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2008.03.02

[書評] 「勝ち馬に乗る! やりたいことより稼げること」(アル ライズ/ジャック トラウト)

 誰のブログだったかどのエントリだったか忘れてしまったが、反語の通じない世の中になったという嘆きが書かれていた。そうかな。それどころじゃないや。洒落も通じなくなってしまった。常識も通じないかもしれない。まあ、どうでもいいや。というわけで、「勝ち馬に乗る! やりたいことより稼げること(アル ライズ/ジャック トラウト)」(参照)の紹介エントリでも書いてみよう。誰か書いていた? 

cover
勝ち馬に乗る!
 何の本かって? 表題でわかんない? わかんないわけね、あー、そう。おっと、そこで教えて!ダンコーガイ!とか言うなよな。分裂君まで召喚しちゃうぜ。ファンガイヤよりキバが人類の敵になるかもしれないのに。いやその、俺も善人のなり損ねだしな。というわけで、本書は、本当の成功術だ。成功したい? じゃ、この本を読むべきなんだよ。これが本当っていうこと。
 オリジナルタイトルは"Horse Sense: The Key to Success Is Finding a Horse to Ride"(参照)。サブタイトルはわかりやすい「成功の鍵は、乗るべき馬を見つけること」。なので邦題、「勝ち馬に乗る」はそれでいいかもしれない。邦題のサブタイトルはどうでもいい。問題は書題"Horse Sense"だが、サブタイトルからすると、馬のセンスということで、馬を見分ける感性という感じがするが、これは「常識」ということ。デカルトの良識とはぜんぜん違って、日本語の「常識」に近い。が、バカでもわかるんじゃねーのそんなことというニュアンスがあると思う。オリジナルが出版されたのは1990年。古い。本書は一応ビジネス書でかつ「成功願望者向け書籍」なので成功者の事例がこてこて出てくるのだが、あれから何年経ったでしょみたいに年月が経つとタイムマシンで結末を見るように見るわけで、クルル曹長の笑みのように巧まざる失笑が楽しめるというオツなところがある、ま、どうでもいいですが。成功本っていうのはあれだね、個別事例を書くと十年もすると痛いもんだな、と。
 でも本書がいくら失笑で楽しめても、お楽しみはそこにあるのではない。どこにあるのかは読めよなんだが、ありげにハンガリー狂詩曲的に紹介してみよう。
 まず基本だ。

 成功と自信の関係は、鶏と卵の関係のようなものだ。二通りの考え方ができる。
 自分に自信があるから成功したのか。成功したから自信がもてるのか。
 われわれが見るところ、両方とも正しい。だが、ふたつのアプローチには大きな違いがある。自分に自信をつけるのは、とんでもなく難しい。むなしい努力と言ってもいいかもしれない。自信たっぷりの人たちは、そう生まれついたと思うしかない。(中略)
 逆に、自分に自信のない人は、生まれつきそうか、子供の頃に自信をなくしたかどちらかだ。
 IQ(知能指数)だけでなく、CQ(自信指数)も生まれつき決まっているものだ。努力して大幅にアップできるものではない。


 だが、己を信じることが成功の秘訣なのだろうか。われわれはそう思わない。人生で本当に成功する秘訣は、自分以外の何かを信じることだと考える。競馬でいえば、賭けるべき馬を見つけるのだ。

 かくして賭けるべき馬を眺めてみようということで、本書は穴馬、対抗馬、本命が列挙される。
 穴馬とは何か。

 まずは、馬のハンデについて「穴馬」から見ていこう。なぜ穴馬からはじめるのか。いちばん人気があるかだ。
 いちばん難しく、勝ち目がない馬でもある(初心者が最初に思い知ることだが、穴馬に賭けると大金をするのはあっという間だ)。
 この本でいう倍率は配当のことではない。大勝するチャンス、あなたが目指す「成功」へのチャンスのことだ。残念ながら穴馬は、本命よりも勝ち目が少ない。どんな馬よりも勝つのが難しい。

 では、穴馬のリスト。

  • 勤勉な馬 …… 100倍
  • IQの馬 …… 75倍
  • 学歴の馬 …… 60倍
  • 会社の馬 …… 50倍

 意味わかる? 詳しい話は本書にこてこて書いてあるけど、ようするに勤勉というのが一番勝ち目が薄いということ。地頭がいいのを当てにするのも、まあ、負けになるよ、と。学歴なんかたいしたことないぜ。いい会社を選ぶことも、たいしたことないよ、今の日本となっては本書の米国と同じだし。
 次は、対抗馬。

 対抗馬と穴馬の違いは何だろう。
 穴馬は、自分自身の何かに賭ける。対抗馬も、自分自身の何かに賭けるのはおなじだが、違いがある。自分自身の何かを、ほかの何かと結びつけなくてはいけないのだ。

 では、対抗馬のリスト。

  • 才能の馬 …… 25倍
  • 趣味の馬 …… 20倍
  • 地の利の馬 …… 15倍
  • 宣伝の馬 …… 10倍

 才能というのはつまり誰かに認められることだ。誰も認めてくれない才能についてはまあどうぞご勝手に。それにしても頭がよいから成功したとかいう自慢話っていうのはよく読むとわかるけど誰かがその才能を認めてくれたという話なのな。趣味の馬というのは、好きでやっているということ。仕事が趣味だみたいなやつ。いるだろ。地の利の馬は簡単に言えばTPOっていうか高校前のパン屋みたいなもの。宣伝の馬というのは自分をアピールする能力だ。コミュニケーション力とかもそう。つまり学歴よりはマシな馬だけどくらいなもの。
 さて、本命だ。

 本命と対抗馬の違いは何だろうか。
 対抗馬では、自分自身にも賭けるし、他人にも賭ける。一方、自分以外の人やモノに全面的に賭けて、成功を目指す――これが本命だ。
 自分自身を賭けから外すと、勝ち目はぐっと高くなる。

 では、本命のリスト。

  • 商品の馬 ……  5倍
  • アイデアの馬…… 4倍
  • 他人という馬…… 3倍
  • パートナーの馬… 2.5倍
  • 配偶者の馬……  2倍
  • 家族の馬 …… 1.5倍

 商品の馬というのは、「これは売れる」というやつだ。本場の餃子とか。アイデアの馬というのはあれだスニーカーにバネをつけてぴょんぴょんするとかだ。他人という馬はようするに上司だ。あるいは教授とか。パートナーの馬を知りたければビルゲイツの代わりによく出てくる海坊主を想起せよ。配偶者の馬は、嫁の選び方。家族の馬というのは、親の選び方だ。
 つまりだ、成功したければ、一番の近道はよい家系にいること。でも、残念でした。たいていはそうではない。というわけで、配偶者とかそれを介して嫁の父のファミリーにつながるっていか、閨閥。日本社会の正当な成功者っていうのはそういうもの。
 というわけで、この本は、はてなブックーマークなんかを釣っている穴馬とか対抗馬のくだらない話は早々に見切りが付けられ、穴馬についてそれぞれ一章をあてて説明していくわけだが。
 がというのは、こんな本、マジ読むのは某アルファブロガーくらいかもしれないので、最終章の「勝ち馬を見つけるために、心に刻んでおきたい7項目」というのもリストだけしておこう。

  1. 知性より性格が重要
  2. 純粋な民主主義社会では、機会は平等ではない
  3. 夢を手放す ―― チャンスは巡ってきた時につかまえる
  4. キャリア・プランは意味のない練習である
  5. 早すぎることもなければ、遅すぎることもない
  6. 沈黙は金
  7. 前線の馬を探す

 「前線の馬を探す」はこう説明されている。

 自分自身は忘れることだ。未来のフロンティアは何だろうか。それが問うべき質問だ。誰も未来はわからないが、新しいアイデアやコンセプトがつくられた時、つねにその場に居合わせるようにすることはできる。つねに行動が起きる場にいる。つねに乗るべき馬を探す。

 アイロニーを抜きにしてその提言には考えさせられることはある。いやざっくばらんに言えば、成功者というのは、二世であるとか、カネのついた嫁をもらったとか、いい友人がいたとか、運がよくてマッチョな自信をブログで語っているとか、そういうことだ。他人事だ。いや世間様がそういうふうにその人に仕事をさせているということだ。

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コメント

なんともおもしろいエントリありがとうございました。最近の五つの定理とかフロムダさんのエントリを見て、誰かがこういう本を紹介していたなと漠然と思って探そうとしているとこでした。たぶんマーケティングあるいは広告系のブロガーの人が勝馬に乗る系の本を紹介してたような気がします。

投稿: kf | 2008.03.02 21:44

最後の分裂さんへのくさしに笑っちまいました。
このところあそこ、統一マジ言劇場になっちゃった感じで薄ら寒い。
初期のスタンスが懐かしいなあ。

投稿: wilf | 2008.03.03 01:55

breadこんにちは。
>運がよくてマッチョな自信をブログで語っているとか
「自信」は「自身」ではないかな?と小一時間考えてしまいました。・・・やっぱり「自信」かなあ。

投稿: けろやん。 | 2008.03.03 07:43

辛い仕事を始めると、時間の経ち方が異様に遅い。3月半ばぐらいだと思ったら3月4日だった。あと、なぜか睡眠時間も5時間ぐらいで大丈夫な体になってる。とにかくチャンスを掴む事だけ考えよう。

投稿: itf | 2008.03.05 13:28

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