« 漢方が疑似医療だと言われるとなぁ的な雑感 | トップページ | 社会と鬱ということでなんとなく思うこと »

2008.12.15

フィナンシャルタイムズ曰く、日本よ、匍匐前進!

 愉快なフィナンシャルタイムズの日本提言シリーズ、その第三弾、ありゃ、四弾かな。どうでもいいけど、世界的に見て、日本は何処に進むべきや、と。”Muddling through a middling slump”(参照)が面白かった。
 まず日本低迷どんだけ、ということなんだが、大したことないよ、と。


It is a mediocre kind of recession.
(まあ、よくも悪くもないといったところか。)
Japan’s banks have not blown up, its housing sector has not collapsed, and the mood is one of glum resignation, but in its economic weakness Japan is paying the price for its reliance on growth overseas.
(日本の銀行は潰れてないし、住宅部門も崩壊していないし、気分は気の進まない諦観といったところだが、日本経済の弱みは海外の成長に依存したツケが周っているというものだ。)
There is now only one option left: Japan must boost consumption at home, or else mirror the suffering of its export markets.
(かくして今や選択肢は一つあるのみ。日本は国内消費を高めること。さもないと、輸出市場の苦難を再現することになる。)

 「mirror the suffering」のところがよくわからないが、相手国のことを考えろということか。
 いずれにせよ、世界的に見ると、日本はそう悪くもないんじゃないのということだ。が、そう言われてもな、苦笑、みたいな感じはする。そして、輸出依存だから失業問題が急速だ("output is sliding quite fast enough to bring rising unemployment")とも指摘はしている。実際そうだ。
 フィナンシャルタイムズは冒頭、国内消費でしょと結論を述べたあと、話が続かないなということか、いくつかネタを引っ張る。

The policy prescription differs little from that of other countries.
(政策的な対応はほとんど他国と変わるところはない。)
Hard as it is to advocate fiscal stimulus in Japan – a country in which politicians spent decades using deficit spending to dam any river and build roads to anywhere that voted – now is the time.
(日本の政治家は何十年も票田にダムだの道だのこさえて赤字を貯めてきたから、財政出動を提唱するのは困難だが、今やそれをやるべき時なのだ。)
In the unlikely event that Japan’s government put money in the hands of low and middle income workers, it would do much to rebalance the economy towards consumption.
(日本政府が中間所得層以下にカネをばらまくとも思えないが、それをするなら消費に向けて経済の均衡を取り戻すことができるのにな。)

 以前も言っていたけど、もうビンボ人にカネをばらまけ。それができないなら、ダムを作れ、道路を造れ、国土開発、列島開発、田名角栄再臨、っていうか、その薫陶を受けたあの政治家、カムバ~クってことか。うーむ、ノリがキモイな。
 でも、あれですよね、財政出動じゃなくて、リフレじゃね? だから、日銀じゃね? ところが。

There is little the Bank of Japan can do now.
(現下、日銀ができることはほとんどない。)
It should not be shy about a return to unconventional monetary policy, but given the poor prospects the bank could force zero per cent money on corporate bankers and then threaten them with baseball bats, but they would still struggle to lend it out.
(非常時の金融政策に戻ることにためらうべきではないのだが、日銀がゼロ金利のカネを市中銀行に押しつけて、さらには棍棒で脅しても、こうも景気が悪いと、貸し付けには困難が伴う。)
That is despite the recent rise in borrowing from Japanese banks, which reflects the closure of commercial paper markets, rather than a sudden urge to invest on the part of Japan KK.
(目下日銀からの借り出しは増加していものの、それは日本株式会社に突然投資が促進されたというより、それはコマーシャルペーパー市場からの締め出しを意味している。)

 量的緩和はやったほうがいいけど、それほど効果はないよ。需要がないんだもの、というやつですね、まいどまいどの。
 どうしましょう、善兵衛殿、あれですか、あれっすよね、日本お得意の、あれ、どかんとン兆円。

That leaves the yen, and the option of intervention to weaken it to try to boost exports.
(でもまだ円がある。輸出向上のために円安誘導というオプションがあるじゃないか。)
If the yen surges again it would be legitimate to intervene to slow the rise.
(もし再度円高になるなら、それを緩慢にするための介入は正当化されるだろう。)
Japan would also have a case if China took sustained action to weaken the renminbi.
(もし中国が人民元安を続けるなら日本もそうすることになる。)
In and of itself, however, a weak yen would add nothing to global demand, and be simply a beggar-thy-neighbour attempt to corner such demand as there is.
(それ自体としては、しかしならではあるが、弱い円が世界需要を喚起することはないわけだよ。だからして、それは単純に、近隣窮乏化政策ってやつでそこの需要を買い占めるということだ。)

 困ったときには、もっと困ったやつからふんだくれ、です。もちろん、悪い冗談というか、このフィナンシャルタイムズの英文もなかなかなもの。
 結語は冒頭と同じなので、略でもよいのだけど、よいお言葉があります。

The only option for Japan’s policymakers is to muddle through.
(日本の政治家に残された唯一の道は、なんとか切り抜けろ!だよ。)

 日本でも流行の、muddle through、ですよ。プロフェッショナル仕事の流儀ですよ。「技術者 渡辺誠一郎(2007年3月1日放送)」(参照)。

マドル・スルー(muddle through)
 シリコンバレーの流儀とも言われる、この言葉。まるで、泥の中に放り入れられたかのように、上下も左右もわからなければ、解決策も見当たらず、出口がどこにあるのかさえも見えない。その泥の中から顔を出すためには、頭で考えているだけではだめで、体を動かし、もがきながらも行動に移さなければならないと、渡辺は自身の経験を振り返って言う。起業直後に襲いかかる極めて困難な状況をマドル・スルーしながらクリアした者だけが、シリコンバレーでは生き残れる。

 泥の中をもがいて進むしかないよ、日本、匍匐前進!

|

« 漢方が疑似医療だと言われるとなぁ的な雑感 | トップページ | 社会と鬱ということでなんとなく思うこと »

「経済」カテゴリの記事

コメント

さいですか。男性はmuddle throughで、突き進むとして、女は何をしましょう。支えるっきゃないっすね。(ブログではつい重くなりガチですし)自分でできることを探して、何とか越えてゆくだけですね。(10月頃に大損こいたなんて、まだ序の口でした)

投稿: ゴッドマー | 2008.12.15 17:47

 女の人はひとり遊び系に走って技術力向上系の気風を養うといいんじゃないですかね? 化粧と服飾あたりが早速あるからそれでいいと思うけど、最近の若いねーちゃんのエロバカっぷりを見てると死ぬしかなくなるんで、料理とか手芸とか技術系で。せめて裁縫くらいはやりましょう的な。でもそれって若い人向け(将来に渡る生存資本蓄積系)ですかねえ? それはお年を召した方には厳しいって言うか「やってるよ!!」って話ですよねぇ…。

 旅行なんかいいんじゃないですか? 金は減るけど思い出は増える、みたいな。東海道53次世界大戦なんかいいかもしれんですね。浜松あたりでブラジル人と迫撃砲を撃ちまくって2,3人怪我するとか。途中で豊田市に寄ってトヨタ潰したら3億点ボーナス@現金みたいな。

 駄目ですか…。

投稿: 野ぐそ | 2008.12.15 18:53

他人に、お前の貯金使えって命令できる資格のあるやつなんているんですかねえ。

とくに、借金してたり、ばくちで損しているやつに、勤勉なやつに貯金を使えって命令する資格があるんでしょうか。

単なるたかりですかね。

投稿: 余計なお世話ってところ | 2008.12.16 07:40

 普通は居ないよね。善行善事とか慈善事業に金使うならソイツの勝手なんだろうけど。でもまあ、どっかしら金使う理由付けが無いと貯める一方で回らないから。回す必要は、あるよね。

 アメ公の言うこと聞いて回すのは癪だってだけのこと。

 だから取り敢えずオバマさんは自ら範を垂れるってことでトリコロール・スープレックスを5,6回喰らって鼻血ブーしてから日本に何か言ってよ? ってことなんじゃないのかな? 多分。

投稿: 野ぐそ | 2008.12.16 10:52

"mirror the suffering"というのは「輸出の不調という打撃が、そのまま日本国内の経済状態に深刻に反映されますよ」ということでは。

投稿: machi | 2008.12.16 16:15

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フィナンシャルタイムズ曰く、日本よ、匍匐前進!:

» [経済]本当に今の状況を大恐慌に喩えて良いの? [himaginaryの日記]
と12/15のEconomist’s ViewでTim Duyが問うている。 I am torn on the wisdom of this move. On one hand, using the Great Depression as a guide, the appropriate policy direction appears clear flood the markets with liquidity, coupled with massive fisca... [続きを読む]

受信: 2008.12.17 00:15

« 漢方が疑似医療だと言われるとなぁ的な雑感 | トップページ | 社会と鬱ということでなんとなく思うこと »