中国製毒入り餃子、雑感
昼飯を食った帰りにスーパーマーケットを覗いたら、冷凍食品のコーナーにいろいろお知らせが貼ってあった。対応が速い。それと店にもよるだろうが、けっこう冷凍食品が姿を消したなとわかるくらい減っていた。これだけの騒ぎなので、事件についてブロガーの一人として雑感を簡単にまとめておきたい。
まず当のこの事件なのだが、今日付けの中国新聞「なぜ消費者に伝えない」(参照)によると、実際の事件から一か月は事実上放置されていたらしい。
厚労省などによると、最初の発生は昨年十二月二十八日。冷凍ギョーザを食べた千葉市内の母子が下痢や嘔吐おうとなどの症状を訴えた。こうした事態が表に出ないまま、一月五日と二十二日に、兵庫と千葉の八人に同様の症状が起こっていた。
今回の食中毒は中国製ギョーザによるものとされるが、発生直後は原因がはっきりしなかったことから、自治体から厚労省への連絡はなかった。
最初の発生地となった千葉市。当初段階でギョーザを販売したコープ側から「食べ残しの微生物検査をしたが、通常の食中毒を疑わせる結果は出なかった」との報告を受けた。症状を訴えたのも二人だけだったため厚労省への届け出も公表もしていなかったという。
コープ側としても多数の被害ではないことと、想定外という思いはあったのだろう。結果的にはコープは社会的に非難されることになるのかもしれないが、したがないなという印象もあるし、この事件が広域に起きたものでもないことはわかる。だが、逆にそこまで重篤でなく広範囲に起きていた可能性もないわけではない。
警察庁によると、兵庫県警と千葉県警の科学捜査研究所(科捜研)が有機リン系農薬のメタミドホスを検出したのはいずれも同二十九日。三十日になってそれぞれ警察庁に報告があったため、厚生労働省に連絡、被害が広がる恐れがあるとして公表を決めた。
メタミドホスが検出されて、いわゆる事件となった。経過を見るとそこに社会が考慮しなければならない問題があることは確かだが、具体的にどうかとなるとはっきりとはしない。たぶん、中国製食品への警戒感の閾値があがるだろうから、ノイズ的な騒ぎも増えることになるのだろう。
メタミドホスが検出されたということで、「有機リン系農薬」という報道から、また残留農薬という話の展開がある反面、そうではないでしょうという識者の指摘がある。よくまとまっているのが今日付け毎日新聞「中国産ギョーザ:どこで殺虫剤混入? 中国での包装段階か」(参照)の記事だ。
推定できるのは、▽原料である野菜などにもともと残留農薬として付着していた▽工場での製造過程で入った--の2ケースだ。農林水産省によると、メタミドホスは、加熱調理することで分解され毒性も弱くなる。ギョーザは冷凍前に加熱処理されており、残留農薬の可能性は低いとみられる。
つまり残留農薬という話ではなさそうだ。
工場での製造過程での混入の可能性が高いが、厚生労働省の担当者は「限られた商品で被害が出ていることを考えると、個々の商品になる直前に混入したのではないか」とみる。両県警の捜査では、メタミドホスは商品のパッケージから検出されている。この担当者は「包装段階が最もあり得る」と話している。
この推定には説得力がある。現状では限定された製品からしか出ていないことと、その濃度が著しく高いことだ。この推定の意味合いについて記事では触れていないが、妥当に推測すれば人為的な混入か、ミスによる混入だろう。ただ、ミスによる混入なら、なんのミスなのかよくわからない。人為的な、つまり、意図的になされた犯罪なのではないかと考えるのが現状一番妥当のように思われる。であれば、相応の対応をすればいいのではないかということにもなる。
ただし、先にも触れたが、同様のケースが薄く広がっている可能性もあり、そしておそらくこれで全国で中国製食品を食べて気分が悪くなる人は続出するだろうから、そのあたりの見極めには手間取るだろう。毒性食品が薄く広がっている可能性があるとすると、すでに一部で疑念があるが、小麦にも注目せざるをえない。ただ、話の順序はまず広域な調査からだろう。
私の個人的な印象では、冒頭のスーパーマーケットの光景がやや異様な、生活に迫る感じがして一種の恐怖感のようなものがあるが、妥当に推測していくとこれは個別のケースのようにも思われる。
以上で、雑感は終わりなのだが、蛇足で思ったことがある。餃子を食べるのは、日本人だけなのだということ。いや、中国人だって餃子は食べるわけだが、彼らが食べるのは水餃子が多い。また基本的に、中国人にとって餃子というのは小麦を食べるための食品だ。冷凍食品も普及しているだろうが、餃子の場合は、日本人の家庭が米を自然に備蓄するように、備蓄した小麦粉で作ることも多い。
いや、中国人も焼き餃子を食べるが、形状が違うのと、あとは水餃子の残りを温め直すついで焼くというもの。残り物ということだ。そこで最初から焼く場合は、ぴっちり包まないのだそうだ。つまり、残り物じゃないですよというしるしにする。
中国人にしてみると、「日本人、不思議なもの食べるものだな」と思っているのかもしれないし、広い中国、いろんな食事があって当たり前と思っているかもしれない。
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コメント
アメリカでも餃子といえばたいてい焼き餃子が出てくる気がします。水餃子は実は世界的にはそんなに一般的ではないのでは。
投稿: とし | 2008.01.31 18:40
冷凍食品の場合は凍ってますから、液体の農薬をピュッとかけるなどしてしまえばにおいも何もしないでしょうからねえ。包装前に誰かが意図的に入れたという説が正しいような気がします
投稿: かん太 | 2008.01.31 22:36
素朴な疑問ですが、水餃子なら毒性がへるのでしょうか?
それはともかく、利害関係がないし近所にも無いので少々あからさまなことをいえば、
「また生協か・・・」
というのが最初の感想でした。
"肉の希望"の時も対消費者の最大の最終提供者はここだった気がしますし、たしか高い会費取って安全の提供を売り物にしているのに、なにやらお粗末な対応が目立ちます。
毒の出所については、対日輸出専門工場ということで、テロ説も囁かれだしているみたいです。よほど腰を据えてきちんと調査と報告をしないと、コントロールできないほど変な方向に話が進む恐れを感じます。
もっとも、調べたら、小麦に虫がつかないように混ぜてた、という恐ろしい話に落ち着くのかも・・・。
投稿: KURUKURU | 2008.01.31 22:45
焼き餃子は中国の東北部(旧満州)で一般的な餃子の食べ方だったって話を、どこかで聞きかじった覚えが有りますね。確か餃子にニンニクを入れるのも満州由来だったとか。
で、日本が満州に進出してる間に日本に広まったと・・・なにぶんうろ覚えなので正確じゃないかもしれないですけど。
投稿: ぽぽん | 2008.02.01 02:36
中国で日本の形の焼餃子ってほとんどないと思う。
上海では、在中日本人がよく言う「焼饅頭」が通り
沿いで売られていて、それを朝、出がけに買って、
朝食にしている。実態は小籠包を焼餃子と同じように
焼いたもの。見かけは違うが中身はほとんど同じ。
ただ中身が、よりジューシーなので、馴れていないと
噛み付いたとき、その汁がズボンに落ちて、汚して
しまう。ちょっとやそっとでは、そのシミは落ちない。
投稿: ヨコネノチンタ | 2008.02.01 11:17
故意か過失かはわからないけれど、個人もしくは
ごく少数の人間のやったこと、というのに一票。
会社に対して少なからぬ従業員が不満を抱いてて、
素手で餃子を包んでりゃ、何かあってもおかしく
はないんじゃなかろうかと。
ただ、またこれで「だから中国製品は」みたいな
話が盛り上がるのかと思うと、ちょっとなあ、と
いう気もします。
そもそも、個人が悪意を持って毒混ぜたってことなら
日本だって持ち帰り弁当はいわずもがな、もっと大規模な
弁当工場ででも起こりうる話なわけで。
個人の犯罪レベルに帰すべきことと、体制的な
問題は、やはり違いますよね。
投稿: フィガロ | 2008.02.01 12:44
JT株の動きに掲示板で疑問ありとの声
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/3jt_bd42.html
風聞ですけど。。。
投稿: katute | 2008.02.01 12:46
>メタミドホスの50%致死量(LD50)はラット経口の場合で16~21mg/kg。
>5歳の子供が意識不明の重体になっているとのことだが、そうするとこの子は少なくとも320mgのメタミドホスを摂取したということになる。
>だいたい耳かき一杯の粉末の重量ってせいぜい10mg程度なので、耳かき32杯分もの毒が餃子1個に入っていたという計算になる。
ということで、到底事故のレベルではない、これはテロだ、という説がかなり有力に語られだしているみたいです。
人民共和国の対応しだいでは、第二の通州事件となるかもしれませんね。
投稿: | 2008.02.01 13:10
http://mainichi.jp/select/today/news/20080201k0000e040068000c.html
兵庫県の被害者家族が食べたギョーザの袋から3ミリ!の穴が見つかったそーで
しかし、3ミリの穴を県警が見落として科捜研が見つけるってありえるんでしょうか?
投稿: | 2008.02.01 15:18
ちょっと話題が違うけど
以前此処で紹介してあった
「トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録」http://www.amazon.co.jp/gp/product/4095630132
が増版?された模様です。
投稿: トリル | 2008.02.01 17:38
毒物を入れる事が可能であったのは何時か? この問いに対して関係者は「包装時点以前」と考えているように報道されています。しかし、包装された状態でも、例えば注射針様のものを用いて、段ボールの外側からプラスチック容器の内部に毒物を注入することは可能です。また、注射針がビニール袋内に達しなかった場合には、ビニール袋の外側に毒物が付着する結果となり、報道されているのと似た状態になります。したがって、調査・捜査の対象に「包装された状態」を含める必要がると思います。
投稿: ケンさま | 2008.02.04 17:45
不思議なのは、この天洋食品は他の会社のPB商品も作っているはずなのに、なんでJTフーズの商品だけに混入していたのか?妙な感じがする。
誰か教えて。
投稿: woo | 2008.02.07 17:53
「個人がやったっぽい」から「これだから中国製品は」というのも微妙、とコメントにありますけれど、
それだけでなくそれを受けての中国側の対応・天洋社の「我々が最大の被害者」コメントや
調査に対して20の質問のうち3項目しか回答しない、などといったところから
「このような対応をする企業・国は信用できない」と思われるのでは?
この関連の記事はとても多く全てに精確に目を通せてはいませんので
見落としのある意見かもしれませんが。
メタミドホスが混入されたタイミングがほぼわかっている(予測ではありますけれど)なら、
犯人もわかりやすそうだけれど?そうでもないのかな?
投稿: 通りすがり | 2008.03.23 11:35
~中国の水道の現状~
http://18.xmbs.jp/YOKUMOKU/←Butuロ2よりご覧ください。よろしければコメントもしていってください!
投稿: ぐーたらJK | 2008.06.08 08:04