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2008.10.03

大恐慌に軍靴の音を聞く……考え過ぎだけどね

 一週間ブログに穴を開けてしまった。気が付くともう10月。この一週間に世界はとんでもないことになったと言ってもいいかと思う。
 今年の年頭、私は北京オリンピックの馬鹿騒ぎが終わったあと、中国経済にめだった失速が始まり、それが不穏な空気を生むのではないかと思っていた。その兆候がなかったわけでもないし、率直なところその兆候は今でもあると思うが、それより先に米国が潰れた。住宅バブルが崩壊して世界経済にろくでもない時代がくることはわかっていたが、ここまでひどい事態を見ることになるとは思っていなかった。
 というか、自分の人生で世界大恐慌というのを見ることになるのかもしれないなと怯えた。よくマスコミでは日の丸だの靖国神社だのという私がさっぱり関心のない話題に軍靴の音が聞こえると表現するが、私は世界大恐慌の可能性にその音を聞く。第二次世界大戦は大恐慌が生んだのではないかと私は思っているからだ。ただ、その見方は歴史学的には正しくはないのかもしれない。まあ、考え過ぎだけどね。
 9月30日、朝いつものようにラジオを付けて目を覚ますのだが、どうも尋常ではない。米国下院を辛うじて通過すると思われていた金融安定化法案が否決されていた。否決? ありえない。呆然とした。25日のロバート・サミュエルソンのコラム”What's the True Cost?”(参照)の不吉な選択がまさか実現するとは。


But the biggest unknown lies elsewhere. What happens if Congress doesn't approve the plan, or something like it?
(最大の未知数は他にある。もし議会がこのプランを認めないとか、それに類することになったら、何が起きるだろうか。)
Zandi, a supporter, argues that the economy will get much weaker, that many more banks and financial institutions will fail, and that the rise of joblessness will be greater, as will the fall in tax revenue and the increase in unemployment insurance and other government payments.
(プラン支持者ザンディは、経済は弱体化し、銀行や金融機関は破綻し、失業の増加しする。同時に歳入の減少と失業保険と政府支出は増大すると論じている。)
Is this scare talk or a realistic threat? The true cost of Paulson's plan hangs on the answer, and if the danger is real and imminent, then the cost of doing nothing would be far greater.
(これは脅しなのか現実の脅威なのか。その答えに、ポールソン案の真価が掛かっている。もし危険が真実で切迫しているなら、なにもしないことの損失はさらに大きくなる。)

 30日の朝、米国株価は落ちていた。BSニュースを付けてニュースを聞いてみると、欧州側の金融不安ですでに下げているところでだめ押しになった感じはある。ブラックマンデーかとマスコミは騒いでいた。
 が、下げ幅は絶対量として見れば大きいが、比率として見ればそれほどの下げでもなく、翌々日にはもち返したかに見えたが、現状そうとも言えないダメダメ領域に突っ込みつつある。というか、雇用も悪くなり実体経済への影響はあるだろう。
 米国下院はバカか、バナナ共和国かといった悪態もあるだろうが、米国民というのはああいうものなのではないか。それもまた民主主義のプロセスでもあるのだろう。
 30日ワシントンポストのコラムニスト、スティーブン・パールスタインが"They Jus Don't Get it"(参照)で嘆くのもよくわかった。

The basic problem here is that too many people don't understand the seriousness of the situation.
(ここでの基本問題は、状況の深刻さを理解でない人が多すぎることだ。)

Americans fail to understand that they are facing the real prospect of a decade of little or no economic growth because of the bursting of a credit bubble that they helped create and that now threatens to bring down the global financial system.
(グローバル金融システム創造をかつて助けいまや脅かしている信用バブルの崩壊によって、向こう10年は経済間経済成長がなくなるという間近に迫った予測を、アメリカ人が理解するのに失敗している。)


 10年に及ぶ期間、国の経済成長が止まるなんて慣れっこさとか言いたいところだが、その国が今度は米国となると話は少し違ってくる。
 メディアはなんとなくブッシュ政権または共和党批判の基調トーンがあるので、その失策を責めるような感じを受けたが、反対228に賛成205という否決の内訳で、たしかに共和党の反対票は133と大きかったが、民主党の反対票も95もあり、私としては率直に言えば次期政権が民主党になるのを読んだ民主党の悪い駆け引きなのではないかと思った。もう少し踏み込んでいえば、メディアはブッシュのレームダック化や共和党のまとまりのなさを責めていたが、オバマが抱えた民主党の亀裂も大きいではないかと。
 法案は上院を経てまた下院に回される。この間の手間取りにユダヤ教の新年をはさみ、金融界のユダヤ人は動けなかった。バーナンキものんびり休んだかな。
 この問題、下院でまた否決される可能性がないわけでもないし、そこはもうわけがわからないという感じはする。まあ、わからないな。軍靴の音にならなければいいと思うが。
 先のサミュエルソンのコラムを読み直すと、いつものサミュエルソンらしく楽観的なトーンもある。実際の損失はポールソンがいうほどじゃなくて、その三分の一くらいで収まるかもしれないと。案外そういう結末になるのかもしれない。
 なんか過剰に深刻に構えてしまうのは、今回の事態で、ポールソンは早々にバズカー砲を用意したこともあると思う。スゲー、使わないつもりだからバズカー砲だと思っていた。が、使った。なので、びっくりした面もある。
 これは考えようによっては、ゴールドマン・サックス出のポールソンだっから算段しえたことで、そこには金融界の論理と、たぶんまだ歴史に明るみに出されない事実のようなものがあるのだろう。それでも、どちらかといえば、金融界の論理だったかもしれないとは思う。ああいう感覚はわからないし、サミュエルソンも率直に今回の対応に経験的には理解しづらい印象をにじませている。
 とはいえ、問題はすでに実体経済にシフトしつつある。サミュエルソンの連発のコラム”Bankrupt Economics”(参照)も29日の時点で雇用の悪化を想定していた。
 話はずっこけるのだが、日本の愚かな戦争は軍部の暴発を止めることができなかったからだという話もあるが、あのころの日本にも議会があり、議会が軍の予算を承認しなければ、軍を止めることはできた。財布の紐を締めるというのは議会の最後の力になる。今回の米下院にはあきれたが。

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「経済」カテゴリの記事

コメント

>第二次世界大戦は大恐慌が生んだのではないかと私は思っているからだ。ただ、その見方は歴史学的には正しくはないのかもしれない。まあ、考え過ぎだけどね。

 私も、そうだと思ってますよ。考えすぎなんでしょうけど。

 実体経済としてどーなのかは知らんけど、いわゆる一般のご家庭なんかで言えば、母ちゃんがやたらケチで小遣い渡さないくせに自分だけ無駄に遣ってるような所ってあるでしょ。
 それで暴発しないのは現代日本だけよ? って、今の日本人は分かってるんかな? ある程度仕事に追い回されるような境遇であれば父ちゃんが怒涛の我慢力とか仕事没頭力を発揮するから何とか?持ち堪えるし、長い目で見た場合は「それでも」家庭円満で良かったね、チャンチャン。って話にもなるけど。

 世界の一般家庭はもっともっと父ちゃん力強いっちゅーか、父ちゃん我慢せんですよ。普通に暴動起きますて。嘗ての日本がそうだったように、ね。

 まぁ、下院はいずれ決議すると見込んで、のんびり待ちましょうや。待って駄目なら、それも人生。

投稿: 野ぐそ | 2008.10.04 00:40

>米国下院はバカか、バナナ共和国かといった悪態もあるだろうが、米国民というのはああいうものなのではないか。それもまた民主主義のプロセスでもあるのだろう。

 いま下手に民主党支持なんかやっちゃったら日本も行く末あーなるよ?って言ったら、悪質な誘導コメンツなんかな?
 私には、そーとしか見えんのですが。

投稿: 野ぐそ | 2008.10.04 00:43

そうですね。

北朝鮮が5年くらいでおわって、いろいろあって国連勧告で勧告と一緒になって、その間に、中国に内乱が起こって、中国が、南北朝になって、アメリカが弱くなって、日本がどうする?ってことになるのが2035年ころですかね。
なんだか、1935年ころと同じです。

投稿: | 2008.10.04 02:15

なにか、船井幸雄さんみたいになって申し訳ないんですが、これを経験しないと資本主義社会から私たちが離陸できないということもあるのではないのでしょうか。

当事者なのに気楽ないい方してすみません。

いつも通り、ドラッカー先生の意見の話をして申し訳ないのですが、私たちの経済は当に知識経済化していて、知識の生産的配布により生産性向上とイノベーションを次々実現していって社会的な富を増加させる社会になっているのに、社会のしくみは、まだ、資本と労働の生産的配布に基づく経済の仕組みの時代のままでここまできてしまっている。これが、いわゆる「知識社会」にふさわしい社会の仕組みに変化しないとならないわけで、変化の前には破局的なことが起きずにはすまないのだろうと思っています。

この破局の後には、つまらない大学の教官たちではなく、finalvent先生たちみたいなIT駆使の先達たちが公権力者たちの顧問的な役割をする時代になるのかもしれません。

大きな(マクロな)動きは危機的だけれど、ミクロに(具体的に)見れば、シーテックみたいな見本市で画期的なIT家電がいくつも発表されたりしていて、まったく先が見えないということもないと思われます。新しい多くのイノベーションが生まれるのはむしろこれからなのではないのでしょうか。

今回の世界大恐慌寸前の危機も、大国間戦争で漁夫の利を得た新興国の株価暴落が原因というわけではなく、新技術の進歩と不動産バブルと少子高齢化が原因の金融危機ですから、20世紀の世界大恐慌とは意味が違うと思っています。

金融不安回避のための公的資金投入はきわめて重要だけれど、それ以上に重要なのは、まだ貧しいまま取り残された第3世界の多く人々に1日でも早く一人でも多くの人が携帯電話を所有できるようになるように政治的努力を重ねることだと考えています。現金のことばかり考えるより、コミュニケーション能力の向上に関心を持ったほうがこれからの時代にとっては生産的なのではないのでしょうか。楽観的過ぎるかなあ。

投稿: これを経験しないと | 2008.10.04 10:39

「これを経験しないと」で、「生産的配布」としましたが、「生産的配賦」のあやまりです。すみませんでした。

投稿: すいません、訂正 | 2008.10.09 08:14

公的資金の注入ですが、民意はどうあれ、困っている金融機関に税金を突っ込むのは、頭が悪い政治家でも、決断力があればできるはずです。

難しいのは、取り立てること。

日本でも、中坊先生や最高検の松田先生は、ひどく苦労されたはずです。債権回収に。

差し押さえるもの差し押さえて、取り上げるもの取り上げないといけない。担当者に連れられて警察官が裁判所の令状もって現地に同行すれば、必ず占拠屋がいたはずです。

アメリカは銃社会だから、困難は大きいはずです。

それでも、税金突っ込んじゃったら、誰かが必ず取り立てないといけない。金融機関が自力で返済できなかったら、権力が腕力を使わないとならない。権力が腕力を使わないで済むとしたら、金融機関が相当強引に腕力に訴えているということになる。

ひどく生臭い話をしてすみません。でも、こういう想像力は働きます。

投稿: 貸すのはバカでも・・・ | 2008.10.13 13:30

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» アメリカで金融安定化法案が否決された話なんだけど [ず's]
あちこちのblogで「議会が馬鹿」だとか「国民の経済理解不足」なんて 書かれてるけどさ。そもそも国民が充分に利口ならあんな詐欺まがいの サブプライムローンなんか借りないでしょ? それを使ってさんざん儲けておいて損したら泣きつく人たちを救済する法案が 蹴られたら、 議員や国民のせいにするって、すげーおかしいと思うぞ。... [続きを読む]

受信: 2008.10.04 01:59

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受信: 2008.10.04 22:55

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