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2008.11.05

フィナンシャルタイムズ曰く、じたばたせずリフレしろ、日銀

 吉例化しつつあるフィナンシャルタイムズ暴言シリーズ、って、暴言かどうかは意見はいろいろあるだろう。いずれにしろ、さすが世界の経済紙、日本の新聞とは違って、おもろいこといいはるぅ的なお話が多く、しかもなぜだかわかんないけど(と保身にすっとぼけておきたい)、その手の話題に限って日本のジャーナリズムはフィナンシャルタイムズの意見を黙殺するので、ブログのネタにはたまりませんな。今回は何をほざいておるかというと、「じたばたせずリフレしろ、日銀」である。あはは。
 話は2日付け”Japan needs more than gestures”(参照)。「日本はジェスチャー以上のものを必要としている」ということだが、このジェスチャーっていうのは、思わせぶりという含みがあるから、「思わせぶりでその場しのぎをすんじゃねぇ、日本」ということ。では冒頭。


The rate cut by the Bank of Japan is a stopgap that will change nothing.
(日銀による利下げはその場しのぎであって、何も変化をもたらないだろう。)
If Japan’s monetary policy-makers fear a return of deflation --- and their own forecasts suggest that they do --- rates must be cut to zero and Japan must consider some unconventional alternatives sooner rather than later.
(もし日本の金融政策立案者がデフレーションの復活を恐れるなら、そしてそうなると予測するようなら、金利はゼロにまで下げ、日本は、後回しにせずに、さっさと常識はずれた代案を考慮すべきだ。)

 ゼロ金利にせよ、日銀、そして、常識なんか忘れてしまえ、と。
 "unconventional alternatives"(常識はずれの代案)が何を意味するかは微妙、わくてか。
 先月31日、日銀は金利を0.5%から0.2ポイント下げ0.3%としたけど、フィナンシャルタイムズはこれでは効果がないだろうとしている。理由はFRBも下げたから金利差は小さくなったということ、固定金利の住宅ローンに意味がないこと、外国投資家を呼び戻すうま味がないこと、さらにリスクのある融資に銀行を誘導できないことなどを挙げている。それはそうか。日銀もそれがわかってないわけではないから、形だけのことと割り切ったのだろう。
 重要なのは、このままだと日本はまたデフレに突っ込むだろうということ。日銀の見解をなぞっているだけだが。

Unfortunately things are not OK --- Japan is racing back into deflation.
(残念ながら事態は良好ではなく、日本はデフレに舞い戻りつつある。)
The Bank cut its own forecast for core consumer price inflation in 2009 to zero, and now expects only the most minimal growth in output either this year or the next.
(日銀は2009年のコアインフレ率の予想をゼロに下げ、現時点では今年も来年も最小限度の経済成長しか見込めないとている。)

 これに続いてフィナンシャルタイムズは、日本政府の銀行への資本注入発表を評価し、また円高は消費者物価を下げるメリットがあるとも説く。これは悪くはない("That is no bad thing")。

That is no bad thing, but the stronger yen will also depress exports, creating slack in the economy, and cut import prices.
(政府による銀行資本注入や円高メリットも悪いものではないが、強くなった円は輸出を抑制し、不景気を産み、輸出価格は下がる。)
It is hard to believe that Japanese consumers will create enough growth in demand to avoid deflation.
(日本の消費者がデフレを回避できるほどの経済成長を遂げられると信じがたい。)

 デフレ必至。
 麻生総理の五兆円の景気刺激策はどうか。

But that is too small to make much difference, while general income tax rebates and small business loan guarantees look more like populist electioneering than an attempt at serious economic policy.
(五兆円では少なすぎて変化は起きない。しかも、一般所得税の還付と中小企業ローンの担保は、まともな財政政策というより、選挙目当ての人気取りのようだ。)

 それもそうでしょう。じゃ、どうしろ、と。いや、それ、ばっちり予想が付くな。

Japan’s huge public debt makes it deeply undesirable, but it is time to think about a much larger stimulus.
(日本の巨額な債務超過は大変好ましくはないが、今やもっと大きな経済刺激策を考える時だ。)
Policymakers missed opportunities to move Japan away from being so heavily export-dominated during its half a decade of growth;
(政策立案者はこの5年の成長期間に、過度な輸出依存から脱却する機会を失した。)
the only way to shift the economy toward domestic consumption is to put money into the pockets of low and middle income earners whose wages have now been stagnant for almost two decades.
(国内消費に経済を転換させる唯一の方法は、20年ものあいだ賃金が低迷していた低所得者や中間層にカネをぶちこむことだ。)

 "put money into the pockets"という表現はすごいな。ポケットに銭を突っ込め、と。
 日銀は?

As for the Bank of Japan, its eagerness to raise rates before inflation was properly established looks more mistaken than ever.
(日銀については、インフレ前の金利上昇の狙いは、以前にも増して間違いといってよくなった。)
Last time the country was in deflation, the Bank had to go beyond zero interest rates to “quantitative easing”, and there was no monetary disaster.
(前回日本がデフレに落ち込んだとき、日銀はゼロ金利を超えて「量的緩和」をせざるをえなくなったが、それによって金融危機が起きたわけではなかっった。)
More than any other central bank, the Bank of Japan knows what works.
(日本以外の中央銀行よりも、日銀は量的緩和に効き目があることを知っている。)
If need be, it should not hesitate.
(必要があれば、ためらうべきではない。)

 これってシェークスピアかなんかのもじりかな。
 まあ、リフレというのは、「常識はずれた代案」かもしれないし、「常識はずれた代案」というなら、政府紙幣とかもポケットに突っ込む銭としてはよいかもしれない。
 フィナンシャルタイムズ暴言シリーズは続くのでしょうかね。ではまた、アディオス!

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コメント

民主党選出の大統領になったら、フィナンシャルタイムズの意見も変わるのでしょうか。よくわかりませんけれど。

いまのところフィナンシャルタイムズは、麻生内閣にバラマキやれってか。

これ以上バラマキやったら間違いなく日本は破産するわな。日本破産して、アメリカの国債買ってくれる国がどこにあるんだろ。

日本は、アメリカの小銭入れにしてしまわないで、いざというときのへそくりにしておいたほうがよいのでは。

もっとも、今のアメリカは、まさにその「いざというとき」なのかな。

そうすると、大統領が民主党でも、フィナンシャルタイムズの意見は変更なしですね。

本当に、「アングロサクソンは頭がいい」?

投稿: 意見が変わるかな | 2008.11.05 16:34

確認したら、フィナンシャルタイムズはイギリスの新聞でした。もっとも、海外購読者のほうが多いらしいけれど。

でも、いまのところは、そして当分は「プードル」だろうから、アメリカの新聞か、イギリスの新聞かは本質的な問題ではないと思います。

きっと、イギリスの新聞でも、アメリカが共和党政権か、民主党政権かで論調が変わると思っています。

論調が変わらなかったら、アメリカの民主党と共和党に本質的な違いがないということなのだろうと思います。

投稿: イギリスの新聞かあ | 2008.11.05 17:33

日本の経済問題を解決するには
日本国民の財布に金突っ込めばいい、ってのは
洋の東西を問わず名立たる経済専門家が皆昔から言ってること。
なぜ出来ないかというと、財政規律や財政再建や
借金大国やバラマキしたら破産するという宣伝をこれでもかこれでもかと
マスコミ&財務省中心でずーっとやってきたから
国民はそれを信じてて、やると大バッシングに遭うので出来ないわけ。

古今東西よくある間抜けな自縄自縛ってやつです。
もちろん維持費のかかるハコモノ公共事業は時代遅れですけどね。

投稿: 00 | 2008.11.07 05:28

リフレ楽しみですね。
日本の場合は財政は大赤字のほうが良い。

投稿: | 2008.11.07 07:17

国民の財布にカネを突っ込む政策というと、昔の地域振興券や今回の定額減税が思い浮かびますが、あれじゃ足りないからもっと大盤振る舞えということなんでしょうか。

投稿: スズメ | 2008.11.07 23:21

先を見ないばかばかしい浪費を続けていれば、どんな人でも破滅します。

あまり欲張りすぎると、かえって元も子もなくします。

つまらないところにけちけちすると、変なことでかえって高いものにつきます。

つまらないことにけちけちするやつほど、信じられないようなことでへんな浪費をしているものです。

どうしても、冬ごもりをしていなければならないときというのもあるものです。

私はまだ年齢が50歳にもなっていませんが、この程度の生き方をしていても、この程度のことはわかるようになりました。

ひどく頭のいい人たちでも、あんまり大きなお金を扱うようになると、誰が考えても当たり前なことがわからなくなって、魔法みたいなことが当然通用するようになるものだと錯覚するようになってしまうようなのです。

普通に生きていたいなら、他人からはどう思われようと、至極当たり前の世間の常識に従うべきだと思われます。

投稿: 世間の常識 | 2008.11.11 11:40

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