社会と鬱ということでなんとなく思うこと
まだ見てないのだが今晩のクローズアップ現代のテーマは「非正社員に広がる“うつ”」(参照)らしい。このところ、なんとなく雇用と鬱のことを考えていたこともあり、なるほどそれって世の中の今の話題でもあるんだろうなと思った。クローズアップ現代の話はこういうことらしい。
世界的な景気悪化で大規模な「派遣切り」が相次ぐ中、派遣社員や契約社員など非正社員の間に「うつ」などの心の病が広がっている。「うつ」の治療には医師の診察に加えて、十分な休養が欠かせないが、非正社員の場合、解雇を恐れて休養を取れず、症状を悪化させるケースも多い。さらに仕事ができなくなった後のセーフティーネットも脆弱だ。正社員の多くは働けなくなっても「傷病手当金」を受け取ることができるが、職場を転々と変わることの多い非正社員の場合、「健康保険料1年以上継続支払い」という条件を満たせずに、日々の生活に困窮する人も少なくない。
正規雇用の場合、鬱と診断が下されると会社もそれなりの対応を取る。取らざるをえない。実態についてはいろいろあるのだろうが、それでも非正規社員の場合とはかなり違うものだろう。という以前に、雇用が安定しないということが鬱の原因にもなるだろう。
話を戻して、このところセリグマンの本「オプティミストはなぜ成功するか」(参照)にあったジョージ・ブラウンの話が気になっていた。たぶん原典は”Social Origins of Depression”(参照)ではないかと思うが、出版年は1978年とあり、かなり古い本のようでもある。邦訳もなかったのではないか。で、その話なのだが、彼の調査結果では、サウス・ロンドン貧困地区の400人の主婦への面接から20%が鬱状態だったとのことだ。逆にいうと80%はそうではない。鬱な人とそうでない人の差はなにかということに関連して、彼は、鬱からその人を守る三つの要因を挙げている。この1つでも満たされると鬱にはならないということでもあるようだ。それはなにか。
1 配偶者か愛人との親密な関係
2 外に仕事を持っていること
3 家で面倒を見なければならない14歳以下の子どもが3人以上いないこと
おそらく60年代のロンドンなので、現代日本には当てはまらないのかもしれないのだが、なんとなくこの三点が気になっていた。鬱というのも個人の問題というより、社会現象的な部分が大きいのだろう。
別の面で心にひっかかっていたのは主婦の鬱状態ということだ。私の生活環境からは、主婦の鬱状態というものが見えない。自分が世間を見回した感じでもピンとこない。しかし、いないわけはないだろうと思う。そのあたりの齟齬感は何なのだろうか。また、鬱というと、なんとなく男性、あるいは未婚女性を想定してしまうのだが、実際の日本の鬱の状況というのはどうなんだろうか。
ブラウンによる鬱予防の要因なのだが、1と2についてはなんとなくわかる。親密な性的なパートナーがあると救われるだろうな、というのと、仕事があればなんとかなるか、と。実際には仕事が原因で鬱の人も多いだろうから、そのあたりは微妙なのかもしれないし、それを言うならパートナーが鬱の原因ですよという人もいるだろう。まあ、それはそれとして。
気になるのは、3番目の子ども三人というあたりだ。現代日本では、三人以上の子どもをもつ家庭がそもそも少ないのではないかとも思うし、二人なら大丈夫という線引きもないだろう。が、日本の場合、主婦からすれば、夫や親という存在が14歳以下の子どもと同じような負担かもしれない。つまり、自分が支えないといけない夫と親がいてそれに子どもが一人いたら、それでアウト、ということはないんだろうか。
ブラウンはこれに加えて、鬱病への危険要因を二つあげている。
1 夫の死、息子の移民など大切な人を失う
2 13歳になる前に母親を亡くしている
1の大切な人を失うというのはわかる。2もわからないではないが、13歳前に母親を亡くした主婦という像が、妙に心にひっかかる。自分の場合思い浮かぶ人がいない。いないというより、そういう経験を抱えて生きている主婦という存在をまるで知らないでいる。
ブラウンの調査は女性が対象だが、男の子の場合とは違うのか。どういう心の問題なのか、も気になるが、女性特有のことのような印象は受ける。
人はいずれ親を亡くすようにできているのだが、男子と女子、そしてどの年代で、どういう意味をもつのだろうか。いや、そう問われても答えなんかなさそうでもあるのだが。
自分の経験では、30歳を越えたら親の死はなんとか受け止められるかなと思う。40歳くらいだと、つらいにはつらいがそういうものかという自然性もあるだろう。現代は晩婚だから、人は60歳くらいまでは生きるべきなんじゃないか、子どもがあればとも思う。
シャドウ・ワーク I. イリイチ |
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コメント
40代の、専業主婦で、この春、鬱病と診断されました。
長い間統合失調症を患ってきて、躁状態や鬱状態になったことはありますが、「鬱病の鬱とは違う」とどの医師にも言われました。
今回鬱病になったきっかけと思われることは、自治会の班長を引き受けたことです。
病気できちんと仕事を果たせるか不安だったことが原因だと思われます。
主婦で鬱病のひとは、結構たくさんいます。
理由は様々ですが、やはり大事な人を亡くした人の場合が多いかな?
投稿: みほ | 2008.12.17 18:28
私の母はこれらの条件全てを満たしていませんでした。
(専業主婦でしたし、父との仲も決してよいとは言えませんでしたし、何よりも、私は四人兄弟の一番上でありました。)そして、確かに鬱で臥せっていた時代がありました。今、思い出すに、4人の子供をパートナーの協力なしで育てるというのがどれだけ大変か、その家に生まれた子供の目から私の母を見ると納得できますね。そういう家に居るということだけで、迷惑をかけているような気持ちにさせられたことが何度もありましたよ。
投稿: F.Nakajima | 2008.12.17 21:14
私の母ちゃん(73)は子供の頃に母親を亡くして、6人姉弟の長姉として一家を切り盛りしてたそうですよ。今と違って山奥の…車で30分、徒歩で2時間掛かるような超山奥育ちで、毎朝欠かさず桶担いで泉まで水を汲みに逝ったそうです。そらもう半端なくシッカリ者ですわ。そうでもせんと生きていけんですから。
その代わり、そーゆー育ち方なだけに、父ちゃん(享年75)や私(享年35)みたいな里育ちののんびりさんは根本的に気に入らないらしく、ちょっとでもだらしないと即キレて「お前らは駄目だ、私は…うちの爺ちゃん(享年86)は…」って、毎度のように激怒しておりましたよ。今でもたまーにキレますね。
鬱になってるヒマなんか無いって感じですよ。
投稿: 野ぐそ | 2008.12.18 02:59
大体、母ちゃん(73)がキレる要因としては、
※夜寝付けない
※自分が明らかに失敗しててどーやっても責められる状況においてフツーに責められる
※思った瞬間即動かない
…あたりですか。3つ重なると、絶対キレます。1つ
2つの要因なら、時間を置いて忘れた頃に思い出しギレします。1週間くらいしてフッとキレるから始末が悪い。
そんな親に育てられた私(35)ですが、ネットで大暴走してるときに喜ばれたりだらしないと見做されるるのは「父ちゃん要因」で、嫌われたりしっかり者と見做されるのは「母ちゃん要因」だったりします。
私個人としては、父ちゃん要因も母ちゃん要因も、どっちもそれなりに意味あるかなーとは思いますけど。世間や企業では父ちゃん要因の方が遥かに尊ばれる…というより単純に母ちゃん要因は毛嫌いされると思いますんで。そういう素因を持ってる人は、結局社内や地域社会で浮いたり外されたりするんだよね…って感じです。
斯く言う私も、子供の頃は母ちゃん大嫌いだったんで家に帰りませんでしたね。でも、それが今ある自分の素因のひとつでもあるんで、今となっては母ちゃん恨む気にはなりません。母ちゃんのお陰で僕ちゃんアルファコメンテーター(←何だそれ? 馬鹿じゃねーの?)だぜ~、みたいな。要らんよ、そんなもん。
投稿: 野ぐそ | 2008.12.18 03:12
鬱ということでなんとなく言うと、鬱になる人ってのは、元々の体質や性質として「そこまで頑張り切れない」んじゃないかと。過負荷ですわ。だから壊れる。壊れないまでも熱暴走して煙くらいは吹く。
私など母ちゃんウザくてしょうがないですけど、そんな母ちゃんに育てられたからこそ半生半死な基礎体力なのに超頑張れたんだと思いますよ。そういう母ちゃんに育てられず「ある意味普通」に生きていたら、多分今みたいなご時世だと鬱か何かで死んでますわ。
鬱だろうが何だろうが生きてるだけでも有り難いとか言っちゃったら決してそう思ってもない人からは何か言われるでしょうけど、そのくらい強烈な前向き精神があることが、結局は病や閉塞から抜け出す一つの方法論なんで。有ると無いとじゃ、また違うような気もします。
あとねぇ。今日びこんなん言い出しても出来ない人の方が圧倒的に多いから言うだけ野暮ですけど、田舎があある人は田舎に帰ってのんびりした方がいいっす。都会ではアゲアゲじゃないと生きていけないですから、そんなところに居たら治るものも治らんよ、って感じですかね。
じゃあ、田舎ない人はどーすんだろねぇ~? 都会の田舎化ですか? するってーと、インフラ整備がある程度進行して住みやすい環境を整えた地域の方が今後都市化して都市部の方が逆に農村化しちゃったりしますな。
世の中ひっくり返っちゃったりして。
投稿: 野ぐそ | 2008.12.18 03:29
私なんかは本当に精神錯乱を起こしてしまった「リアル気違い」ですけれど、精神病に罹患する本当の原因って、本当のところなんなんだろう、と思っています。
遺伝的なものもあるだろうし、薬物などの化学物質影響も大きいと思うし、生活習慣も原因だろうと思うんだけれど、現代の世俗の言語のありかたにも大きな原因があるのではないかとも思われます。
私が、漢文、サンスクリット原典、英訳の般若心経を毎日読誦していて、本当に精神病から解放されることができたら、普及活動をしようかしら。
私の場合は、本人が証拠そのものなわけだから、理屈倒れしかねない七田眞先生の右脳教育よりも真実味はあるでしょうね。
なお、おとつい、漢文法華経全巻および開経・結経の真読のお経文も手に入れることができました。これで、法華経は、漢文の真読本・訓読本とローマ字表記サンスクリット原典が全巻入手できました。
これで病気が治ったら、「法華経の功徳だ。」と主張し、逆にとんでもない目にあったら、「法華経の行者の法難だ。」と主張したら、社会的効果が少しはあるかもしれません。(もちろん冗談ですよ。)
もちろん、悪用する気はないし、悪用できるほど熱心な信心も持ち合わせてはいません。とりあえず、お経は訓読より真読のほうが功徳があると高田好胤先生がおっしゃってらしたから、真読本を入手できて喜んでいるだけです。
投稿: どうなんだろう | 2008.12.18 08:06
ひきこもり主婦はいると思う。
そういう人が鬱になっても対策以前に統計すらないと思う。
投稿: | 2010.07.06 20:32