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2008.10.09

ベッカー教授のきっついギャグをどう考えるか

 一万円は割るかもしれないけどもう昨日あたりで株の低迷も底になるかなと思ったら今日も結局下げていた。45円の下げというと微妙だが、現下9157円と聞くとすごいな。ふと昔長谷川慶太郎が株はいずれ5万円になるとか言っていたのを思い出した。ははは。どうでもいいけど長谷川慶太郎ってご健在? ウィキペディアを見るにご健在のようすってか、「大局を読む 2009年―長谷川慶太郎の (2009)」(参照)っていう本もあった。2009年って、私の理解だと来年なんだが。
 それにしてもなんで日本の株がこんなに下がるのだろうか。とか考えるまでもなくプレイヤーの多くが外人なんでお家の自己資本強化のためにキャッシュが必要になったということか。でもそうだとすると円を売る? そのあたりの動向はよくわからない。でも円は上がっている。各国協調して利下げをしても日本は下げないからなのか。日銀の深慮遠謀というのは白川ゼミを聞いていてもわからないものだな。それとも全世界流動性の罠状態だとこれで正解なんだろうか。
 株は日本だけが下げているわけではなく全体として下がっているし、この下げようはものすごいな。先月29日、ニューヨーク株式市場が777ドル過去最高に下げたといっても下落率でみると6.9%なんでそうたいしたことないんじゃないのと思っていたし、それからちょぼちょぼしていたが、が、下がる下がる。こりゃやっぱ大恐慌ってやつかな。ロバート・サミュエルソンはなんて言うだろうかと6日のコラムを見ると”Is It 1929 Again?”(参照)とあり、まあそういうテーマでコラムを書かざるをえないだろうな、さて、と読むと毎度ながらの楽観論的な空気に戻っていた。つまり、これって、大恐慌じゃなくて、普通の不況でしょ、と。このコラムは昨日の日本版ニューズウィーク2008.10.15でも「大恐慌とはここが違う」とタイトルで訳されていた。ので訳を引くと。


 いま思い出すべきなのは、景気低迷が国家的な惨事につながることはほとんどないということだ。アメリカでは40年代後半から、景気後退は10回起きている。持続期間は10カ月で、月間失業率の最高値の平均は7.6%、今の米経済は、ほぼ確実に景気後退に陥っている。ただし、9月の失業率は6.1%に達したものの、第二次世界大戦後の最悪レベルまでに上昇することはないだろう。

 ちょっと楽観が過ぎるかな。
 さらに6日のコラムということもあるが株価も楽観視していた。

 今の株式市場の状況も、それほど悪くない。戦後、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数が20%以上下落した下げ相場は10回起きている。下落率の平均は31.5%で、73~74年と00~02年には50%近くに達した。現在の下落率は10月3日の時点で、07年10月のピークから30%のダウンになっている。

 まあ、さらに下がったし、まだじわっと下がるかもだけど。

 29年10月の株式市場の暴落から始まった大恐慌は、戦後のこうした景気低迷とは別物だ。32年7月には、株価はピーク時から90%近く下落。企業や一般市民は10年にわたって苦境にあえいだ。40年になっても失業率は約15%だった。

 たしかに大恐慌と比べるとそうなのだが。がというのは、そのあたりの歴史はちょっと別の見方もあるかもしれない。
 R.サミュエルソンにしてみると、景気後退はガチだが、賢く対応していけば、「単なる景気後退で終わるかもしれない」としている。が、ここでも欧州のようすまで含めるとまだまだ微妙な問題もありそうだ。
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ベッカー教授の経済学では
こう考える
教育・結婚から
税金・通貨問題まで
 なかなか楽観な人はいないものなかと見ていたら、ベッカー教授(参照)がウォールストリート・ジャーナルに面白いものを書いていた。”We're Not Headed for a Depression”(参照)だ。標題からもわかるように、「我々は恐慌に向かっているわけじゃない」ということだ。副題も面白い”No, this isn't the crisis that kills global capitalism”。「ちがうってば、目下の危機でグローバル資本主義が死んでしまうわけはないよ」と。で、でも、どうして?

In order to promote a much smoother functioning of the financial system, it is paramount to distinguish between the immediate steps needed to cope with the present crisis and the long-run reforms needed to reduce the likelihood of future crises. Let's start with the short-run fixes.

 現状の危機と長期を見据えた未来の対応をわけて考えなさいと。さすが、ノーベル賞経済学者さんだ。で大恐慌はどうだったかという話から切り出されるのだが、そこはサミュエルソンと同じ。飛ばす、と。
 ポールソンのバズーカ砲についてだが。

The main thrust of the new banking law allows the Treasury secretary to purchase bank assets up to $700 billion in order to increase the liquidity of the banking system. These assets are of uncertain worth since there is essentially no market for many of them, and hence they have no market price. The government hopes to create this market partly through using auctions, where banks would offer their assets at particular prices, and the government would decide whether to buy them. I would have preferred starting with a smaller dollar value of purchases, and up the amount if the situation deteriorates further.

 不良資産を買い取ったはいいけど市場がないよと言われているわけで、そこはあちこちで議論される。でも、ベッカー教授は安く売り払ってしまえと言っているようだ。そうなのか。だとして理由がよくわからない。

Partly because many consumers are repelled by the intention to bail out companies and their executives who made decisions that got the companies into trouble, the new law includes income and severance pay limits for executives whose firms seek government help. Even though one cannot think much of executives who led their banks into such a mess, that is a bad precedent since it involves too much micromanagement of bank operations. Moreover, such salary controls can be evaded by very generous fringe benefits.

 米庶民は今回の救済策で税金でウォール街の金持ちを救いやがってと怒っているのだが、ベッカー教授は細かいこと言わないほうがお得だよというのだ。ここもよくわからない。
 その先読んでへぇと思ったのは、ベッカー教授は、ベアー・スターンズは救済するんじゃなかったなとある("Still, the bank bill with its huge bailout does suggest that the $29 billion bailout of the bondholders of Bear Stearns in March was a mistake. ")
 強気なのはわかるが理由がよくわからない。またバズーカ砲に戻って。

Although the media has made much of this possibility through headlines like "$700 Billion Bailout," such large losses are highly unlikely except in the low probability event that the economy falls into a sustained major depression. Indeed, with efficient auctions, the government may well make money on its actions, just as the Resolution Trust Corporation that took over many savings-and-loan banks during the 1980s crisis did not lose much, if any, money.

 そんな大金は要らないし、不況が長引くわけでもない。うまく立ち回れば儲けも出るという感じだ。ほんとか。
 そのあと、資本主義を規制すればより未来に危機を招く。デリバティブOK、空売りOKという話になる。
 それってノーベル賞経済学者ならではのネタってやつなのかとちらと脳裏をよぎる。
 さて締めに向かっていくのだが。ここでロケット団みたいに見栄を張る。

Is this a final "Crisis of Global Capitalism" -- to borrow the title of a book by George Soros written shortly after the Asian financial crisis of 1997-98?
(ジョージ・ソロスがアジア経済危機の直後に書いた本のタイトルを借りると、現況は「グローバル資本主義の危機」なのか?)
The crisis that kills capitalism has been said to happen during every major recession and financial crisis ever since Karl Marx prophesized the collapse of capitalism in the middle of the 19th century.
(資本主義を終焉させる危機というのは大きな景気後退のために言われてきたものだし、19世紀半ばにカール・マルクスが資本主義の崩壊を予言してからも経済危機は言われてきたものだ。)
Although I admit to having greatly underestimated the severity of the current crisis, I am confident that sizable world economic growth will resume before very long under a mainly capitalist world economy.
(私は現在の危機の深刻さを軽視していることは認めるとしても、主に資本主義世界のもとでそう遅くなく巨大な世界経済成長が再開すると確信している。)

 考えようによっては"a mainly capitalist world economy"に絶妙な含みがあるが。
 で、結語へ。

Consider, for example, that in the decade after various predictions of the collapse of global capitalism following the Asian crisis, both world GDP and world trade experienced unprecedented growth thanks to the power of market competition on a global scale.
(たとえば、アジア危機に続く各種のグローバル資本主義崩壊予言後の10年後を考えてごらんなさいな。世界GDPと世界貿易はグローバル・スケールの市場貫徹のおかげで未曾有の成長を経験したもだった。)

 んだ、んだ。で?

The South Korean economy, for example, was pummeled during that crisis, but has had significant economic growth since. World economic growth will recover once we are over the present severe financial difficulties.
(韓国経済を例にすれば、あの危機で沈んだものの、それから目覚ましい経済成長を遂げた。世界経済は、一度現在の厳しい経済困難を乗り越えれば、成長するだろう。)

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ベッカー教授、ポズナー判事の
ブログで学ぶ経済学
 って、ネタですか。ベッカー教授のギャグをどう考えるのか悩むところ。
 ベッカー先生、現在の韓国の姿をご存じないのか、知っていて、このきっついギャグをかましているのか。

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コメント

バブルの頃は高株価の正当化として(?)「PERは80倍が標準だ」なんてことを聞いた気がします。最近は20倍が目安。でも、20倍のどこに根拠があるのかというと、別にないですよね。PBRはまだしも。
価格の変動自体については、下手なファンダメンタルズ分析よりもテクニカル的な話の方が役立ちそうです(私は両刀遣いの新井邦宏さんを尊敬しております)。
というか、戻ったら売りたい人が山ほどいる状況で上がるには、よほど買いが多くないと...

投稿: vdna | 2008.10.09 18:41

日本で、金融機関に公的資金を注入することの是非が論じれらていたときも、この「流動性の罠」という言葉がしばしば使われていたように思われます。加藤寛先生がテレビでこのタームを使って経済解説されていました。

金融不安を説明するときには、すごく便利な小道具なのかなと思っています。

投稿: 流動性の罠? | 2008.10.10 08:54

実言うと、私は、21世紀に入ってもまだ少しの間、長谷川慶太郎先生のお考えを信じていたんです。でも、そんなに恥ずかしいとも思っていません。

長谷川先生のお考えというのは、製造業が社会における富の主たる源泉である、というテーゼが基礎にあるのだろうと思っています。結局、経済の基盤をモノにおいているわけですね。

ところが、経済を主導する要因が情報となり、知識の生産的配賦が社会的な富の主たる要因になると、修正マルクス経済学的な長谷川先生の経済予測、社会予測もどんどん当たらなくなっていく。

長谷川先生は、現場をよく見てものを考える方だそうですが、現場を見るものの見方にバイアスがかかっていれば、現場の見え方に不適切なフィルタリングがなされてしまうのは致し方ありません。

この点については、長谷川先生と同様なのが唐津一先生なのだろうと思っています。

投稿: 長谷川先生について | 2008.10.10 09:04

本日、2008年11月28日に、韓国の先月の経常収支が過去最大規模の黒字であると報道されました。

原因は、国際原油価格の落ち込みであるとのこと。

資本収支は、過去最大の純流出であるとのこと。

中央日報の報道だから、ニュースソースとして、メディアは信用できるのだけれど、当局がどこまで本当のことを言っているのかな、と申し訳ないけれど少し疑ってしまいます。

市場の反応は鈍かったそうです。経常収支は赤字が続いていたそうです。人間困り果てると、うそをつきたくなくても、うそをつかないといけなくなる場合が多いから、市場はうそを見破っているのかな?とか邪推してしまいます。

以上、本日のマクロな韓国の姿の一側面です。日本も、貿易収支をごまかさないですんでいてほしいものです。こういってしまうと、韓国の当局がうそをついていると思い込んでいるということになってしまうのだろうけれど。そして、いずれ日本が統計をごまかし始める(そして裏帳簿を作り出す)と推測しているということになるのだろうけれど。

投稿: 過去最大規模の黒字 | 2008.11.28 08:57

日経が本日、韓国が8年半ぶりに純債務国に転落したと報道しています。
同様の話は、朝鮮日報も報道しているみたいです。

昨日、経常収支の大黒字を報道した後にこれだから、なんとも申し上げようがありません。

昨日が昨日だから、今日も、知ってしまった以上はコメントを入れる責任があるのだろうと思って、一応報告させていただくことにしました。
とはいえ、私には事態の対処能力が皆無なので、変な責任感はどうにもならない無責任さと表裏一体なわけですけれど。

投稿: 純債務国転落!? | 2008.11.29 08:36

長谷川慶太郎先生と唐津一先生の景気予測、未来予測がいつからか裏切られ続けてきた原因は、従来の製造業や土建業の市場と技術が成熟して、製品が市況品化するものが増えてきたからかもしれません。

それでも、日本が欧米先進国に比べてましなのは、日本人は、うまくいっているものをさらにうまくいくように努力を重ねる国民性があるからだと思われます。事実、長谷川先生や唐津先生がおっしゃるように、日本が世界最先端の分野を占めているとか、日本企業が世界シェアのほとんどを占めている産業と製品は数多く存在するのです。

それでも、市況品ばかり力を入れて生産しても、間接費をまかないきれませんから、売り手の言い値の商売ができる利幅の大きな産業に力を入れないといけません。

当分は、機会を見つけてはうるさく、超伝導、核融合、核化学と騒いだほうがよいのかもしれません。

本当に超伝導産業と核融合発電と核化学工業が未来の基幹産業になれれば、わたしは、21世紀の勝海舟ということになるのだろうと思います。全部はずれたら、ただのつまらないうそつきで、長谷川先生や唐津先生の支持者の方々達から後日相当な非難をこうむると思っています。

投稿: 市場と技術の成熟 | 2009.01.19 10:09

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