なんとく走り出した。「極東ブログ: [書評]走ることについて語るときに僕の語ること(村上春樹)」(参照)を書いてたころは自分が走るとは思っていなかった。水泳も依然やっているし、それほどスポーツしたいとか体を鍛えたいわけでもない。ただ、なんとなく走り出したのだった。
もちろん、無理はできない。悲しいかな、俺、50歳だし、気が付けば。初老の部類か。健康のためならウォーキングだろう、普通、と思うのだが。まあ、いいや。シューズを買って、ウェアを買った。俺って、走れるのだろうか。走ってみた、もちろん、走れないことはない。無理はきかないだろうなと思いつつ、歩道を4キロを走る。へぇ、走れるか。このまま、走るのだろうか。わからない。
私は中学・高校と陸上部にいた。選手になる気はなくて、小児喘息だった自分がどのくらい体を動かせるかみたいな感じでやっていた。訓練すればクラスで2番目くらいの俊足なる。へぇと思った。その後は、陸上みたいなことはしていない(と思っていた)。50歳で走ってみると、当時のことを思い出した。14歳とか15歳の自分。そんな自分が自分のなかに生きているような感じもする。
いちおう走り方は知っているし、無理する気もないのだが、それでもこの間時代は変わったので、ランニングとかのセオリーも違うかもしれない。参考書とかないだろうか。一般向けでいいからと探した。わからない。
アマゾンでつらつらと見ながら、いかにもスタンダードで評判良さそうなので「金哲彦のランニング・メソッド(金哲彦)」(
参照)という本を買ってみた。読んでみた。わからない。読者評に「小難しいことは一切書いてなく、『肩甲骨、丹田、骨盤』の三つを意識する、をしっかりと守ることで綺麗なフォームで歩け、走れるようになるといいます」とあり、たしかにそう書いてあるのだが、はて? 丹田? なんだか中級・上級者向けの書籍なんだろうか。そのわりにはあまり理論的なことは書いてないような気がする。自分には合わなかったのだろうか、それともいずれ役に立つときがくるだろうか。金哲彦という人もまるで知らない。その世界では偉い人なんだろうか。いや私は何にも知らないな。
そういえば思い返したのだが、以前「ゆっくり走れば速くなる マラソン・マル秘トレーニング (佐々木功)」(
参照)を読んで感銘を受けたことがある。いつのころだろう。この本が出たのは84年なのでそのころには違いない。その頃、自分は走っていただろうかと思い出して、ああ、皇居の回りとか少し走っていたことを思い出した。なんか記憶が消えているな。この本は実家にあるか処分してしまったか。ただ、読後の記憶からするとLSD(Long-Slow-Distance)でよいという以上のプラクティカルな話はなく、どちらかというと選手向けだったような気がした。水泳とかサイクリングも取り入れろとか。
そうしてアマゾンを見ていて、佐々木の指導を受けた浅井えり子の「ゆっくり走れば速くなる(浅井えり子」(
参照)を見つけた。私はけっこう浅井えり子が好きだったのだった。お弟子のスジからお師匠の本を、あるいは愛というか夫というかまあ、そういう情熱か、いずれにせよ、理論がプラクティカルにリニューされているといいなと思って読んでみた。佐々木の本とはすごく違っているという印象があった。そして佐々木の本よりわかりやすい。なるほどそうだったのかと思うことがいろいろあった。特にLSDは自分が想定したよりはるかに遅いし、遅いことで身体を意識させる……フェルデンクライスみたいだなと。これは参考になった。ただ、後半の選手向けのトレーニングは私には要らないし、50歳向けでもない。なにより医学的な知見はないなと。もうちょっとスポーツ医学的な部分が知りたい。
そこで次に読んだのが「賢く走るフルマラソン―マラソンは「知恵」のスポーツ(田中宏暁)」(
参照)。この人についてもまったく知らないけど、お医者さんらしいし、47歳から初めて今では60歳近いらしい。なんかためになるのではと思った。ためになった。なるほどねということがいろいろあり、自分なりにアレンジしてみた。LSDとは書かれていないが、LSDの考え方とも矛盾しないので、本は買ったけど迷うだけに終わったということにはならなかった。こちらの本もフルマラソンを意識しているので、当面私には関係ないし、あとお医者さんの割にそれって医学?みたいな仮説も入っているので、ある程度は自分なりの科学知識で差し引きして読んで参考にした。
ついでなので、ランニングという文脈ではないけど、話題だったし水泳とかで勧められたりもしたので「スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと(小田伸午)」(
参照)も読んだ。これが微妙な本だった。著者はスポーツ医学の第一人者らしいのだが、これってどっちかというとトンデモ本ではないのかという印象がぬぐい去れない。ただ、それをいうなら佐々木功のLSDの本も当時はトンデモ本かもしれないと思ったし、浅井えり子という実践者がいなかったらトンデモ・セオリーだったかもしれない。この本については実によくわからん。私がフェルデンクライスで学んだことと違うことが多いように思えるのもそうした抵抗感だろうか。ちょっとまいった。
コメント
リンク先の書評を辿ってみたら、あらま、私コメントしていましたね。しかも、こともあろうか、ここに至ってfinalventさんと同様に走り始めるとは思いもしなかった7ヶ月前ですね。あの時は私も遠くの他人事でした。生きているとなにがきっかけで、なにが起こるかわからないものですね。
その書評の中でfinalventさんは、『彼はむしろ走ることを通して語っているのではなく、文学という生の総体が表す苦(サファリング)に言語で参与するために、走り出しているのだ。おそらくそれが先の何かを暗示しているのだろう。(中略) 一読者の私としては、村上さん無理しているなと思う。でも、村上さんの生き方は正しいと思う。大筋で正しく、そしてディテールで正しいと思う。』こう書かれていますが、走り出した以上きっといろいろな思いに遭遇することでしょうね。私は、走り始めてよかったと思います。まずは、自分の可能性を確認できたという段階ですが、触発されて一緒に書籍検索した時点で既に始まっていたように思います。
今朝の「ちょっと風邪気味かな」というのには、笑えましたけど(失礼)。いろいろありますからね。
投稿: godmother | 2008.05.23 10:38
お大事になすってください。
僕は、ジョギングは力を搾るときのスイッチを探るような感覚(の、正確には確認)でしていますが、
このコンセプトでは一回ごとに間を空けてやるのでないと続きませんね。あんまり動かない子だったから、基礎が……
まぁ、ウチの地方はジョギングできる期間が短いので、短期で根を詰めても問題ないかなぁ、なんて(笑)。
寒いんですもの。体温差ができすぎるとソレはソレで不味いし、なんてったって五月に霙(みぞれ)が降るし(苦笑)。
投稿: 夢応の鯉魚 | 2008.05.23 15:33
金哲彦は早稲田大学で箱根駅伝を走った木下哲彦のことですね、大学時代からけっこうな有名人でした。
いつの間にか金哲彦を名乗ってます。
この人の理論、ちゃんと実行すれば骨盤の前傾により平地でも転がるように走れるんですが、自分の思っていた走るという動作とは違う動きなので最初は少々戸惑いました。
投稿: | 2008.05.24 23:48