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2007.09.07

[書評]石油の隠された貌(エリック・ローラン)

 石油関連の問題をジャーナリスティックにまとめた本で、この分野の専門家による書籍ではない。この分野への関心と多少の基礎知識がないと退屈にも思える歴史の話もたらたらと続く。が、ここは考えようで、歴史好きにはこたえられない面白さがある。例えば、ドイツはなぜロシア侵攻したのか。石油を求めてというあたりは、他の地政学的な背景からそうかもしれないと思わせるものがある。

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石油の隠された貌
エリック・ローラン
 本書全体の結論は、単純に言えば石油枯渇論であり、よって、つまり、トンデモ本である。石油枯渇論については、以前、「極東ブログ: 原油高騰の背後にある石油枯渇の与太話」(参照)でも扱った。ただ、では、笑ってポイのトンデモ本かというと、なかなかそう言えないディテールがあり、石油問題に関心のある人、というか、現在の国際政治に関係にある人はさっと読んで「そんなのはすでにご存じ、くだらね」というチェックにすればいいだろうと思う。が存外にそうでもないのではないか。
 例えば、こんなことは常識かと思うのだが。

 私たちは、聞けば正気を失うような脆弱で、はかない世界に住んでいる。例を一つ挙げよう。世界の先進工業国が消費する石油の半分はホルムズ海峡を通過して運ばれている。この海峡は奇しくも「欧米の頸動脈」と異名をとっている。ここは一方がイラン沿岸、他方がオマーン沿岸に挟まれ、数キロメートルの幅しか無い。ここでタンカーが一隻、沈むか攻撃を受ければ海上交通はストップし、石油の供給は攪乱し市場は狂乱するだろう。

 へぇとか言うようならこの本を読んだほうがいいだろう。当然だが、「欧米の頸動脈」は日本の頸動脈でもある。というか世界市場の頸動脈なのだが、逆にこう疑問を持つだろう、なぜこれが安全に守られているのか。イランがちょっとちょっかいするか威嚇すればすごく効果的になるのではないか。しかし、現在のイランはそこは手を出さない。イランがこのことに無知であるわけではないことは歴史を調べればすぐにわかる。では、国際チンピラというかテロ集団がここで何かしかけるかというと、そういう話も聞かない。静かなものでニュースもない、わけはない、今年の1月9日ここで川崎汽船の原油タンカー「最上川」と米軍の原子力潜水艦「ニューポート・ニューズ」が接触事故を起こした。なんでここに米軍がいたのかといえば、いる相応の理由があるわけだ。そして多分特措法がらみの自衛隊の活動もこの一環なのだろうと推測するが。
 ついでに日本の命運は実際には台湾と一心同体なのだが、それは米軍が関わっていることで中国とも一体になってしまっている。

 国防問題が専門のマー・シャオチュアン教授は、中国政府首脳と変わらぬ悪夢に取り憑かれている。中国は十年前の七倍に当たる七百万バレルの石油を毎日消費している。そして間もなく、必要な石油の六割を輸入するようになる。石油を積載したタンカーをホルムズ海峡から上海までの一万二千キロメートルの長い航海が待っている。もし台湾に危機が訪れたとしたら、このすべての海域に配備された米艦隊が即座に輸送ルートを断ち、石油の道が途絶えてしまうだろう。

 日本のようにキンタマどこに落としたっけ国家ではない威厳面子の大国中国がこの状態を看過できるわけがない。しかも、台湾統一は「悲願」だろうし。というわけで、悲願達成を目指して、ついでに日本をグリップするために、パキスタンに港湾整備、ビルマにパイプライン敷設とかいろいろやっている。まあ、そんなこんな。
 本書に話を戻すと、もっとも重要な主張は、世界の石油を握っているは結局サウジだということだが、そのサウジの石油は早晩枯渇するということ。確かにそれはあり得ることかもしれない。余談だが、一昨日クローズアップ現代でオイルマネーの番組があり、現地UAEに資本投下されるようになった、というしょーもないストーリーを展開していた。たぶん、今日も引き続きあるのだろうが、がというのは、オイルマネーの問題は基本的にはサウジのため込んだ膨大なカネであり、その大半がドル化しちゃってどうしようということだ。それでもユーロの比率は上がっているらしい。
 サウジが枯渇しても(枯渇はしないだろうが)、ロシアはどうかというと、本書はロシアの石油は実はサウジの代替にはならない大したことないというのだ。これも、もしかするとそうかもしれないし、百歩譲ってもシベリアにパイプラインを引くだけの採算に見合うのかわからない。
 そういう意味で好意的に見るなら、石油枯渇はないにせよ、石油の恒常的な高値は避けられないというのはあるし、それは避けられないのだからしかたがない。日本にしてみれば高くても買えればいいのだし、その泥沼に持ち込めば省エネ技術によって日本はまた世界に強みを持つことになる。というか、そういう戦略を取ってよいのではないかとも思える。
 陰謀論的な想定が沸くのは、本書にはこんな話もあるからだ。アマゾンにある釣り文句を引用しよう。

「1973年のオイルショックは、産油国と国際石油資本との了解による操作だった」「米国は、ソビエト連邦崩壊を引き起こすためにサウジ石油を武器に使った」 これら世論を巧妙に欺いてきた石油の謎を明らかにする。

 この二点なのだが、私も案外そうなんじゃないかと思いつつある。
 この延長に今回のイラク戦争の話があり、本書での分析は、概ね、チェイニーがサウジを守るためだったとしている、つまり、「極東ブログ: チョムスキーとチェイニーと」(参照)の見解に近い。ただし、本書ではキルクーク油田の問題にはほとんど触れていない。また、国連石油食料交換プログラムの背後にあったフランスとロシアの動きにも触れていない。触れていないといえば、まったく触れてないわけでもないが、スーダンと中国との関わりにもあまり考察はない。意外なことに、米国が実際には中東石油にそれほど依存していない事実についても意図的なのか触れてない。
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世界を動かす石油戦略
石井彰、藤和彦
 ところで、本書はいろいろな点で興味深いのだが、本書を読まれる前に、あるいは読後でもいいから、「世界を動かす石油戦略(石井彰、藤和彦)」(参照)は是非一読されたい。

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2007.09.06

ご用命を受けて徐ノーマン再び参上

 あまり気になるニュースでもないけど、なんとなく日本で報道されてないか少ないのかあまり見かけないので、さらっと書いておこうかな。話は徐若瑄(Xu Ruo Xuan)ことビビアン・スー(Vivian Hsu)とはあまり関係なくて、Hsu容疑者の話。というから、漢字で書くと徐容疑者かな。なんかオウム事件を思い出すが、英語圏ではNorman Hsuなので、徐ノーマン容疑者ということになるのだろうか。あるいは容疑者という表現は適切ではないか。で、この徐さんはトラブルメーカー。どんな問題を起こしたかというと、ゼロで割ってしまったというわけではなく、こういう背景がある。3日付読売新聞”疑惑の中国系実業家、民主党へ25万ドル献金”(参照)より。ちなみにここでは「シュー」さんと書かれているが。


 シュー被告は1991年に架空の投資話で投資家から100万ドルをだまし取ったとして重窃盗罪で起訴された。翌年、3年の禁固刑を言い渡される予定だったが、判決を受ける直前に姿を消した。

 三十六計不如豚面逃。中国の伝統的な問題解決法である。そしてあれから15年、徐豚面はなにをしていたのか。近況がわかった。

投資家から資金をだまし取って起訴された後、15年間にわたって逃亡を続けていた中国系実業家が、米大統領選に出馬するヒラリー・クリントン上院議員ら、民主党政治家に献金を行っていたことが発覚した。

 なるほど。ということで。

 米紙の報道で献金が発覚した直後の8月31日にカリフォルニア州サンマテオ郡の裁判所に出頭し、収監されたが、200万ドルの保釈金を支払って、わずか5時間で釈放された。

 その後どうなったか。ロサンゼルス・タイムズ”Warrant issued for Hsu's arrest”(参照)など最新ニュースでは保釈査問会を欠席とのこと。またも三十六計不如豚面逃プウなのか。ということだが、今回はそうもいかないだろう。そうもいかないだろうというのは、これほっておくと米民主党沈没かもねになる。もっとも掘り下げてもそうなる可能性は高い。じゃ、どっち。掘り下げざるを得ないでしょう。それにどうも民主党内部でもけっこう過激な意見が飛び交っており略。
 さて、このニュースなのだが、日本国内では8月29日付け産経新聞”中国系ビジネスマン、ヒラリー議員に迂回献金?”(参照)が最初みたいだ。またかよ産経という向きもあるかもしれないけど、おソースはワシントン・タイムズのしかもビル・ガーツさんのあんたも好きだね話コーナーではなくて、ウォールストリート・ジャーナル。

 同紙がクリントン陣営の資金状況を調査したところ、年収4万9000ドルの郵便局員を筆頭とするカリフォルニア州の中国系の家族6人が、次期大統領選の個人献金の上限に近い4万5000ドルを同陣営に送ったことが判明。同家の息子が、ニューヨークの中国系ビジネスマン、ノーマン・シュー氏の名を挙げ、献金を勧められたことを同紙に認めた。
 シュー氏はこれまで、クリントン陣営の資金集めに積極的に協力したことで知られる。同氏も「知人や仲間に自身の財布から献金を勧めたことはある」と同紙に答えたが、核心である資金提供については、中国系家族の息子が「投資が当たったので自分で献金しただけだ」と否定した。

 カネの元は投資が当たったからだそうだ。読売ではちなみに。

 シュー被告は、これまで興した会社の大半が倒産しており、大口献金の資金源は不明。過去の経歴も謎に包まれている。

 ではいったい誰がカネを出したか、それはちょっとまだまだ書かないお約束。
 さて、この話、英語のソースをつらつら見ていたら、徐豚面のえんがちょ民主党議員は大藁藁、という議員名を見ていると、おやっ、ここで本田さん、こんにちは。8月30日付けAP”Clinton to Give Away Fundraiser's Cash ”(参照)より。

Sens. Edward Kennedy and John Kerry, both of Massachusetts, also planned to turn over Hsu's contributions to charity. Sens. Barbara Boxer and Dianne Feinstein of California; Al Franken, a Senate candidate in Minnesota; Reps. Michael Honda and Doris Matsui of California; and Rep. Joe Sestak of Pennsylvania also said they would divest Hsu's contributions.

 本田議員を含めて、さてこのえんがちょどうしようか納豆。こんなのイラネと返す議員もいるなか。

Honda, however, planned to donate to charity $5,000 received from Hsu as well as members of the Paw family and one other donor whom his staff could not immediately identify.
(本田は、しかしながら、徐から受け取ったカネは慈善事業に献金すると計画している。ポウ家からやその他スタッフがすぐには出所のわからないカネと同じ扱いになる。)

Spokeswoman Gloria Chan said the money would go to local community organizations but that Honda hadn't yet decided which ones.
(グロリア・チャンの女性報道官は地域団体に渡すつもりだとしているが、本田はどっちにするか決めかねている。)


 今日付のニューヨークタイムス”Clinton Donor Appears to Be a Fugitive Again ”(要登録・参照)にはこうある。

Since word of Mr. Hsu’s fugitive status became known, Democratic candidates have been rushing to rid themselves of Mr. Hsu’s money — among them Senator Barack Obama of Illinois; Gov. Eliot Spitzer of New York; Al Franken, the comedian and political commentator who is a Minnesota senatorial candidate; and Representatives Michael M. Honda and Doris Matsui of California.

 結局、もらわないってことにしたのでしょうかね。やばいおカネの問題って、なかったことにすれば解決ってことでFA。

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2007.09.05

この夏の私的ビールランキング

 人生の酒は飲み終えたと5年くらい前に思ったが、昨年あたりから少しずつ飲むようになった。以前とはまったく趣味が違うし、量も違う。飲める酒の種類も非常に限定されてもいる。特にビールがダメ。以前からビールはあまり好きではない。だが、今年は不思議と飲めるビールも出てきたな感があって、そういうのを選んで飲むようになった。というわけで、この夏の私的ビールランキング。というか飲めるのはこれだけかな。

1位 緑ヱビス こと ザ・ホップ
 最初飲んだときは、ちょっと薄いなと思ったのだけど、普通のヱビスよりホップの香りがよくて、これは飲めるビールかなと記憶し、以来なんとなく飲むうちに次第に好きになった。夏の暑さにこの軽さがよい。もう近所のセブンイレブンで買えなくなって困っている。ちなみに、普通のヱビスは以前は好きだったけど、現在ではそれほどなんとも思わない。黒ヱビスも飲めるけど、いまいち。

2位 ザ・プレミアム・モルツ〈黒〉
 以前黒ビールが好きでよくギネスを飲んでいた。そんなわけで、この夏もギネスを数回飲んだのだけど、ピンとこない。味、変わったんじゃないかと思っていたのと、黒ビールはもう自分には合わないのかなと思っていたのだが、これを飲んで、へぇと思った。うまいじゃん。これを外人というか英人とかが飲むとどういう感想を持つのかわからないけど、ワタシ的には好きな味。

3位 KIRINチルドビール グランドエール
 エールでおいしいのっていうのは、いまいち当たったことがないというか、まあエールってこんなものかなと思っていたので、これをKIRINチルドビールということで最初に買ったときはあまり期待してなかったし、最初飲んだときも、ふーんという感じだったが、なんどか飲むうちにけっこうはまった。ただ、暑さが高じてくるとちょっと飲みづらい感が出てきた。

4位 KIRINチルドビール ゴールデンホップ
 これは昨年というかビールを飲んでもいいかなのきっかけになったビールで今年も飲んでいたが、気のせいかもしれないが、どうも当たりはずれがあるように思えた。チルドビールは管理が悪いと味が落ちるのではないだろうか。これも暑くなるにつれ、重たい感じがして、しだいに緑ヱビスに切り替わっていった。

5位 ザ・プレミアム・モルツ
 昔と言ってももう15年以上も前だろうか、モルツの限定品というのを飲んだことがあって、え? こんなうまいビール作れるんじゃんと感動したことがあった。その記憶があって、あれを商品化したのかなと思って飲んでみた。なんというのか、普通にうまい。記憶にある限定品のモルツのほうがもっとおいしかったような気がするけど。いずれにせよ、このビールならけっこうどこでも売っているので、買うことがある。

6位 アンカー・リバティーエール
 イトーヨーカ堂になぜか売っているので見かけると買ってくる。他にポーター、スチームビールもあるのでこれも。おいしいにはおいしいし、以前はこういうタイプのビールが好きだったのだが、これは自分の嗜好が変わったかなと思う、日本のビールのほうが水がうまいような気がする。

 他にも目新しいビールとか見ると、例えばニッポンプレミアムとかも飲んだけど、飲めないわけでもないけど、ダメ。普通のキリンビールとか復刻のキリンビールとか、一番搾りとかも、すみません、一口でべーしちゃいました。全然飲めない(そういえばアサヒは以前から全然飲めない)。なんか、この全然飲めない感はなんだろと思う。沖縄生活時代は、オリオンとか米軍バドワイザー(米軍のは味が違うよ)、ミラーとかも飲めたけど、今ではたぶん全然だめだろうな。

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2007.09.04

遠藤武彦農水相の辞任についてぼんやりと

 安倍内閣にはあまり関心がないのだが、遠藤武彦農水相の辞任については、率直なところ呆れた。国のお金を盗み取るなんて許せないとかで呆れた、わけではなくて、へぇ、こんなことで大臣が辞任させられるのかということで呆れた、というか、大臣を辞任に追い込んだ権力の主体はいったい誰なんだよ、マスコミ様?
 もちろん、理屈はいかようにもマスコミ様が正しいのであって正しいのであって正しいのであって、ブログで擁護論なんか書こうものならとんでもないことになるくらいは、わかる。それに別に何かと天の邪鬼な意見を書きたいわけでもない。
 ただ遠藤武彦元農水相も内心を察するに、ポカーンという感じなのではないか。あまり経緯を知っているわけではないが、彼は農水相をやりたかったわけでもないのでは、というか、やりたくないなとかいうつぶやきをどっかで見たっけ、とネットを探るとスポニチ「遠藤農相“農水だけは本当に嫌だった”」(参照)にあった。


 所属する山崎派の会合に出席した遠藤氏は大臣就任を祝う拍手の中で「農水だけは嫌だった。本当に嫌だった。ここだけは行きたくないと思っていた」とうつむいた。午後5時ごろには引き継ぎの書類を渡されると、「書類以上に重たい気持ちです」と、ひきつった笑みを浮かべた。27日の就任会見でも「一番最後まで残ったポストを振られたわけだから、実は参ったなと思った」と話していた。

 もっとも嫌だった理由は、今回の不正受給がばれそうで、ということではなくて、記事にもあるように、こっちだろう。

 政治評論家・浅川博忠氏は「WTOの結果で農業関係者の票を減らすことを恐れてみんな断ったのだろう。遠藤氏も選挙区は山形なので、本来ならやりたくないポストだったのでは」と指摘した。

 遠藤武彦元農水相は農政の識者でもあるので、好意的に見れば、泥を被る気概もあっただろうが、こういう泥を被ることになろうとは。
 誰が悪い。もちろん、遠藤武彦元農水相である。決まっていることを問うな、朝日新聞の社説でも読んでおけだ。読売新聞社説はというと、3日付”農相辞任 衆参ねじれが迫った早期決着”(参照)は微妙なトーンも出していた。

問題の組合の補助金不正受給については、遠藤農相本人は無論、農水省も、会計検査院も山形県も承知していた。安倍首相は、農相起用に当たって、なぜ把握出来なかったのか。安倍首相の任命責任を問われても仕方あるまい。

 ということで、安倍首相もな、というところに落ち着かせた。私は実を言うとそこが一番ひっかかっていた。この話は後で触れる。
 遠藤武彦元農水相内心ポカーン推測に話を戻すと、2日付けFujiSankei Business i.”農水相は辞任せず 共済組合掛け金不正受給問題で ”(参照)をそのまま受け取ると、遠藤武彦元農水相はこの事態をよくわかってなかったようにも思える。

同相は不正受給を認めた上で、「大変な不祥事で申し訳ない。全体責任は組合長にある」と述べた。ただ、「実務には全然タッチしていない」とし、不正受給に関する自身の関与は否定。

 責任上はそういうことだが、不正受給を采配していたわけでもなく、ざっくばらんに言えば名前貸しのようなものだったのだろう。もちろん、くどいけど、それが責任ということではあるが。そして。

 不正受給について、農水相は「3年以上前に当時の担当課長2人から報告を受け、そんなことまでして実績を伸ばすことはないと叱責(しっせき)した」と述べた。
 ただ、当時は会計検査院から問題を指摘されたが、「(不正受給分の)返還の指示はなかった」と明言した。

 これも事実なのではないか。つまり、要点は不正受給よりも、「実績」にあったのだろうし、そうした「実績」のフライングについてはそれなりの手順があったのではないか。たぶん今回のケース以外にもあると思うが、調べれば。
 また1日付け読売新聞”遠藤農相「組合長だけは辞任」 補助金不正受給で会見”より。

 農相が3年以上前から不正受給の事実を知りながら、未返還である点に質問が集中すると、農相は「返さなくてもいいとは思っていない」と答えたが、「県と相談しなさいと、職員には指示した」などと口調を強める場面もあった。

 通常はこの手のトラブルは、組合と県の実務レベルで決まることなのではないのか、ということで、遠藤武彦元農水相は当初、「辞任というのは、兼業兼職についてで、大臣を含めてと取られては困る」とつっぱねていたのだろう。
 自分を遠藤武彦元農水相の位置に置いてみてと、何かできただろうかと自問して、まあ空しい、あははは、悪いのは、オレとか呟くくらいか。
 この話については、あと、この問題どっから誰がひっぱり出したのか気になってざっくり調べてみたのだが皆目わからん。わからなくてもいいか。なんかその手の、これは使える悪魔の手帳みたいものがどっかにあるのではないか。どっかのブログとかどっかの日記とかによく載るアレとか。
 話を「この話は後で触れる」に戻すと、つまり、大臣の任命は首相一人ということでだから責任も首相一人ということで、要するに悪いのは安倍ちゃん、決まり、と、それはそうなのだが、どうもそのあたり、なんともひっかかりがあった。むしろ、遠藤武彦元農水相より、その仕組みが気掛かりでもあった。
 実はこのしょうもないエントリを書こうかと思ったのは、今朝のNHKラジオで平野次郎学習院女子大学特別専任教授の「誰が石を投げるのか」という、話を聞いたからだ。話はある意味でぶほぶぼのほのめかしみたいなもので、米国の最高裁長官を巡る歴史の話だが、米国政府の要職決定には上院が認可に関わるということがたらたらと続くのだが、あえて意図をとれば、大臣などの任命には上院のような立法府に近いところでの認可の仕組みがあってよいだろう、民主主義というのは手続きなのだから、ということがあり、さらに、そのような仕組みがあれば、マスコミのバッシングで大臣の首がそのまま飛んでしまうということはないだろう、という含みがあった。
 つまりだ、私もそう思う。
 今の世論やマスコミの空気を読めば、遠藤武彦元農水相が悪いに決まっている決まっている決まっている、辞めさせて当然、というものだろうが、大臣の首を飛ばすというのはある種の権力の露出であり、こうした権力にいろいろと歯止めをかけるのが民主主義の手続きの特性であるべきなのではないのか。もし、日本に大臣を上院で認可するみたいな制度があれば大臣は簡単に首は飛ばない。認可の責任というバッファができるし、そこで誰がその権力を持っているかが可視になる。

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2007.09.02

アフガニスタンのケシ生産と貧困の関係は薄い

 先日ラジオで、アフガニスタンとケシ栽培について、貧困が重要な要因ではないという話を聞いて、え、そうなの?と疑問に思った。
 というのは、アフガニスタンでは治安が悪化し、産業が衰退し、それが貧困をもたらし、それゆえに、国際的に問題となるアヘン生産の元になるケシ栽培も生きるためにはしかたなくしていると、なんとなく思っていたのだ。なんとなくではなく、例えば、JVCの「混迷のアフガニスタン 谷山博史報告会  : JVC - アフガニスタンの復興と治安課題を考える (イベント報告:議事録要約)」(参照)では次のように今年付で語られていた。


 「2007年2月12日、文京シビックセンター(文京区)にて「アフガニスタンを知る」と題した報告会を開催しました。

 そこでは、タリバンの攻撃活動に触れこう説明されている。

 そのような攻撃活動には「お金」が必要ですが、資源の乏しいかつ貧困で生活が圧迫されているアフガニスタンでは、お金になるのは「ケシ栽培」、つまり「アヘン」の原料です。国際的には概ね非合法的なケシの栽培とアヘンの密売により得た闇の収入源で、タリバンの攻撃が行なわれているということです。資金源を断つためには「ケシ栽培」を撲滅することが先決ですが、ケシに匹敵する収入源となる代替作物が見当たらないのが現状であり、またケシ栽培が盛んな東・南・北の地域では治安が悪化しているため、支援国(イギリス)による撲滅運動も遅々として進まない難しい状況を強いられています。

 つまり、やっぱり貧困が原因という主張がある。
 しかしそうではないとするラジオの話が気になって、ニュースまわりを調べてみると、AFPのニュース”アフガニスタンのアヘン生産量、前年比34%増”(参照)があった。

【8月28日 AFP】アフガニスタンにおける2007年のアヘン生産量が前年比34%増となり、アヘンの供給を同国がほぼ独占していることが27日、国連(UN)の発表で明らかになった。


 「2007 Annual Opium Survey」では、アフガニスタンが世界のアヘン市場の93%を占め、「実質的にアヘンの供給を独占している」との事実が示されている。

 それはすごいなと読み進めるが、「なぜ」についての言及はなく、唐突にこう締められている。

 UNODCは、タリバンがアヘン取引で得た資金を武器購入費用などにあてており、ケシ栽培はタリバンと「密接な関連」を有すると述べている。

 タリバンがどう関係しているかはなぜかこのニュースではわからない。なんか変な感じがしたので、オリジナルソース、UNODC(国連薬物犯罪事務所)の文書を当たってみた。
 すると、”Afghanistan Opium Survey 2007 Executive Summary”(参照PDF)という公式文書があり、関連事項を読んでいくと、こう記載されている。

Insurgency, greed and corruption

This North-South divide highlights three new circumstances. First, opium cultivation in Afghanistan is no longer associated with poverty . quite the opposite.
(南北の分断は3つの新状況を際立たせた。第一に、アフガニスタンでのアヘン生産はもやは貧困には関連付けられない。事態は、逆である。

Hilmand, Kandahar and three other opium-producing provinces in the south are the
richest and most fertile, in the past the breadbasket of the nation and a main source of earnings. They have now opted for illicit opium on an unprecedented scale (5,744tons), while the much poorer northern region is abandoning the poppy crops.
(ヘルマンド、カンダハルおよび南部のその他の3つのアヘン生産地区はもっとも、裕福であり、かつもっとも肥沃な土地であり、かつては国家の穀倉地帯であり、収入源でもあった。今や、彼らは、前代未聞のスケールで不正なアヘンを選択しているが、他方より貧困である北部地域においてケシ栽培は放棄されている。)


 けっこうはっきり言っている。やはり、貧困問題ではない。
 こうしたUNODCの報告になんらかの偏向があるのかもしれないが、そこまで疑うのも妥当ではないだろう。いずれにせよ、事態はそういうこと、つまり、現在のアフガニスタンのアヘン生産は貧困の問題ではないのだろう。
 なんとなく、この世界の諸悪の原因は悪政による貧困であり、善政があれば貧困なくなりそしてすべてが薔薇色に解決されるみたいな感じをついデフォで持ってしまいがちだが、どうやら、この事例でもそうではない。
 アフガニスタンの現状と貧困とケシ生産についていえば、一義に悪いのは通称タリバンであり、次にそのマーケットの存在なのだろう。

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