NHKインサイダー事件でまたモラルとかちと思う
ブログを書かないことが定着しそうなので、近況めいた雑談でも書いておこう。当初、そういう部分の話は別所に書いておき、ブログではある程度再読性のある話(軽いけど季節がら「極東ブログ: チョコレート・フォンデュ」とかもね)、あるいは時代のログのような資料性のある話と思っていた。そういうネタのないときや、あるいはあえて世間やネットの空気に言及したくないときは、書籍のこととか料理のこととか書いてきた。現状、ネタがないわけでもない。手間がないというのはあるかな。自分のなかでのブログも変わってきたかもしれないというのはある。また、時事や世界情勢、経済問題で気になることがないわけではないが、振り返るとそれなりに予言的に言及していてそれほど足すことはないように思える。
じゃということで気分を変えて、このところ気になることと言えば、いわゆるモラルということかな。モラルを持ちなさいという説教めいた話とは少し違う。「極東ブログ: モラルの低い人を傍観する時」(参照)と被るかなとも思うが、よっこらしょ、書いてみる。
一昨日だったかNHKの記者がインサイダー取引をしていたというニュースがあった。ひどい話だなと思ったが、以前日経の記者もやっていたし、だいたいこういうジャーナリズムに関わる人間だと、関わりかたにもよるかな、たまに「あ、これは株買うと儲かるな」という話はころっとしている。私もある情報分野とか継続的に覗いていたときインサイダーではないけど開発動向から次の手が見えるときがあった。
でも、それで株を買うとかは、しない。しないのはモラルもあるのだろうが、損得勘定があるからだ。儲かる話は儲からない。いや、ちょっと違うか。そんな儲けをしてもその上のフレームワークで損をするということかな。目先の得の限界や影響を考えるというか。
NHKの記者の例でいうと、儲けはたかだか50万円くらいのようだし、さっと儲けが出た時点ですっこめたということで、端から小遣い稼ぎだったようだ。が、50万円というのはNHK記者の年収にすればはした金と言っていい。いや、50万円をはした金とかいうとネガコメレッドにすかさず悪口言われそうだが、いやいや私や彼女のような貧乏人じゃない。NHK記者ならねということ。
それでも50万円ならはした金ではないでしょという考えもあるだろうか。NHK記者の年収といったって1000万円くらいかな。としてもなんだかんだ手持ちのお小遣いは月額20万円あるかないか。ないかな。そう、そこがこの話題の要諦か。たぶん、インサイダーNHK記者は、50万円、うほっ、いいお小遣い、だったのだろう。
というあたりで、モラルというより、なんか人生設計というかNHK記者をあと何年やってどう生きていくというビジョンが、お小遣いでぐらぐらしてしまうということだった。そのぉ、後の千金の事、じゃないや、その逆か。後の千金的な社会的ステータスというのがその人に課した安定性というものの意味を見失っていたのだろう。
今回のNHKインサイダーの詳細を知らないのだが、こういうのは常態だったのではないかと思うし、日経の時でもそうだが、他の記者でもあるだろう。当面の対処としてはそういうポジションにある人は株全面禁止というか委託投資という措置しかないようにも思うが、それでもこのしょぼさというのは世間とはそういうものだから残るだろう。お小遣いとか短期的な人生ビジョンにぐらぐらという人は絶えない。
それって、あれかなと思う。あれというのは、昔宮台真司先生だったか、終わりなき時代は今の強度を生きるというか、そういうのが言葉として語られる時代が終わると、それがある種、あたり前になるだろうし、それに希望格差社会というか、希望が見えない社会になると、長期ビジョンというのは見えないから、今の強度、今のワクワク気分だけで生きるということになるだろう。今の若い人の恋愛とかもすでにそれっぽいし。いや、私より年上の団塊の世代はそれでつっぱしってきたか。
希望格差社会 |
そういえば年末、スェーデンボルグの本とか読みながら、こうした関連のことをいろいろ思った。彼の教義に納得するということではない。結論だけ言うと、なるほどこれがカントの最大の問題かもね、ということだがそこを縷説するとめんどくさいのでとばして、奇妙に感心することが二つあった。一つは大宇宙は人の形をしているということ……それもとばして、もう一つは、人は好んで地獄に堕ちるということだ。
理性の不安 カント哲学の生成と構造 |
普通のキリスト教はさておき、普通に考えると、地獄を自分で選択していくというのはアルカナ、つまらんダジャレはさておき、地獄とわかって自分で選択していくというのはないでしょ。つまり、自分が選択している生き方が地獄行きだとは思ってないから自分で選択しているということだろう。
スェーデンボルグのこの考えは気に入ったというか、歩道で自転車にひっかけられたり、横断歩道に突っ込む自動車とか見ると、この人たちはモラルが低いとかじゃなくて、そういう選択の人生なんだろうな、さて、それは地獄行きだろうか? 確率的に見ると、そういう行動パタンは長期的に見て人生を利さないとは思うが、地獄行きかどうかは、私にはわからない。
もちろん、スェーデンボルグのいうような地獄なんてものは、偽科学批判をするまでもなくカントを悩ませることもなく存在しない。というか比喩にすぎない。問題は、そうした自分の自由意志の結果を自分で始末を付けるというのは仏法の定まれるならいなりみたいだが、さて自分はどう免れうるだろうか。つまり、自分がよいと思って選択している生き方が地獄行きじゃないとどうやって自覚しうるのか。
自分なりの結論を言えば、人や社会を愛するということじゃないかと思うが、それだけ言ってもアレなんで、気が向いたらまた書きます。ブログだし。
| 固定リンク
「雑記」カテゴリの記事
- ただ恋があるだけかもしれない(2018.07.30)
- 死刑をなくすということ(2018.07.08)
- 『ごんぎつね』が嫌い(2018.07.03)
- あまのじゃく(2018.03.22)
- プルーム・テックを吸ってみた その5(2018.02.11)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
久しぶりのエントリ興味深かったです。
外してる可能性大ですが、人は天国に慣れてしまうから地獄を求めるというか、地獄の先に天国を見てしまうのかも、とかつらつら考えました。
投稿: saka | 2008.01.20 04:32
田中宏和氏の世に倦む日日のhttp://critic3.exblog.jp/7831782/の下の方の記述を紹介します。
>【ブログはNHK橋本会長の解任に反対する】
今日の東京はとても寒い。路上生活者たちにはこれから厳しい季節になる。しかし、さらに心配なことがあって、それはNHK経営委員会が橋本元一のNHK会長職を解任した謀略事件である。経営委員会の古森重隆は外部から新会長を登用すると言う。誰の差し金だろう。古森重隆は安倍晋三が指名して経営委に送り込んだ人間である。安倍晋三が古森重隆をNHK経営委員会の委員長に据えたのは、NHKの受信料徴収難につけ込み、「改革」と称してNHK民営化を進め、その情報資産もろとも米資に売り払うためだった。
以下続くhttp://critic3.exblog.jp/7831782/#7831782_1
投稿: 赤木大介(akakiTaisqe) | 2008.01.20 15:43
いまだに外資=ハゲタカと思ってる馬鹿は何なの?
きっと投資と投機の違いもわからないんだろうな。
投稿: | 2008.01.21 12:08
池波正太郎『剣客商売』に「勘ちがい」という短編がありましたけど、
あんな感じの、「経験則のかみ合いが多面にわたって人間を作るのだ、嫌うな」とかいうようなことを思わなければ、
まあ、その外(ほか)では、
人間は冥府魔道に落ちるしかないでしょうか?
だとしたら(私も含めて)大抵の人は片足をドブに突っ込んでるんだと思いますが、
克ちあいを嫌わないように生きる辛さ難しさにはやっぱり酩酊だと普通に想像してしまいますから……
せめて、ウマイ話は危ない危ないと、話の大小によらず先ず考えられるようにはなりたいですね。
今日は眼福でした。
尚、あいすいませんが喪中につき、新年の挨拶は控えさせていただきます。
ただ、縁がありましたら宜しく、とだけさせて下さい。
それでは。
投稿: 夢応の鯉魚 | 2008.01.21 14:50
モラルの問題にしても仕方ない、人間とはそういうものなので。
だからシステム設計や情報管理の問題であり、モラルといえば経営者や情報管理者としての意識の有り方・考え方が現状に著しくズレているんじゃ内科と思います。
投稿: トリル | 2008.01.22 16:48
去年の初めでしたかお笑い番組の働くおっさん劇場のカルタのコーナーで誰かがいわれたましたがインドのサイダーがダイエットにいいとゆう番組作ったスタッフが番組放映前にパソコンなどでインドのサイダー株買い翌日売れば大儲け。そのたぐいの事ですね。社会的に優位な側にお金が常に動く社会、NHKのモラル低下は確かに日本全体に悪影響です
投稿: インサイダーはインドのサイダーだ | 2008.01.27 07:21
日本人は村上ファンドにせよ西武にせよ居直った感じでインサイダーに対して罪悪感なさすぎ。インサイダーは違法行為ですし身内だけお金持ちにという感覚が国民堕落させると思います
投稿: 身内だけ幸せ | 2008.04.08 19:38