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2008.05.04

英国における教育の英語の状況

 世間は連休のせいかネットもやや閑散とした印象があるし、特に世相の話題もない。胡錦濤さんもパンダをお土産につつがなく来日・帰国して過ぎ去ればええんでないかというくらいなもので、特にブログを書く気もないな、とかしていると3日穴が開く。それでもいいけど、なんかネタはなかったかなと思い出すと、先日のテレグラフの記事”English not first language for 800,000 children ”(参照)を思い出した。表題をべたに訳すと「80万人の子どもにとって英語が第一言語ではない」ということ。そりゃそうでしょというのは日本であって、英国で英語が母語ではない子どもが80万人というのはどうなんでしょうかね。
 英国の人口は6000万人。なので人口的には日本の半分の規模。日本だとその場合、だから、日本に160万人日本語が母語ではない子どもがいると想像してみると身近な実感がつかめるか。うまく想像付かないな。


Almost 500,000 children in primary schools have English as a second language - an estimated one in seven - with a further 350,000 pupils in secondary schools.
(小学校で英語が第二外国語の子どもが約五〇万人、つまり7人に1人の割合、中学校だとさらに35万人。)

 7人に1人は多いかな。20人クラスがと3人くらいは母語が不自由ということになる。当然、教育する側は大変だろう。

Teachers warned yesterday that large concentrations of foreign pupils with a poor grasp of English were placing an increasing burden on their capacity to provide all children with a decent standard of education.
(英語能力が低い外国人生徒が集中することで、全生徒に適切な教育標準を提供する能力への負担が増すと、昨日教師たちが警告した。)

 地域の偏りも大きいようだ。

In some areas, children without English as their first language account for more than half of all pupils.
(地域によっては、英語を母語としない子どもが半数以上を占める。)

 なぜそうなかったかだが、当然移民を受け入れているからなのだが、記事を読んでへえと思ったのはEUの関連だ。

According to official figures, the number of pupils speaking other languages has increased by a third since the main expansion of the European Union in 2004, from 10.5 per cent to 14.4 per cent this year.
(公式統計によると、他国語を話す生徒数は、2004年のEUの主要拡張以降、三分の一増加、10・5%から14・4%に増えた。)

 EUの影響が強いと言えば強いらしい。実際の言語のバラエティとしては。

One primary school - Newbury Park in east London - teaches children who speak more than 40 languages, including Tamil, Swahili, Bengali, Cantonese, Spanish, Japanese and Russian.
(ロンドン東部ニューベリーパークの小学校では40以上の言語を話す子どもを教育している。言語には、タミル語、スワヒリ語、ベンガル語、広東語、スペイン語、日本語、ロシア語がある。)

 ベンガル語や広東語が出てくるのが興味深いといえば興味深い。
 教育成果の面では問題があるかというとそうでもないらしい。

Mr Knight said: "The gap in achievement between migrant children and English-speaking pupils has narrowed significantly in recent years."
(移民と英語母語の子どもの学力差は近年有意に狭まっていると学校省ナイト氏は語る。)

 意外と社会問題でもないのかなと思っていたが、関連の同紙社説”The English language in British schools”(参照)では少しトーンが違う。

Both Mr Knight and Miss Blower state that migrant children are not being disadvantaged, that they are performing well and "closing the gap" with native speakers.

This is almost certainly true. It is indigenous pupils, especially those in disadvantaged, inner-city areas, whose standards are likely to be falling.
(ナイト氏もブラウワー氏も、移民の子どもに不利はなく、うまくやっているとし、英語母国の子どもとの差も狭まっていると語る。それは確かにあらかた正しい。問題は英国人の生徒なのだ。特に不利な状況にある生徒であり、スラム街の子どもだ。彼らの水準が低落しかねない。)


 さすが右派のテレグラフだなという感じ。

The Government must now make a definitive commitment to the exclusive use of English by all government agencies so that migrant families have a clear incentive to adopt it as their first language.
(政府は、政府機関では英語専有を明確にすることで、移民家族が英語を第一言語にする明確な動機となる。)

 現実問題として政府や公教育を巨大化することはできないのだからどこかで折り合いは付けざるをえないだろうし、結果的に英語というのはこういう軋轢を含み込むことで国際語としての力をつけていくのだろう。

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コメント

移民のコストを相対的に低くするためのパフォーマンスと言うと何だろうか。国際的な社会の一員としての正当性だろうが、具体的にはぴんとこない。安い労働力だろうか。EUと言うヨーロッパ帝国との距離の取りかたを含めてイギリスに注目したい。英語と言う言語は、どう形を変えていくのか。全ての人が一斉に同じ言語を喋れるようにするコストはとる必要があるか。そうなっても勝手に分岐していくか。

投稿: ddc | 2008.05.05 08:24

揚げ足取るようで申し訳ないんですが、
>teaches children who speak more than 40 languages
のところは生徒たちが使う言語が40以上であって、学校が40以上の言語を教えているわけではありませんよー。
かなり意味が違ってしまうので。

投稿: WRC | 2008.05.05 08:52

WRCさん、ご指摘ありがとうございました。訂正しました。

投稿: finalvent | 2008.05.05 13:32

移民の母語が日本語に近ければ、あまり問題にならない。韓国朝鮮モンゴル中央アジアそれにロシア・グルジア・南インドあたりの人間なら話す日本語に適応できる。(書く日本語は本人の努力次第。教える側ももう一工夫必要)
アセアン・ポルトガル語や英語圏は難しい。ある程度の移民コミュニティーを作って、その周辺に居住させる形が望ましい。
いずれの場合も、コミュニティーの数が多くなりすぎるとダメだろう。

投稿: PK | 2008.05.08 22:26

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