麻生首相がやって来て小泉元首相が去った、で?
麻生首相がやって来て小泉元首相が去った、で? 私には何の感慨もない。麻生首相に期待もない。いやまったくないわけでもなく景気回復につながる政策をしてほしいと思う。だけど与謝野馨経済財政担当相に増税以外の何が期待できるだろう。中川財務相金融相兼任の「兼任」って何かの冗談か。いやいや、”日銀、8日連続の資金供給…合計16兆円以上”(参照)とか効くかもしれない。
小泉元首相が去ったというか政界を引退した件についても何にも思わない。いやこれもしいて言えば66歳の引退は他の自民党議員に比べると若いようにも思う。が、当面無益な待望論を打ち消すにはよいか。というか、小泉元総理は長年の夢であった郵政解体以降すでに引退していたようなものだ。事実上安倍元総理がダメになるのを見越していたし、福田内閣にも関心はなかった。小池百合子にマジで期待していたとも思えない。
で? この件で何か、いやほんと何にもない。一応世相の話題でもあるし、一応政治の話題でもあるのだけど、何にも思い浮かばない。海外紙だと、こういうときにどんな話をするのだろうか。と見ていた。が、ワシントンポスト社説では特に言及は無かったようだ。そりゃ、ないんじゃないかな。
ニューヨークタイムズにはあった。”The Return of Taro Aso”(参照)がそれ。「麻生太郎の復帰」というけど、何が復帰、あるいは再来なのだろう。タイトルの語感がよくわからない。出だしを読むと萎える。オーニシ記者が書いたのか、みたいなクオリティ。
Japan’s new prime minister, Taro Aso, is well known --- and not fondly remembered --- by Japan’s neighbors as a pugnacious nationalist. As foreign minister from 2005 to 2007, Mr. Aso soured relations with China and South Korea and raised tensions throughout the region, praising the achievements of prewar Japanese colonialism, justifying wartime atrocities and portraying China as a dangerous military threat.
(日本の新首相は、日本の近隣諸国に有名だが、好ましくというのではない、喧嘩を好む国粋主義者として有名ということ。05年から07年の外務大臣時代、中韓の関係を悪化させ、この地域に緊張をもたらし、日本の戦前の植民地主義の達成を称賛し、戦時の虐殺を正当化し、中国を危険な軍事的脅威として描いた。)
麻生さんを弁護する気はないが、そうだったかなと思うし、罪状あげつらったどくさに付け足した最後の"China as a dangerous military threat"(軍事的脅威としての中国)についていえば、それほど変な認識でもないのではないかというか、ニューヨークタイムズさんのお国と同じ見解のような気がするが。
というわけで、執筆子、もしかすると麻生さんがクリスチャンというのも知らないのかもしれないなみたいな間抜けな雰囲気が漂う。
Now, the power brokers in the long-governing Liberal Democratic Party have made him Japan’s fourth prime minister in just two years and rebranded Mr. Aso as a “pragmatist.”
(今や長期の自民党政権の黒幕は彼をこの2年間の日本で4人目の首相とし、麻生氏を「現実主義者」のブランドに変えてみた。)
というブランド変更が”The Return of Taro Aso”ということで、ようするに中韓に嫌われる国粋主義は自民党の黒幕だという感じの戯けた陰謀論のように書いてあるが、それをいうなら中韓受けのよかった福田元首相こそ黒幕の産物だった。ニューヨークタイムズは日本のこと知らないのだろう。くだらねえ社説とか思ってざっと読んでいく。
Nationalism is enjoying a disturbing political revival because many Japanese fear that their country, once Asia’s clear economic leader, is losing ground to booming neighbors. The answer for that doesn’t lie in the nostalgic fantasies about Japan’s ugly past for which Mr. Aso has become well known.
(国粋主義が不穏な復活を遂げつつあるのは、多くの日本人にとって日本国がかつてアジアの明確な経済的な盟主であったのに、今や台頭しつつある近隣国に対して地歩を失っているからだ。この解答は、麻生氏が知悉する日本の醜い過去についての郷愁的幻想にはない。)
よく言うよだけど、その先に、おや?
Instead, Japan needs to modernize its economy by completing the market reforms begun by Junichiro Koizumi, the former prime minister.
(そうではなく、日本は経済を近代化する必要があるが、それは小泉純一郎元首相が着手した市場改革を貫徹することだ。)
えええ、そこで小泉賛美が来るわけ? お茶吹いちゃいましたよ。これって社説じゃなくてジョークか。
ジョークといえば、フィナンシャルタイムズはニューヨークタイムズみたいにオチに持ってくるのではなく冒頭でカマしていた。”A temp in Tokyo ”(参照)より。タイトルがまた面白いのだけど、意訳すると「日本政府の日傭い労務者」かな。
One feature of today’s Japan is the prevalence of contract workers in a once-stable labour market. Now even the prime minister holds a temporary job. Japan’s previous two premiers, Shinzo Abe and Yasuo Fukuda, lasted one year and 11 months respectively. The latest incumbent, just sworn in, will do well to beat even that poor showing.
(今日の日本の特徴の一つは、以前は安定していた労働市場における契約労務者の蔓延である。今や首相ですら日傭い労務者となれるのだ。日本の前首相二人、安倍晋三と福田康夫はそれぞれ1年または11か月職を得ることができた。就任したばかりの目下の現職は、体裁悪くても最善を尽くすんじゃなかろうか。)
この嫌味な文章にしびれるが、さらにビリビリと。
Taro Aso, a blue-blooded aristocrat known for his slips of the tongue and penchant for teenage comics, is the latest gamble by a Liberal Democratic party desperate to retain its long hold on power.
(舌禍と青少年漫画偏愛で有名な、名門貴族出身の麻生太郎は、長期の権力維持のために焼け糞になった自民党の最近の賭けなのである。)
うまいぞ、こら。嫌味がすべるすべる。
Like the haken shain, the dispatched workers sent by temp agencies, Mr Aso will have to please his new employees, the Japanese people, who have dismissed the last two prime ministers via lousy opinion polls. If he does not pass the test, he will be sent back to the Liberal Democrats to be replaced by yet another short-contract hopeful.
(日傭い派遣業者が送り込む労務者である"haken shain"こと派遣社員のように、麻生氏は雇い主である日本国民を喜ばせる責務がある。というのも日本国民は前二人の首相を世論支持低迷によって解雇してきた。もし彼がこの試験に落第すれば、別の希望に満ちた短期労働者と交代に自民党に送り帰されるだろう。)
うまいぞ、こら。って、ネタがすべりすぎだよな。実際のところどうしろと? え、また小泉ですか。小泉は中国との関係をこじらせたが、として。
Mr Koizumi’s rhetoric was sometimes misleading. But he still provided a framework in which issues such as tax, spending, social welfare and Japan’s international role, could be debated.
(小泉氏の弁舌は時に間違っていた。しかし、それでも彼は、税制、歳出、社会福祉、国際的役割など検討可能な枠組みを提出した。)That framework has been lost. Japan has been drifting. Almost no meaningful legislation has been passed since the opposition Democratic Party of Japan seized the upper house last year.
(その枠組みはすでに失われた。日本は漂流してきた。昨年参院を民主党が牛耳るようになってから有意義な法案は通らなくなった。)
まあ、なんだかんだいっても小泉は偉かったという感じなのか、フィナンシャルタイムズ。
では、麻生はどうすべきかというと。
Mr Aso’s chief task is to break this logjam so that Japan can regain some sense of purpose. Unfortunately, he holds few cards.
(麻生氏の主要な仕事は停滞を打ち破り、日本に目的意識を持たせることだ。残念ながら、彼にはその持ち駒はほとんどない。)
つまり、麻生首相はダメでしょと。じゃ、どうすんの?
The best Mr Aso can hope for, then, is to provoke political realignment by enticing opposition parliamentarians into the LDP fold. Paradoxically, if he led his party to electoral defeat that might serve Japan better still. At least it would give the opposition a chance to show what it could do --- or how spectacularly it could mess things up.
(麻生氏が望みうることは、対立議員を自民党に組み入れて政界再編を喚起することだろう。おかしな話だが、彼が選挙を敗北に導けば、日本の事態はよくなるかもしれない。少なくとも、反対政党に何ができるかを明示させるチャンスになるからだ。つまり、どんだけめちゃくちゃなことになるか、わかるよ。)
ほぉ。
Neither is likely. Japan’s premiership is likely to remain an on-the-job training scheme for some time yet.
(ってなことはでも起きないだろう。もうしばらく日本の首相の仕事は、新人研修的な状態に留まるだろう。)
なーんだ、やっぱりネタか。
しかしまあ、国際的に見れば、日本の目下の内政はこんな感じに見えるのだろう。
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