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2008.12.05

フランス人は65歳から70歳が人生で一番幸せ

 先日NHKラジオ深夜便でフランスからの話を聞いていて、へえと思った。フランス人は65歳から70歳が人生で一番幸せだというのだ。年を取るとあまり幸せなことってないなと自分は思っていたので、意外でもあった。
 話は個人的な感想といったものではなく、国立統計経済研究所の発表によるものらしい。同研究所はINSEEというので、ネットでオリジナル情報を探してみたが、サイトはわかったが該当情報はわからなかった。インターネットはフランス語の情報になるとてきめん不便になるような気がするが私がフランス語ができないせいものあるだろう。
 統計は、1975年から長期にわたっての分析とのことで、特定の世代や景気の要素は排除されているらしい。つまり、フランス人にしてみると、概ね、65歳を過ぎると人生最高の幸せの時期となるとのことだ。いや、単純になぜなんだろ、うらやましいな、なにか秘訣でもあるのかとしばし思いを巡らした。
 ラジオの話では、その年代になると、夢と現実の落差が少なくなり、人生の経験と知恵を活かして幸福になるとのことだ。足を知るとも言っていた。65歳を過ぎるとようやく日々を大切に生きるようになる、ということなのだろうか。そういえば、アテネからデルフィのバスで隣にそんな感じのフランス爺さんがいて、幸せそうだったな。

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cover
孤独な散歩者の夢想
 そういえばついでに、ルソーに「孤独な散歩者の夢想」(参照)も思い出した。晩年のルソーの思いが綴られているのだが、そこにある種の恍惚ともいえる幸せの描写があった。自分もそうなるだろうか。
 フランス国立統計経済研究所の話に戻ると、では他の年代はどうかというと、20代から45歳へ向けて幸福度は下降するのだそうだ。ということは、ティーンエージはそれなりに幸福度は高いのだろうか、ヴァンカは泣いているだろうか(参照)よくわからんが、そういえば、それほど幸せそうでもないティーンエージを過ごしたサガンも70歳まで生きたな。ふと彼女が「愛と同じくらい孤独」(参照)を書いたのはそう晩年でもないと思い出し、さらに「私自身のための優しい回想」(参照)を読み忘れていたことを思い出す。
 フランス人にとって人生のズンドコ期は、40代らしい。ラジオの話では、子どもとか大変ですしねとかの雑談が混じっていた。自分も顧みて40代は大変だった。というか、このブログ始めたは45歳じゃなかったかな。げげげ。
 フランス人の40代は一番収入は高いらしい。しかし、幸せでもない。幸せと収入が一番乖離している時期らしい。幸福感は収入とは比例しない。という40代かあという思いになぜかサルコジの顔が浮かぶが、この年代あたり、おフランスな家庭は色恋の第二期かもしれないな。65歳の幸せというと老夫婦のイメージがわくが、このあたりの中年の色恋の嵐の時期を過ぎたカップルが幸せに至るのだろうか。違うかな。
 人生のズンドコの40代が過ぎると50代に向けて、幸せ度が上がるらしい。そういえば、50歳になった私は、40代より幸せなような気がする。30代よりも幸せかもしれないなとも思う。もう死にたいくらいな20代や10代や、存在すること自体が苦だったそれ以前に比べると、ああ、俺も随分幸せって言えそうな気がする、ということは、あ、俺、今が一番幸せじゃないかな。フランス人か俺。
 そして50代から60代へ向けて幸せ度が上昇し、65歳から70歳がピークになるらしい。残念ながらその後は落ちるようだ。それはしかたないか。そういえばドゥルーズが自殺したのは70歳だったな。知り合いが、なぜか熱心にドゥルーズの奥さんの話をしていたことを思い出すが、ま、どうでもいいが。
 おフランス的な私はこれからもっと幸せになっていくのだろうか。幸せは収入とは関係なさそうだし、案外そうなるのかな。幸福な老人の私か。ふと古波蔵保好を思い出す。彼の晩年近い本に「骨の髄までうまい話」(参照)があるが、あの本で、翁はフランス人の老人が若い美人とレストランで二人で会食するのはなぜかと問うていた。私も、あれはなぜだろうとなんとなく疑問に思っていたが、なんとなくだが、40代あたりでドンパチした返却値みたいな妾さんの娘なんじゃないかなとこのごろ思うようになった。70歳くらいで20代半ばの美女と会食っていうのはそんな感じかなと。
 こればっかしは妾もその子もない私には無理無理なんだが、なんとなくファンタジーとしては、70歳になって20代半ばの美女とジビエでも食っていそうな日が来そうな気がする。予感ってやつ。っていうかこういうノーテンキな予感が持てるということは、私もおフランスな老齢幸福期に向かっているのかもしれない。あはは。

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コメント

フランスの新聞は何社か報道してるのを見つけました。老後が楽しみなのはうらやましいですね。

Les Français sont plus heureux à 70 ans qu'à 40 - NouvelObs.com
フランス人達は40歳までよりも、70歳までのほうが幸せ
http://tempsreel.nouvelobs.com/actualites/societe/20081106.OBS9678/les_francais_sont_plus_heureux_a_70_ans_qua_40.html

"Pic" du bonheur entre 65 et 70 ans
幸福のピークは65歳から70歳

Les inégalités de niveau de vie persistent
持続する生活水準の不平等

Accélération de l'inflation
インフレーションの加速

投稿: sophie | 2008.12.05 21:58

http://www.insee.fr/fr/themes/document.asp?reg_id=0&ref_id=FPORSOC08n
bonheur で検索より

投稿: | 2008.12.06 00:59

私もフランス語は大学の第二外国語でやって以来離れていたのですが、どうやら件のデータは以下のサイトにあるようです。

http://www.insee.fr/fr/themes/document.asp?reg_id=0&ref_id=FPORSOC08n

ここにあるPDFの172ページに年齢と幸福感の関係を示すグラフがあります。

ちなみに、finalventさんは英語が堪能なのは承知していますが、ほかにどんな外国語を学ばれましたか? もっぱら古典語をおやりになっていたんでしょうか?

投稿: ラッコ | 2008.12.06 05:48

日本は、フランスではありません。
フランスは、日本よりずっと意地悪い国民で、
年寄りなると意地悪から解放されるってことでしょ。
つまりボケて意地悪かどうか曖昧になるんだよ。
40代が最高な意地悪人間だし。とくに女なんか。

finalventくんは、自分の頭脳から解放されないかぎり無理。
いちいち論理的に無駄な解釈ばかりだから。
ゆるめているつもりだろうけど、ぜんぜん駄目。
写真を一万枚とって発表すれば、わかるかもね。

投稿: | 2008.12.06 07:42

フランス人が高齢になると幸福感が持てるっていうのって、厳密さから、あるいは明晰さから解放されるからかなあとも思います。

「明晰ならざるものフランス語にあらず」って言った人は誰だったっけ。

ドゥルーズとガタリの「アンチ・エディプス」だって、ピーター・ドラッカー先生の「断絶の時代」と問題意識はほぼ同じだと思うのだけれど、オーストリア生まれのアメリカ人のドラッカー先生が「こういうことは確率論的にしか話ができないんだよ」、「巨視的な記述はこうすればできるけれど、微視的な記述はほとんど無理だよ」という感じで割り切って、徴候について執筆したのに対して、ドゥルーズはガタリとコンビを組んで、微視的な実測を必死になって重ねた挙句、「偏執狂的ではだめだ、分裂病者ではなく分裂者であるべきだ。分裂者の研究をしろ。」みたいな結論になっちゃったわけでしょ。

理性主義的であるのに必要な体力を持ち得ないことの自覚を共有できるが故の老齢の解放感。そんなこともあるのかもしれません。

なお、フランスの大生理学者のクロード・ベルナール(もちろん理性主義者)は、自分が晩年まで不幸であったことを死ぬ前にカトリックの司教に打ち明けたそうです。

投稿: 解放感? | 2008.12.06 08:55

初めてコメントします。
単純に定年だからじゃないかと思います。
フランス人は仕事が生き甲斐って言う人はまずいないので、働き盛りの人も年5週間の有給のために1年の残り働いているように見えます。定年を迎えれば、仕事をする必要もなくなり、5週間では実現出来なかったバカンスとか第二の生活をスタートできるとから幸せなんだと思います。逆に日本は仕事そのものが目的になりがちなので、定年後何をすればいいかわからないってことが起こるのではないでしょうか。

投稿: leMMon | 2008.12.10 02:35

10月1日に70歳となります。

今後の人生設計をネットで検索していたらここへ。

フランス人と同じかも…第二外国語で選考はしたもののすっかり忘れたフランス語と観光でよかったと思うフランス。

世界共通とは言わないまでも同じ気持ち。

失いつつ物が色々あっても時間だけは贅沢にたっぷり!

その点で最高の時期と思う。

投稿: | 2011.09.14 09:05

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