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2008.06.17

中台緩和にフィナンシャルタイムズが望むとした2つのこと

 この話題は誤解されがちなので、ごく簡単に触れるだけにしておきたい。別に触れなくてもいいんだけど、このところの台湾関連の国内報道が多少だけど奇妙なんで、多少は関連があるかなというくらい。
 話はまず、中国最南端のトロピカルアイランド、海南島・三亜かな、リゾート地だ。ググルとそんな話題が「イーチャイナ」というサイトに出てくる(参照)。


中国最南端の島「海南島」は、ハワイとほぼ同じ緯度にある亜熱帯性気候と熱帯海洋気候の常夏の島です。中でも、海南島最南端の三亜(サンヤ)は、本格的な国際リゾートホテルも多く、透明度の高いエメラルドグリーンの海と白いビーチで一年中マリンスポーツが楽しめ、また、トロピカルムードあふれるゴルフコースも多数ある、アジア有数のリゾートエリアです。

 いいんじゃないかな。それは別にいいなあと思う。
 共同による邦文のニュースもあったと思うけどちょっと見かけないので、日本語で読めるものとして4月19日の朝鮮日報”中国、海南島に原潜基地を建設か”(参照)より。

 18日付香港紙・文匯報などは、中国が最南端の海南島三亜市に空母と原子力潜水艦が停泊できる大規模な海軍基地を建設していると報じた。
 報道によると、米英両軍による衛星写真解析の結果、中国は三亜市亜竜湾に原潜の停泊施設を建設しているという。同施設は射程距離が8000-1万4000キロに達し、米本土も攻撃可能な大陸間弾道ミサイル「巨浪」を10基余り搭載可能な最新鋭原潜の「晋級」(094型)が停泊可能な規模だ。

 もとネタはジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(参照)らしい。テレグラフでも報道されたようだ。朝鮮日報”中国海南島の原潜基地、英紙に衛星写真”(参照)より。

 中国南部のリゾート地、海南島三亜市の亜竜湾に建設が進められている大規模は原子力潜水艦基地の工事現場の鮮明な衛星写真が、2日付英紙デーリー・テレグラフに掲載された。
 写真は米国の民間衛星写真会社デジタル・グローブが2005年8月5日から08年2月28日までの間に撮影したもので、英軍事専門誌のジェーン・インテリジェンス・レビューが入手した写真を転載したものだ。

 この話をどう受け止めるかなのだが、単純に言えば、中国脅威論の煽りでしょ。そのまま食うなよというふうには思う。脅威としては、スパイ衛星監視を避けるために、最大20隻の原子力潜水艦を隠すことが可能というあたりだが、軍事的というより威嚇的な意味合いしかない。
 総合的な話としては、ニューズウィーク日本版5・21”中国の脅威は水面下にあり”がわかりやすい。英文はまいどながら無料で読むことができる。”An Underwater Threat”(参照)だ。
 ポイントは三亜原潜基地はなのためというあたり。まあ、単純な問いだが。

 専門家の多くは、中国の急速な軍備増強を台湾独立を阻止するためのものとみている。しかし中国は、台湾から重大な挑発は受けていない。つまりここ数年の中国は、台湾の独立を阻止する以上の軍事力をもっていることになる。
 実際、両岸の関係において、中国の要求をのむように台湾に強制できる軍事力を中国がそなえているおそれがある。

 ちょっとそうかいなという疑問もあるが、案外、すでに威嚇的な効果は十分にあるかもしれない。
 国際的には問題はこの先になる。

さらに、台湾に標準を合わせた新たな軍事力が別の目的に使われる可能性に近隣諸国は注目している。
 現実の脅威にさらされていないなかで、軍事増強の真の目的は謎のままだ。

 とか言うけど、これは単純にシーレーンです。

 警戒感を強めているのはアメリカだけではない。インドの海軍参謀総長は、インド洋を管理する同国海軍への挑発だと危惧している。中国が思い通りに日本周辺に軍を展開させる能力と意欲を高めることに日本も徐々に不安を感じはじめている。

 どうですか、日本国民、不安ですか。不安という人もいるだろうな、当然。

ここ数年、領海粗祖のある日本近海への中国の侵犯が続発。南シナ海の南沙諸島の領有権問題でも、中国はまもなく強制的に問題を収拾する軍事力をもち、同じく領有権を主張しているフィリピンやベトナムを驚かすことになるだろう。

 ここはけっこう重要なんで、日本人が危惧を覚える時期は、フィリピンやベトナムが悲鳴をあげるか素っ頓狂な歓迎の声を上げるかを見てからでもそう遅くはない。
 というわけで、この寄稿記事の著者ダニエル・ブーメンソル(Daniel Blumenthal)のフカシは中国脅威論という展開になる。
 私としては、これはもうちょっと中国よりから、むしろ、中国がシーレーン確保への脅威を感じているんじゃないのと見ていいように思うし、そのあたりの恐怖心を除くように、日米が平和的な対応をするとよいのではないかと思うのだけど。
 ただ、現実問題として中国の軍事というのは剥き出しになっていて、しかもなぜか日本では報道が歪む。どのくらい歪んでいるかというのは、またれいによってフィナンシャルタイムズを出すのだけど、普通に英米紙を読んでいると、嘆息してしまう。
 たとえば、馬政権の台湾での中国との緊張緩和だが、フィナンシャルタイムズそれを歓迎しつつ、きちんと言うべきところは言っている。”Detente in the Taiwan Strait”(参照)より。

But it is important not to let expectations run riot, especially among mainland Communist party leaders. They tend to assume that the incorporation of Taiwan into the People’s Republic of China is inevitable, long overdue and devoutly desired by all right thinking people of Chinese origin, and they have arrayed hundreds of missiles along the Strait to make sure it happens --- by force, if necessary.
(しかし重要なのは期待を暴走させないこと。特に、大陸共産党指導者についてだ。彼らは台湾を中国自民共和国への併合は、不可避であり、延期されているに過ぎず、信仰的に中国自民国家の起源から想定する傾向がある。だから、だからその機会のために、数百発ものミサイルを海峡に配置済みだし、必要ならそれは軍事力を行使も厭わない。)

 これは別に中国に悪口を言いたいわけではなく、そういう歴史背景がある。
 ただ、国際社会はそれを望んでいない。そして、中台緩和にフィナンシャルタイムズが望むとした2つのことはこれだ。

The first such concessions should include dismantling the coastal missile forces aimed at the island and the granting of observer status to Taiwan in the World Health Organisation.
(最初の譲歩には、台湾を標準とした大陸弾道弾の解除と、世界保健機関(WHO)へのオブザーバーとしての加盟を認可することだ。)

 朝日新聞もようやく5月21日社説”台湾新総統―現状維持は賢明な選択”でこの問題に触れた。

ジュネーブで始まった世界保健機関(WHO)総会で、台湾が切望するオブザーバー参加は、中国の反対で議題にすらなっていない。新型インフルエンザなど感染症の脅威は、地球全体の問題でもある。人道的な見地から中国は度量を見せてはどうか。

 北京政府側としてはその程度の度量はあるよという信号でもあるのだろう。6月1日の日経社説”中台の対話再開を見守ろう”ではその含みを深めた。

新型インフルエンザが懸念されるなか、台湾は世界保健機関(WHO)への加盟を望んでいる。胡氏は対話による解決を示唆した。一連の発言は中台の雪解けを象徴している。

 とはいえ、日本の国内紙はフィナンシャルタイムズのように、台湾を標準にしたミサイルの撤廃を提言することはしない。いろいろむずかしいのだろうと思う。ブロガーですら現実的にはむずかしいし。
 ただ、日本には平和を望み核のない世界を望む多くの人々がいるのだから、核弾頭を装備しかねない原潜の問題にも、もうイデオロギー的な枠組みに絡め取られずに言及していい時期なのではないか。

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コメント

 べんとおせんせえ!
 みどちゃんが! うんどお こおえんの みどちゃんが! ぼくのこめんと よんだとしか おもえない もおそおを へえきな かおして かいてるん ですけど!
 きのせえ ですか?

 みどり うんどおこおえんに のぐちゃんが のぞむとした 2つのこと

 もおそお だからって まえおきして まねすんな
 うるせー はげ

 いじょお

投稿: 野ぐそ | 2008.06.17 21:07

よちよち

恐怖心煽って世論操作みたいな手法に乗せられたら悲しいよね
死刑連発もなんか気味わりぃ

投稿: | 2008.06.18 06:16

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