原油高騰の雑談、2008年前半版
テーマはある意味で深刻だけど雑談です。またまた与太話と言ってもいいかもしれないけど、専門家でもないことだし、ブログなんで気楽にさらさらと始めますか。
最初に、原油高騰がここまで上がると予想していたかと自問すると、いや予想してなかったな。ホットマネーが溢れていて、米国威信の低下でドルが下がるのだから、それにヘッジして原油が上がるだろうとは思ったけど、ここまで上がるという勘はまるでなかった。そのダメな勘で言うなら、1バレル120ドルくらいで「このチキンゲーム止めようぜ」の空気になると思っていた。そうはならないようだ。まだまだやるらしい。正気かよ。正気のようだ。
先日のNHKのクローズアップ現代だったか、どの回だったか忘れたが、原油の適正価格は70ドルだったか80ドルだったか、そのくらいで、それに投機資金が流れ込んで現在の高騰になったのだというグラフを描いていた。
そうなんじゃないかというのと、ホントかねという思いがあい半ば。実際のところ、目下の原油高騰は投機によると言われているのだが、どうやってその議論が裏付けられていて、どの程度なのかは私なんぞにはわからない。でも投機の部分は大きいのではないか、うーむ、120ドルくらいがチキンゲームの正しい水準ではないか、とかまたぐるぐる思う。
原油の価格だが、私はこれから下がると見ている。いやまるでポジショントークとかじゃなくて、ここの部分も勘だ。よって与太でしかないのだが、中国経済がクラッシュするでしょとまでは蛮勇無き身としては口が裂けても言えないが、成長率は鈍るし、そもそもエネルギー効率が悪過ぎなので一息つけよ中国といった感はあるだろう、し、石炭のシフトやそれにまつわるいろいろがあるのではないか。いずれにせよ、中国の原油消費はそのまま伸びていくことはないんじゃないか。
でも中国以外の国では原油の需要は伸びているのではないかだが、概ねそうだとは思う。そのあたりの需要の伸びと投機とドル低下のバランスは今の景色の彩色でいいのか、なのだが、なんとなくちょっと違うんじゃないか、印象としてだか。
原油高騰なんで必然的に愉快なオイルピーク説も散発的に出てくるが、むしろ諸通貨の低落に関連して、実際には、昔の金本位制じゃないけど、原油本位制的な部分もあるかもしれないなとは思う。このあたりは以前、「極東ブログ: 本物のダイヤモンドと偽物のダイヤモンドの違い」(参照)を書いたときに思ったのだが、宝石としてはダイヤモンドよりルビーやサファイヤのほうが希少性があるのに、ダイヤモンドが価格維持されるのは、ようするにメタメタぐるぐるだけで価格維持される仕組みがあるから、ということらしい。同じようなことが原油にもあるのだろう。すでに石油メジャー陰謀論が成立できないほど、原油は産油国の国家管理になっているわけで、まあ、そんなものなのかな。
というわけで、原油自体が、デフレ下における貨幣みたいに、ほっとけおけば増殖していくわけだから、実質金利と名目金利の議論みたいに、貨幣側の金利に見合わなければそのまま出し惜しみして原油金利みたいなものが増加するのだろう。備蓄っていうか地中に埋めたままにしておくっていうか。巨大な箪笥預金というか。
ただ、どっかでオイルサンドとかその他のエネルギーへのシフトも散発的に起きるだろうから、産油国のチキンゲームには抑制があるだろうとも思っていたが、そのあたり、なかなかそうもいかないようだ。
先のクローズアップ現代の話ではオイルサンドから精製される石油は世界の需要の数パーセントにしかならないらしい。そうなのか。そうなんだろうな。となるとあとは原子力のシフトということになるし、実際そうはなるのだろう。フランスとか原子力で電力の7割だしな。この分野の技術を握っていてよかったね、ニッポン、とか喜んでいいのかよくわからないが。
で、これからどうよ?
最初のカタストロフ的な兆候は、インドネシアとかとか国家が石油の価格を維持・補填しているあたりから発生してくるのではないかな。別の言い方をすると民主主義や市場経済が成熟してない国の暴動的な、国家総ぐるみ的な馬鹿騒ぎが起きるのではないか。いやはや、なんか考えたくもないけど。その点日本は、まだまだええ湯加減かもしれない。
もう一つ危険な兆候は、なんだかんだ言ってもイランは潤うということだ。日本ではなぜか報道されていないが、イスラエルがある日突然ぶっち切れ起こす可能性はこのところ妙に懸念されている。というか、意外と米国大領線をメタ的に決めてしまうのはその構図だったりして。桑原。
以上は手前のバカ頭でひねった与太話だが、以下はもうちょっと与太からずれて雑話。
日本版ニューズウィーク6・25に、尊敬するロバート・サミュエルソンが面白いコラムを書いていて、そうかあと素直に思ったということ。元ネタは「オイルショックの学習効果」。オリジナルタイトルは「Learning From the Oil Shock」で、英語のオリジナルはワシントンポスト(参照)で無料で読める。
私は、サミュエルソンに、このチキンゲームは早晩終わるよ、を期待していたのだが、コラムの結論は、なかなか微妙。まずは、このまま高騰でGOGOGOという流れで話が進む。サミュエルソンは、ここでジェフリー・ルービンの説を借りて話を進める。で、結局、原油高騰で何が起きるか? もちろん、アメリカにということだが。
まず、アメリカの製造業が潤うというのだ。へえ。理由は、輸送コストが上がるから、地元産業へのシフトが起きる、と。
そういえば、地球温暖化を防止するために、国内産業を育成しましょうなんて与太話も最近どっかで読んだ気がする。そりゃいいとか皮肉につぶやいたが、サミュエルソン御大も似たような感じになってしまったのか。いや、さすがに地球温暖化じゃないよな、そりゃな。
いずれにせよ、輸送コストの問題は、原油高とバランスする部分は出てくるだろうし、その要因は大きくはなるだろう。日本でいえば、東京集中はさらに進むのでその周辺に食料品関連の産業が再組織化されるのではないかな。
次に。FRBがインフレコントロールしづらくなる、と。へぇ。食品とエネルギーを除いたコア・インフレの場合は、ある種の自動調整的な動きになるらしいのだが、原油価格と食品価格が上昇し続けると、そうもいかないらしい。そういうもんか。そしてこの傾向は当分続くとのこと。
日本はどうだろ。食品とエネルギーは上がるが他はデフレのままだろう。そのあたり、よさげなバランスになる? いやこれは冗談にしても悪過ぎるな。
三番目に。住宅建築業と自動車産業の低迷はさらに深刻化する、と。それはそうだろう。ただこの側面では、抑制の反動が出てきているそうだ。それこそ地球温暖化を防止によいのではないか。冗談抜きで。
さて、処方箋。そんなのがあるのかよくわからないがみたいな感想を私はもつが。
まず、投機を問題にしてもしかたないよ、と。そうかなと思う。理由は詳しく書かれていない。
次に。米国内でエネルギー供給を増やせ、と。そりゃそうだろ。書かれていないが、オイルサンドとかもあるし、と思ったら、バイオ燃料も増やせと。うーむ、うなるな。問題をこじらせるんじゃないかという懸念も私はもつ。
結末近くなって、サミュエルソンは、こんなことを言う。
ガソリン価格高騰は、木くずや生ゴミなどから作られるバイオ燃料の開発を促進させるかもしれない。自動車研究センターのデービッド・コール所長は、バイオ燃料の生産コストは1リットル当たり、約0・26ドルの範囲内だろうと言う。これが本当なら、現在のガソリン価格よりはるかに安い。
そのためには、原油価格が下がったときに、バイオ燃料の生産者が倒産しないように、原油の下限価格を50~80ドルに設定すべきだ。これは関税を使うことで簡単に導入できる。
むむむ。その含みはなんだ?
締めはこう。
原油価格は予測不能だし、もし価格が崩壊しても、これで永遠に安価な石油が手に入るという幻想をアメリカ国民がいだくことはないだろう。オイルショックの苦い経験は、それほど遠い昔のことではない。
原文を読むとわかるが、関税の話はコールによるもの。それと原文と訳文は微妙に違う。
Finally, we need to realize that high prices may stimulate new biofuels from wood chips, food waste and switch grass. Production costs of these fuels may be in the range of $1 a gallon, says David Cole of the Center for Automotive Research. If true, that's well below today's wholesale gasoline prices. To assure new producers that they wouldn't be wiped out if oil prices plunged, we should set a floor price for oil of $50 to $80 a barrel, says Cole. This could be done with a standby tariff that would activate only if prices hit the threshold. Oil prices are unpredictable, and should a price collapse occur, Americans wouldn't be deluded into thinking we've returned permanently to cheap energy. We've made that mistake before.
サミュエルソンはあまり大胆に言ってないというか、蛮勇無きか、けっこう韜晦して言っているけど、でも、短期的には原油が暴落するリスクをヘッジしつつ、産油国の政治から米国は独立できるように政治をしたらあ、ということかな。
たぶん、日本もな(オイルマネーとかなんとかマネーで日本売却完了前に)。
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コメント
昨日テレビ朝日の地球危機2008を観ました。
ブッシュがバイオ燃料の増産を2007年12月に宣言したことから、米国の農民は大豆の作付けを減らしトウモロコシの増産に走ってました。ましたというのは先般の中西部の洪水でその農民の広大な畑は全滅。
一方、アフリカでは飢えで配給のトウモロコシを奪い合っているのに、英国の会社がバイオ燃料を絞れる毒性のある植物をアフリカの農民に委託生産しています。農民はトウモロコシ生産を止めて金になるその植物の苗を無料でもらい植えました。しかし、当初、水はいらないと言ってたのが嘘で、育たない。
トウモロコシに戻そうと思っても、英文契約で10年間はその植物を植えることになっており、勝手に土地の売買もできないようになっていた。
原油価格を上げることで、世界的なインフレになり、喜んでいるのは財政赤字を抱える米国、日本の官僚でしょう。自分たちの失敗は、これまでもそうであったようにこの大インフレで解消できる。
代償は、インフレのサークルに入れない各国の経済弱者、年金生活者の更なる貧困、飢え、暴動、死ということになるでしょう。
一方でグリーンランドの氷河が猛烈な勢いで溶けだしており、メキシコ湾流の北上の勢いをそぐことになるようです。結果として英国、北欧、米国北東部に寒波襲来となりそうです。大気も不安定となり米国での洪水、竜巻頻発、沖縄でも竜巻が観察されています。
正にThe Day Afterの映画の描く竜巻の大襲来のあとは氷漬けの世界になるかもしれません。
米国人は日本人の5-6倍はエネルギー使ってるので、彼らを日本型のつつましい生活にできれば時期を遅らせることは可能でしょう。
投稿: 恩田川 鴨次郎 | 2008.07.06 15:41