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2008.03.03

[書評]売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則 (アル ライズ/ジャック トラウト)

 洒落で書いた昨日のエントリ「極東ブログ: [書評] 「勝ち馬に乗る! やりたいことより稼げること」(アル ライズ/ジャック トラウト)」(参照)だが、そういえばアル・ライズとジャック・トラウトのコンビの著作といえば、むしろこっち、「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則 (アル ライズ/ジャック トラウト)」(参照)を紹介しておくべきかなと思い、昨晩はレモン・ワインを飲みながらパラパラと再読した。

cover
売れるもマーケ
当たるもマーケ
マーケティング22の法則
アル ライズ
ジャック トラウト
 アル・ライズとジャック・トラウトには同趣向の本もあるので、必ずしも本書がというわけではないと言えばそうなのだけど、端的に言えば、本書はマーケティングのバイブルですよ。その筋の人でこれ読んでなければモグリです。ただ、その筋の人はこれを普通の人には読ませたくないだろう。
 では、その筋でない人が読むとしたらどういうメリットがあるかというと、大蟻コンコンチキというか、たとえばブログで有名になろうとかするなら、本書を適用すればいい。ま、実際に適用するかどうかはブロガーのもつ理念によるわけで、読後マジこれやるかよというのはそれから思案してもいいのだが、既存の有名ブログが有名ブログである理由は本書でさらりと解けますよ。
 ブログだけではないどっかの社員とかで自分自身をマーケティングしたいと思ったらこれを適用すればいい。ええいついでに言っちゃうとモテたいと思ったら同じようにこれを応用すればかなりいけるだろう。
 本書を素人さんが読むもう一つのメリットは、世の中の仕組みがよくわかるようになるというか、マーケティングがどう動いているかという原理がよくわかるようになる。つまり、消費資本主義のかなりコアな部分に納得がいくようになる。で、納得してどういうメリットがあるかというと、単純に言うと、自由になれる。
 毎度ながら本書の背景を簡単に説明すると、オリジナルは”The 22 Immutable Laws of Marketing: Violate Them at Your Own Risk”(参照)。オリジナルタイトルは単純に「マーケティングにおいる22の普遍法則」ということ。サブタイトルは「この法則を破るならそれなりにリスクを取れ」だ。
 出版年は1993年と古い。昨日紹介した「勝ち馬に乗る! やりたいことより稼げること」(アル ライズ/ジャック トラウト)」(参照)が1990年なので、洒落の後に教科書にしてみますか的なノリでできたような雰囲気がまだ漂っている。たぶん、現在の一線のマーケッターは本書の22の法則を、「あ、あれですか、古典的ですね、あれはもう古いですよ。たとえば……」といなすだろうと思う。たしかに法則が明確化された以上、「兵は詭道」なりということはある。しかし、そこまでできるマーケッターはそうはいないのでぶいぶいいうお兄さんには適当に騙されちゃいなというのも大人の態度かもしれない(ちなみに、凡庸なマーケッターと賢いマーケッターを困惑させるのは「リサーチ」の限界を本書が鋭く指摘している点が大きい)。
 けど、私の見る限り本書の法則はまさに法則で今でも生きているというか、マーケッティングの失敗事例はだいたい本書で説明できる。この間、大きく変わったのはマネーの問題だろう。今はジャブジャブ余っているのであたかも本書のシビアな世界とは違うように見える。見えるっていうだけなんだけど。
 で、当の22の法則は以下のとおり。梅田望夫著「ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!」(参照)ではないけど、英文も添えておく、というか、英語がとてもきれいなんで覚えられる人は覚えておくといい。

  1. 一番手の法則(The Law of Leadership)一番手になることは、ベターであることに優る(It is better to be first than it is to be better.)
  2. カテゴリーの法則(The Law of the Category)あるカテゴリーで一番手になれない場合は、一番手になれるあたらしいカテゴリーを作れ(If you can't be first in a category, set up a new category you can be first in.)
  3. 心の法則(The Law of the Mind)市場に最初に参入するより、顧客の心に最初に入るほうがベターである(It is better to be first in the mind than to be first in the marketplace.)
  4. 知覚の法則(The Law of Perception)マーケティングとは商品の戦いではなく、知覚の戦いである(Marketing is not a battle of products, it's a battle of perceptions.)
  5. 集中の法則(The Law of Focus)マーケティングにおける最も強力なコンセプトは見込客の心の中にただ一つの言葉を植えつけることである。(The most powerful concept in marketing is owning a word in the prospect's mind.)
  6. 独占の法則(The Law of Exclusivity)二つの会社が顧客の心の中に同じ言葉を植えつけることはできない(Two companies cannot own the same word in the prospect's mind.)
  7. 梯子の法則(The Law of the Ladder)採用すべき戦略は、あなたが梯子のどの段にいるかによって決まる(The strategy to use depends on which rung you occupy on the ladder.)
  8. 二極分化の法則(The Law of Duality)長期的に見れば、あらゆる市場は二頭の馬の競走になる(In the long run, every market becomes a two horse race.)
  9. 対立の法則(The Law of the Opposite)ナンバーツーの座を狙っている時の戦略はナンバーワンの在り方によってきまる(If you are shooting for second place, your strategy is determined by the leader.)
  10. 分割の法則(The Law of Division)時の経過とともに、一つのカテゴリーは分割し、二つ以上のカテゴリーに分かれていく(Over time, a category will divide and become two or more categories.)
  11. 遠近関係の法則(The Law of Perspective)マーケティングの効果は、長い時間を得てから現われる(Marketing effects take place over an extended period of time.)
  12. 製品ライン拡張の法則(The Law of Line Extension)ブランドの権威を広げたいという抗しがたい圧力が存在する(There is an irresistible pressure to extend the equity of the brand.)
  13. 犠牲の法則(The Law of Sacrifice)何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない(You have to give up something to get something.)
  14. 属性の法則(The Law of Attributes)あらゆる属性には、それとは正反対の、優れた属性があるものだ(For every attribute, there is an opposite, effective attribute.)
  15. 正直の法則(The Law of Candor)あなたが自分のネガティブな面を認めたら、顧客はあなたにポジティブな評価を与えてくれるだろう(When you admit a negative, the prospect will give you a positive.)
  16. 一撃の法則(The Law of SIngularity)それぞれの状況においては、ただ一つの動きな重大な結果を生むのである(In each situation, only one move will produce substantial results.)
  17. 予測不能の法則(The Law of Unpredictability)自分で競合相手のプランを作成したのでない限り、あなたが将来を予測することはできない(Unless you write your competitor's plans, you can't predict the future.)
  18. 成功の法則(The Law of Success)成功はしばしば傲慢につながり、傲慢は失敗につながる(Success often leads to arrogance, and arrogance to failure.)
  19. 失敗の法則(The Law of Failure)失敗は予期することもできるし、また受け入れることもできる(Failure is to be expected and accepted.)
  20. パブリシティの法則 The Law of Hype)実態は、マスコミに現れる姿とは逆である場合が多い(The situation is often the opposite of the way it appears in the press.)
  21. 成長促進の法則(The Law of Acceleration)成功するマーケティング計画は、一時的流行現象(ファッド)の上にきずかれるのではない。トレンドの上に築かれるのだ。(Successful programs are not built on fads, they're built on trends.)
  22. 財源の法則(The Law of Resources)しかるべき資金がなければ、せっかくのアイデアも宝の持ち腐れとなる(Without adequate funding, an idea won't get off the ground.)

 察しのいい人なら、法則とその簡単な解説で、ああそうかと思うだろうし、若干この世界に関わって痛い思いをした人は、そうだよなこれは法則だとわかるだろう。
 話はそのくらいでもいいかなと思うのだが、なんとなく私らしい書籍の紹介のしかたでもないので、少し蛇足でも書いて置こう。
 22の法則は独立しているのだろうか?
 そんなことはない。本書をよく読むとわかるが、基本的な法則は、たぶん3つだろう。ただし、世間の法則というのは本書には明示的には書かれていない。

  1. 知覚(認知)の法則
  2. 心(マインド)の法則
  3. 世間の法則

 意外と難しいのは、知覚の法則(The Law of Perception)というときの、Perceptionの意味合いだ。これは現代日本語的にいえば「幻想」と言っていいだろう。「マーケティングとはPerceptionをめぐる戦いであって、商品をめぐる戦いではない」ということにある意味で尽きているのだが、ようは市場にどのような催眠をかけるのかと言っていいだろうし、そしてその催眠が次に、どうマインドという機械(マシン)で機能するかが問題なのだ。そう、心というのは市場を支える心のように見えるがこれは一種の心理力学の機械なのだ。だから、そこにはその機械の動作原理があり、それが各種の法則に展開されている。そしてそのマインドの経済学的な動きが、ようするに世間の法則だ。
 浮世離れした日本の知識人はこの手のジャンルを嘲笑的に見るのだろうが、著者たちは意外なほど哲学的にもクレバーであり、しかも米人特有の本気を剥き出しにしている。その本気度は、財源の法則(The Law of Resources)と本書適用に際しての注意書きに現れている。端的に言えば、本書は、マーケットを通して見た経営哲学でもあるのだ。

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コメント

この本はずいぶん前から読んでて、普通に使ってたりします。
blog のアクセス増やす効果は、たしかにあったような気が。。

投稿: medtoolz | 2008.03.03 13:06

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