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2008.05.01

祝日本インフレ、日本賛江、フィナンシャルタイムズより

 いろいろ沈む話ばっかり書いてきたが、よい話もある。福音だ。主の再臨は近いってそりゃねもうこの二千年間くらい……じゃあなくて、フィナンシャルタイムズが日本のインフレ良かったね、おめでとうという社説をあげていたことだ。ほんとかよ。と、昨日の日銀の動向を見ていたのだが、うーん、ええんでないの、日本、始まったな。
 4月28日付けフィナンシャルタイムズ”Inflation is good news for Japan(インフレは日本への福音)”(参照・要登録)が表題のとおり、日本のインフレを祝していた。それもけっこうマジ喜んでいる。冒頭、Hooray for inflation! だよ、「やったぜインフレ!」ということ。日本のネット的に言えば、リフレかな。若干違うといえば違うのだけど、まあ、以下に続く、と。
 祝辞に続いて、目下の日本経済の状況だが、食料品や石油の値上げ、さらに信用縮小ということで悪い話が続くようだけど、デフレばっかしだった日本にとっては、このインフレは経済向上の期待に絶好のチャンスなんだよとくる。普通の先進国なら1~3%のマイルドのインフレがあって経済成長をするのだが、日本は0・1%だ。物価の番人日銀仕事しすぎだよと。常考だろ、と。さてその先だ。


The rise in headline inflation is an opportunity, however, because it implies a fall in real interest rates. As long as nominal interest rates remain at 0.5 per cent then the real rate is negative, which should stimulate economic activity and create the expectations that prices will continue to rise in the future.
(とはいうものの、消費者物価指数の上昇は好機である。なぜなら、これで実質金利が下がる意味合いがあるからだ。名目金利が0・5%で維持されるなら実質金利がマイナスになり、これによって、経済活動が刺激され、価格が将来上昇し続けるという期待が形成される。)

 んなのあたりまえだろということだけど、フィナンシャルタイムズがそれを待ち望んでいたということ、つまり世界がそれを待っていたということはちょっと意味合いが違う。
 もちろん、インフレ怖いよみたいなことは折り込み済み。

The future inflation implied by government bond prices, however, remains fairly minimal.
(国債から見る将来のインフレはといえば最小限といったところ。)

 さて、これで万々歳かというともちろん、そんなことはない。継続的でマイルドなインフレにとって重要なのは、これもよく言われていることに過ぎないのだけど、賃金上昇と消費の活性化だ。

Any sustained inflation will depend on a cycle of rising wages and higher consumer spending. There are encouraging signs that wage growth is picking up; the danger now is that a Bank of Japan over-zealous in its maintenance of price stability squashes this growth by raising interest rates.
(継続的なインフレーションは賃金上昇と消費活動の高まりのサイクルによって維持されることになる。賃金上昇の機運もみられる。だが、目下の危機は、日銀が価格維持のためのお仕事やりすぎだ。そんなことをすれば金利上昇による経済成長を潰すことになる。)

 ということで、楽観論に過ぎるかなとはも言えるが、日本の賃金上昇や消費の活性化は想定できるとすれば、また日銀だよな、と。
 実際日銀はどうよ。というところに話が絞りこまれていく。

The central bank must ask whether today's mild price and wage inflation threatens price stability in two years' time, to which the only sensible answer is "No". The rising yen will bear down gently on export growth, as will a slower US and global economy. Domestic consumption and investment are not rising fast enough to outpace the economy's capacity.
(中央銀行はこう自問しなければならない、つまり今日の緩和な価格と賃金上昇がこの2年間の経済安定を脅かすものか、と。バカでなければ答えは一つしかない、「違うだろ」だ。円高はゆるかではあるが輸出を抑制するし、米国と世界経済の減速も同様だ。国内消費と投資は、経済規模を越えてまで上がることはない。)

 そしてなぜこの社説が4月28日にあがったか。単純。日銀に圧迫を加えるためでしょ。毎日新聞の社説子ですらかなりたぶんフィナンシャルタイムズは読むでしょくらいの影響力はあるはずだ。

When the BoJ makes its interest rate decision tomorrow it is expected to keep rates on hold. In its rhetoric, however, the bank should imply that it will keep rates on hold for some time, until modest inflationary expectations are well established. That is unlikely - the BoJ's conservatism on inflation is extreme - but it now has another chance to promote growth. The BoJ should not spurn it.
(4月29日の日銀が金利を決定には現状維持が期待される。ごちゃごちゃと難しい文言であれ、それは控えめなインフレ期待が形成されるまで、日銀はしばらく金利を据え置くとすべきだ。そうならないだろう。日銀はインフレは行きすぎだと見ているからだ。しかし今は日本の経済成長のチャンスなのだ。日銀はそれをぺしゃんこにしてはいけない。)

 ということで、4月29日の決定はどうだったか。Hooray!
 同日の毎日新聞記事”日銀リポート:利上げ路線を事実上「棚上げ」”(参照)より。

 ★金融政策
 今後の金融政策について、リポートは「経済の不確実性が高く、あらかじめ(利上げと利下げの)特定の方向性を持つことは適当でない」と述べ、従来の利上げ路線からの転換を正式に表明した。
 日銀は07年2月には追加利上げで政策金利を年0.5%に引き上げ、その後も利上げを探る姿勢を示してきたが、昨年夏にサブプライム問題が表面化し、利上げ見送りを余儀なくされた。昨年末からは景気認識を徐々に下方修正し、今回で利上げ路線からの撤退を終えた形だ。
 日銀は景気の不確実性を警戒しており、景気の一段の減速が鮮明になれば、機動的に利下げに動ける立場をひとまず確保した格好。ただ、市場では「日銀がすぐに利下げに転じる可能性は低い」との見方が大勢だ。日銀はリポートで「現在の金利水準は成長率や物価上昇率から見て、引き続き極めて低い」と表明しているからだ。
 白川総裁は会見で「時間がたてば、(利下げ・利上げの方向性を)判断できるようになる」とも述べた。市場では「当面は利上げも利下げもせずに金利を据え置いて、景気動向を慎重に見極める」との見方が強く、「利上げは09年」との指摘も出ている。

 ということで、今朝の日経社説”政策の機動性掲げた白川日銀”(参照)もこうなった。

 もっとも生鮮食品を除く消費者物価上昇率の見通しは、08年度が1.1%と前回の0.4%から大幅上方修正され、09年度も1.0%となった。現在の政策金利(無担保コール翌日物金利)は年0.5%なので、物価上昇率を差し引いた実質金利はマイナスとなり、金融緩和の度合いは大きくなりつつある。金融面から景気の下支えを続けつつ、悪い物価上昇のリスクも念頭に置き、消費者のインフレ心理や企業の価格設定行動などに目配りすべきだろう。

 ということで、北京オリンピックが終わるまで、まぶしい季節が続きそうだ。まずはめでたしめでたし。

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「経済」カテゴリの記事

コメント

今の日本の物価状況は、この記事のコアCPIとGDPデフレーターのグラフが見事に表してますね。

BizPlus:景気を語るこの指標 (08/02/28)消費者物価上昇でもデフレ脱却はまだ先(新家義貴氏)
http://bizplus.nikkei.co.jp/keiki/body.cfm?i=20080226kk000kk&p=1

急上昇するコアCPIと急降下するGDPデフレーター、つまり輸入品の物価高騰と国内で生産される物・サービスの物価低下が同時進行しているわけです。

投稿: Baatarism | 2008.05.01 11:26

>つまり輸入品の物価高騰と国内で生産される物・サービスの物価低下

というより、輸入品の物価高騰が国内の付加価値分を奪ってるわけで、物価高騰は単に海外への資金流出ってだけですね。

投稿: himorogi | 2008.05.01 13:06

どうなんだろう。実質的に収益性が上がると予測される分野があって、bisをクリアしたメガバンクが動くのであれば、このシナリオは動くという感じはするけれども。石油は中東とかロシア?食料は?逆にこのピンチをメガバンクがチャンスと受け取り、大立ち回りをすればこのシナリオ通りになるのかな。つまり痛快な「金貸し国家日本」の一幕となるか。そうすればメガバンクを通じて金が日本に環流するような。うーん、まだ信じられないな。

投稿: 萬(nomurayamansuke) | 2008.05.01 15:22

日本語訳も掲載されましたね。

インフレは日本にとっていいことだ――フィナンシャル・タイムズ社説(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20080501-01.html

投稿: Baatarism | 2008.05.01 17:09

 銀行が預金の運用先に困っている現況では、低金利になったから審査をパスする借り手激増、とも思えません。投資が起爆剤にならないとすればあとは消費だけ。フィナンシャルタイムズは、実質金利低下がアメリカのように家計の借金による消費を誘発する、と本気で思っているのでしょうか。それはサブプライム問題そのものであったわけですが。
 超低貯蓄率の若年層に所得が落ちることが内需の鍵。そういう意味では、留学生の入国審査緩和がせっかく上がりかけた賃金水準に水をかけてしまわないか、そっちのほうが心配ですね。

投稿: hnami | 2008.05.01 18:36

さすがに日銀は空気読みそうですね(つまり利上げしない)。何か一息つけそう。しかも大幅な方針転換。ほっとした。
私「インタゲって・・・」
ある人「まぁ・・ねぇ・・」
私「あれは・・・」
ある人「エクスキューズでしょう」
私「でしょうね」
ある人「あくまでも景気との兼合いだからね」
私「ええ」

投稿: ddc | 2008.05.01 19:08

※の子分としてはくーきよめってことなのかい

投稿: | 2008.05.01 22:27

FXや外貨預金や外国株式に関心を持つ人が増えたこと、
欧米先進国が金融の動揺を抱えて、日本から資金移動があることが大きい
為替は、結局、人の価値が等しくなる方向に動くので、10年20年のスパンで動向を見極め、上記の対外的な関心を持つ層に情報提供をしていきたい

投稿: PK | 2008.05.04 01:28

マクロ経済のことがさっぱりわからないので、的外れだと思うが、どうしても理解できない事がある。世界規模で大量のお金が駆け巡ってるのに、1地域の1中央銀行(日本の日銀)に注目してどうするんだろうか。日本国内で経済が完結してるんならともかく。経済についてあれこれ小難しく語ってる人はみんな恥かくんじゃないかと思う。

投稿: ddc | 2008.05.05 13:07

期待インフレ率が高ければ非負制約は問題にならない。流動性の罠にはまれば市場にコミットできないので、期待を操作する必要がある・・・。期待が高いと期待を操作する必要は生じない。ループだ。落ち着こう。おかしなことをいってる人たちは、目を覚まそう。インタゲと流動性の罠は理論としては破綻した。

投稿: ddc | 2008.05.05 16:01

fvさんへ
リフレ派とは立憲主義のことです。
http://d.hatena.ne.jp/asin/4492211748
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E4%B8%BB%E7%BE%A9
名目金利のゼロ制約が流動性の罠になるのを防ぐため、期待インフレ率を操作しなければいけないのだけど、確実な方法はないという前提に立ってる訳だから(だからこそその可能性が高まるとあんなに慌てるわけで。万能薬がないという前提に立つのは立憲的)。期待を操作できないと考えるのがリフレ派。期待を操作すれば良いと言うのはリフレ派的な考え方ではない。ただ罠に嵌まると期待を操作するために何も手を打たないわけには行かなくなるので(実質金利をマイナスにするのは期待インフレ率)、期待の操作の為には出来る事は何でもするという態度をとるため、誤解されていますが。出来る事は何でもするという態度を見せること、言い換えれば市場の声に最大限耳を傾け(つまり権力の最小化)、その姿を見せることで市場の信頼を得ようとすることがリフレ派の肝でもある(つまり立憲主義と全く一緒)。権限の強化といってもあくまでも権「限」(つまり立憲主義と全く同じ発想)。そして、突然で申し訳ないが、リフレ派の考え方も立憲主義も間違っている。(もうこの事は言い続けてるので)

投稿: ddc | 2008.05.07 21:36

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