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2008.07.28

次の目標地点は北京パラリンピック、それまでは昼寝が吉

 ジワジワと北京オリンピックが迫って来て個人的には気が落ち込む。もともとオリンピックは好きではないし妙ちくりんな事件でも起きなければいいなくらいに思う。世界が平和でありますように。
 いろいろと北京政府も大変そうな感じは、産経新聞”日連続で直訴者摘発 数千人規模か 五輪開催中の混乱を予防”(参照)あたりから伺える。


地方官僚の腐敗や横暴ぶりなどを訴えるために上京した農民らが住みつく北京の「直訴村」で連日、一斉拘束が行われている。24日で4日連続となり、拘束者は数千人規模になるようだ。五輪期間中に北京市内の人目につく場所で直訴者が抗議行動を起こすのを防ぐのが狙いだ。当局がこのほど、「五輪期間中は北京の3カ所の公園を集会・デモのための区域とする」と発表したのも、同じ狙いからとみられる。

 3か所については共同”五輪期間にデモ専用区設置 異例の措置、暴動続発背景”(参照)より。

 中国では官僚腐敗などへの不満から地方で暴動が相次ぎ、住民の中央政府への陳情も増加しており、公安当局などの力による抑えつけに限界があることが背景にある。
 専用区域は世界公園、紫竹院、日壇公園。いずれも五輪会場に近く、隣接しているものもある。劉部長は「デモは申請して許可を受ける必要がある」としており、中国政府のチベット政策や人権問題を批判する団体などによる申請は大半が不許可になるとみられる。

 という見方は共同の思いが入っているかも。先の産経では。

 一方で、当局が特定の場所での集会・デモを認めたことについて、五輪前の拘束を逃れた直訴者を把握し、摘発するのが目的、との見方も直訴者の中から出ている。

 三十六計のお国柄とするとこっちがたぶん真相に近いか。というか、北京オリンピックをむしろきっかけにウイグル地区の弾圧など強めているのかもしれない。9日付けCNN”新疆ウイグル自治区で「聖戦」唱える5人射殺と、中国当局”(参照)より。

中国の国営・新華社通信は9日、新疆ウイグル自治区ウルムチで中国からの独立を目指し「聖戦」を標ぼうする勢力の拠点を摘発、構成員5人を射殺したと報じた。摘発したのは、イスラム教スンニ派のウイグル族の男女15人。

 とはいえ、おそらく北京政府側が恐れているのは、愛国心を錦の御旗にした暴動だろう。昨年9月杭州市でワールドカップ、ドイツ戦で「なでしこジャパン」が4万人の中国人観衆からブーイングを浴びせられたことを思い出すと、謝謝横断幕精神でうまく落ち着くのか不安には思う。が、オリンピック終了まで何か大事件と呼べるようなことが起きるかといえば私は起きないだろうに賭ける。
 問題は、オリンピックまでは繋げてきた中国の発展で、先日のエントリ「極東ブログ: [書評]中国発世界恐慌は来るのか?(門倉貴史)」(参照)でも触れたが、同書では、北京オリンピック直後に問題は起きないだろうとしていた。
 今朝の日経新聞社説”五輪を迎える中国(下)経済の「質」高め大地の荒廃食い止めよ”(参照)は随分と楽観的に出てきた。

 「北京五輪が終わると中国の景気が急減速し世界経済の足を引っぱるのではないか」との懸念が早くから指摘されてきた。実際にはサブプライムローン問題に端を発する米国の景気減速が最大の不安要因となっており「中国発の世界不況」という事態はなさそうだ。ただ結果的に、中国が高成長を続けることへの期待は従来以上に高まっている。

 さらっと読むと、もう中国発世界不況はなく、米国経済の失態で中国にもっと期待が高まるっということだ。ほぉ。
 だが続きのトーンは微妙。というか、どういう段落のつながり方をしているのか次段落はこう。

 胡錦濤国家主席をはじめ共産党政権は国内の安定を最優先し、五輪が終わるまで改革を先送りしているようだ。五輪閉幕後にはコストに見合った水準まで電力料金などエネルギー価格を引き上げる改革に踏み切るべきだ。世界経済の不透明感が増し中国の景気減速も懸念されるが、改革は急がなければならない。

 これはどういう意味なんだろう。単純なところなんのための「改革」か? 文脈的には、「高度成長を続けるため」としか読めないのだが、「五輪閉幕後にはコストに見合った水準まで電力料金などエネルギー価格を引き上げる改革に踏み切る」ことで、高度成長が続くのだろうか。そのまえに凹むんじゃないの。
 さらにこう続く。

 「粗放型」の発展の限界は鮮明になっており、生産性の向上で成長を目指す必要はかつてなく高まっている。中国は五輪を機に、より質の高い「循環型」経済への転換を加速しなければならない。その成否こそが将来、北京五輪に対する歴史的な評価を左右することになる。

 腐したい意図はまるでない。文脈的には改革で生産性の向上が望まれるというのだ。ようするにスパンの取り方の問題だろうか。
 それでも、「粗放型」の発展の限界は鮮明だとしているということは改革がないとそれはそれで凹むということだろう。というか、そうしないと北京五輪自体が別の歴史的な意味を持つということで、なんとも高度な修辞で読みがむずかしい。
 この問題の識者として参考になるのが24日付けロイター”五輪後の中国:間違った経済政策、早期転換無ければ社会亀裂リスクも”(参照)の富士通総研(FRI)経済研究所の柯隆・主席研究員の指摘だ。これはネットで見られる内に直接読んだほうがいいと思うけど、簡単にコメント。

 ―― 五輪後の中国経済の行方は。 
 「規模そのものの拡大は続く。2008-09年は07年ほどの高さではないにしても、10%前後の成長が続く見通し。ただ、経済の中身を検証する必要がある。今の経済政策は大きく間違っている。昨年から一気に景気引き締め政策を始動させたが、中央銀行はインフレ抑制のために引き締めたくても、通貨の安定を考えると利上げはできず、手足を縛られた状態だ。預金準備率の引き上げや手形発行による短期金融市場からの資金吸い上げを行っているが、インフレで熱は上がり、解熱剤になっていない」
 「そこで昨年7月には外科手術のように貸出総量規制を導入したが、これは完全に間違っている。市場経済と言いながら計画経済の政策を復活させたもので、多少熱が下がるようにみえても、実は体力の消耗になるだけだ」 

 現状ママで来年まで成長するとのこと。ここで個人的に理解がむずかしいなと思うのは、貸出総量規制の件で、柯氏はかなり明確に間違いだとしている。
 さらにこの先柯氏は総量規制の緩和こそ必要だとている。一種のリフレが必要だという理解でよいのではないかと思うが、率直なところ、そのあたりのことが私も詳しく知りたい。自分には十分な経済学的な知識がないからだ。ただ、「極東ブログ: [書評]霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」(高橋洋一)」(参照)の日本への指摘には似ているように思えた。
 オリンピック後はどうか。

 ── なぜパラリンピックまでに政策の転換が必要なのか。 
 「北京五輪は国威発揚のイベント。中国では過去100年でこれほど世界に注目されるイベントはなく、待ちに待った一大イベントだ。五輪が作り出す表面的な繁栄や高揚感の中では経済の実態が見えにくいが、パラリンピックが終わった瞬間に人々の間に喪失感が広がる。2年後に上海万博があるとは言え、市民は簡単に切り替えられず、株や経済の実態に気づくだろう」

 柯氏の要点は、「人々の間に喪失感が広がる」という点だろう。このあと。

 ── 政策が転換されない場合はどうなる。 
 「経済政策の是非を判断する最良のバロメーターは株式相場。上海総合指数が昨年、6000ポイントを超えた時はさすがに高過ぎて調整が必要と思われたが、これほど急激に半分以下の水準まで落ち込むのは明らかに間違った政策の影響がある。政策転換がなければ株価が2000ポイントまで落ちることも十分ありうる」
 「上海の個人投資家に聞き取り調査したところ、株への信用を失っている。中国には1億人以上の個人投資家がいる。退職金を全てつぎ込み、不動産を担保に借り入れして投資する人もいたが、株の失敗で自殺者が増えている。企業の経営をやめるケースが増えて失業率が上がれば、治安も悪化する。1番のリスクは雇用だ」 

 ここもむずかしい。この点について、ニューズウィーク日本版7・23”上海株暴落と市場浄化の真実”では多少楽観視している。オリジナル記事は毎度ながら英語で読める。”Following The Herd In China”(参照)である。

 株価が急落した後も中国で抗議行動が起こっていない理由の一つは、中国の銀行が株取引のための融資を認められていないからだ。そのために損失の額も限定されたと、スタンダード・チャータード銀行の中国担当エコノミスト、スティーブン・グリーンは言う。昨年のバブルの頂点で、中国の流通株の時価総額はGDP(国内総生産)の約30%だった。日本の109%、AMリカの142%に比べるとはるかに低い。

 概ねそうなのだが、ここの部分の翻訳が毎度ながらちょっと引っかかるので原文も引用しておく。

The fact that China has not experienced the sort of protests that hit other countries after major market meltdowns―as in India, where investors took to the streets of Mumbai earlier this year―is partly down to the fact that Chinese banks are not allowed to support margin trading (that is, lend people money to invest in stocks). That has limited the absolute size of losses, says Stephen Green, Chief China Economist of Standard Chartered Bank. At the height of the boom last year, China's tradable market cap was equal to around 36 percent of GDP, compared with 109 percent in Japan and 142 percent in the United States.

 この先、ニューズウィーク記事でも、株暴落の影響は出はじめているとはしている。が、それでも、記事のトーンとしては中国人にとっても自己責任のいい教訓になっただろうというふうにはなる。
 気になるのは英文のほうの対比されているインドの事例だが、むしろインドは民主主義だからそれなりの社会抗議に政治の流れが付けられるが、中国はどうなんだろうか。
 中期的に見れば、大きな経済クラッシュもなく社会不安も一定域に押し込められ、未来永劫までとはいわずも長期に繁栄して共産党独裁が続くというシナリオがありそうなのだが。
 が、というのは、私はこのブログで米国住宅ローンバブルはある程度予測したし、かなりひどいことになると思ったけど、サブプライムローン問題が金融危機にここまで連鎖するとまでは思っていなかった。そのあたりを教訓にすると、あまり楽観論というのもどうかな、なのかもしれない。

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コメント

>さらにこの先柯氏は総量規制の緩和こそ必要だとている。

 たぶん「取引コストが上がるのと取引が禁止されるのは全然違う。いまの中国は後者だ」と言っているのでしょう。
(参考)中国人民銀行広州分行との意見交換(在広州日本国総領事館)
ttp://www.guangzhou.cn.emb-japan.go.jp/basicinfo/ikenkokan/071127.html

 日本で言うと、中小企業向け融資の金利が上がるならまだしも、どんな金利でも貸さずに貸し剥がしてしまうと倒産するしかないよね、みたいなイメージ。それが失業者増大から所得格差拡大につながってゆくと。以下、柯隆氏の元記事。

>民間企業は流動性不足に陥っている。今後、資金繰りが悪化し、経営をやめるケースが増えれば雇用が悪化する。

>ある臨界点を超えると社会に亀裂が入り、車列が切れる。政府は切れる前に後部車両のボトムアップを目指しているが、米国と異なり、最初の数両に乗っている人はだれも後部車両のことを気にしていない

投稿: hnami | 2008.07.30 14:42

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