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2008.05.05

有毒ガス自殺メモ

 この話題は触れないでおこうかとも思ったけど、世相のログとしてごく簡単に。
 書こうかと思ったのは、昨今の有毒ガス発生による自殺の連鎖を海外がどう見ているか、あるいは海外ではこうした事件はないのかと見ていて、どうやら極めて日本的と見られている印象があったからだ。
 ざっと見たところ海外報道では「detergent suicides」として扱われていることが多いようだ。類似の事件は海外にはなかったのだろうかとざっと調べたところはなかったようだ。また各国が目下の日本の自殺エピデミックスの影響に恐怖しているかどうかもざっと見たが、概ね他人事感がある。「detergent」が身近であっても、特異なBath Saltのほうが存在しないからではないだろうか。記事によってはBath Saltをliquidと表現している記事もあった。してみると、この事件の背景要素は極めて日本的とも言えるのかもしれないし、高島俊男先生の楽しみも減ることであろうな。
 いつからこの騒ぎが起きたのかざっと過去記事を探ってみた。読売新聞のアーカイブでは2007年10月24日(埼玉版)”有毒ガスで2女性自殺”が初出のようだった。


 23日午前11時半ごろ、熊谷市川原明戸の荒川河川敷で、通行人の男性から「軽乗用車の中で人が倒れている」と110番通報があった。熊谷署員が駆けつけると、卵の腐ったようなにおいが充満した車内で、女性2人が運転席と助手席のシートを倒してあおむけの状態で死んでいた。
 同署によると、死亡したのは、比企郡の女性会社員(22)と無職女性(21)。2人は小学校からの幼なじみで、仕事や人生について悲観する内容の手書きの遺書が車内に残されていた。
 車内からは、硫黄を含む液体入浴剤と液体の酸性洗剤の空き瓶計4本が見つかり、後部のドアガラスには「毒ガス発生中、火気厳禁」と書かれた紙が内側から張られていた。

 車中ということで一時期の練炭ガス自殺に似ている。通報者は、前日6時半ころ目撃しているものの寝ていると思ったとのこと。
 これに続くニュースは今年1月25日(奈良版)”ホテル客室で異臭 室内の男性死亡 自殺の可能性”だった。

 24日午後0時5分ごろ、奈良市四条大路の「ホテルアジール奈良アネックス」で、従業員が「4階の客室から異臭がする」と119番。駆けつけた消防隊員が部屋を調べたところ、50歳代とみられる男性が頭からビニール袋をかぶって床に倒れているのを発見。男性は硫化水素を吸っており、間もなく死亡が確認された。

 その次が2月29日(大阪版)”大学院生自殺、民家部屋から有毒ガス 90世帯避難呼びかけ”だった。

 29日午前10時ごろ、大阪市港区八幡屋の民家で、大学院生の男性(24)が3階自室で倒れているのを母親が見つけた。ドアに「有毒ガスが発生中。硫化水素。警察を呼べ」と書かれた張り紙があり、駆け付けた救急隊が男性の死亡を確認した。

 この事件では表題のように付近の世帯が避難した。オウム事件の記憶もよぎったことだろう。
 以上3件は4月前のもので、4月からはニュースが増え、4月後半からは現在のエピデミック状態にいたる。3件とも地方版であって、4月前までは、言い方はよくないのだが、練炭自殺に似たようなよくある自殺として日本国全体に行き渡る問題とは見られていなかったのだろう。
 他の記事も読んでみると、自殺者は他者に危険を告知する貼り紙をしているケースが多く、おそらくその指示を含んだ統一的な情報ソースにあたったのだろう。
 4月18日には京都府警が「京都府警の青木五郎本部長は17日、発生方法がインターネットの掲示板に数多く書き込まれていることが影響しているとして、同府内の23のプロバイダー業者に、こうした書き込みの削除を検討するよう要請したことを明らかにした」とあり、情報元はインターネットという流れになっていく。おそらくそうなのだろう。
 興味深いのは4月25日”洗浄剤の取り扱い、アマゾンが中止”というアマゾンについての記事だった。

 アマゾンの商品検索サイトは、商品を検索すると、説明と写真に加えて「関連商品」が自動的に表示されるシステムで、洗浄剤を検索した場合、関連商品として自殺に関する書籍やポリ袋なども表示されていた。今月中旬、利用者から「自殺を誘発しかねない」と指摘があり、洗浄剤を掲載商品から外した。

 この件なのだが私の記憶では"Bath Salt"が削除されていた。いずれにせよ、アマゾンとしてはWeb2.0の流儀だったのだろう。
 その後、自殺情報を掲載したインターネットの情報を規制という流れになっているが、私としては当初、この知識はごく中学生の理科のレベルなので、規制してどうとなるものではないような印象をもっていた。「12階の屋上から飛び降りると死にます、下に通行人がいないか確かめてください」といった類ではないかと。しかし、そういうことでもないだろう。
 今回の事件で有毒ガスの有毒性の認識を新たにしたという人も多いのも不思議といえば不思議にも思えた。火山ガス問題などでもよく報道されているので、みなさんご存知だろうと思っていた。
 話を戻すと、諸外国がこの事件を極めて日本的というふうに他人事と見ているように、情報ではなく物質側の規制はそう難しいものではないので、しばらくすれば落ち着く一時的な問題ではないだろうか。もちろん、潜在的な自殺志願者が多いという日本社会の問題は依然として残る。あと、この点については諸外国からは、経済の停滞に加え、日本には生命倫理がなくて、簡単に死ぬ文化を持つ国民と見られているようだ。

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コメント

日本が銃社会なら、私はとっくに自殺してる。ふぅー、サバイバルできた。ラッキイストだな。だからと言ってラッキーだけでサバイバルできるとは思えないが。

投稿 ddc | 2008.05.05 13:02

新聞社のマルクス主義的心情が報道を煽動の道具にしている結果でしょう
連中はネットの責任にしているが、連中の責任が大きい
こいつらを罰することができない日本は異常だ

投稿 | 2008.05.05 13:31

ま、生きる値打ちのない社会なのは確かだよね。
長生きしてもバカのお守りをさせられるだけの話でさ。

投稿 | 2008.05.05 14:06

しっかしよくあんな臭い気体で死ぬ気になるなぁ…

>日本には生命倫理がなくて、簡単に死ぬ文化を持つ国民と見られているようだ。
これはちと痛いかな。
「人間には宗教が必要な事の証左」通じて「宗教持たない奴等は倫理も糞もねぇ」とか言われかねん。

投稿 e | 2008.05.05 15:08

日本は自殺は多いけれど、殺人は少ないでしょう。
殺人が多い国に「日本は生命倫理がない」とか言われたくないですね。

投稿 | 2008.05.05 15:47

毒ガスの知識が「自殺」に使用されるのが日本的なんですかね。

投稿 | 2008.05.05 18:12

>日本には生命倫理がなくて、簡単に死ぬ文化を持つ国民と見られているようだ。

 葉隠。

投稿 野ぐそ | 2008.05.05 20:23

 文化かどうか分かりませんけど、私の場合は自分が生きることに対してそんなに疑いを持たないし自分が(間違ったことはしょっちゅうやるけど)「そこまで」間違ったことをしてると思ってないんで、何か身の回りに不都合が起こったら、先ず周囲を疑いますよ。普通に自己中ですわ。

 些細な出来事の場合、大抵は私が間違ってるんで、いい加減自省しろよ俺と思わなくも無いですけど。なぜか自省しませんね。「この日・この場・この状態なら自省をする」と初手から決め打ちでもしない限り、素で自省しまくるなんて根暗のやることだとしか思ってませんから。

 自制心と自省心の極端に強い人が自殺に走ることって多いと思ってますから、生命倫理以外の倫理が強まって生命倫理を追い越しちゃったとき死ぬんだろうなって思うと、むしろそれは賞賛の対象なのでは? という気持ちにもなります。

 それを指して「簡単に死ぬ文化」と言われれば大いに同意しますけど、「生命倫理がなくて」←コレは、どーだろ? って感じですね。あるでしょ。普通に。

投稿 野ぐそ | 2008.05.05 20:33

キリスト教の倫理観では、魂を持った肉体を滅ぼすことは、他人であれ自分であれ、立派に神に対する冒涜ですから、他殺と自殺の区別はしませんよ。という意味では、生命倫理が低いんです。

投稿 タカダ | 2008.05.05 21:04

 ある・なし、で考えるんじゃなくて、ある・ある、で考えてみるのはどうですか。自分自身が勝手にその道入るのか周辺の期待感がそこへ追い込むのか、アレも逝けるコレも大丈夫みたいな感じで負荷かけまくって、駄目って言えないままいろんなもん抱え込んで、生命倫理と自分なりに思い詰めちゃう別倫理が勝手に競争して、そんで生命負けちゃう感。
 昨今?の自殺は、そういうパターンが増えてないですか。増えてませんか。そうですか。

 理系の人は論理的だから、「ある」を定義すると、直ぐに反対の「なし」を想定しちゃうんよね。私みたいな愚鈍からすると、そういう考え方自体が極論でね。普通の(日本?)人ってのは普通に何やってもコツコツ?確実に成長しなきゃ嫌だ理論(俗に言う女子供の考え)で動くでしょ。すくすく育とうとするでしょ。
 だから、そういう人たちは「ある・なし」理論じゃなくて「ある・ある」理論で対処しないと駄目なんじゃないですかね?

 「ある」の反対が「なし」とか論理的に普通のことを考えるんじゃなくて、「ある」の反対にこそ「ある」があるんだっつー感覚。持ってると多少は違ってくると思うんですが。

投稿 野ぐそ | 2008.05.05 21:25

何件か、他人を巻き込んでることは本当にやばいと思う
多くの日本人の自殺に対する倫理感は
極端に言えばきっと(明言はしないけど)
「死にたきゃ勝手に死ねただし他人に迷惑はかけるな」
なのだろうし、かくして皆目立たぬように死んでくれて、
それを問題とはしなかった。
でも今後その倫理は通用しなくなるかもしれない、
いや既に通用しなくなってるのでは?ってことを語らないと
本当に生命倫理も何もなくなってしまうかもしれない

投稿 | 2008.05.06 01:01

 "毒ガス"と"有毒ガス"の知識を問われれば、一般に"有毒ガス"の知識は常識として持っていた方が良いけれど、"毒ガス"って言うのが毒として使用されるとしたら炭酸ガスや窒素ガスだって誤用すれば死んじゃうし…。
 今回のガスを"毒ガス"と言うセンス自体が何か危うい気がするのは私だけでしょうか、この辺の知識って義務教育の範疇で習い覚えた記憶がある。 情報の規制とか、報道姿勢等に問題はないとは言わないがなにか納得できないモヤモヤ感が消えません。

投稿 護民官ぴーと | 2008.05.06 01:36

 話が宗教(笑)に飛ぶと心の底からアレなんですけど、なんで日本における最大宗派が浄土真宗なんだか一度考えた方がいいんじゃないですか悪人正機? って感じ。
 凡人は大した努力も我慢も辛抱もしないくせに、兎に角救われたいんですよ。馬鹿女が仕事でコケたら結婚で永久就職があるさって開き直るような感覚を、老若男女誰しも、ちったぁ持ってるってことでしょ。そこを汲まねば的な。

 ある・なし理論でスパッと切っちゃうと駄目なんですわ。ある・ある理論でなるべく救っていかなきゃ駄目だし、それで駄目なら、そこで初めて「死にたきゃ勝手に死ねただし他人に迷惑はかけるな」って脅しでも掛けとけってことで。

 脅しだからな? 本気にして死ぬんじゃないぞ? って言っちゃったら狡賢いのが絶対挙げ足とるからそれだけは言わないってことで、この段階で素直に「ハイ死ぬよ」とか言うんであれば、そんな馬鹿生かしておいても後々面倒くさいだけでしょう。だったら、人を巻き込まないことを絶対条件に、さっさと自殺して貰った方がナンボかマシ。

 日本人一般?の美学として「本当に大事に大切に思うことは軽々と口にしない」ってのが有るでしょ。それを、さ。単純に口外しないってだけで「無い・希薄」と見做す精神性がそもそもドライ過ぎて駄目なんじゃねぇーの? って感じですかね? 理系の人や都会っ子さんや欧風かぶれさんは、そのへんの感覚・表現手法が浮き世(←どこのだよw)離れしてるから、だから昨今世間が理科離れするんじゃねぇーの? とも言いますわ。

 自分ら先逝き過ぎて軽く墓穴掘ってることに気付いてる? って感じですかね? 何となく。雑感。

投稿 野ぐそ | 2008.05.06 18:48

キリスト教圏で日本よりも自殺率の高い国もありますし、非キリスト教圏でも自殺率の低い国はあります。切腹イメージに依拠したつまらない非科学的なステレオタイプ報道に過ぎないです。偉そうな言い方になって恐縮ですが、この手の報道は批判されるべきものであり、これをとりあげて日本について日本人がなにか考えたふりをするような習慣はやめたほうがいいと思います。もうそうした言説の悪循環からは卒業すべき時期ではないでしょうか。

投稿 mozu | 2008.05.06 22:44

なんていうか、日本人独特の横並び的文化?に拠る所も大きいのかなぁと思うんですが。ニュース見て「こういうのもアリなのかもなぁ」ってな感じで。
自殺=悪(一家心中とかも)というスタンスの報道ってあまり見ない様な気もするんですがどうなんでしょうかね・・?

投稿 aaa | 2008.05.06 23:52

>偉そうな言い方になって恐縮

 私個人としては偉そうとは思わないんで、だったらむしろその「次」を希望します。恐縮だけで次言わないなら私でも言えますから。↑で言ってるし。

>日本について日本人がなにか考えたふりをするような習慣はやめたほうがいいと思います。もうそうした言説の悪循環からは卒業すべき時期ではないでしょうか。

 「ふり」じゃないの希望します。あと、老人や女子供は卒業しても逝く先無ければ好んででも留年すると思うんですけど、そういうのに対して「ハイ駄目よ~」言っといて「次は自分で探しなさい」は無慈悲すぎでしょう。

 だから横並び化するんじゃないですかね?

投稿 野ぐそ | 2008.05.07 00:04

 そういうの甘えっちゃあ甘えでしょうけど、世間は「そこ」は許すんですよ。その代わり、自殺とかそういうのは「甘えの極北」と見做すから、手前の勝手だ馬鹿野郎で許さない。それが文化なんじゃないですかね? 詳しく知りませんけど。
 で。それを「悪」循環と見做すなら、じゃあ「善」循環は何なの? ってことを言わんと。意味無いでしょ。

 だから別に、私は偉そうとは思わないですよ。そもそも偉そうになってない。偉そうな「ふり」してるだけですよ。多分。

投稿 野ぐそ | 2008.05.07 00:21

いえ、まずこれは野ぐそさんに向けたコメントではありませんのであまり深読みしないでください。日本の自殺関係ネタが必要以上に海外メディアにのってそこにうたがわしい文化的論的な「説明」がくっつく状況がよくないと思っているのです。また欧米人のこうした偏見を日本人自身がなんとなく受け入れてしまっていて彼らに向けて鸚鵡返し的にうたがわしい「説明」をしてしまう状況を言説の悪循環と言いました(自殺ネタをふられると条件反射的に日本では自殺はタブーではないみたいなことを安易に言ってしまう人が多いわけです)。お互いに支え合って偏見を強化している状況はよくないと個人的に思っているのです。「偉そう」というのはなんだか「国際派」みたいな口ぶりだなと自分でも恥ずかしさを感じたのでそう書きました。「考えるふり」というのはなにかを考えているようでいて実は考えさせられているのかもしれないという構造に対する苛立ちの表明だと思ってください。それ以上の意味はありませんし、また私がその外部にいるとも思っていません。

投稿 mozu | 2008.05.07 02:39

>「死にたきゃ勝手に死ねただし他人に迷惑はかけるな」

勝手は許さん

投稿 | 2008.05.07 06:36

結局のところ、日本人の大部分は税金払って借金返済する為に生きている様なもの。

自殺するのが本当に異常な事かすんなり受け入れる事ができない。

投稿 | 2008.05.07 12:35

硫化水素「自殺第一号」香川大生の連鎖
始まりは07年3月、工学部学生だった
http://publications.asahi.com/aera/nakazuri/image/20080512.jpg

との由

投稿 KAZ | 2008.05.07 17:38

>>mozu
 賢答諒解しました。そのように書いていただければ愚鈍にもよく分かります。多謝。

投稿 野ぐそ | 2008.05.07 23:36

「さん」抜け失礼しました。陳謝。

投稿 野ぐそ | 2008.05.07 23:38

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