中期的な展望というか幻想というか
少し上がったかに見えた株価がまたがくんと下がった。ワロス曲線のように上げたり下げたりで利鞘稼ぎの人にはまたとない好機だろうが、普通の人にはちょっと近づけない相場だろう。しばらくはこんな調子で、しかしじり貧に下がって、そしてなんとなく長期不況ということになるのか。世界的な信用縮小が急激に発生しなければ、そういうことなんじゃないか。
御手洗冨士夫日本経団連会長もこう言っていた。
御手洗会長は「米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)の問題に端を発して、米国の株価が下落した。それに加え、急激な円高が進行したことが要因で株価が下げた」と分析したうえで「短期的な調整で、このことが世界全体の信用を縮小させることにはならない」との見方を示した。ただ、このところ国際商品市況や新興国の株価が上昇していたことを挙げ「これをきっかけに調整に入り、この調整はしばらく続く。従って、注意深い対応が必要だ」と述べた。サブプライム問題が米景気失速につながる懸念については「米景気は底堅い。サブプライム問題が米国の金融業界や景気に長期的なダメージを与えるとは思わないし、ファンダメンタルズを壊すとは思わない」と述べた。
おっとぉ、7月27日の記事だった(参照)。
しかし、案外そう大局観が違っているわけでもないのかもしれない。
10月16日ではどうか。7月末の時点ですらなんも見えなかったが、この先もまるで見えない。それでもなんとなくこんな感じかなという線はある。14日付けのフィナンシャルタイムズ社説”Stimulating Asia”(参照)が参考になるのではないか。アジアについて触れたものだが。
結論を先にいうと日本についてあまり触れてないが、こんな感じ。
China’s stock market bubble and Japan’s miniature real estate boom have both imploded with little effect on their domestic financial systems so far, but neither can escape the effects of the international crisis on their trade.
(中国の株式市場バブルと日本の不動産ミニブームは両方とも破裂したが、彼らの国内経済システムにはそれ以上大きな影響を与えなかった。にも関わらず、どちらも貿易面では国際危機の影響を逃れるべくはない。)
日本については概ね問題なしということ。中国の不動産バブルも気になるが、しいていうと中国同様、これからは外需牽引では成長できないというのはガチだろう。
There is debate about how much of China’s growth relies on net exports, but little doubt that, for the region as a whole, the expansion of the US trade deficit towards $1,000bn a year has been an important source of demand. It has now gone into reverse.
(中国の成長が外需の純輸出高に依存している度合いについては諸議論があるが、この地域全体として見れば、1兆ドルに迫る年間対米貿易赤字拡大が重要な需要の源泉であったことに疑念はほとんどない。状況は終焉し逆転した。)
世界経済構造としては日本もひっくるめての中国という含みがありそうだが、今後はそうした外需頼みは無理だから、内需を考えろということ。そりゃそうだくらいか。
いや、中国が内需の構造を見つければ日本はまたそっちの汁を吸うということか。このあたりは微妙に中日友好ってことになるのか。
日中にアジアとしてひっくるめられているのは、台湾とシンガポールも同じ。
そうではないのは、韓国とインドネシア。
Many Asian countries had some kind of domestic financial bubble but few are vulnerable to the crisis itself. South Korea, which had a domestic debt boom, and Indonesia, where leveraged investors were playing the stock market, are two exceptions.
(多くのアジア諸国がある程度国内経済バブルに浴していたが、危機に弱い例外が、国内借金ブームだった韓国と、株式市場でレバレッジ投資しまくったインドネシアだ。)
In both cases there is some risk of flight by foreign investors, but unlike in their 1997 crises South Korea and Indonesia have the foreign exchange reserves to fight back. Policymakers must show that they know how to use them and ensure that no solvent institution fails because it cannot borrow dollars.
(どちらの事例も外国資本のキャピタルフライトのリスクがあるが、1997年危機とは異なり両国には対応できるだけの外貨準備がある。為政者は、その使い方を知っていることや、ドル借入れ不能で返済できなくなる機関がないことを明示する必要がある。)
韓国とインドネシアには危機の懸念はあるにせよ、それほど重篤なことにはならないだろうということだ。
言い方を変えると、ダラダラと衰退していくということではないかな。
オイルマネーとはどうかというと、対中国への示唆だが。
With oil prices also falling, to depend on Middle Eastern or Russian markets would be false hope, as would be to wait for the US and Europe to stimulate consumption and suck up exports.
(石油価格の降下が進行しているのだから、中東やロシア市場に依存することは、米国や欧州が消費刺激をし、輸出から吸い上げようとするのを待つの同じくらい、期待の方向が間違っている。)
石油が下がるから、オイルマネーも大したことないよというのは、そうかもしれない。
世界の風景は、けっこう変わる。索漠としてくるかな。あるいは、フィナンシャルタイムズの夢のように、中国で消費経済が活性化するとか。真っ赤だなぁ真っ赤だぁ沈む夕陽に照らされて♪みたいな夢とか。
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コメント
>韓国とインドネシアには危機の懸念はあるにせよ、それほど重篤なことにはならないだろうということだ。
>言い方を変えると、ダラダラと衰退していくということではないかな。
それは猛烈に詰まらんですね。どーせ死ぬなら一思いにバッサリ死ねばいいのにね。あー、でもそしたら難民が来てウザいから、徐々に死んで貰った方が助かるんだろね。日本としては。
韓国良かったね♪ これからも頑張ってね♪ めでたし、めでたし。
投稿: 野ぐそ | 2008.10.16 21:52
自社株買い解禁になったので、下げ基調とはいえ、値幅制限一杯まで落ちることはもう無いだろうと、指値をギリギリ一番下で指しておいたら、終値が値幅制限一杯まで下落。・・・買い注文約定してますた。
今月一杯は模様眺めのつもりだったのに・・・
投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2008.10.17 01:01
箸の上げ下ろしくらいにめまぐるしく、渦巻いてる昨今ですね。
このように具体的な世界観と、自分の立っている位置を結び付けてみると、期待したり落胆したりするよりも、果報は寝て待て、と。もうやることはやりましたと観念するのがよろしいようで。なんとなく、元気付けてもらえたのかもしれません。拝
投稿: ゴッドマー | 2008.10.17 08:41
そういえばコンビニで週刊朝日だったかおっさん向け週刊誌の表紙を見てたら「株価5000円割れで失業率増大で自殺者10万人!!」なんて煽り文句が踊ってましたけど、もしその予測が正しいんであれば向こう2,3年のうちに日本も大変なことになるっぽいようなので、そいつぁてーへんだぁ!! ってことで、是非その芳香性で宜しくお願いしたい按配。やれるもんならやってみろ的な。
世界的な需要減少から外需産業が凋落するのは避けられない運命なんだろうけど、でも外需系の人は今まで散々いい思い?してるんだから。会社ベースでも個人ベースでも、ある程度の運転資金貯め込んでなきゃオカシイでしょ。逆に。無いからヤバいとか言ってる時点でさっさと死ねと。高度な技術力とか日本じゃないと調達できないオンリーワン商品を開発すれば、量より質で生き残るんじゃないの? とは思うんだけどね。バブル的数量戦略が通用しなくなって品質重視主義に転換して生き残ってる先行産業なんか幾らでもあるし、出版系でも不況になったら結局はそーゆー輩だけが生き残るわけで。
よりお金持ち?で居たければ高度な技術者になるしかなくて、そうじゃなくて途中で脱落?するとか、ここが己の身の置き所かなぁって観念するようであるなら、自分の領分ここですわ、でガッチリ身の回り固めて、コツコツ何らか勉強でもしてれば宜しい。
であるから、なんだ、どこの業界も一緒だなぁ、としか思わない。
それで「10万死ぬ」とかさぁ。マスコミさんは世間舐めすぎじゃない?って感じ。そんなにひ弱なのか、今日びの日本人は。
投稿: 野ぐそ | 2008.10.17 12:41
職人さんの気概生き様に「宵越しの銭は持たない」なんてのがありますけど、それを「今日1日で稼いだ金全部遣う」だと思ってるような輩は、今すぐ死んで保険金引き出して遺族に分配した方がナンボかマシです。
直ぐに死んでください。
常識的に考えて、職人さんに対する俸給は、そうでない人より高いです。今も昔も。今で言うなら「腕より資格」なのかもしれませんけど、資格持って職を確保してる方々ってのは、なんだかんだで高給です。
であるから当然、自身がプチ経営者感覚になって然るべきです。日銭だけを貰って生きてるわけじゃない。それ以上、蓄えに回す銭を当然貰ってるし、また貰って然るべきです。当たり前です。腕(資格)があるんだから。
日銭野郎は日給5000円とか8000円とかそんなもんですけど、資格メン役職メンは12000~20000円相当は手当て出ます。どんだけ末端でもそのくらいは当然出るし、偉けりゃもっと出る。出なきゃ会社がクソなんで辞めなさい。潰しなさい。
普通の生活するのが大前提ですが、普通に生きてる限り、多少の贅沢をかましたところで、日に3000円とか5000円とか、その程度には貯められます。より以上に高給取りであるようなら、もっと貯まります。
後のことを考えて必要な銭をきちんと蓄える、先ず蓄え、残る銭から1日の生活費や活動費を割り出し、「これが1日分と決め打ちした銭に関しては後腐れなくキチンと使い切る」が、「宵越しの銭は持たない」の心意気です。だからこそ、遣うと決めた銭を何に遣おうが個人の勝手であり、1円5円の小銭が出たら問答無用で募金箱へゴーするんです。
あたしゃそれでズーーーーッとやってます。たかだか10年やってます。若干ゆとり出来ました。だから今さらプラプラしてても困らないんです。
そういう「やり方」によって回るからこそ「地道な実体経済」となるわけで、不況がどーたらってのは、本来関係ないわけです。もし仮に「関係ある」になっちゃったら。それは勘違いした宵越し根性に全乗っかりしちゃった自らの迂闊さが破綻を招いただけのことであって、そういう類の輩は生きてる時点で実態すら歪めてしまうから、正直、生きる価値無しです。
本当の本気で、さっさと死んで保険金に化けて頂いた方がナンボかマシってヤツです。博打打ちは負けたら指詰めるか腹切るのが大前提なんだから、そおゆう道にわざわざ足入れたヤツが無傷で生きて帰ろうなんて思う時点で性根が腐ってるとしか言いようが無いわけで。
こんなこと言っちゃったら甚だ不謹慎ですが、株価下落で失業者が増えて自殺者10万人出現とかアホのような煽りがこの世に存在するくらいなら、是非、さっさと、一刻も早く、そうなっていただきたい。
言ってる張本人であるところの週刊朝日さんには、是非先陣きって滅びていただきたい。
堅実に生きるという当たり前のことをやってないから、そーなる。そんな人間(及び予備軍)が10万人も存在するのは、ハッキリ言えば迷惑です。死ぬぞ死ぬぞと脅すくらいなら今すぐ死ねと。そんな気持ちで一杯です。
それさぁ。死ぬ死ぬ詐欺じゃん。詐欺師やチンピラが堂々とやるならまだしも、職を持って真っ当に?働いてる人間がそんな根性でどーするよ? と。
真面目にまともに生きてる人間は、そんなのハナから無視ですから。一応憲法には基本的人権や生存権の保障が謳ってあるから、顔を立て遠慮をしぃで「何とかしなきゃな」くらいには思いますけど。根本的にはフザケンナ、のひと言で終了でしょう。
景気の良し悪しなんか、気にすることじゃないんですよ。どうでもいいから、そんなもん。
どーやっても博打経済から足洗えないんですって言うなら、もういっそ極道を名乗って下さい。世間の非難にも迫害にも負けず堂々と名乗る極道なんかナンボでも居るし、そういう連中の中からでも偉人傑物は出るしいい人だって居るんだから。不景気だからで死ぬ死ぬ詐欺なんかに手を染めるようなバカタレは、さっさと極道に成れと。
まぁ、そんな馬鹿は極道さんですらご遠慮するんでしょうけどね。景気のいいときだけ良民ヅラしといて悪くなったらチンピラに成り下がるようなヤツなんざ、極道ですら洟であしらいますわい。
大丈夫か週刊朝日は? って感じ。それにしても、朝日と名の付く輩は碌なことをせん。お天道様に申し訳ないと思わんのかな?
投稿: 野ぐそ | 2008.10.17 13:29
景気が回復基調にあったときに3万人自殺者がでてたんで、不況と福祉の失政でリアリティありますね>10万人
投稿: 元祖 | 2008.10.17 17:34
これこそ「真っ当な性根の人間」のやることですわ。良かったね。頑張ったね。今の気持ちを忘れんように、辛かろうけど人生頑張ってな? って感じ。
イタリア大聖堂に落書きの京産大生、贖罪の寄付
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081017/crm0810172304042-n1.htm
やってしまったことについて言えば馬鹿でありチンピラであるとしか言いようが無いけれど、こうしてキチンと償う根性で頑張るからこそ、「許し」があり「罪を憎んで人を憎まず」があるってもの。そういうのは、若気の至りでしょうがないね、で許さなければ、人じゃない。ええ、ええ、人じゃないですとも。
そうじゃなければ「許し」は無いし「罪を憎まず人を憎む」で何ら問題ない、と思います。←今の世相は、こんなもんでしょう。
サブプライムでも不況不景気でも失政でも何でもいいけど、件の大学生のような精神が無いか見られないから、感情論が幅を利かせるんでしょ。そりゃ当たり前なんじゃないの? としか言えんのよ。悪いけど。
システマチックな問題とか俯瞰的に物事見るなら感情論なんか些細な問題だし拘泥するのは馬鹿のやることでもあるだろうけど、結局世の中はこーゆー類の馬鹿さに満ち溢れてて馬鹿が基準で回っちゃう的な側面だってあるわけだから、そーいった馬鹿さ加減に対して如何に厳しく亦寛容であるかが、肝要観葉涵養慣用なんじゃないかな? と勝手に思う次第。です。
久々に、いいニュース。ニッポンはまだまだ頑張れると思いました。
投稿: 野ぐそ | 2008.10.17 23:50