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2008.09.19

AIG救済、雑感

 リーマンは救済されなかったが、AIG(American International Group)は救済された。リーマンを見捨てた時点では、米国家による救済はこれで終わりメッセージとも受け取れる感じはあったので、その後AIGが救済されると、後付の理屈はいろいろあるせよ、恣意的な印象は否めない。
 今朝の朝日新聞社説”ドル資金供給―市場安定に方策尽くせ”(参照)も「リーマンを見殺しにしたかと思えばAIGを救済し、市場が動揺したら世界中にドル供給網を張る。米当局の対応には泥縄の観も否めない」とぼやいてみせたが、まあわからないわけでもない。
 近く僧正の申し開きもあるだろうし、僧正が役職ついた時に書いた「極東ブログ: バーナンキ祭の後」(参照)でワシントンポストのコラム”Inflation: Man vs. Machine”(参照)に触れたが、僧正はもともと”he proposed creating a machine to crank out the central bank's interest-rate decisions.(彼は中央銀行の利率決定を量産する機械の製造を提案した。)”という考えのおかた。FRBの運営など理論どおりにメカニカルに遂行すればいいといった考えの持ち主でもあるので、FFは○、リーマンは×、AIGは○というのも機械的な説明があるのではないか。いや皮肉。目下の問題は金利ではないし。
 「極東ブログ: リーマン破綻、雑感」(参照)で触れたフィナンシャルタイムズは、AIG救済についてはなんと言うのかなと気にしていたが、17日付けの”Changing the rules of the game”(参照)がそれ。曰く「ゲームのルールは変更だ」ということ。救済基準の変更ということでもなさそうだがと読み進めていくと、ちょっとどきっとしたことが書いてあったので、エントリでも少し触れておきたい。


Just two days after allowing a large investment bank to fail as a stern statement of free market discipline, Ben Bernanke, chairman of the Federal Reserve Board, and Hank Paulson, Treasury secretary, in effect nationalised American International Group, the insurance giant. There was no alternative, but these dramatic steps show how finance will never be the same again.

 出だしはしけた感じで事後確認。他に手はなかったじゃん(There was no alternative)ということ。そのあたりは後で補足もあるだろうし、いくらでも補足はありうるのだろうが、問題は"these dramatic steps show how finance will never be the same again"ということだ。ようするにもう金融の世界は同じルールでやっていけないよということ。以前の”Kill or cure for the Wall Street malaise”(参照)の"the banking system as we know it has failed."と同じ意味に受け取っていいだろう。未来の金融の世界は今と同じではない。
 では、どうなるというのだろうか。その前に。AIGを救わざるをえないということについてフィナンシャルタイムズはこう弁解する。

But AIG was too important to go under. Default on its $441bn exposure to credit default swaps and other derivatives would have been a global financial catastrophe.

 CDS(参照)やその他のデリバティブ、都合4410億ドル(47兆円)が不履行となると世界経済の崩壊(global financial catastrophe)となるらしい。私にはよくわからないがフィナンシャルタイムズが言うのだからそうなんだろう。その先の説明には焼け糞感が漂う。

As with Freddie Mac and Fannie Mae, the nationalisation of AIG has caused problems for future policymakers, but future systemic moral hazard is of secondary importance when the system itself is at risk.

 世界経済のシステムが崩壊することに比べるなら、モラル・ハザードなんて二の次だよ(moral hazard is of secondary)、と。あれだな、吉本隆明がよく言っていたが、食うに困ったら盗みでもなんでもやれみたいな話だな。
 フィナンシャルタイムズはこの続きで、AIG救済のスキームはよく出来ているし、僧正が金利を下げずにカネを投下したのもよしとしている。それはそうではあるんだろうが。
 私がどきっとしたのは、しかし、そんなことではなく、次の指摘だ。

Of potentially greater importance, however, the reach and power of the state has been greatly extended. The Bear Stearns bail-out involved the Fed moving to cover investment banks. With the AIG takeover, it has moved into insurance.
(潜在的な一層の重要性は、しかしながら、国家の対応範囲と権力が大幅に拡大されてしまったことだ。ベア・スターンズ救済によって国家の中央銀行が投資銀行を兼ね、AIG救済では保険業務まで担うことになってしまった。)

 国家が巨大な投資銀行と保険を含み込んでしまったというわけだ。
 国家なんてものは小さければ小さいほどいいという吉本主義者の私にしてみれば、米国のこのデブデブ状態は社会主義みたいなものだし、結果論からすれば、それはないでしょ的な存在だ。

In the long run, policymakers must turn their minds to how systemically important institutions should be governed without creating over-powerful regulators, and whether any parts of the financial system might best be kept in the public sector.

 米国家は結局投資銀行と保険を運営しなくてはならないはめになったということ。
 フィナンシャルタイムズもそこを憂慮している、ということでもある。

Governments are currently rightly preoccupied with crisis management. The next challenge will be to work out how far the state should stay as more than just an umpire.
(政府が危機管理に没頭しているのは目下とのころは正しい。だが、次の課題は、国家が審判以上の役回りをいつまでこなしていくかということだ。)

 国家が投資や保険なんかやるもんじゃないよ、というのだが、はて? なんかを思い出すな。そういえばつい最近まで、国家が投資や保険をやっていた経済大国があったっけ、どこだったけ、極東のあたりに。
 洒落にならない。日本がようやく、国家規模の投資銀行である郵貯と保険屋である簡保のワンセットの郵貯民営化への糸口を見つけたのに、本家米国では投資銀行と保険屋を今から国営化ですかい。米国最新トレンドってやつか。
 っていうか、日本の郵政解体もそう簡単なことではないから、実際の展開に当たって見直しも必要なるのかもしれないというのは、わからないことではない。私は、小泉郵政選挙の際、その支持をしたために小泉マンセーに見られて、ひどい揶揄や中傷や嫌がらせを受けたが、私は小泉支持者ではなく、十五年来の小沢一郎の支持者だったし、彼も郵政の自主運営を唱えてもいた。郵政民営化は小沢がやるべきだと思っていた。あの選挙の時でも、郵貯と簡保の民営化を彼は認めていた。
 が、話がだいぶずっこけるが、それが、郵政民営化を潰す点で国民新党と一体化するという話を聞いたときは、がっかりした。郵政民営化の見直しというのはあってもいいと思う。だが、大樹をバックにした国民新党の路線を呑んでのことではないでしょ。
 今しがたニュースを見たら、民主党と国民新党の合同はお流れになったそうだ。それはよかったねと思ったが、日経記事”民主、国民新が合併断念”(参照)によると、決裂した理由は、「国民新党は対等合併と民主党の党名変更を求めていたが、民主党が応じなかった」ということらしい。戦陣訓其の二第八「名を惜しむ」、あるいは義経の弓流しの故事か。なんかもう……。

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コメント

郵政解散の小泉さんの8.8会見の確か二日か三日後ぐらいに、小沢さんも自分のサイトでビデオメッセージを配信してましたね。
確か、「郵貯も簡保も役割を終えたから廃止します」みたいな事を言ってたかと思います。
最近の小沢さんは若干ヤケクソになってるように見えますね・・・。

投稿: kaze | 2008.09.20 03:29

なり振りかまってられないのが正解
理論的に美しくとも結果が伴わなければ意味無い

投稿: KAZ | 2008.09.20 09:06

総選挙の表層的な争点として郵政民営化が浮上してくる可能性が低いと思われる状況で、民主党のこの一連の動きは不可解でした。恐らくは純粋に選挙対策の話なのでしょうが、ここに再編を睨んでの布石を期待するのは楽天的に過ぎるでしょうか。

投稿: Idyll | 2008.09.20 09:59

>私は、小泉郵政選挙の際、その支持をしたために小泉マンセーに見られて、ひどい揶揄や中傷や嫌がらせを受けたが、

 誰にやられたん? 浅草系の謎集団? どっか別の系列の人? 誰にやられたんか、後でコッソリ教えてね?

>私は小泉支持者ではなく、十五年来の小沢一郎の支持者だったし、彼も郵政の自主運営を唱えてもいた。郵政民営化は小沢がやるべきだと思っていた。あの選挙の時でも、郵貯と簡保の民営化を彼は認めていた。

 死んだ子の年を数えても始まりませんわ。

>が、話がだいぶずっこけるが、それが、郵政民営化を潰す点で国民新党と一体化するという話を聞いたときは、がっかりした。

 それが日本の政治の本性よね。じゃけぇこそ、「分かった上でのお付き合い」じゃろに。今日び。今までの日本人がやっとったような「分からんけれども信じましょ」じゃあ、駄目よね。そんなん言うてるからズボラにええようにされるんじゃろ。
 そこがシッカリしとらなんだら、郵政民営化をやっても簡保民営化をやっても、お役所病が大企業病になるだけで、実質何にも変わらんのですけど。
 それやったら、倒産やっちゃう大企業よりは倒産できない国営の方が、因縁付けたらどーにかなるって結果が見えるだけ、まだマシってヤツ。まともに働かん役所よりは、病んでる大企業の方がよっぽど信用ならんのですが。てゆーか、信用の置けなさではどっちも同じだっつーの。マシとかマシじゃないとかゆってる場合じゃねーっちゅの。

>郵政民営化の見直しというのはあってもいいと思う。だが、大樹をバックにした国民新党の路線を呑んでのことではないでしょ。

 国民新党風情は地元の人間からでも足元見透かされて愛想尽かされて、比例代表票以外に持ってくもんが何も無いような乞食集団ですけー、居っても居らんでも、どーでもええんですけど。次の選挙で全員討ち死にしてくれたら、ええのにね。
 ホリエモンに比べたらナンボかマシゆうだけで、そもそも「カレー味のうんこか、うんこ味のカレーか」くらいの意味付けでしか無いんだから、そんなもん常識から考えて「どっちも嫌、絶対食わない」に決まってんだろうと。
 亀井が好きで支持する馬鹿なんか地元の爺さん婆さん以外に居るわけが無い。どっからドー見てもホリエモンは詐欺師にしか見えんから、差し当たって追い払うのに亀井が要る、ゆうだけですがな。ホリエモンが居らんのやったら、亀井も要らんちゅーの。今すぐ死んで呉れれば万々歳だっちゅーねん。ナウ!! ナ~ウ!! 今すぐ!!

 それがなぜ分からぬお前らは!? って感じ。

 そういう意味で、小沢も同類項ですわ。あんなのわざわざ好む馬鹿はどーしょーもない。要るから使う、そんだけでしょうが。それ以上の人格的な要求をするんだったら、キューバかベネズエラに移住して大統領と仲良くしてろって感じ。こないだテレビで観たけど、あれはあれでいい国でしょ。

 そっち逝けって感じ。

投稿: 野ぐそ | 2008.09.20 15:37

日本を社会主義と非難した、米英の金融関係者が、今なんて答えるか聞いてみたいですな。

投稿: K | 2008.09.20 15:53

権力者が財政に困り果てたときに使う伝家の宝刀といえばあれです。

徳政令。言い換えれば借金の踏み倒し。

言う前にわかっていた方も多いのではないでしょうか。

鎌倉幕府も室町幕府も乱発していたようだし、幕末の長州藩も薩摩藩も藩政再建はまずは借金の(事実上の)踏み倒しから。

この話はこれ以上はしないことにします。

投稿: (よくある?)歴史の前例 | 2008.09.21 13:02

 徳政令が多い国って、そんだけ馬鹿で図々しい連中が多いってことですよ。そーゆー前例が山ほどあるから、金持ちがケチになって金出したがらない。貧乏人が貧乏から抜け出したかったら、自力でコツコツ貯めるか、いいトコの企業or役所に勤め上げて退職金貰うかどっちかにしろって感覚になる。だから、馬鹿でもクソでも仕事にしがみ付いて辞めない。辞めないから腐る。
 その繰り返しだろうに。

 そーゆー因縁をいい加減断つ意味でも、馬鹿がしくじったら自殺上等くらいの勢いでキチッと厳しくやんなきゃ駄目よ。甘いことばっかりゆってる馬鹿を野放しにして真面目にキチッとやってるヤツが踏みつけにされる社会の方が、よっぽど歪んどるやないけ。

投稿: 野ぐそ | 2008.09.22 00:47

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