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2007.12.08

[書評]わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか(ロバート.L.パーク)

 「わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか(ロバート.L.パーク)」(参照)が文庫本になっていた。少し、へぇという感じがして書棚を発掘して単行本(参照)を取り出し、さらりと読み直してみた。

cover
わたしたちはなぜ
「科学」にだまされるのか
 2000年に出た本で欧米ではけっこう話題になったのだが、今読み返してみるともう古いなあという印象と、はたしてこの本はどんなふうに日本人、特にネットで読まれるのだろうかという軽い疑問が浮かんだ。
 ごくありきたりに言えば、本書は昨今ネットで一部流行の偽科学バッシング系の本だ。なので表題はあまり適切とは言えないのではないか。オリジナルはVoodoo Science(呪術的科学)であり、そのまま偽科学と意訳してもいい。サブタイトル、The Road from foolishness to Fraudは「おバカからペテンに至る道」ということ。
 内容はといえば、単行本の帯を見るのが一応わかりやすいといえばわかりやすい。

欧米で話題沸騰!出版差し止めキャンペーンまで展開された話題の本。人々を騒がす「UFO」騒動、政府や大企業が莫大なカネをつぎ込んだ「常温核融合」開発や「宇宙ステーション」計画、本当に効くのか「磁気療法などの健康医療」、正確なデータのない「電磁波の影響」問題―これらあなたをねらう「科学の顔」をしたニセ科学のからくりを、米物理学会ワシントン事務所長ロバート・パーク博士(メリーランド大学)が暴く。

 そういうことなのだが、ふと立ち止まって富士山の見える島に目を凝らすと、「常温核融合」とかはまあ偽科学としていいでしょう、かなりたぶん、99・9%くらい。「宇宙ステーション」になるとさてどういう話か本書を読んでもらうしかないか。「磁気療法などの健康医療」はネットでバッシングできそうな偽科学の分類に落ち着く。「ホメオパシー」も楽勝で偽科学だな(でも漢方はどうだろ?)。
 で、「電磁波の影響」となると、これをきちんと偽科学として批判できるかは少しぶれる人もいるかもしれない。高圧線近くの住宅の健康性・安全性とか、携帯電話で脳腫瘍ができる可能性とか(ほんとにできたらのうしよう? ダジャレです)。
 本書には描かれていないけど、さらに「劣化ウラン弾」の放射能被爆被害とかはどうですか、某アルファブロガーさん、みたいな話(とりあえずエアロゾルの重金属毒性は置いといて)。さらにBSE対策に、「月齢20か月以下の牛」という規制よりすごいご意見を強烈に主張してみるとか、それって科学、それとも偽科学。偽科学をぷかぷか主張してもアルファブロガーですか?とかとかいろいろなわけですよ。鶏肉・鶏卵は抗生物質まみれだとかいうアルファブロガーもいたりする。いやはや。
 (ちなみに、私はこれら全部偽科学だと思っていますよ。ついでに進化論の信者ですよ、なにか? 信じているんですよ、進化論を。)
 というあたりで、ネットなんかでバッシングされている低レベルの偽科学と、どうもそれを言ったらネガコメ100連発系の偽科学のような言説とがある。はたしてどうやって区別が付くのか。本書を読んでわかるのか? 次のような提言はどう?

 科学的な考え方をとりいれる最善の方法は、とにかく「実験を尊重する」という初心に返ることだ。子どものころ、わたしは自然に好奇心を寄せる少年だった。そのころ読んだ本に「アライグマは食べる前に必ず食物を洗う」と書いてあった。おなじことを父親から聞いたことがあったし、わたし自身、小川でアライグマが食物を洗っているところを見たことがあったので、本の記述を疑う理由はまったくなかった。その本には、アライグマが食物を「洗う」のは、実際に「洗浄する」のが目的ではなく「湿らせる」ためである、なぜならアライグマには「唾液腺がないから」と説明してあった。理にかなっている説明に思え、わたしはこのミニ知識を頭の隅にいれたまま大人になった。そして、自分のこどもたちまで、おなじ説明をしていた。
 ところが、ある夏、日照りがつづいたときのことだ。腹をすかせたアライグマの家族が、夕暮れどきになるとわが家にやってきて食べ物をせがむようになった。無視することもできず、わたしたち家族は裏庭の物置小屋でドッグフードのビスケットをアライグマに与えはじめた。あわれなアライグマには唾液腺がないことを考慮し、わたしはナベに水をいれ、横に置いてやることにした。そうすればアライグマは食べる前にビスケットを湿らせることができると思ったのだ。わたしが物置小屋の戸をあけ、ビスケットの袋をとりだすと、アライグマがどっと群がってきた。そして紙袋がガサガサと音をたてたとたん、アライグマたちはよだれをたらしはじめた――よだれが、文字通りぼとぼととアゴのからしたたり落ちたのである。唾液腺がないだって! その後、わたしは水なしでビスケットを与えてみた。アライグマたちは水がなくても気にしないようだった。水があれば水でビスケットを湿らせるが、水がなければすくに食べはじめる。いまだに、どうしてアライグマが水中で食物を洗うのか、わたしにはわからない。思うに、アライグマはほんとうに食物を洗浄しているのかもしれない。
 教訓。ある理論がどれほどもっともらしく聞こえても、最後の断を下すのは「実験」である。

 うーむ。この本ってユーモア本なんだろうか。ちなみに、アライグマがなぜ洗っているのか定説はなさそうだ。っていうか、ネットには唾液腺説並の真偽不明な説明がいろいろある。私もアライグマが好きでよく観察しては考えるのだが、洗ってるんじゃないか? ねえ、ラスカル。
 このヒューモラスな話は、こう続く。

 さて、この教訓は、地球温暖化論争にもあてはまる。

 おいおい。
 ということで、地球温暖化論争が出てくるのだが、さて、温室効果ガスによる地球温暖化説は偽科学だろうか。なわけないよな、そんなことをブログとかネットの世界で堂々と言えるのは、ネットの外でも著名な先生クラスではないと。よくわかんないけど、普通のブローガーとかじゃ、異論を仮に思ってもブログとかで言わないほうがよさげな話題リストの一項目。
 さて地球温暖化だが、本書はどう見ているか。それが微妙。
 まず、地球温暖化への対処が実験で決着が付かないのはアライグマの行動と同じというか。ちなみに、進化論とか大陸移動説とかどうやって実験するのだろうか。いや、冗談はさておき、本書の地球温暖化説について見ていく。

 著名な科学者のなかにも、「人類が化石燃料の使用をはじめる以前にも、地球が温暖化していた時期があった。それに二酸化炭素は、大気中の温室効果気体の構成要素としては割合がすくない」と分析する科学者もいる。「一八五〇年以降の地球の温暖化は、すべて太陽の自然変異による可能性もある」と自説を披露する科学者もいれば、二酸化炭素の増大を「産業革命からの予期せぬすばらしい贈り物」と賞賛する科学者までいる。いわく、大気中の二酸化炭素の増大は植物の生長をうながす。


 すべての科学者が科学的なやり方に信頼をおき、おなじ観測データを入手しているのに、なぜこれほど科学者のあいだで意見のくいちがいがあるのだろう? 気候論争が物理の法則で解決できるなら、意見の相違はないはずだ。では、くいちがう理由はどこにあるのか? どうやら、科学的な事実、科学的な法則、科学的な手法とはあまり関係がないようだ。

 つまり、地球温暖化について各種の異論があるとしても、科学とは関係ないというのだ。そんなの関係ねぇですか。そーなんですかぁ?

 気候は、大昔から科学者が取り組んできたもっとも複雑なシステムである。大気中の二酸化炭素量が増大している事実は、どの科学者も認めている。つまり、地球温暖化に関して科学者の意見をくいちがわせているのは、政治的な考え方、宗教上の世界観のちがいである。政治的な考え方や、信仰する宗教が異なれば、科学者によって世界に求めるものが違ってくるのである。

 ええっ? そんなのあり。クリスチャンの科学者は進化論を認めないとでも。
 なんだかよくわからないのだが、やけくそで雑駁な印象を言うと、偽科学を問題にしている人って、なんか偽科学と同じような臭気を放つという点でそれほど変わらないような気がする。

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2007.12.07

韓国大統領選についてけっこうどうでもいい感想

 韓国大統領選だがあまり関心を持っていなかった。関心は当然誰が大統領になるかということに向かうはずだが、これが根本的に読めなかったからだ。
 単純に考えればハンナラ党李明博(イ・ミョンバク)前ソウル市長になるでしょう、盧武鉉大統領のおかげです、となるのだが、金融関係の疑惑問題を引きずっていてそこでずこんと落ちる可能性は大きいのではないかと思っていた。というか、そのずこんの可能性が外国人である私からは読めない。
 加えて、進歩系旧与党、大統合民主新党鄭東泳(チョン・ドンヨン)元統一相よいしょの声が奇妙なほど大きく02年の盧武鉉当時候補のような展開でもあるのだろうかといぶかしい思いがしていた。例えば日本版ニューズウィーク(10・31)記事”モテ系キャスターが狙う大逆転”ではこんな締めになっている。


 経済発展か、それとも平和か。結局のところ、今回の大統領選挙はこの二つのテーマをめぐる争いになるのかもしれない。

 日本人の感覚だとここは笑うところだよねと思うのだが、そんなの関係ねぇなのかよくわからない。日本版ニューズウィークはよくわからないが長年読んでいるとどうも韓国情報については奇妙な歪みがあるので、そのあたりを補正して再考しても、ま、よくわからない。
 で、結局どうよなのだが、李の疑惑が晴れ、鄭がバイスコア近く引き離されていているので、かなり多分逆転はないだろうということだが、あとは実質第三の候補北の金さんがどう出てくるかということになる。常識的に考えればどう出て来ようもないとは思うが。
 ではこれで韓国大統領選挙の話題を終わりますかというと、ここからがむしろエントリ的には本題。まず、些細といえば些細なのだが、韓国の大統領選挙は第二位選にけっこう意味がある。東亜日報”「先に20%台に」 李会昌氏と鄭東泳氏が2位争い”(参照)がわかりやすい。

大統領選の結果は、08年の総選挙とも密接に関わっているため、落選という最悪の場合を想定しても、「順位争い」では負けられないという切迫感が両陣営に漂っている。

 そういうことらしい。このあたりこそ韓国の今後に関連する部分がある。とはいえそれは別の話題でもあるだろう。
 もう一つ、私としてはこっちの問題のほうが大きいと思うのだが、というか大統領選挙よりもサムスンの未来のほうが問題ではないかと思う。当面の問題としてはサムスン裏金疑惑だ。今ココ熊的に言うと、朝鮮日報”サムスン裏金疑惑:国務会議、特別検事法案を可決”(参照)のあたり。

 韓国政府は4日、国務会議(日本の閣議に相当)で、「サムスン・グループの裏金疑惑に関する特別検事の任命等に関する法案」について審議し、可決した。
 今回の特別検事法案は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の裁可を経て、来週中に官報に告示されれば法的効力が発生する。その後、盧大統領が大韓弁護士協会から推薦された特別検事を任命すれば、最大20日間の準備期間を経て、今月末か来月初めごろには特別検事による捜査が始まる見通しだ。捜査期間はまず60日間とし、2回の延長が認められているが、その期間は1回目が30日、2回目は15日となっている。捜査期間の延長が2回とも認められた場合、来年4月9日に行われる総選挙の直前に捜査結果が発表されることになるとみられ、総選挙に相当な影響を与えることが予想される。

 サムスン裏金問題とはという話については、なぜか赤旗が詳しい。”底無しの疑惑 韓国・サムスン”(参照)より。

底無しの疑惑 韓国・サムスン
裏金工作 230億円超す
元法務担当常務が暴露会見
 韓国最大の財閥、サムスングループによる裏金を使って広範囲なロビー活動を繰り広げてきた疑惑が、底なしの様相を見せています。対象は政治家、官僚、検事、裁判官、報道関係者、市民団体活動家など。サムスンの元法務担当常務だった弁護士が二十六日に四回目の暴露記者会見を開き、その内容を詳細に明らかにしました。裏金の総額は二千億ウォン(二百三十億円)以上だといいます。(面川誠)

 これがどういう展開になるかなのだが、けっこう大きな展開になる可能性が高い。そのあたりをニューズウィークがツンとカンチョのように突いているのだが、その韓国内でのリアクションがちょっと鈍い。そちらを先に紹介しよう。朝鮮日報”サムスン裏金疑惑:米誌「サムスン共和国は解体の危機」”(参照)より。

 米国の時事週刊誌『ニューズウィーク』は今月2日の最新号で、「キム・ヨンチョル弁護士の暴露に端を発するサムスン・グループのスキャンダルが、“サムスン共和国”の解体だけにとどまらず、“大韓民国株式会社”の姿までもを変えようとしている」と報じた。


 そして、「サムスンはキム・ヨンチョル弁護士の主張を全面的に否定しているが、今回の件で、サムスンのオーナー一家が3000億ドル(約33兆2000億円)もの資産を誇る“帝国”の経営権をめぐり生存競争に巻き込まれていることは明らかだ」と指摘した。

 ということ。
 当のニューズウィーク記事が今週日本版にも翻訳されている。”内部告発者が暴くサムスンの闇”(12・12)がそれだ。顛末予想を言えば、サムスンが解体されるかもしれないということだが、それ以前にサムスンの韓国における帝国の偉容に圧倒される。韓国GDPの約15%、1600億ドル、輸出規模では韓国全体の五分の一とのこと。それが解体されると韓国経済に激震が及ぶし、つまるところ、大統領選挙と来年の総選挙はこの問題の派生と言ってもいいくらいだろう。先のニューズウィーク記事の言葉を借りれば「経済発展か平和か」で経済発展とやらが選択されるということなのだから。
 では、李明博大統領が出現してサムスン帝国はどうなるのか? 結論からいうとどうにもならず膠着する可能性が高い。同記事より。

 だが、事態をさらに大きく左右するのは今月19日の大統領選挙の結果かもしれない。最有力候補の李明博は保守派で、現代グループの元幹部でもある。中道左派のライバル候補に比べて、抜本的な企業改革を推し進める可能性は低い。

 同記事別箇所で指摘もあるがそもそもサムスンは十年前のアジア金融危機に韓国が巻き込まれ大半の財閥が解体された際の生き残りだ。その生き残りの延長にこの裏金問題がある。そして、たぶん、大統領選後もこの構図は維持されるだろう。つまり、選択されるはずの経済発展がさらに深い混迷に向かうのだろう。

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2007.12.06

みんなでプーチンを呼び捨てにする昨今

 ロシア下院選挙について大手紙の社説が揃ったが、面白くなかった。もともとロシア下院選挙自体がつまらないから、そんなものとも言えるのかもしれないが、日本のジャーナリズムは反露というか嫌露という印象を受ける。そういえば、先日のクローズアップ現代で解説の大学の先生がプーチンプーチンと呼び捨にしていた。他国の大統領ではそういうこともないのではないか。日本のジャーナリズムは対ロシアとなると拙い感情面が出ているようだ。大手紙社説を順繰りに眺めてみよう。
 まず読売新聞社説”ロシア下院選 退任後の基盤固めたプーチン”(参照)だが、旧ソ連時代のような冷戦的な構図を描いて日本のスタンスを問うといった雰囲気だった。


 選挙結果を受け、プーチン大統領は、従来路線を継続、発展させながら、大国ロシアの真の復活を目指すだろう。その際、対外的に強硬姿勢を取る誘惑にかられる機会も増えるのではないか。
 プーチン大統領は下院選の直前、欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止に関するロシア国内法に署名した。プーチン政権は、米国のミサイル防衛システムの東欧配備への対抗措置として、条約停止の発動をちらつかせていた。

 読売社説は識者が書いているのかわからないが、ミサイル防衛についてはプーチン大統領側から別所に基地を作ろうという提案を対米的にしている。プーチン大統領は冷戦的な構図を避けたいという対応もとっている。
 産経新聞社説”ロシア下院選 対露外交を練り直す時だ”(参照)は北方領土問題を持ち出していた。それとこの社説、「プーチン氏」を連発している。

ロシア下院選挙は予想通り、プーチン大統領の翼賛与党である「統一ロシア」が圧勝した。プーチン体制の盤石化は今後さらに進むことが確実で、北方領土問題を抱える日本は、対露戦略の練り直しを迫られよう。

 エネルギー問題のほうが近未来的な問題のようにも思うが、北方領土を持ち出さないと産経っぽくないのだろうか。

 北方領土問題では、「日本は、ロシア(ソ連)を第二次大戦の勝者だと認めよ」という強硬姿勢を強めるロシアを交渉の席に再び座らせるのは至難の業だ。しかし、これまでの歴史が示しているように必ず再びチャンスはやってくる。
 そのために、プーチン氏とのパイプづくりはもちろん、ウクライナやグルジアなど親欧米国となったロシア周辺国との関係強化に努めることも、肝要ではないか。

 この件ついては、ムネオ日記の指摘のほうが参考になる。”2007年12月3日(月) : 鈴木宗男ランド ブログ by宗援会 宗男日記から”(参照)より。

 ロシア下院選挙でプーチン与党が圧倒的勝利で3分の2の議席を獲得すると言われている。プーチン大統領の影響力がこれまで以上に強まるだろう。
 平成12年9月、プーチン大統領が来日し、会談した際「2期目に入れば力が増す。領土問題で今はあまり無理を言わないでほしい」と言われたことを想い出しながら、2期目のプーチン大統領に日本としてのメッセージ、シグナルを送れなかった外交を悔やむものである。
 一息ついて、間をおいてプーチン大統領の再登板もあるのかと思うが、どんな人が次期大統領になろうとも、プーチンを抜きにしてのロシアはない。対ロ外交が外務官僚の不作為、やる気のなさで領土問題が停滞していることは嘆かわしいことである。

 次、日経社説”プーチン後もプーチン体制のロシア”(参照)はとらえどころがない。

 政治的には米欧諸国などから強権的と批判される手法を駆使しながらクレムリン中心主義を続ける。外交ではロシアの独自性を前面に押し出し、米欧との冷たい関係をいとわないだろう。
 下院選が終わりロシアの政治の焦点はプーチン大統領が誰を後継大統領に指名するのか、さらにどのような地位に就くかという問題に移った。大統領候補としてはズプコフ首相、イワノフ、メドベージェフ両第一副首相が有力だ。プーチン大統領が退任した後に就く地位については首相、統一ロシア党首、下院議長など様々な説が流れている。
 下院選には右派勢力同盟、ヤブロコといったリベラル政党も参加したが得票率は低く、前回同様に議席を出せなかった。これら有力リベラル政党は相互に不信感が強く一つにまとまれないできた。このままでは今後も国政に全く影響力を持ち得ないだろう。

 とくに社説といった内容でもない。
 毎日新聞社説”ロシア 独裁と独善へ向かわぬよう”(参照)は拙かった。社内にロシアについて識者がいないのだろうか。

 まさに「プーチン氏のための選挙」だった。ロシア下院選は、プーチン大統領が率いる政党「統一ロシア」が圧倒的な強さを見せ、定数の3分の2を上回る議席を獲得した。これだけの議席があれば、憲法改正も大統領弾劾も思いのままだ。プーチン氏は「院政」への強力なカードを手にしたのである。
 他の与党系政党の獲得議席を合わせると、「プーチン支持派」は全体の9割近くに上る。主要国としては異様ともいえる権力の集中ぶりだ。欧米を中心に選挙の公正さへの疑問もくすぶっている。この際、プーチン政権は、欧米などが指摘する疑問に、率直に答えるべきだろう。

 基本的なことがわかっていないようだ。どこがわかっていないのか。この点については、NHKKおはようコラム”ロシア下院議会選挙”(参照)がわかりやすい。

 ただ私はプーチン一色と言う強引な選挙戦の中でどれだけの人が統一ロシアつまり大統領に投票しなかったかという点に注目してみました。
 まず投票率です。前回より8パーセント増えて63パーセント、逆に言いますと選挙を棄権した人は全有権者の37パーセントに上っています。
 今回政権側は各地の知事を総動員して投票率を上げることに必死になるとともにプーチン大統領自身もテレビ演説で投票を呼びかけました。
 民族共和国では投票率100パーセント近いと言う異常な事態も起きています。
 しかしこんな選挙には付いていけないという声がモスクワなど都市部を中心に多く、棄権は形を変えた批判票との指摘もあります。
 圧勝したとは言っても統一ロシアに投票した人は有権者全体で見ますとおよそ40パーセントです。棄権した人、他の党に入れた人を合わせますと実は有権者の60パーセントほどの人が統一ロシアに投票しなかったわけです。
 圧勝したプーチン大統領もそのことは忘れるべきではないと思います。

 ロシアの全体像がから見れば六割がプーチン大統領支持というわけではない。そのあたりにロシアの実態に接近するヒントがある。
 真打ちはどうか。朝日新聞社説”ロシア下院選 「プーチン王朝」への予感”(参照)が面白い。表題を見ていると先日の中国軍艦歓迎光臨を掲げたお仲間の毎日新聞と同じようなレベルかなと思いつつよく読むと微妙なところを突いている。

 いまのロシアには、プーチン氏がトップにいることで、さまざまな利権や権力を争う勢力の均衡が保たれている面がある。民主主義を多少ねじ曲げてでもプーチン氏の影響力を残し、秩序を温存する。そんな思惑が現体制を支える諸勢力には共通するのかもしれない。
 任期や選挙などに縛られずにプーチン体制の継続を目指すとすれば、それは「王朝」に近くなる。いかにロシア流とはいえ、民主主義とはほど遠い。

 この二段落が実は噛み合っていない。複数執筆者の思惑がねじれているのかもしれない。もちろん文章としては最後は「プーチン皇帝の王朝」だろうという下品な腐しにすぎないだが、前段とは噛み合っていない。単純な話、王朝というのは、「さまざまな利権や権力を争う勢力の均衡」の「思惑」で成り立つのだろうか? もちろん、そういうケースもあるだろうが、基本的に王朝は王権の強さから維持される。そして、日本のジャーナリズムはそうした強大な王権がロシアに誕生するのは民主主義としていかがなものか、みたいに非難しているのだ。妥当なのだろうか。
 その妥当性において重要なのは、朝日新聞社説が指摘する「さまざまな利権や権力を争う勢力の均衡」にある。
 この問題を今週の日本版ニューズウィーク記事”クレムリン 知られざる内部分裂”がすっきりと扱っていた。話を端折るが、プーチン大統領という蓋が外れれば、ロンドンを舞台に展開した奇っ怪な事件がロシア全土に広まるだろう。

 12月2日に投票が行われた下院選は、プーチンの与党・統一ロシアが圧勝する見通しだが、ロシア政治の実権を握るのは議会ではない。クレムリンとその周辺だ。
 来年3月にプーチン大統領の任期切れを控え、クレムリンの各派閥は経済利権の維持と、自分たちの身の安全の確保に必死だ。
 「大統領の庇護を失ったら、命の危険にさらされる高級官僚は大勢いる」と、あるクレムリンの元高官は指摘する。

 そして内部は明確ではないが分裂しているし、プーチン大統領もそれなりの忍耐を強いられる。

 ただし、派閥間の線引きは必ずしも明確ではない。まず外交面では、イリーゴリ・セチン、ウラジスラフ・スルコフ両大統領府副長官、ニコライ・パトルシェフFSB長官など、強いロシアをめざす孤立主義派がいる。
 プーチン大統領の反米的な発言の多くは、このグループが脚本を書いている。

 そして、対するグローバル派が存在する。

 これに対してアレクセイ・クドリン副首相兼財務相、セルゲイ・ラブロフ外相などのグローバル派は、ロシアも国際化が進む世界に適応すべきだと考えている。

 単純に言えば、ロシアの内部にグローバル派を維持させるには当面プーチン大統領を維持するしか道はない。
 日本のジャーナリズムはプーチン大統領が強権だとして批判するが、彼はその権力をもってベネズエラのチャベス大統領のような愚行はしていない。

 しかし前出の元クレムリン高官によれば、プーチンは終身独裁者になるつもりなどないという。「ロシアを軍事政権で統治するのは無理だし、後継大統領を背後から操るわけにもいかないと(プーチン)はわかっている」

 たぶん、そういうことなんだろう。

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2007.12.03

ベネズエラ国民の選択に賛意を表したい

 よかった。ベネズエラでの大統領無期限再選を可能にする憲法改正案が国民投票で否決されたことだ。結果は僅差だった。憲法改正支持者も多数であり、その人たちの考えも単純に否定できるものでもないし、今回の改正が直接、チャベス大統領の独裁制につながるというわけでもない。だが、その傾向への懸念はあった。
 民主主義というのは手順によっては独裁者を生み出しかねない。憲法というのはそうした強い権力への最終的な歯止めとして存在する。今回の事態は、憲法のそういう本質が揺るがされる可能性(公益が個人の利益に優越し公益認定で国家に接収が容易となる、報道の自由が優先されなくなるなど)がある例となって困ると不安な気持ちで見ていた。
 ブログには書かなかったが、私は冷静に見れば、今回のベネズエラ国民投票は改正案可決に向かうのではないかという予想を立てていた。今朝の産経新聞”国民投票締め切り、大接戦に ベネズエラ憲法改正”(参照)は、当初”ベネズエラ国民投票実施、チャベス氏勝利か ”という表題だった。


 ロイター通信によると、現内閣の複数の閣僚が、暫定的な開票の結果、可決の見通しとなったと述べた。首都カラカスではすでに一部のチャベス大統領支持者が勝利を祝う集会を始めている。
 国民投票を前に行われた各種世論調査のなかには、提案の否決を予想する結果もあらわれ、チャベス大統領の敗北の可能性も予想されていた。

 今朝はそうした結果になったかと気を揉んだ。が、逆になった。ロイター”ベネズエラで大統領権限強化めぐる国民投票否決、チャベス大統領は敗北宣言”(参照)より。

 選挙管理当局者によると、反対票が約51%だったのに対し、賛成票は約49%だった。
 チャベス大統領は敗北を認めながらも、「社会主義建設に向けた闘いを継続する」との考えを表明。改革は「とりあえず」失敗したが「依然として生きている」と述べ、再び憲法改正を目指す意欲を示した。

 僅差を理由にごたごたした状況に持ち込まれるかという懸念もなくなった。というか懸念があったのだった。1日付けAFP”ベネズエラ大統領、妨害工作あれば対米原油禁輸を宣言”(参照)より。

ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領(53)は、権限集中を目指し2日に行われる改憲を問う国民投票で、米国が画策していると同大統領が主張する混乱が発生した場合、米国への原油輸出を停止すると発表した。

 そうした懸念はなくなった。
 それにしても今回これだけチャベス大統領が支持されるのは、それなりの理由もある。米国への反感もだが、貧困層への所得の配分が大きいだろう。2日付産経”今の生活、チャベス大統領のおかげ 原油収入で貧困改善”(参照)より。

 ベネズエラで2日、大統領の無制限再選を可能にする憲法改正案の是非を問う国民投票が行われる。チャベス大統領は最高値圏で推移する原油の収入を原資に、「ミシオン(任務)」という名の社会開発計画を次々と実行、貧困層の生活水準のかさ上げを図ってきた。「ばらまき」との批判も強いが、首都カラカスの一角では、恩恵を受けた市民が大統領に「忠誠」を誓っていた。

 日本でもこうした政治が望まれているのかもしれない。あるいは望まれていくのかもしれない。清廉潔白で貧困層にカネを撒く政治家こそ日本のあるべきすがたと考えているとしか思えないような意見も見かける。
 日本国内ではあまり報道を見かけなかったようにも思うが、今回の否決はベネズエラの学生たちによる抗議デモも成果を上げていたようだ。元国防相ラウル・バドゥエルも学生側についた。
 あるいはもっと貧困層の支持が得られなかったのはなぜかという問いのほうがいいのかもしれない。新興財閥を潰すことでテレビ局も潰れ、大衆の娯楽も低減させたことも貧困層に反感を買ったようだ。
 インフレ率は17%を越えていた。もっとも、チャベス大統領としては今回の改正で中央銀行の独立性を剥奪することで解決可能だったのかもしれない。

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2007.12.02

国際技能五輪の結果を今頃眺めてみた

 先月14日から21日まで静岡県沼津市で開催された技能五輪国際大会だが、あまり関心を持たなかった。その後日本の金メダリスト3人の追跡報道をNHKのこどもニュースを見て、へぇ日本の若者もすごいじゃんとか好印象を持つようになった。そういえば新聞なんかでもよい結果だったとかいう報道があったなとなんとなく思い出した。古新聞を見ると”技能五輪が閉幕 日本「金」16個 メダル総数は最多タイの24”(読売 2007.11.22)にこうある。


 ◆電子系に高い評価
 静岡県沼津市で開かれていた、世界各国の若者が職業技能を競う「第39回技能五輪国際大会」は21日、閉幕し、日本は16の金賞を獲得した。銀5、銅3を合わせたメダル総数は24で、これまでで最も多かった東京大会(1970年)の記録に並んだ。

 ちなみに、今回の国際技能五輪だが、47職種に46か国および地域から813人が参加、うち、日本からは51人が選手となった。一国平均だと18人くらいだから、地元開催のメリットがあるということだろう。
 ついでに開催前の先月13日読売新聞社説ではこんなふうだった。

 前回大会では、日本の金メダル獲得数は5個で、スイスなどと並んでトップだった。今回は倍増を目指している。
 70年代後半から前々回までは、韓国が圧倒的に強かった。今回も韓国や欧州勢がライバルだ。あまりメダル数にこだわることはないが、日ごろの技を存分に発揮し、日本の技能が世界水準を保っていることを示してほしい。

 このトーンだと韓国に負けてもがっかりすんなよということなのだが、さて、韓国の成績はどうだったのか。調べてみると、韓国が総合一位だったらしい。”(YONHAP NEWS 2007.11.21)”(参照)より。

日本の静岡県で14~21日に開催された第39回技能五輪国際大会で、韓国は金メダル11個、銀メダル10個、銅メダル6個を獲得、総得点88点で総合優勝を果たした。

 総合点で見ると、日本は74点で二位。ちなみに三位はスイスで55点。
 というわけで日本の若者の技術は韓国の若者にいまだ及ばずということでFAといったようだ。
 ただ、金メダルだけ見ると16個なんで韓国より偉そう印象もなきにしもあらずなのだが、とふとそういえばと気になることを思い出したのだった。
 国際技能五輪で、物作り日本とか報道されているのだが、この技能大会、ちゃんと世界の産業動向に合わせてIT分野もある。そのあたりどうだったのだろう。未来分野できちんと日本の若者の技術の優位ってあるのだろうか。
 で調べてみた。情報は公式サイト”財団法人2007年ユニバーサル技能五輪国際大会日本組織委員会”(参照)にある。
 ではまず、はてな村も注目のウェブデザインだが。

KR Korea 韓国 Mr Joo Heon Park ジュ ヒョン パク M 金
MO Macau SAR マカオ Mr Chi Wai Cheang チ ワイ ジョンM 銀
CA Canada カナダ Mr Joel Kitching ジョエル キッチングM 銀
BR Brazil ブラジル Ms Carla Marangoni De Bona カルラ マランゴニ デ ボナF 銀

 さすが韓国堂々の金賞。で、日本はというと、15位でした。ほぉ。
 これも、はてな村も注目するだろうグラフィックデザインではどうか。

IT South Tyrol, Italy 南チロル・イタリア Mrs. Sylvia Hohenegger シルヴィア ホーエンエッガーF 金
KR Korea 韓国 Miss In Hye Son イネ ソン F 銀
UK United Kingdom イギリス Mr Harry Smith ハリー スミスM 銀

 イタリアが1位、韓国が2位(女性)。で、日本はというと、19位でした。ほぉ。
 さらに、はてな村も注目するだろう情報技術(Software Applications)ではどうか。

BR Brazil ブラジル Mr Anderson Carlos Moreira Tavares アンデルソン カルロス モレイラ タヴァレスM 金
TW Chinese Taipei チャイニーズタイペイ Mr Meng Hao Ko メン ハウ クォ M 銀
IR Iran イラン Mr Hamidreza Afsordeh ハミッドレザ アフソルデM 銅
KR Korea 韓国 Ms. Hee Gyung Choi ヘ ギュン チェ F 銅

 ブラジル、台湾、イランそしてまたしても韓国(女性)というランキング。で、日本はというと、ランクにいません。ほぉ。
 がんばれ日本!

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