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2008.03.04

北京オリンピック近づくに黄砂の他に舞うもの

 最初にお断り。エントリは中国バッシングを意図したものではない。私はオリンピックにはほとんど関心はないが、つつがなく北京オリンピックが成功すればいいなと思っている。そしてできたら秋口に値崩れしたハイビジョン・ディスプレイでも買おうかな、とその程度の思いしかない。以下、内容は、メディアをブラウズしてそういうもんかいなと印象をもったので、ブログにログっておくという程度のもの。
 日本版ニューズウィーク3・5のPERISCOPEに「人権問題書部は中国が不戦勝」というべた記事があった。内容は表題どおりで、「中国は人権問題で貴重な勝利をあげたようだ」ということだが、問題のポイントは中国ではない。


 最近になってニュージーランドやベルギー、イギリスが自国の代表選手に、法輪功やチベットを擁護する発言をすることや、ダルフール問題に抗議するバンドを着用することを禁止した。違反すれば大会から追放されるおそれもある。

 ちなみに、日本ではホワイトバンドが流行ったけど、「ダルフール問題に抗議するバンド」というものがある。緑のバンドだ(参照)。
 問題のポイントは中国ではないというのは、ご覧のとおり、ニュージーランド、ベルギー、イギリスといった国の問題だから。
 さらにメディアも。

 中国の影響力には、メディア王のルバート・マードックさえ屈するほど。マードックは中国での商機をを得るため、傘下の出版社の中国批判本を発行中止にしたうえ、中国政府の「道徳的価値観」を称賛した。スポーツ選手をはじめ誰も、中国を怒らせたら後が怖いと思っている。

 そういうものでしょ。まったく、マードックのような外国メディアは商機だけで考えるということなのでしょ。
 ワシントンポストは幸いマードックの息はかかっていないのかもしれない。2月29日付け”Olympic Speech”(参照)にはこんな社説が載っていた。

RUN, HIGH-JUMP, hurdle or kayak -- but whatever you do, don't speak. That's the message some countries are sending to their athletes ahead of the Beijing Olympics.
(走れ、ハイジャンプ、ハードルにカヤック。でもなんであれ、しゃべっちゃダメだ。北京オリンピックを前に、そう自国の選手に告げる国がある。)

Last month, the Belgian Olympic Committee announced that it will not permit its athletes to make political statements, verbally or sartorially, in Olympic venues. The British Olympic Association similarly muzzled its athletes, who will be expelled from the team if they talk about political issues anywhere at all. The New Zealand Olympic Committee has also waffled about exactly how much freedom of expression its athletes will enjoy.
(先月、ベルギー・オリンピック委員会は、オリンピックの檜舞台では、口頭であれ衣服に書いたメッセージであれ、政治的な発言は断じてならぬとアナウンスした。英国オリンピック協会も同様に、非難対象がなんであれ政治的発言をしたらチームから追放するとして選手の口封じを行った。ニュージーランド・オリンピック協会も選手の言論の自由について言葉を濁した。)


 どうでもいけど、waffleというのは、ネットのワッフル・ワッフルという意味じゃなくて、言葉を濁すということ。

The decisions must please China, which has been condemning human rights groups for "politicizing" the Games. The Belgian, British and New Zealand committees argue that the gag orders are just meant to uphold the Olympic charter, which declares that "no kind of demonstration or political, religious or racial propaganda is permitted" at the Games.
(この決定は中国を喜ばすに違いない。というのもこれまで人権団体がオリンピックを政治問題化するとして非難してきたのだから。ベルギー、英国、ニュージーランドの各協会では、箝口令は、競技において「示威活動または政治・宗教・人種のプロパガンダや許されない」としているオリンピック憲章に則ったものだとしている。)

 なるほど。
 なのにワシントンポストはこう続ける。

In making its Olympic bid, China repeatedly argued that placing the Games in Beijing would "help the development of human rights." Yet China's human rights record has in many ways worsened (as in the appalling arrest of dissident Hu Jia recently), and China has continued to abet repression in Burma and Sudan. Belgium's and Britain's orders to athletes not to comment on China's poor behavior may actually embolden Beijing.
(オリンピック招致で、中国は繰り返し、北京大会が人権拡張に役立つと力説してきた。なのに、中国の人権報告はさまざまに悪化している(最近の見せしめ胡佳逮捕のように)。加えて中国は、ミャンマーやスーダンでの弾圧を幇助しつづけている。ベルギーや英国の選手に対する箝口令は中国の貧弱な対応でよいのだとして北京政府をつけあがらせることになりかねない。)

 なかなかワシントンポストは手厳しいですな。というか、問題を中国バッシングというより、現状について、自分たちの政治的な価値の問題として引き受けるというキンタマがあるからなのだろう。

These gag orders call into question the West's belief in freedom of speech, a value that democracies should be promoting, not discounting, in China.
(この手の箝口令は、西側諸国において言論の自由、つまり民主主義を推進する価値であり、中国だから値引きしていいものじゃないということに疑念を呼び起こしている。)

 箝口令なんか言明するから問題なので、ニュージーランドがこの問題をワッフルするよりも、日本のメディアみたいにもっと原点から問題にしなければよいというキンタマレスなソリューションもあるかもしれない。あるいは問題は餃子だよ餃子。

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コメント

>Last month, the Belgian Olympic Committee announced
>(先月、北京オリンピック委員会は、

北京→ベルギー

一応意味に影響するので指摘しておきます。

投稿: Khaled | 2008.03.04 21:46

Khaledさん、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2008.03.04 22:45

胡佳氏ではないかと

投稿: | 2008.03.05 13:44

「胡佳」の件、修正しました。ご指摘ありがとうございます。

投稿: finalvent | 2008.03.05 18:40

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