« 三笠フーズの事故米、雑感 | トップページ | [書評]NHKテレビ英語が伝わる!100のツボ (西蔭浩子) »

2008.09.12

ファニーメイとフレディマックと中国の物語

 米国政府系住宅金融、連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)への公的資金投入が決まったことについて、経済音痴の無名ブロガーがちょっとメモを書いてみるといった趣向。読まれるかたいたら、ちょっと陰謀論臭くなるかもしれないので、その点はご注意あれ。
 私はFF兄妹救済は実際にはないんじゃないかと思っていた。日本の新聞は早々に日本の失敗から学んで公的資金投入せよと言っているのも、日本の失敗をせせら笑った米国への意趣返しではないか、と。
 G7後のころは産経記事”「公的資金注入は非現実的」 ポールソン米財務長官”(参照)のような話を私はけっこう真に受けていた。


ポールソン米財務長官は11日夜、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後に記者会見し、低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融危機への処方箋をめぐり、公的資金の注入や大規模な政府介入は「現実的な計画として検討されているとは思わない」との認識を示し、米国として採用する考えがないことを強調した。
 ポールソン長官はまず、米経済について「長期的には堅調だが、住宅・金融市場の下振れリスクは依然残されている」との認識を示した。会議では、連邦住宅局(FHA)による融資保証の拡大など、政府の住宅ローン対策を各国に説明し、そのなかで「プログラムには公的資金や大規模な政府介入は含まれていない。有益よりも害のほうが多い」との立場を表明した。

 三十六計瞞天過海(参照)というか、ポールソンは北京オリンピック中も同じ念仏を繰り返していた。時事”公的資金注入を改めて否定=政府系住宅金融問題で - 米財務長官”(参照)より。

休暇のため中国・北京を訪問中のポールソン米財務長官は10日放映されたNBCテレビのインタビューで、米政府系住宅金融会社の連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)と連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)の赤字決算について、住宅市場の調整の大きさを考えると「驚くほどではない」と述べるとともに、「(公的)資金の投入は計画していない」と改めて強調した。収録は9日行われた。

 今にしてみると「休暇のため」が絶妙な意味があったわけだが。
 北京オリンピックも大過なく終わり、黙示録のラッパが黄土に鳴り響くかと思ったら米国からか。声東撃西。さすが紫禁城、カラフ王子の歌声を聞いて、ポールソンは、その長い修羅場のキャリアで初めて眠られぬ日々を過ごすことになった。9日のテレグラフ”Fannie Mae and Freddie Mac: After the rescue, Paulson's real work begins”(参照)より。

In the days leading up to Sunday's unprecedented rescue of Fannie Mae and Freddie Mac, Hank Paulson couldn't sleep.

"This is the first time in my career I had trouble sleeping," admitted the US Treasury secretary, who led the swarm of government agencies and regulators who surrounded the two ailing mortgage agencies and delivered their poison - in the form of an all-consuming nationalisation unlike any seen in financial history.


 テレグラフの論調は好意的ともいえるが、そうでもない意見もあるブルームバーグ寄稿コラム”ポールソン殿、「眠れぬ夜」に同情できません-Mギルバート”(参照参照)より。

 同長官の罪はほかにも数多い。まず、米住宅公社のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が会計規則を都合良く使って資本不足を糊塗(こと)していたことを、ウォール街のお仲間のモルガン・スタンレーが確認してくれるまで認めなかった。そんなことは、当局者も知っていたか少なくとも疑っていたに違いないし、それが当局の仕事だろう。
 何よりの罪は7月に、他人(納税者)のカネを使うことなく危機を乗り切れると議会を丸め込んだことだ。同月の「バズーカ砲」理論は、伝説的魔術師、ハリー・フーディーニも顔負けの奇術だった。ポールソン長官は2大住宅公社に無制限に投資する権限を議会に求めたとき、「水鉄砲をポケットに入れていれば使わなければならなくなる公算が大きいが、バズーカ砲ならば取り出さずに済む場合が多い」と説明した。

 好意的に見れば、ポールソンはばっくれでやっていける絵を描いていただろうし、その絵のリスクの対処もしていた。というか、そこまでだったら、快便・快眠だったのではないだろうか。
 コラムニストMギルバートはその意図をこう見ているが。

 多分、ポールソン長官は両社株を空売りしている投機筋をけん制しようとしたのだろう。しかし、根本的な住宅危機を解決する新たな取り組みなしに投資家が両社株について見方を変えるはずもない。むしろ、財務省が両社を救済する権限を確保したことで、両社株が間もなく紙くず同然になる公算は大いに高まったかもしれない。
 あるいは、長官は米政府の「暗黙の保証」がかつてないほど「明示的」になったのだから、債券投資家が両社に、より低金利で資金を出せば良いと考えたのかもしれない。しかし、実際にバズーカ砲を発射しなければ明示的に保証したことにはならないだろう。発射する必要がないと言うのは無理

 違うんじゃないだろうか。いや違うというのも違うのだが。
 北京オリンピックは瞞天過海だったのか。このあたりちょっときな臭い感じになるだが中央日報コラム、9日”【噴水台】天国と地獄”(参照)が興味深い。まず前提。

 米財務省は通貨危機に陥った外国に対しては露骨に押さえつける。そうでありながらも自国の金融危機は手を出さないのが常だ。道徳的弛緩を問う米議会の鋭い追及を恐れているからだ。それでついた別名が「ヤヌス」。その米財務省が一昨日、ファニーメイとフレディマックに2000億ドルの公的資金を注ぎ込むことにした。国有化の措置が始まったのだ。「非常に規模が大きく、このまま破産すれば金融システムの崩壊を引き起こす恐れがある」。ポールソン財務長官は世界金融市場の混乱を意識した不可避な選択として説明した。

 だがこれをコラムは否定する。

 しかし事実は違う。もともと米財務省がこだわった戦略は現状維持だった。こっそりと非常金を充てながら両社の正常化を待った。こうした努力に中国が決定打を飛ばした。中国銀行が両社の債券を売却し、手を引き始めたのだ。8月に中国銀行が売却した債券だけでも4兆ウォンを超える。このニュースが伝えられると、バフェットは「ゲームは終わった」と語った。米財務省も海外資金の脱出を防ぐには他に方法がなかった。

 この先が快調すぎて洒落っぽい。

 天国と地獄が入れ替わるのにかかった時間はわずか5年。2003年、中国では新型肺炎SARSが広がり、海外金脈が枯渇した。慌てた中国共産党は米財務省の顔色をうかがった末、改革カードを取り出した。憲法を改めて私有財産を保障した。国有資産を売却し、勇敢に金融市場も開放した。今は逆だ。一人で世界金融を料理していた米国があわれな身分だ。中国の恐るべき威力の前に周囲の視線をうかがっているところだ。「今では派生金融商品こそが大量破壊兵器」というバフェットの言葉を実感する。世界金融は断崖上の戦地と変わらない。

 この面白い過ぎるお話がどのくらい信憑性があるのか、洒落を楽しむネタなのか。
 前兆はあった。7月24日付けレコードチャイナ記事”中国銀行頭取「米住宅公社債券はコントロール可能」”(参照)より。

24日付中国証券報によると、中国の4大商業銀行の一つである中国銀行の李礼輝頭取は23日の会見で、保有する米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の発行債について「リスクは完全にコントロール可能だ」と述べた。同行が同債券についてコメントするのは初めて。ただ具体額は言及しなかった。

 これがけっこう重要だと思うが。がというのはさて、実際のところどのくらい中国は兄妹に入れ込んでいたか?

建設銀行でも広報担当が23日、同行のファニーメイとフレディマックの債券保有額が70億米ドルに上るとする一部報道は、根拠がなく事実と反するものだとコメントしている。

米住宅公社債券を巡っては、中国の大手6銀行の保有額が約300億米ドルに上るとの報道がある。なかでも中国銀行の保有債券は総資産の2.6%を占める200億米ドルに達するとされている。


 瞞天過海の売り飛ばしはあったのか?というネタが活きるのは、その実態がどのくらあるのかによる。
 9日のサーチナ記事”サブプライム直撃の住宅金融 中国が債券大量保有”(参照)ではこう。

米国政府が政府系住宅金融の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に対して公的資金投入を含む救済策を発表したことに絡み、ことし6月末現在で中国系銀行が2社の債券を計240億米ドル(約2兆5785億円)保有していることが分かった。

 微妙という感じだ。
 というか、中国系銀行に限らない中国からのカネが、7月以降、単に損失をびびってパニック売りに出たんじゃないか。
 とすると、ポールソンの「休暇」もそのあたりが目的だっただろうし、その後は統制が取れない中国に眠れぬ日がやって来たという感じもする。
 というか、この話、つまりはあの話題の変奏というか序奏なんじゃないか。あの話題というのは「極東ブログ: ポールソン&ウー、国際熟年男女デュエット、熱唱して引退」(参照)だ。読み返すと、アルファブロガーぐっちーさんがなかなか香ばしい感じがするが、それでもこの話が兄妹あたりから炎上するとはなんだが、三十六計打草驚蛇か。というので、ポールソン北京の休暇の話に戻ると、テレグラフのコラム”China threatens to trigger US dollar crash”(参照)がきつかった。概要はこう。

The Chinese government has begun a concerted campaign of economic threats against the United States, hinting that it may liquidate its vast holding of US Treasury bonds if Washington imposes trade sanctions to force a yuan revaluation.

 中国がドルを使って国策をやるということだ。

Two Chinese officials at leading Communist Party bodies have given interviews in recent days warning, for the first time, that Beijing may use its $1,330bn (£658bn) of foreign reserves as a political weapon to counter pressure from the US Congress. Shifts in Chinese policy are often announced through key think tanks and academies.

Described as China's "nuclear option" in the state media, such action could trigger a dollar crash at a time when the US currency is breaking down through historic support levels.


 とはいえそんなことをすれば米中共倒れではないか、ついでに日本も。なので。

Xia Bin, finance chief at China's Development Research Centre (which has cabinet rank), kicked off what appears to be government policy, with a comment last week that Beijing's foreign reserves should be used as a "bargaining chip" in talks with the US.

"Of course, China doesn't want any undesirable phenomenon in the global financial order," he said.


 マジに受け止めると、脅し程度でということだろう。が、中国を見ていると、彼らは内部の権力闘争のために外の世界にお構いなしみたいなことをやりかねないが。
 このあたりの話が、そう妄想とも言えないのは、フィナンシャルタイムズ”China's two trillion dollar question”(参照)でも指摘しているが、巨大なドルを何に使ったのかよくわからないことだ。

How do you spend $1,810bn? That is the question facing China's State Administration of Foreign Exchange. The world's largest investment fund, it has grown by $400bn this year alone. Having reserves far in excess of what it needed for insurance and currency interventions, it rightly decided to diversify and set up the China Investment Corporation, the country's $200bn sovereign wealth fund. As the Financial Times reveals today, however, Safe itself has been investing abroad. Its foreign equity positions are greater than those of CIC. This raises questions for the developed world and China.

 話がちょっと粗くなってきたが、要するに。

  1. 兄妹救済は中国とは関係ないよ。
  2. 中国に関係ありだけど、中国政府は米国になんとか協力したかったんだよ。
  3. 中国に関係ありで、パニックが始まったんだよ。

 さてどの筋書きか。
 3番目じゃないかな。そうかどうかは、ここから中国がどう米国を支える行動に出るかということからわかるはずだ。
 この図柄のなかで日本はというと、日本はFF兄妹にはあまり関わってないっぽいから、ドル資金防衛の問題かもしれない。

|

« 三笠フーズの事故米、雑感 | トップページ | [書評]NHKテレビ英語が伝わる!100のツボ (西蔭浩子) »

「経済」カテゴリの記事

コメント

>日本はFF兄妹にはあまり関わってないっぽいから、ドル資金防衛の問題かもしれない。

堀古氏が指摘しているとおり、GSE債が政府保証されたということは、「確かな事は、今回の決断により、米国債の裏付けにはベアスターンズが保有していた証券化商品290億ドルに加え、住宅市場の動向に大きく左右される政府系住宅金融機関が保有していた巨額の住宅ローンに対する保証が入ってしまったという事実です。」

そして、その米国債をたらふく抱えているのは日本だということです。

http://plaza.rakuten.co.jp/isWallStreet/

投稿: リバタリアン | 2008.09.12 16:30

経済音痴の無名ブロガーがちょっとメモを書いてみるといった趣向>文字通りには受け取っていませんけど、経済を語るというか、読むということは、普段、山師のように株と付き合ってしまっていると、客観視できない嫌いがありますね。いろいろ判断するまでに及びません。数日前、他所で「シニョリッジで財政再建すればいいのに」という意見を聞いて、実はびっくりしたのですが、極論でも、その考え方というのは然りと思ったり。経済って面白そうですけど、なんだか届かない分野に思えるんですね。

事実が良く見られない私は2番かしら、とか思ってしまいます。日本はおおよそ、蚊帳の外的ですから。
ふむ、もうこのエントリーは5~6回読み直しているんですけど、ほとほと自分にがっかりしました。

投稿: ゴッドマー | 2008.09.12 20:39

米政府系住宅金融:2社債券の継続保有、米財務省が日本金融機関に要請
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080913ddm008020135000c.html
 米政府による政府系住宅金融会社2社の救済策をめぐって、米財務省が2社の発行する債券を継続して保有するように日本の大手銀行などに事実上要請していたことが12日分かった。

 日本の金融機関は2社の債券を15兆円超保有しており、大量売却による金融市場の混乱を防ぎたい狙いがあるとみられる。

 米政府は7日に連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の救済策を発表し、その後にマコーミック財務次官らが日本の大手行や生命保険協会に救済策の内容を電話で説明した。大手行などは「債券の継続保有を求める趣旨」と受け止めている。

 米財務省の高官が日本の金融機関に直接働きかけるのは異例。【斉藤望】

毎日新聞 2008年9月13日 東京朝刊

投稿: K | 2008.09.13 15:12

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ファニーメイとフレディマックと中国の物語:

« 三笠フーズの事故米、雑感 | トップページ | [書評]NHKテレビ英語が伝わる!100のツボ (西蔭浩子) »