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2008.04.05

オムレツと小麦粉についての悩ましい問題

 「悩ましい問題」って表現は日本語じゃないよなと思いつつ、なんとなくこの手のボケ話題には向きそうな表現なので採用。というわけで、オムレツと小麦粉ついての悩ましい問題だ。つまり、オムレツに小麦を入れるか?ということ。入れるわけねーじゃん、とか脊髄反射でツッコミすんなよ、ネタがなくなるからさ。
 まずオムレツとは何か?だが、これが非常にうざい。ウィキペディアの記事とか読むとうでうで書いてあるんだけど、けっこうどうでもいいかなと。どうでもいいの決定版がその写真で、「うーむ、お母さんの手作りか」と思いきや英語版にも載っている。これってオムレツのグローバルスタンダードってやつですかい。
 で、オムレツっていうのの日本人のイメージはあれでしょ。というわけで、ユーチューブ的にはこんな感じ(参照)。難しいこと言う人がいるけど、こんなんがスタンダードでは。
 それはそれとして、問題は、オムレツと小麦粉ついての悩ましい関係だ。これが国際的にあるいは大英帝国的に、紅茶のミルクはいつ入れるか的に、大問題だというのはBBCのサイトの”Omelettes”(参照)からもわかる(いやエイプリールフールじゃないからネタバレすると個人ブログだけどね)。いわく、オムレツには2つの問題がある。1つはミルクを入れるかよと。答えはクリームちょっとくらいならよいよ、と。2つめが小麦粉問題。


Secondly, one should mention flour, since a few recipes for omelettes have erroneously and spuriously included it in the ingredients. If an omelette is made using that recipe the result could double as building material. A properly-made omelette is one of the most delicate dishes one can eat, unlike the pancake which, exactly as a consequence of the flour, can be a stodgy affair. So, no flour.
(二番目に小麦粉について言及せざるを得ない。というのもレシピによっては間違いも甚だしく偽りにも事欠くというべきか、オムレツに小麦を含ませている。万が一にもかくなるレシピで製造されるなら建築材の代用になりうる。適正なオムレツは人が食しうるもの料理においてもっとも繊細なものだ。パンケーキじゃないんだ。それなら小麦粉は使うし、気の重い出来事になる。つまり、小麦粉は絶対なしだ。)

 まあ、わからないでもない。
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亡命ロシア料理
 でも、私は小麦粉入れることがある。カラマーゾフの血が、アリョーシャの良心が、そうさせるのだ。いや違うか。ロシアといってもこりゃ、ユダヤ料理だもんな。というわけで、前世紀に作成されたもっとも美しいラフマニノフの音楽と「亡命ロシア料理」(参照)だが、こう書いてある。

 かつてベテランの料理人は、新人を採用するとき、一つだけ試験を課した。それは、オムレツを作ることだった。この料理の簡潔さと端正さは、単純であると同時に手が込んでいて、まるでソネットのようだ。温めたフライパンにバターを入れて溶かし、そこに、卵と牛乳と小麦粉をミックスしてあらかじめよく泡立てたタネを流し込む。(小麦粉はほんの少し ―― 卵二個につき小さじ一杯 ―― にしなければいけない。牛乳といっしょに薄めたサワークリームや生クリームを加えてもいい)。

 つうわけで、私は小麦粉を入れることがある。入れてどうなるかなんども作っているけどよくわからん。たいていそれなりにうまくできる。
 まずバターを大さじ一かけくらい入れて溶かす。フライパンは強火。ちなみにプチ・レミパン(参照)。

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 卵2、小麦粉小さじ1、牛乳大さじ2をよくまぜたタネを流し込む。

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 箸でかき回す。フライパンを揺するとか別にしなくてもよい。

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 全体がこんな感じでクリーミーになったら、端からフライ返しで端に重ねるように寄せていく。無理に巻こうとしなくていい。

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 寄せるとこんな半月形の感じになる。

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 これをフライパンをていねいにひっくり返すようにして皿に盛りつける。このとき同時に、形を自然に整形することになる。

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 できあがり。ソースはデミグラもよいよ(参照)。

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 つうわけで、まあ、こんなものなのかな、とも思うのだが、先の「亡命ロシア料理」ではこの先がちと違っている。


 タネが固まったらすかさず、フライパンを温めておいた天火の中に移す。そこでオムレツは膨らみ、盛り上がる。それをフライパンから取り出して、数秒以内に食べるのが肝心だ。

 それをやったことがない。めんどすぎ。
 とはいえ、「亡命ロシア料理」のこの先の教訓はロシア的であるとともに、非カント的な非モテの倫理性とは異なるかもしれないが、家族の本質を描くという点で概ね現代日本にも当てはまる普遍性を持っているかもしれない。

最も難しいのは、食べる人たちが唯一のしかるべき瞬間に食卓についているようにすること。たいていは、そんな風にはゆかない。あなたは家族を呼ぶ。家族は「いま行くよ」と答えるけれど、もちろんどこへ行くわけでもなく、どうでもいいような自分の仕事にかまけている。そこで、たとえ腹立ちまぎれに、「くそ、悪魔のところに行っちまえ」などと心で罵ったとしても、悪魔のところに行ってくれるわけでもない。ささやかな料理のお手柄はもう喜びにはつながらず、家族をみんな殺してしまいたくなる。そして、ナイフやオーブンがそばにあるものだから、妙な空想がだんだん高じてくる。でもこれはもう、全く別のお料理……。

 天国と地獄の境目は、スェーデンボルグのように考えなくても、そこいらに存在する、っていうか、飯を作ってもらったらさっさと食え。

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コメント

出汁巻きには、水溶き片栗粉を入れたりしますよね。もちろん、卵と出汁の割合が、堅めの茶碗蒸しにしてもいいくらいの割合の時ですけど。京都の板前割烹で板さんがやっているのを見ました。出汁巻きが緩すぎて巻けなくならないように、α化した澱粉で防いでるんだろうな、くらいに思って見てました。

投稿: iori3 | 2008.04.05 10:11

当たらずとも遠からずでしたけど、一敗しました。
finalventさんに聞かれた後一日引きずって確かにオムレツと小麦粉の関係には悩まされました。卵は料理の可能性が多く、きっと小麦粉を入れて出来るはずという思いや想像が巡ってたのは確かです。はー、すっきりしました。

今度こちらのレシピで作ってみます。出来れば「違い」を調べてみたいです。

オーブンで膨らますのは、なんとなくですけど、小麦粉のαとβ化とは関係ないでしょうかね?と、また置いていきます。restaurant

投稿: godmother | 2008.04.05 11:44

>万が一にもかくなるレシピで製造されるなら建築材の如く二倍になる
ここのdouble as はの代わりになる。
つまり小麦粉を使ったら建築材に使えるくらい硬くなってしまうと言う意味です。
…まぁ、分かりにくいですよね

投稿: xenostic | 2008.04.05 14:06

xenosticさん、こんにちは。ご指摘ありがとうございます。「兼務する」なのか「二層」かと悩んでいました。ご助言、反映しました。

投稿: finalvent | 2008.04.05 15:01

んっまそーーーーーーーーーーーーーーー
前にfinalventさんがここで書いてらした牡蠣を煎るの、去年も今年も何度もやりました。アルペンザルツの塩とちょい高めのオリーブオイルで、閉店間際のスーパーで半額になってた牡蠣を買ってきてやると安くて本当に美味しいのです。なんだかんだで食べるのって重大事だと思いますし、こういう記事もとても期待してます。

投稿: 天魔 | 2008.04.05 19:22

「亡命ロシア料理」、好きです。
魅惑的で超高カロリーな料理と、しつこいのだけれど一向に読むのをやめられない饒舌な文章。
明日は朝から劇甘ケーキ焼いてしまいそう。

投稿: okan | 2008.04.06 00:49

finalventさん、こんばんわ。いつも読ませていただいています。
タイトル、もしかすると「オムレツと小麦粉についての悩ましい問題」ではないかと思うんですが。であれば「に」が抜けてます。ちいさなことですが。
ミルクを入れるというのは知ってましたが、小麦粉は知りませんでした。今度やってみます。ではでは。

投稿: 一読者 | 2008.04.06 01:31

ご指摘ありがとうございます。修正しました。
ついでで申し訳ない。goodmotherさんが天火を実践されたトラックバック見しました。なるほど。

投稿: finalvent | 2008.04.06 09:11

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