元厚生事務次官殺傷事件、雑感
一応世相の記録(ログ)というだけで書くので、だから、このエントリには大した内容はないです。以下はブログとか読む暇人向け。その前に、殺害されたかたに哀悼します。
さて、私事その他いろいろあって(それほどでもないけど身近で不合理な死に遭遇したりとか)、またブログを書く気力がまたすっかり失われていたが、その間、元厚生事務次官殺傷事件があった。二例にすぎないが元厚生事務次官という意味のつながりが感じられ、印象としては政治テロかとも思えた。ただ、政治テロにしては明白なメッセージ性がいまひとつ弱いのと、警察が、わざとだとは思うが、小出しにする情報をつなぎ合わせると、リアル気違いかなという印象は濃くなる。そして、世田谷一家殺人事件のように迷宮入りかもという印象もあった。
が、昨晩、犯行者と思われる人物が警察に出頭した。名前も出されている。小泉。ネタかよと苦笑したがその後の経緯ではそうでもない。警察としてもすばやく情報を集めたいところだが、集まったとしても公表されることはないだろうと安心して昨晩は、それほどニュース追わなかった。今朝になってもそれほどニュースはない。その後もニュースは追ってないが出てくる情報は、リアル気違い濃厚路線ばかりだ。
産経新聞記事「【元厚生次官ら連続殺傷】「今の40代は幼稚な人多い」識者コメント」(参照)では容疑者を幼稚な人と見ている。
評論家の大宅映子さんの話「40代といっても、昔と比べ、今は幼稚な20代に見える人が多い。子供のころからぬくぬくと育ち、見た目だけでなく、中身も20代の人がいる。バックグラウンドが分からないが、そんなに大した人ではないのではないか。最近は理屈なしに、恨みといった古典的な動機の範囲にも入らない理由で事件を起こす人がいる。仮に年金問題が理由だとしたら、奥さんは全く関係ない。常識がない人のことを考えても分からないが、逃げる気もなかったと思う。その気なら、もっと計画するでしょう」
昨晩私が思ったのは、その逆で、幼稚な人間がこんな犯罪をするわけはないでしょうということだった。それほど難しいとは思えないが、わざわざ特定年代の元厚生事務次官の住所を探し、世の中が迷宮入りか政治テロかと騒ぎ出す手間で出頭って、どういうストリーだよ、と。
しかし、その後デニーズでぼんやり昼飯食いながら思ったのは、この事件の周到さと無精さだった。周到というのは正確ではない。偏執的というべきだろう。リアル気違い特有のアレだ。そして、ある種の無精さが伴う。とすれば、特定の元厚生事務次官を狙ったというより、犯人の身近な住まいから、三足千円の靴下を選ぶように、選んだというだけではないかと思えてきた。もし、犯人が殺害者の近隣に居住していたなら、その可能性の比重を多くして考え直そうと思った。
その後、読売新聞記事”小泉容疑者の父、「私の命をささげたいくらい」と謝罪”(参照)を見ると、埼玉県に住んでいたらしい。
父親によると、地元の小中高校を卒業し、佐賀大学に入学したが、中退。東京のコンピューター関連の会社に就職したものの、2、3年で退職。その後、アルバイトを転々としたという。約13年前、地元に戻り、3年ほど働いたが、「インターネットでいい仕事が見つかった」と埼玉県に移った。その時から、約10年間、音信不通だったという。
ある程度身近な犯行だったのだろう。
ネットも使えるようだ。ネットに出頭予告があったらしい。また毎日新聞のようなポカミスかなとも思ったが、ポカミスではなさそうだ。
産経新聞記事”【元厚生次官ら連続殺傷】出頭前、TBSのHPに書き込みか「年金テロではない」”(参照)より。
「34年前の仇(あだ)討ち」「年金テロではない」。小泉毅容疑者(46)が警視庁に出頭する約2時間前の22日午後7時過ぎ、TBSのホームページに本人からとみられる書き込みがあったことが23日、分かった。内容は「保健所でペットを殺され、腹が立った」との供述と一致する。「最初から逃げる気はない。今から自首する」とも書かれており、小泉容疑者が犯行を誇示しようと意図した疑いが浮上した。
全文で200文字程度らしい。全文が読みたいところだが、内容は以下のようなものらしい。
本文は「今回の決起は年金テロではない!」との一文で始まり、「34年前、保健所に家族を殺された仇討ちである」と動機を示唆したほか、「やつらは今も毎年、毎年、何の罪も無い50万頭のペットを殺し続けている。無駄な殺生をすれば、それは自分に返ってくると思え!」などと記されていた。
また、事件後一部で「犯人は右利き」と報道されたことに反論するかのように「私は左利きである」と記したり、二つの事件で同じ刃物を使ったとの書き込みもあった。
今回の事件、幼稚な犯罪でなければ、黒幕は誰だろう、メッセージ性はなんだろうと疑念をふつう持つ。だが、この展開やこの独白は、それらを否定している。穿った見方をすれば、黒幕を守るみたいな陰謀論も考えられないでもないが、だとすれば、そのメッセージ性は、まさに届けたい一群にすでに伝わり(某怪死事件の印象のように)、それ以外の大衆には伝わらなくてもよいという確信のフィルターを通したものになるだろう。
そうだろうかと再考したがよくわからない。特殊なマインドコントロールで不可能ではないようにも思うが、どっちかというと違うかな。
TBSに届けられたメッセージからは、リアル気違い特有の芳香感も、私には感じられる。特に、「無駄な殺生をすれば、それは自分に返ってくると思え!」というあたりの、宗教めいたところだ。
私の当てずっぽうにすぎないが、今回の犯罪の特徴は、政治テロ的にも見える意味性の反面、殺人に対する奇妙な無感覚にも近い残虐性だ。というか、残虐性というより、まるでただ屠殺しているかのようなあっけらかんとした非人間性がある。そのあたりと、「無駄な殺生をすれば、それは自分に返ってくると思え!」という生死観とは、どこかしら論理的な整合性すら感じられる。
私は現段階では、これはリアル気違いの突発事件なんだろうと、思う。というかそう考えを変えている。政治テロではないだろう、と。
だが、このタイプの死生観が、どうしてこういうディテールをもった殺人事件として社会に浮上してくるのかとてつもなく奇っ怪な感じはする。
ネット社会が悪いといった面白い意見を述べる気はさらさらないが、ネットによって情報が扱いやすくなっている分、ある種のリアル気違いが独自の死生観を打ち出すためにもネットは便利なツールになっているんじゃないかなという感じがするし、ちょっと言い過ぎのきらいもあるが、ネットの乱雑な情報の側にそうした死生観を誘発するような欲望みたいなものがあるんじゃないかと、なんとなく思う。
ネットを規制しろとか、ネットでリアル気違いが増えるとか、そういう面白いこと言いたいんじゃなくて、便利な情報ツールって、リアル気違いにも便利に出来ているのかなということに、ちょっと未知な本質があるんじゃないかなと、そんだけ。
| 固定リンク
| コメント (22)
| トラックバック (1)