パパと一緒に食べたいの♪
諸君10月号「ブログ論客かく語りき これが〈格差〉の現実だ」にジャーナリストの佐々木俊尚さん、「アンカテ」主宰アルファブロガーessaさん、「天漢日乗」主宰アルファブロガー天漢さんの鼎談があって、それはそれで面白いには面白いのだけど、出だし近く、ブログ論壇というのは75世代が中心かなみたいな話があり、それはあれかな、06年8月の文藝春秋に梅田望夫さんの「グーグルを倒すのは'75世代だ」のエッセイの流れだなとか読んでいくと、その梅田さんは47歳とあり、ファイナルベントさんは50歳というのがあった。え?と思うより、ちょっと他人事のような感じがしたのは、俺っち50歳をしっくり受け止めてない部分はある。と、枕。
でも、50歳という、自分に積み上げられた年月もだけど、それより自分が生まれた昭和32年、西暦1957年という時代の感触を思うこともある。世代論的には私は、団塊世代から新人類世代への中間の徒花のようなものでそのヤーヌス的な心性もある。というのが、標題「パパと一緒に食べたいの♪」である。
「パパと一緒に食べたいの♪」というのを見て、頭にメロディラインが浮かんでいるのはどの年齢までだろうか。そう思ったのは、たぶん私より5歳ほど若い世代の方ではないかなと思うが、「日曜日には父がラーメンを作ってくれたものでした」といった述懐を聞きいたおり、脊髄反射で私が「パパと一緒に食べたいの♪」とツッコミすると、「それってCMですか?」と逆に問われたことがあったからだ。仮にその方が私より5歳分お若いとして昭和37年生まれ、つまり1962年生まれということになる。そう考えてみて、なるほどな、もしかすると、「パパと一緒に食べたいの♪」のメロディラインは想起されないのかもしれない。
「パパと一緒に食べたいの♪」は明星食品のインスタントラーメンのCMである。
明星即席ラーメンのうた雨が降ってる 日曜日
坊やドロコンコ なぜ泣くの
あそこの角で ころんだの
どうしてそんなに 急いだの
明星即席ラーメン
パパと一緒に食べたいの
今50歳以上の人なら誰でも歌えると思う。省略した二番まで歌える人は少ないだろうが。
これはいつの歌だったか。「60年代の食文化」(参照)というサイトの情報が正しければ、明星食品「明星即席ラーメン」(スープ別添え)は1962年の製品なので、62年ではないか。
そう考えるといろいろ辻褄が合う。私が5歳ころで、まさに「明星即席ラーメンのうた」に出てくる「坊や」くらいの年齢だ。そして、ここが歴史の情感としてわかりづらいのだが、「パパと一緒に食べたいの」は5歳の私の心情そのものだった。「雨が降ってる 日曜日」に、パパと一緒に食べたいものはインスタントラーメンだった。
これはその時代のパパからも言えることだろう。知人で私より数歳お若い高級官僚の娘さんというかお嬢さん(今ではもちろんおばさん)がいるが、子供のころやはり、パパとラーメンを食べていた記憶が鮮明にあると言ってた。パパは昭和一桁の世代だろうし、そのころの戦中・戦後の若いパパは子供にインスタントラーメンを作ったものだった。
しんみりくる感じの話に無粋なメモが割り込むことになるが、「明星即席ラーメンのうた」はまさに「即席ラーメン」というキーワードが歌詞に入っているのだが、先のサイトの写真から見る商品名は「明星ラーメン」であり、英語でINSTANT RAMENとはあるものの、そこには「即席」という言葉も「インスタント」という言葉もない。明星食品の会社沿革(参照)でも1962年に「スープ別添の明星ラーメン発売」とのみある。ウィキペディアの明星食品(参照)の項目ではこうある。つまり、「明星即席ラーメン」という呼称はやはりない。
スープを粉末化して小袋包装する技術いわゆる「スープ別添方式」を開発し「明星ラーメン」を商品化する。この形が即席麺の標準型として現在まで受け継がれ、ラーメンのみならず、焼そば・和風麺が各社から商品化された。
ところで、この粉末スープであることの意味合いは、先行するチキンラーメン(参照)が味付け麺だったことの対比にある。チキンラーメンのほうが湯を注ぐだけだったが、明星ラーメンのほうには多少なりとも調理的な手順があり、おそらくそこが「パパと一緒に食べたいの♪」という商品コンセプトでもあったのだろう。そして、にもかかわらず、それがインスタント食品であることを強調するためにCMソングでは「明星即席ラーメン」となったのではないかな。
さらに重箱の隅をつつくようだが、現在のインスタントラーメンの「インスタント」は当時はこの歌のように「即席」だった。いつ「インスタント」が定着したのだろうか。先の「60年代の食文化」のサイトには次のように考察している。
「インスタント」という言葉が最初に使われたのは1960に発売された森永製菓の「インスタント・コーヒー」だったと言われています。
即席ラーメンの草分け、「チキンラーメン」は1957年ですから、インスタント以前の商品だったのです。即席ラーメンをインスタントラーメンと呼んだのは1960年代に入ってからということになりそうです。
そうかなとも思うがはっきりしたことはわからない。インスタント・コーヒーについても、私の記憶を辿ってもはっきりとはしない。
「パパと一緒に食べたいの♪」の明星即席ラーメンのうたに話を戻すと、該当の商品が出来た年代に加えて、なぜ私がこのCMソングを聴いていたかなのだが、つまり、62年ごろ何の番組でこのCMを聞いたのか。私の記憶では、日曜日昼時の10チャンネルの番組の一連ではなかったかと思う。だから「雨が降ってる 日曜日」なのではないか。ついでだがこの時間帯では「男は度胸、女は勘定。お手手出しても足出すな」の「がっちり買いまショウ」(参照)も懐かしい。
懐かしのCMソング大全2 1959-1966 |
曲目リスト
1. まみむめもりながの歌
2. いろはのいの字の磯じまん
3. 明治JPチョコレート
4. ペンギンさん
5. バンロンの唄
6. アルペンの歌
7. 不二家ハイカップ
8. アサヒビールはあなたのビール
9. やっぱり味の素
10. くすりは山之内
11. 伊東に行くならハトヤ
12. 渡辺のジュースの素の歌
13. キャンロップの歌
14. 不二家パラソルチョコレート
15. ミュンヘン・サッポロ・ミルウォーキー
16. サロンパス
17. ヴィックスの唄
18. テル
19. アツギのタイツで
20. アツギ・シームレスストッキング
21. パント錠の唄
22. グッと飲んだわグロンサン
23. タケダ・オープニング・テーマ
24. 長生きチョンパ
25. スカッとさわやか
26. ネスカフェ43粒スプーンに一杯
27. チキンラーメンのうた
28. 明星即席ラーメンのうた
29. 渡辺インスタントココア
30. 明治マーブルチョコレート
31. ブタブタ子ブタ
32. アスパラでやりぬこう!
33. ハウス・バーモントカレーの唄
34. 春日井シトロンソーダ
35. パンシロンの歌
36. ワンサカ娘(レナウンの唄)
37. 明治チョコレートボール
38. かっぱの唄
39. 日石灯油だもんネ
40. ヘーイ,ミスター・ダッシュ
41. ワタシニモウツセマス(フジカシングル8)
42. サクマのチャオ
43. うちのテレビにゃ色がない
44. フェザー・オソリソリ
45. 明治ポリック水虫出たぞ
46. 意見が合うのは
懐かしい、泣けるかと思っていたが、いくつかはあまりにビビッドに記憶が蘇り、当惑というのか幻惑感があった。「ヘーイ,ミスター・ダッシュ」とか思わず、脊髄反射でエコーしてしまいましたよ。ブルースカーイ、ブルースカイ♪
明星即席ラーメンのうたが「ロカビリー3人男」ミッキーカーチス(参照)というのは知っていたが、歌詞まで彼だったのか。
「伊東に行くならハトヤ」が野坂昭如というのは知っていたが、「不二家パラソルチョコレート」もそうだったのか。そういえば、パラソルチョコレートって今でも不二家で売っているんだろうか。あ、あった(参照)。
ミニマルみたいな「キャンロップの歌」も野坂か。やっぱり佐久間のキャンロップだよな。 「サクマのチャオ」の歌は天地総子。「ワタシニモウツセマス(フジカシングル8) 」の台詞は扇千景(参照)かあ。
「ネスカフェ43粒スプーンに一杯」は弘田三枝子、う、うまいなあ。っていうか、弘田三枝子はレナウン娘だよな。
ああ、なんかもう気分は爺。
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コメント
一句出来ました。
コラじじい 音符付けるな パクリ野郎 (字余り)
お下劣ですね。すいません。
して、昭和48年8月6日生まれ享年35の尾道野ぐそ@B層としましては、75世代と言えば長姉(昭和36年生まれ47歳)が望田梅夫タンと同い年じゃねーかー!! と思いつつ感じることを述べますに。
そのへんの世代の連中は考え甘いだろ常考!! ってのが常にありますな。宇宙少年とかガンダム少年とかベルバラお嬢さん(←…姉ちゃん…)とか、そーゆー類。とりあえず無駄に明るいことと、現実?感覚からビミョーにズレててパンが無ければケーキを食べればいいじゃない理論に走りがちなとこと、今どき下層民はそんなんじゃないぜ? みたいな現実に対する認証不足なこと、辺りを標準装備してるよーな感じがします。何を標準装備しとるんだオイ、って感じ? 感じ。…姉ちゃん…。
あとねぇ。世間はそこまで厳しくない的なホワホワ感がどっかしらあるから、いい面としては「だから穏やかな人が多い」でもあるし、悪い意味から言うと「現実無視しがち」なのもあるんじゃね? って感じですわ。
先だっての三笠フーズ事件にしても、そもそも破格の安値だからってことで平気で食いつく輩が商売やっててそれで「ナントカ」回ってる局面があるのに、中途半端な上品根性で「それ駄目」とか言っちゃったもんだから、どーにも成らんようになったでしょうが。
何はともあれ「カネを払いたくない」か「現実問題として払えない」連中があっちゃこっちゃにゴマンと居て、兎に角安ければ何だっていいよの気分があるからこそ「信頼関係」みたいな美辞麗句で誤魔化して商売やってたわけじゃんか。
毒米食ってるヤツなんか皆貧乏人ばっかりだろうが。
んなもんさー。「安く仕込んだ時点で」何が入ってるか分からんことくらい当たり前だろっつーの。今んなって「知らねー」とか「取引先を信頼してたのに~」とか、どんだけ甘チャンやねん!? って感じなんですけど。
あーやって何か(企業でも役所でも信頼関係でも何でもいいけど)に依存しまくって心配事ナシよ状態キープして、そっから商売頑張りマッスルな輩が多いのも、75世代の特質だよ。意識的か無意識的かは知らんけど、誰かに守られてることを大前提にしてないとやってられんよーなセンスの御方が多いですわ。…姉ちゃん…。
だから、梯子外されたくらいで大騒ぎするんだよ。板子一枚下は(ある意味)地獄で御座いますよ? って知見やセンスが無さ杉。
私らB層にも分かりやすく言うなら、巨人の原監督みたいな輩なんだよ。75世代って。「だから穏やかな(ように見える)人が多い」ってことくらいが美点で、他にこれといった取り柄も何も無いんだから、愛だの恋だの馬鹿みたいなこと言ってねーで、イチロー東照大権現@享年34のよーに現実見据えて着々と地歩固めろよって感じ。
目先の1本のヒットが将来の栄光を生むんだよ。
別に内野安打でゴキブリ走りでもいーじゃない。
それで世界制覇(笑)できるんだったら、ホォ~ォムリャンなんざ要らねーよっつーの。
って感じ。感じただけ。
投稿: 野ぐそ | 2008.09.20 22:15
いいモン食うにはカネが要る!! って言われてもカネ無いか回らないから毒米でも何でも「食えるから大丈夫」って言わなきゃマズい層が全国そこかしこに散らばってんのに、今さら消費者様の権利もへったくれもあったもんじゃねーよ。
じゃあ品質保持のため超頑張るからその分値上げで御座いますことよ? って言われたら、そっちの方がもっと嫌だろうがよ。つーか、好き嫌いじゃなくて耐えられんだろが。経済的に。
中途半端に気高いこと言っちゃったが為に我が身に「じゃあ金払え」が帰ったとして、それで対応できるんだったらナンボでも言やぁいいよ。でも、出来ないんじゃないの? って思うんだけどさ。
三笠フーズエントリーで消費者にも選ぶ権利が御座いますとかゆっちゃってる人居たけど、そんなんマヤカシやろうがと。選ぶ権利なんか実質ねーよってことに気付けと。言いたいんですが。言いません。言ったらボコられるからね。
カネ払わない消費者は消費者じゃねーんだよ。
75世代で偉くなる方々は、そのへんからビミョーにズレてる方が多いように感じます。それが「幸せ」ってヤツでしょうか? 馬鹿の野ぐそには計りかねます。
投稿: 野ぐそ | 2008.09.20 22:27
懐かしい歌っていうと、私にとっては、やっぱり、なんと言っても、クイーンの「愛にすべてを(Somebody to Love)」です。この歌をはじめて聞いたのは12歳のときです。
この曲のおかげで洋楽にはまれて、英語の学習がそれほど苦痛にならないですんだのだろうと思っています。
現在ほど英語の音声教材が充実していない時代だったので、クイーンでも、ベイ・シティ・ローラーズでも、キッスでも、あの当時のヒット洋楽は、私にとっては重要な英語の音声教材でした。
その後の経過を経たいまでは、一番好きなポピュラー洋楽というと、ザ・フーの「四重人格」です。
近く、ザ・フーが単独来日するみたいですけれど、キース・ムーンもジョン・エントウィッスルもいないので、ライブに足を運ぶ気はありません。
言及すべきでないのかもしれないけれど、近日、リチャード・ライトが逝去しましたが、ピンク・フロイドも今後、残りの3人で再結成して、ウォーターズ=ギルモアコンビの新曲満載のオリジナルニューアルバムをリリースして、ワールドツアーを実施しないといけなくなってしまうのかと案じています。余計なお世話ですが。
サブプライムローン問題の結果、ヨーロッパの銀行がいくつか突然死してしまって、ウォーターズとギルモアとメイスンの口座がいくつも灰燼に帰してしまったら、60代になったいまさらそういうことをしないといけなくなるのかとも考えてもいます。
まあ、残り3人のピンク・フロイドが再結成されて、金銭事情が原因でオリジナルニューアルバムをリリースして、ワールドツアーをしなければならないような世の中になったら、私なんか間違いなく餓死するほかないと思ってます。もっとも、あの3人の銀行口座がいくつもパーになる世の中になったら、レコーディングもワールドツアーもできないか。そのときは間違いなく、世界大恐慌の再発という事態ですから。
投稿: 懐かしい歌 | 2008.09.21 11:34
「パパと一緒に食べたいの♪」わかんないですね。
ラーメンといえば父のスクーターの背中につかまって、夕暮れ時からどこからともなく駅前に集まってくる屋台へ食べに行くものでした。
屋台のチャーハンも美味しかったです。
黒くて大きな中華なべを振って炒めつつ、仕上げに日本酒(一升瓶の口元を指でふさいだのを一瞬ずらして)を振りかけ盛大に水蒸気が立ち上らせていたっけ。
いい香りがしてふっくらパラパラに仕上がったあの焼き飯がもう一度食べたいなあ。
投稿: 昭和37年生 | 2008.09.22 20:28
私も昭和32年生まれです。よろしく。
ところで私の記憶の中では最後の部分ですけど「パパと一緒に食べたい"の"♪」ではなく、「パパと一緒に食べたい"な"♪」なんです。
「どうしてそんなに 急いだの」の後のこたえが、「パパと一緒に食べたいな」ではこたえになってないなァと幼心にもヘンに感じたもので印象深く、ずっと今日までヘンなまま記憶に残っていました。でも、「パパと一緒に食べたいの」ってことなので51年間の引っ掛かっていたものが取れそうです。うん!"な"でなくて"の"だな、やっぱし!!ありがとう。
でも、どうして聞き違えたんだろう???????
投稿: hontosa | 2008.10.28 20:02
"The Wall"に収録されている"Goodbye Blue Sky"は、全曲3和音で構成されているのではありませんでした。事実誤認です、すみません、訂正します。
でも、デヴィッド・ギルモアの芸が、ヴォーカリストとしてもかなり細かいのは、世間で周知のはずですから、ダビングが、全曲3和音でなくとも、この点はそれほど本質的に重要なこととは思われません。
投稿: 事実誤認です、すみません | 2008.12.16 07:46
今では、ピンク・フロイドというと女声コーラスが当たり前ですが、バンドとして意識的に女声コーラスを使ったのは、アルバム"the final cut"の"not now john"が初めてだと思います。もちろん、「ダーク・サイド(狂気)」でも女性の声は重要だけれど、意識的にすごく効果を狙って女声コーラスを起用したといえるほどとは思えません。
"not now john"で女声コーラスを使うというアイデアは、おそらくジェームズ・ガスリーが出したのだと思います。それで、デヴィッド・ギルモアの再結成ピンク・フロイドもソロのロジャー・ウォーターズも女声コーラスを頻繁に使うのに抵抗がないのだと思っています。
その、女声コーラスの起用の濫觴ですが、意外だったのは、デヴィッド・ギルモアのソロアルバム第1弾の2曲目の"There's no way out of here"と言う曲で、あまり上手とはいえないけれど、とにかく意識的に女声コーラスを起用して作品作りをしているということです。最近気がつきました。
ピンク・フロイドにすごく細かくてうるさくてこだわりのある評論家さんたちが、この点では詰めが甘いのを不思議に思っています。今後はいろいろな方向から研究が進むことを期待しています。
"not now john"以降になると、女声コーラスの起用では、ギルモアよりもソロのウォーターズのほうが優れた使い方をしていると思います。おそらく、客観的に誰でもそう思うはずです。これは、ボブ・エズリンより、ロジャー・ウォーターズのパートナーのプロデューサーたちのほうが女声コーラスのアレンジには優れた人たちであるということだと思われます。
でなければ、デヴィッド・ギルモアよりロジャー・ウォーターズの方が女性のコーラスシンガーたちに対して(そしてミキシングエンジニアに対して)注文が厳しいということだと思います。こっちの説も説得力があるかもしれません。
ピンク・フロイドというと、シド・バレットのグルーヴか、コンセプトアルバムのコンセプトか、ブルージーなギターソロしか言及されないことが多いのだけれど、もっと、多角的に芸の細かさに耳を傾けてほしいものだと思います。
J-POPでも、このくらい緻密な研究対象になるようなアーチストに早く出現してほしいと思います。現時点でJ-POPのアーチストにたいしてここまで細かな研究態度をとると、かえっていやみになってしらけてしまうだろうから。
投稿: 女声コーラスの濫觴 | 2009.01.11 16:21
ギタリストとしてのポール・マッカートニーの話なら、今までにもたくさん言及されてきたし、これからも、いろいろな人たちが突っ込んだ話を展開してくれるのだろうけれど、リズムギタリストとしてのロジャー・ウォーターズの話なんてするのは私以外にめったにいないと思います。
ロジャー・ウォーターズのリズムギターの演奏というと、「アニマルズ」のオープニングナンバーと「ドッグ」の一部、「ザ・ウォール」なら「マザー」のアコースティックギターのパート、「ファイナル・カット」のたとえば"your possible past"、それからソロアルバムの「プロス・アンド・コンス・オブ・ヒッチハイキング」のリズムギターパートが目立ったところ。ロジャー・ウォーターズが優れたギタリストと思うかどうかについては、客観的な話をするのが難しくて、ひとりひとりのリスナーの好みで、優れているか凡庸か優れてはいないけれどひどく個性的か判断は分かれるだろうと思います。
ただ、"Amused To Death"のリタ・クーリッジのラストパートで演奏された数小節のアコースティックギターのアルアイレは、詩人としての優れたセンスを発揮したような演奏だと思うので、ギタリストとしてのロジャー・ウォーターズもちゃんと切り口は用意されていると思っています。
ロジャー・ウォーターズもシド・バレットのバンドのメンバーでなかったら、それなりのリズムギタリストとして評価される機会を持つことができたのかもしれません。もっとも、彼は、本業のベースギタリストとしては、演奏家としての名声は獲得できていません。この点はポール・マッカートニーとえらく違う。
デヴィッド・ギルモアも、「ダーク・サイド(狂気)」のモンスターヒットのおかげでスーパーギタリストヒーローになったけれど、この人の才能は、本質的にはアレンジャー・プロデューサーが主たる才能なのだろうと思います。ギルモアは、どう考えてもジェフ・ベックやスティーヴ・ハウみたいな演奏家の巨匠とはタイプが異質で、むしろ、タイプとしては、マーク・ノップラーみたいにギターに歌を歌わせる人だと思います。
まあ、本質はアレンジャー・プロデューサーだとは言っても、瀬尾一三先生よりもデヴィッド・ギルモアのほうがはるかに優れたギターの演奏家なのはどう考えても間違いありませんが(笑)。
投稿: enneagram | 2009.04.05 07:42