« 人は年を取るにつれて幸せになるか | トップページ | 光市母子殺害事件高裁判決、雑感 »

2008.04.19

[書評]ウエイン・W・ダイアーのこと

 先日ふとウイエン・W・ダイアーのことが気になってたまたま本屋に行ったら彼の本があった。手にとって見て特に読むことはないかなと思ったが、それからちょっと気になることがあったので買ってみた。最初に手に取って気になったのはこれではなかったかもしれない。

cover
ダイアー博士の
スピリチュアル・ライフ
 これというのは、「ダイアー博士のスピリチュアル・ライフ―“運命を操る力”を手にする「7つの特別プログラム」(ウエイン・W・ダイアー、訳:渡部昇一)」(参照)だ。ざっと読んだ。ざっとしか読めない本だとも言える。表題から連想される以上のことは何も書かれてない。それでも気になるなら出版社の釣書はこう。

あなたのスピリット(魂)には、人生のあらゆる問題を解決する答えがある! 「自分のための人生」をはじめ、数多くのベストセラーを著してきた著者が執筆。「不思議な偶然」と「幸運」に出会う本。

 そうなのかもしれない。しかし、当面自分には関係ないなと思った。奇妙な空白感があった。この空白感は二度目だ。
 一度目は、沖縄で暮らしていたころ、ふとウエイン・W・ダイアーのことが気になって、「自分のための人生―“自分の考え”はどこへいった! (ウエイン・W・ダイアー、訳:渡部昇一)」(参照)と「どう生きるか、自分の人生!―実は、人生はこんなに簡単なもの(ウエイン・W・ダイアー、訳:渡部昇一)」(参照)それともう1冊アマゾンで取り寄せて読んでがっかりしたことがある。単純に言うと、あの時思ったのは抄訳がひどすぎるのではないかということだった。
 私がウエイン・W・ダイアーの本を最初に読んだのは、「間違いだらけの生き方―あなたは人生に自信が持てますか(訳:多湖輝)」(参照)だった。これも抄訳だったが、けっこう人生観にインパクトを受けたものだった。1977年の出版である。当時の日本語表記では「ダイヤー」だった。オリジナルは”Your Erroneous Zones(Wayne W. Dyer)”(参照)で、アマゾンの広告には「全世界1250万部突破の記録的大ベストセラー」とあるがウィキペディアでは3000万部とある。ちょっとありえねえ感があるが当時、あるいはそれから米人とちょっとした話の際になにげなく聞いてみるとある年代以上の人はほとんどがこの本を読んでいた。今アマゾンを見たらドイツ語版もけっこう売れているようだ。
 ”Your Erroneous Zones”は彼の著作のなかでは2作目で、実際には同書を読めばわかるように当時は彼はカウンセラーで、最初の著作はそうした職業的なもののようだ(私は読んだことはない)。なので”Your Erroneous Zones”が事実上の処女作と言っていいだろう。1976年の作品で頭の体操で有名な多湖輝が感銘して訳したというのだが、ご本人が訳されたのだろうか。そういえば、その後は渡部昇一訳がよく出てくるのだがこれもご本人が訳されたのだろうか。余談だが、私は多湖輝にも渡部昇一にも実際に会ったことがある。しかも会いたくて会ったわけでもなくというシチュエーションなのだが。多湖輝については同訳書が出たころだった。1926年生まれというから、あのころ50歳くらい、つまり今の私くらいの年だったわけか。彼は、人生の選択として子どもを生まないということがあります、と熱心に説いていたのだが、その熱心さになんか奇妙な違和感を覚えたものだった。渡部昇一については、いやそれはまた別の機会でもあれば。
 ”Your Erroneous Zones”は私好みの悪いダジャレは止めてくれ系のタイトルでネタもとは”erogenous zones(性感帯)”である。くだらね。とはいえ意味は、人間の行動パターンでエラーを起こしやすい諸点ということだろう。多湖輝訳では「間違いだらけの生き方」としていたがそのほうが、「自分のための人生」よりもマシな気がするし。くだくだ書いたけど、全世界でこれだけの人が読んだ本は名著というほかはない。英語で読めるなら読んでみるといいと思うし、邦訳なら多湖輝訳を古書でさがされたほうがいいと思う。
 事実上の次作、”Pulling Your Own Strings: Dynamic Techniques for Dealing With Other People and Living Your Life As You Choose ”(参照)も、率直にいってすごい本で、私は若い時にこれ読んでしまったので、行動パターンがちょっと日本人からずれてしまった。あれだ、欧米人や華人といて、この押しの強さはなんだお前らになるコツが延々と書かれている、えげつない本である。読むと得をする本だと言ってもいいが、長期的に見れば、私がいい例だけど、今は反省している。翻訳者渡部昇一はそうではないご様子なのが「ダイアー博士のスピリチュアル・ライフ」の後書きでわかった。彼が英国留学中、地方税をどうするかという問題に直面したときのことだ。

 その時、ちょうど『どう生きるか、自分の人生!』の翻訳に関わっていたので、そこに書かれたとおりのことを実行することによって、首尾よく数百万円の地方税がすべて反ってくるという経験をしたのである。
 こうした自身の経験からも、なるほどダイヤーは実践的な生活の知恵を教えるすばらしい人だと思っていたのである。

 この本も翻訳は渡部昇一でないものがあったと思うのだが、わからない。いずれにせよ現在その訳本として販売されている「どう生きるか、自分の人生!」とは別の本のような印象がある。
 その後、ウエイン・W・ダイアーは事実上の三作目"The Sky's the Limit"(参照)を出したあたりから、マズロー心理学のようになっていき、そしてだんだん変な人になっていた。先の「ダイアー博士のスピリチュアル・ライフ」の後書きではこうある。

 しかし、ダイアーは単にこの世の生活技術のみならず、インテリジェントなものからスピリチュアルなものへと興味と関心が動いていったのであった。
 その後、私は彼の主なる著書に二十数年つきあってきたので、彼の成長過程がよくわかる。そして彼は自分の死んだ父との神秘的体験もあって、完全にスピリチュアルなほうにウエイトをかける著者になったのである。

 というわけで、同書はすでにすっかりそっちの人になったウエイン・W・ダイアーがいる。
 エントリの冒頭に戻る。私は、なぜかウエイン・W・ダイアーのすっかり度が少し気になった。人間いったいどこまですっかりその気になれるものなんだろうか、という関心でもある。そして、すごーく行っちゃった人の話を聞くと、自分もすごーく行けちゃうものなんだろうか。よくわかんないけど、自分はどことなく、その手のすごーく行っちゃった人とスピリチュアルな縁というか悪業でもあるのかこんきしょう的な遭遇もないわけでもないので云々。で、読んで気が抜けた。ほとんど空白感だったのである。
 率直に言うと、私はそのすっかりになってしまったウエイン・W・ダイアーにまだちょっと興味がある。それと正確に言えば、私のように今は反省しているタイプの人では、ウエイン・W・ダイアーはないようだ。なんかこの奇妙なねちっこさのようなものが「ダイアー博士のスピリチュアル・ライフ」からはにじみ出ているような気がした。

|

« 人は年を取るにつれて幸せになるか | トップページ | 光市母子殺害事件高裁判決、雑感 »

「書評」カテゴリの記事

コメント

”Pulling Your Own Strings”の日本語版、”「頭のいい人」はシンプルに生きる”はブックオフで偶然パラパラと読んでみて思わず泣いてしまったことがあります。当時のぼくにとっては救いになった本でした。立ち読みして感動して買ってしまった本は自分はこの一冊くらいです。本の全部を読んでしまうとちょっとそれはないだろうと感じる所もあったのですが今の自分の身の振り方に大きく影響を与えてくれた本です。翻訳は渡部昇一さんでした。ファイナルベントーさんもこういう本読んだりするんですね。

投稿: ritsgirl | 2008.04.20 01:54

 別に幸せに生きる必要は無いんじゃないの? 自分の方から欲しがるから逆選別&淘汰されるんでしょ。
 敢えて欲しがらないで来るのを待って、来れば幸運来なけりゃ駄目運くらいに割り切りゃいいんですよ。

 強すぎる欲は、結局自らを滅ぼすんですな。生きてく上で最低限最小限あれば、そこゲットだけあくせくしてれば、それで良し。そげな感じ。感じただけなんで具体的には知らん。

投稿: 野ぐそ | 2008.04.20 08:09

ウイエン→ウエインでは?

投稿: typo | 2008.04.20 18:07

ご指摘ありがとうございます。タイポ直しました。

投稿: finalvent | 2008.04.21 09:30

ダイアー博士の本は何冊か読みました。

最初に読んだのが「小さな自分で一生を終わるな!」渡部さん訳です。この時の博士はちょうどこっちの世界からあっちの世界に「シフト」の頃みたいでしたので、優しいイメージで好きでした。

それから、「自分のための人生」「頭のいい人はシンプルに生きる」「ダイアー博士のスピリチュアルライフ」(全て渡部さん訳)を読んで、「小さな自分~」くらいを挟んでダイアー博士のビフォーアフターという印象を受けました。

ビフォー アメリカの文化もあると思いますが自己中の本当に器の小さい方でした。
なぜ、こんなに店員中心に怒っているのかわかりませんでした。
店員へのクレームの仕方の専門書みたいでした。これはこれで役に立つかもしれません。
面白かったし、強く賢く生きよう!って思いたい時励ましてくれます。


アフター お父さんの一件があってから突然あっちの世界に行ってしまいました。
あんなにイライラしていたのに、突然スピリチュアルな人になってしまって、博士!どうしたんですか!!?
祈りで治癒出来るとか春樹さんみたいな事言い出してこれからどうなって行かれるのでしょうか?

この先まだまだ「シフト」があるのでしょうか?
人生の午後の後は人生の後(霊界?)とか可能性がありそうですがあんまりそちらに行かれるともうワタシはついていけないので、何だかさみしいです。

個人的には「頭のいい人はシンプルに生きる」くらいが疲れないでちょうど良かったです。

ダイアー博士はもともとが非常に人間臭くて正直で純粋な人だというところは共感出来て励まされました。
孤児から頑張ってここまで夢を実現した博士は全く憎めません、というか大好きです。

これからも私は注目したいです。


投稿: K | 2013.02.28 21:11

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [書評]ウエイン・W・ダイアーのこと:

« 人は年を取るにつれて幸せになるか | トップページ | 光市母子殺害事件高裁判決、雑感 »