員を応急治療した。 これまで北朝鮮貨物船を監視・検索の対象としてきた米軍のこうした行動は、6カ国協議の進展が反映されたもので、今後の朝米関係改善にも寄与するはずだと観測されている。

 韓国報道ということもあり、6カ国協議の進展の文脈に置かれているし、そう読んでもよい些細な事件だが、ディテールは興味深い。

 米海軍ニュース(Navy News)によると、30日午前、バーレーンにある連合海洋軍司令部はマレーシア・クアラルンプールの国際海事局(IMB)から「北朝鮮船デホンダン号がソマリアの首都モガディシオから北東に110キロほど離れた海域で海賊に襲撃されたから救出してほしい」という連絡を受けた。
 米軍・英国・フランス・ドイツ軍で構成された司令部は直ちにデホンダン号から90キロほど離れたところで作戦中だった米駆逐艦「ジェームスウィリアムス」が救出命令を下した。 「ウィリアムス」はまずヘリコプターを急派し、正午ごろ現場に到着した。

 これも私のボケの可能性はあるのだが、「米軍・英国・フランス・ドイツ軍で構成された司令部」というのは、日本から給油を受けていた対象ではなかったか。
 私が知らないだけで勝手な読みをしているのかもしれない。そうためらう気持ちはある。それゆえに、「だから日本のためには新テロ対策特別措置法が必要だ」というふうには直結はしない。
 率直に言えば、わからないことが多すぎるとは思える。

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