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2008.04.16

イタリア総選挙、雑感

 イタリア総選挙でベルルスコーニが帰ってきた。マジかよ。というあたりで、イタリアという国はよくわからないし、よくわかんなくてもイタリアはイタリアなんじゃないか。問題解決は、ようするにG8から抜ければいいだけじゃないか。と不謹慎なことを思いつつ、この話題はどう扱っていいのかわからないなと思ってもいたのだが、今朝の朝日新聞と日経新聞が社説で扱っていた。両紙ともによほど社説のネタに事欠いていたのかと思ったが、一読して不可解。だらっとした話になるけど、朝日新聞社説”イタリア総選挙―政治こそ新陳代謝がいる”(参照)は実に要領を得なかった。というか、肝心なところイタリアの政局がどうなるのかが皆目わからない。締めはこう。


 自民党政権の耐用年数は過ぎたと言われて久しい。なのに、なかなか政治の刷新が起こらない。閉塞(へいそく)感を打破するのに必要と思えば、有権者はすかさず政権を交代させる。そんな政治が、ちょっと、まぶしく見える。

 ようするに、ベルルスコーニの登場でイタリアの政治が刷新されましたということ?まさかね。二大政党制が「まぶしく見える」ほどよいということらしい。途中こうある。

 むろん、政権が交代しても低迷していた経済などがバラ色になるわけではなかろう。しかし、政治が行き詰まりを見せれば、総選挙で民意を問い、政権の担い手を変える。政治の新陳代謝である。その仕掛けがこの国に定着したのは間違いない。

 この国ってイタリアなんですよ。あははって笑っていいかわかんないけど。そういう政治の仕組みがいいならアメリカがガチですよ。もう世界経済とかイランの核問題とか吹っ飛ばして盛り上がっているし(ってそれが問題ですよってば)。
 おちゃらけてしまったけど、もとの朝日新聞の社説がこれはちょっとおちゃらけ過ぎでしょう。日経はどうか。日経新聞社説”伊新政権に構造改革の重責”(参照)が率直にいってまじめくさったジョークのような印象がある。

ベルトローニ前ローマ市長率いる中道左派と大差をつけたとはいえ、安穏としてはいられない。新政権には2つの重大な責務がある。

 なんだなんだその2つ。

 第一は経済の再建だ。イタリア経済は低迷が続き、2007年10―12月期も08年1―3月期も、実質国内総生産(GDP)成長率はゼロまたはマイナスと予測される。


 第二は選挙制度の改革である。同国の現行の選挙制度では、安定した政権維持が極めて難しい。両院が対等であるほか、上院では20州に配分した議席の中で、州ごとに最多得票政党が55%の議席を得る。

 なんかべたなくさしを書きたいわけではないけど、それって無理でしょ。というか、鶏も大空を駆けめぐるべきである的な冗談としか思えない。
 両紙ともに社説ということもあってか、選挙の内実には触れていなかった。むしろそのあたりが奇っ怪に思えた。中国報道だといろいろ触れてはいけないことがあるのはわかるけど、イタリアになぜ?
 今回の総選挙のポイントは北部同盟でしょと私は思う。毎日新聞記事”イタリア総選挙:極右政党、与党中枢に”(参照)がさらっと伝えている。

ベルルスコーニ前首相を復活させたイタリア総選挙では、小政党にも変動があった。東欧、アジアやアフリカなどからの移民を嫌悪する極右政党「北部同盟」が票を倍増させ、与党の中枢に食い込んだ。一方、外国人保護をうたう伝統的な左翼は後退した。新政権の政策次第では、増え続ける外国人への嫌悪など不寛容さが広がる危険もある。
 北部同盟は、ベルルスコーニ氏が率いる中道右派連合の一翼を担い、前回06年の得票率4.5%が今回は上下両院で8%台へと躍進した。

 さらっとしていてベルルスコーニ政権と北部同盟の関係がわかりづらい。というか、毎日の記事は移民排斥はいかんなのイデオロギー的な正義にもたれて作文しているせいで、北部同盟をべたに「極右政党」とか舞い上がり、実際のイタリアの政局を見ていないっぽい。
 では実際はどうか。まず選挙の概要というかファクツだが、西日本新聞”イタリア総選挙 中道右派、両院で勝利 ベルルスコーニ氏 3度目首相に 中小政党は壊滅状態に”(参照)より。

 選挙は中道右派と、ベルトローニ前ローマ市長(52)率いる「民主党」を中心とする中道左派による、初の本格的な二大勢力対決となった。
 内務省の発表によると、中道右派の得票率は下院(定数630)47%、上院(定数322、うち終身議員7)47%で、いずれも中道左派(下院38%、上院38%)を大幅に上回った。下院は政権安定のためのボーナス制があり、最多得票の中道右派は340議席を保障される。地元通信社によると、上院では162議席以上を確保する見通し。
 二大勢力以外の中小政党はほぼ壊滅状態で、中小政党が乱立してきたイタリア政界の構造が大きく変化しそうだ。

 以上はまあファクツ。で、まとめとしてはこう。

プローディ首相の中道左派連立政権の崩壊に伴うイタリア総選挙が13、14の両日行われた。即日開票の結果、ベルルスコーニ前首相(71)率いる「自由国民」を中心とする中道右派が上下院とも勝利し、2年ぶりに政権を奪還。ベルルスコーニ氏が三度目の首相職に就任する。政治的混乱が続いた同国だが、中道右派は両院を制したことで安定政権としてスタートする見込み。

 このあたりを真に受けて朝日新聞なども二大政党だとか浮かれ上がったのだろう。また、毎日新聞”イタリア総選挙:中道右派が圧勝 2年ぶり、ベルルスコーニ政権に”(参照)の表題のように「圧勝」とか言っている。先の日経新聞社説でも「安定政権」とか言っていた。

イタリアの上下両院総選挙で、ベルルスコーニ前首相が率いる中道右派が圧勝した。5月上旬にも第3次ベルルスコーニ政権が誕生する。中道右派は上下両院で過半数の議席を確保した。伊共産党左派の流れをくむ小政党は議席を失い、政党数が激減した。プロディ政権と異なり、安定政権を樹立できそうだ。

 数字的にはそうかもしれないが、たぶん、「安定政権」にはならないだろう。理由は、日本の報道にはなぜ指摘がないのか不思議なくらいにごく単純なことに思えるのだが、ようするに、第三期ベルルスコーニ政権は、かなり穏健になったとはいえ北部同盟に依存しなければならないのに、今回破れたとはいえベルトローニ側の勢力は衰えたわけではない。そういう状況でベルルスコーニ政権がどうでるかだが、第一期のベルルスコーニ政権が北部同盟のごたごたで潰れたことを思い出せば、また同じようなストーリーになりかねない。
 不思議なのだが、普通にイタリアを見ていたら今回の選挙がどうなるというより、ドイツではないけど大連立くらいしか打つ手はないのはわかりそうなもの。ニューズウィーク日本版4・9「イタリア救う秘策は大連立」ではこう。

 小党乱立で歴代政権が機能不全に陥ってきたイタリアでは選挙制度改革、労働改革など問題が山積。タカ派のベルルスコーニと左派のブルトローニの協力(=ベルトルスコーニ)以外、この国を救う道はない。

 ベルルスコーニはそのカードを切りたがっているが、まだブルトローニ側では動きがない。そりゃ日本の大連立フカシのどたばたでもそりゃそうだの内情はあるもの。
 結局どうなるかなのだが、さらによほど追い詰められないとどうにもならないし、私はどっちかというとさらに追い詰められても結局どうにもならないんじゃないかにちょっと賭けている。イタリアってそれほど国家的な求心力はないのだろうと思うし。
 それにしても、10年以上も前になるが日本のジャーナリズムは随分と「オリーブの木」に期待をかけたものだった。あのころの朝日新聞でも読み返してみたい気がするけど、それももう歴史の物語というところか。

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コメント

G8から米中印欧のG4へ
で、ヨーロッパ共同体に憧れるアジアはひとつとか言ってる左派が梯子外しか
そして、その次の段階は国家、民族のフィクション性が露になる(つまりヨーロッパの梯子外し)

投稿: ddc | 2008.04.17 10:31

中国が高転びして第二の世界恐慌が大発生。
にっちもさっちもいかなくなったイタリアは、例によってそういうときだけ団結して他人に責任転嫁。
ジャップの代わりに中共、イモ野郎の代わりにイランあたりと手を組み、第二の枢軸を結成、
不埒な資本主義者たちに対して牙を向くのだった……。

……イタリアじゃフランスは倒せないか。

投稿: | 2008.04.17 20:30

>ddeさん

国家のフィクション性はアンダーソンやスミスがもう言ってますよ、1980年代前半に。
民族のフィクション性だってどこぞのポストモダニストがとっくに指摘してそうですね。
カラクリは同じなんですから、そんな難しい議論も必要ないでしょう。

投稿: ななそ | 2008.04.27 22:47

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