« チューブトレーニングでへえと思ったのはゴム臭くないのがあったこと | トップページ | この1年の夕食 »

2008.06.05

米国で30歳以下の若者は無知だと一部で嘆かれているという話

 この手の話題は盛り上がるわりに落とし所が決まっていて議論にするとすげーつまんないことになるのだけど、ディテールはけっこう面白いというわけで、ちんたらしたブログのエントリ向き。なんの話題? 30歳以下はバカ世代……おおっと、日本の話じゃないよ。だから、ゆとり世代の話じゃないんだってばさサマンサタバサ。
 ネタはNewsweek日本版6・11”U30「バカ世代」論のウソ(The Dumbest Generation? Don't Be Dumb?)”。英語のテキストは無料で読める(参照)。日本版のリードは「デジタル時代がアメリカの若者を空前のバカ集団にした? ---- そんなバカな!」で、英語版では"George Santayana, too, despaired of a generation's ignorance, warning that 'those who cannot remember the past are condemned to repeat it.' That was 1905." 訳すと、「ジョージ・サンタヤーナもまた世代の無知に失望し、過去を記憶に留めることができないものは余儀なくそれを繰り返すことになる。そう述べたのは1905年のこと。」かな。
 リードからいきなりジョージ・サンタヤーナが出てくるのが香ばしい。ウィキペディアの記載があるかなと思って日本版を見ると薄い(参照)。なんか、おおっ、ネットの世界ってバカかも的空気が漂ってきてなかなかツボ。英語版では濃い(参照)。とかいっても現実問題、私もジョージ・サンタヤーナとか読んだのかよというと、せいぜい断片くらいなもので、つまり、てへへ、バッカでーす、の部類である。ちょっと恥ずかしいな俺的なので、アマゾンとか見たけど復刻とかもなさげ。
 そのこと、つまり、ブロガーなんてバカさらしてんじゃんかほれ見ろよfinalventとかさ的な現状をご配慮されか、日本版Newsweekの記事は、ジョージ・サンタヤーナの話は、でてこない。
 該当部分はこんな感じだ。ちょっと長いのだけど編集のお手並み拝見。
 まず日本版のほうはこう。


 ビクトリア朝時代のイギリス知識人は、ストーリー性豊かな流行作家チャールズ/ディケンズの小説がそれまでの文豪作品に比べて軽すぎると渋い顔をした。
 そして2008年のアメリカには、エモリー大学文学教授たるバワレンがいる。「(最近の若者には)過去の歴史の記憶がまったくない……歴史を覚えておくことは自由を守るために欠かせない土台だ。アメリカ合衆国修正第1条でどういう権利が保障されているかを知らなければ、アメリカの人権状況を批判的に検討することなどできない」
 ご説はごもっとも。だが、疑問もある。若者がアメリカの憲法の内容や黒人差別の歴史を知らないとすれば、それは若者の知的レベルの問題というより、社会と教育制度の欠陥 ---- 言い換えれば、大人の責任ではないか。

 該当部分の英語はこう。

Victorian scholars considered Dickens, that plot-loving, sentimental ("A Christmas Carol") favorite, a lightweight compared with other authors of the time. Civilization, and culture high and low, survived it all. Can it survive a generation's ignorance of history? For those born from 1980 to 1997, Bauerlein lamented to us, "there is no memory of the past, just like when the Khmer Rouge said 'this is day zero.' Historical memory is essential to a free people. If you don't know which rights are protected in the First Amendment, how can you think critically about rights in the U.S.?" Fair enough, but we suspect that if young people don't know the Bill of Rights or the import of old COLORED ENTRANCE signs―and they absolutely should―it reflects not stupidity but a failure of the school system and of society (which is run by grown-ups) to require them to know it. Drawing on our own historical memory also compels us to note that philosopher George Santayana, too, despaired of a generation's historical ignorance, warning that "those who cannot remember the past are condemned to repeat it." That was in 1905.

【試訳】
ビクトリア朝の学者は、同時代の他の作家に比べて、ディケンズを、筋書き志向、「クリスマス・キャロル」のようなオセンチ好み、軽い内容と見なした。文明と文化はなんであれ生き延びていた。それは歴史に対する世代の無知を乗り越えることができるだろうか。1980年から1997年に生まれた人々について、バワレンは我々に嘆いてみせる。「過去の記憶はない。ちょうどクメール・ルージュが、『これがゼロの日だ』といったようだ。歴史の記憶は自由な国民に本質的なものだ。もしあなたが修正第1条でどのような権利が守られているか知らなければ、どうやって米国における権利を批判的に考えることができるだろうか。」 公平を期すなら、若者が権利章典や古い「カラード・エントランス(COLORED ENTRANCE)」看板の意味を知らないなら(絶対知るべきだが)、私たちが思うに、それはおバカというより、それを知らせる必要性に失敗した学校制度や社会制度のせいだし、それは大人が作りあげたものだ。歴史の記憶というなら哲学者ジョージ・サンタヤーナもまた世代の無知に失望し、「過去を記憶に留めることができないものは余儀なくそれを繰り返すことになる」と警告したのを留意すべきだ。それは1905年のことだった。


 そんな感じ。
 バカはいかんよ記事がすっきりおバカでも読める編集になっているけど、しかたないといえばそうなのだろう。他の部分での編集の釣り合いというものあるだろうし。
 で、当初エントリを書くとき、元記事にある細かいディテールをリストにして、あれ知っている、これ知っている?とかやろうかと思ったのだけど、なんかこの引用部分に結局結論は出ている感じなので、けっこうどうでもいいやの気分にはなってきた。
 でも、一つ引っかかるのは、日本版でもあるけど。

 今この瞬間にもアメリカのどこかの大学で、何げなく口にした「パールハーバー(真珠湾)」や「アンティータムの戦い」という言葉にポカンとした顔をする学生たちを目のあたりにして、愕然としている大学教授がいるかもしれない。あるいは、成績優秀なわが子に文豪チョーサーや楽聖ショパンを知らないと言われて、ショックを受けている親がいるかもしれない。

 このあたり知識を問うているようで、「パールハーバー」と「アンティータムの戦い」が微妙にツボだ。
 この糞ブログの糞エントリをたまたまここまで読んで、もしかして、「アンティータムの戦い」にポカーンとしたらウィキペディアの該当記事をさらっと目を通しておくといいかもしれない(参照)。
 ニューズウィークの記事では現代の若者は知識を知らなくてもすぐにネットで調べることができるからそれはそれでいいのではないかというトーンもあるし、たしかに昔に比べると、「アンティータムの戦い」とか調べるのは楽かもしれない。もっともウィキペディアはどこまで事実なんだよみたいなことはあるけど。
 ついでに同記事にはトルストイの「戦争と平和」が燃える写真があって「トルストイの超大作「戦争と平和」はもう相手にされなくなる?」とあるが、たしか米国でもこれは新訳が出ているらしい。ちなみに私は「戦争と平和」は読んだ。いろいろ印象深いシーンがいまでもある。貴族のピエールが冷えた茹でじゃがいもはうまいなとかいうシーンとかね。およそ知識にもならないけど、自分なりにはそうしたディテールのシーンが人生を豊かにしてくれた。というくらいでこの話題はおしまい。
 おっと、ニューズウィーク記事の元ネタはバワレン(Mark Bauerlain)教授による「The Dumbest Generation: How the Digital Age Stupefies Young Americans and Jeopardizes Our Future (Or, Don't Trust Anyone Under 30)」だ。まだ翻訳はなさそうだ。表紙はマーヴェラスなのでつい購入したくなるが(してもいいよ)、原書で読むのはやっかいそうなので訳でも出たら読むことにしたい。個人的には、猫猫先生が訳してくれたらなと思うけど。こってりと、注釈とあとがき分厚く。

cover
The Dumbest Generation:
How the Digital Age Stupefies
Young Americans and Jeopardizes Our Future
(Or, Don't Trust Anyone Under 30)
Mark Bauerlain

photo

photo

|

« チューブトレーニングでへえと思ったのはゴム臭くないのがあったこと | トップページ | この1年の夕食 »

「生活」カテゴリの記事

コメント

finalventさん、こんにちは。
『戦争と平和』、いいですよねー。
日本でも、新訳出ないかなあ。

投稿: tom-kuri | 2008.06.05 12:52

アンティータムの戦い、知りませんでした。ギリギリU30だしなー。

若者論を検証した、『検証・若者の変貌—失われた10年の後に』という本を思い出しました。空気読みすぎてる若者にイライラしているってことなのかも>バワレン教授

投稿: zajuji | 2008.06.05 15:42

ほかにも同じようなことをいっている人がいるようです。

http://www.nytimes.com/2008/02/14/books/14dumb.html

投稿: ktkr | 2008.06.05 15:44

こんにちは。
昨日の投稿では初歩的なミスをしてしまいました。
F・Nakajimaさんのコメントは、僕のコメントの直ぐ「前」でしたね。
確認をするべきでした。F・Nakajimaさん、終風先生、申し訳ないことでした。デジャブだとかなんだとか、機縁に思うところを述べておいて、この始末とは…。
以後、気をつけます。

以下は、今回の記事について、簡単に触れさせてください。

>あるいは、成績優秀なわが子に文豪チョーサーや楽聖ショパンを知らないと言われて、ショックを受けている親がいるかもしれない。

アチラではチョーサーって、やっぱり重要なんでしょうか?
僕はお決まりの『カンタベリー物語』、子供の頃に図書館で読んだ『チャンティクリアときつね』くらいしか触れたことないんですけど。前者も完訳じゃないヤツだし…詩のほうは…「イギリス名詩選」とか、そんな感じの体裁の本で目にした……かな?


投稿: 夢応の鯉魚 | 2008.06.05 15:58

画像にコーヒーを全力で吹きました。アラモの戦いも入るんですかね、やっぱり。

投稿: 無粋な人 | 2008.06.05 16:31

「パールハーバー」の部分ですが、現在50歳を過ぎた年齢のアメリカ人なら、例えばニューオリンズの田舎町でジャズしか知らずに育った人でもこの戦争のことは「日本にやられた」という印象もっているような、日本ともかかわりの深い出来事です。逆に日本の30歳代に問うとすると、批判めくようですが「分り易いから画像だけでも見ろ」と言われているように、まずはそこからなのか、伝わるといいですね。

昔アメリカ人に「日本に投下された原爆」の話をしたら、直ぐに「パールハーバー」のことで切り返され、激論を交わしたようなことがありました。青臭かったけど、萌えましたね。

投稿: godmother | 2008.06.05 17:46

 私とか中二の夏以来20年教科書開いたこと無い馬鹿34歳ですけど、個々の事象よりも全体を通した大きな流れを重視する性格なんで、大体知ってりゃいいって放っておく側でしたね。後は、自分の趣味の独学に没頭する系。

 大きな流れって、要するに「南北戦争は北軍勝った」でしょ。それ以外は枝葉かな、と。凄い大雑把。とてもじゃないけど現代社会の知体系について逝けません。馬鹿ですいません早急に死にます。ギャー。…ぽて。

 んで、そんな馬鹿の癖に中学時の模試で20000人中50位(最高時)~200位(平均時)くらい取るのは普通だったんで、それで勉強軽視しちゃって馬鹿街道一直線で今さら悲しい悲しい人生歩んでおるわけですけど。同じクラスに7位とか13位のヤツが居たんで「いやー、僕はあんなに賢くないからいいッスよ~」とか引いてたですね。性格ですなあ。好きでもないことで競争するの嫌なんよ。だりーから。あと緊張するとおなか痛くなるから嫌なんよ。ぽんぽん痛いの。

 私の場合は、保育所通園時に姉が買ってもらってた学習辞典や広辞苑を絵本代わりに読んで暗記するようなクソ馬鹿だったんで、正直、ソレだけで中二の春まで学問に困ることは一切無かったです。知ってるんだもん。先生が言うこと。
 だからまぁ極端なこと言ってしまえば、生まれてこの方勉強するって気になって真剣?に教科書開いたことなんか一遍も無いですよ。勉強という意識が先ず無い。全部遊びの延長。先日甥っ子の高校教科書(数Ⅳ)見たけど何書いてんだかさぁ~っぱり分かりませんでした。

 それでこの歳まで馬鹿面下げてのうのうと生きて「今月一杯で派遣辞めて勉強しマース」とか言ってんだから、救いようの無いキチガイここに見参!!って感じですかね。死ねデスね?そうデスね?←おっ…デスですか?デスですね?デスデスデス。 ギ ャ ー !!

投稿: 野ぐそ | 2008.06.05 18:39

上の方が紹介されたNTYの記事に出てくるYoutube動画。

http://jp.youtube.com/watch?v=uEP7uti0PDw

こういうのを見ていますと、最近の日本における「おバカタレント」を愛でる風潮に一脈通じるものがあるのかなと思います。

投稿: ラッコ | 2008.06.06 00:14

サンタヤーナって名前も知らなかったです・・・。

Civilization, and culture high and low, survived it all. Can it survive a generation's ignorance of history?

ですが,おおまかにいって「文明も文化も結局そうした各時代の無知を乗り越えて生き続けてきた。であれば,それはある世代の歴史に対する無知を乗り越えることができるだろうか(そりゃできるでしょ)」という感じではないでしょうか。他動詞のsurviveに「生き延びさせる」という意味はないかと思います。

投稿: Taq | 2008.06.06 03:14

Taqさん、ご指摘ありがとうございました。ご示唆をもとに修正しました。

投稿: finalvent | 2008.06.06 05:35

野ぐそさん、もう来なかったんでは。
そーいや弾さんのところにいましたね。
なんだかんだで示唆的なアルファコメンテーターに活躍してほしいと思う今日この頃。

投稿: 鼻毛 | 2008.06.07 01:16

■「80後」(中国若者世代、80年代生まれの若者のこと)は、車を買うべきか?-世代をひとくくりにする愚かさ?

こんにちは。画一的な若者論ほどくだらないものはないと思います。それこそ、 5000年前の遺跡の碑文にも、「最近の若いものは~」と書かれているそうです。日本国内では、「新ニッポン人」という若者論で最近の若者は「車を買わなくなった」などとほざいています。お隣の中国では「80後」の車を買うこと自体の是非をオンライン上で活発に論議しているそうです。このようなことから、どうやら中高年層の全部とはいわないまでも、一部の頭の悪い連中は、国籍・人種・所得など問わず、意味のない「若者論」を展開する性癖があるようです。これは、単なるマスターベーション(自分だけが気持ちよくなるということ)であり、何らの問題解決にも糸口にすらならないどころから、混乱と誤謬をもたらすものだと思います。ここには、あまり長く書けません、詳細は是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2008.06.13 10:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 米国で30歳以下の若者は無知だと一部で嘆かれているという話:

« チューブトレーニングでへえと思ったのはゴム臭くないのがあったこと | トップページ | この1年の夕食 »