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2007.05.19

愛知立てこもり発砲事件、雑感

 愛知立てこもり発砲事件についてぼんやりと思う雑感を時代のログとして書いておく。毎度ながら大した話はない。
 この事件に私は関心を持ってなかったのだが、今朝の大手紙の社説で事件が悲劇的に終わったことを知った。各社説から事件のニュースをいくつかあらためて読んだが、特に心にひっかかるものはない。事態がよくわからないというのが率直な印象だが、何が事件だったかとあらためて問えば、二十三歳の未来有るSAT隊員の林一歩警部が無念の殉職をされたことになるだろうと思う。哀悼したい。
 なぜこの悲劇に至ったのか気になるところだが、朝日新聞社説”立てこもり事件 銃と暴力団を追いつめよ”(参照)では標題どおり暴力団と銃器の問題という枠組みに押し込んでいる。確かにそれも問題には違いないが、統計上は同社説が触れているように銃器については日本社会からは減少している。だが、発砲事件が今年28件ということを根拠に、「銃が大量に出回っているのに、警察が発見できなくなっているということだろう」と主張するのは、私には奇妙な論理には思える。他、気になる指摘としては、「防弾衣や盾などの装備や隊員の配置は適切だったのか」という問いかけがある。そのあたりはどうだったのだろうか。
 はてなブックマーク(参照)の今日のトップの話題に”My Diary 2007年4月26日(木)/「町田市立てこもり事件」のヤバい内幕”(参照)が上がっていたので、なにか防弾チョッキについて構造的な問題の裏話でもあるのかと思って読んだが、私にはよくわからなかった。別の事柄のような印象も受けた。というのも今回林警部が殉職されたのは、防弾チョッキ隙間が原因だったらしく、それが事実ならどう受けとめていいのか、やはりそれも防弾チョッキの構造の問題なのか、そこを撃たれないように行動すべきという意味での指示の問題か、偶然的なものか。雑駁な印象にすぎないが偶然的な要素が強いように感じられる。
 読売新聞社説”籠城発砲事件 多くの疑問が残った警察の対応”(参照)では、たぶんこの事件を聞いて誰もが思う疑問を率直に述べていた。


 現場の状況が分からないから軽々には言えないが、籠城男を狙撃するなど、早期解決の方法はなかったのか。
 

 そしてこの早期解決の方法こそが、私の主観に過ぎないといえばそうなのだが、朝日新聞社説なかで結局、語るまいとされていた部分のように思えた。
 なぜ「籠城男を狙撃するなど、早期解決の方法はなかった」という理由がごく自然に理解できるのは、たぶん、私のように(今回の犯人もたまたまそうだが)五十歳以上の日本人ではないかと思う。ちょっとひねくれた言い方をすれば、読売新聞がばっくれてしらっと語っている背後をきちんと読めるのは、もう五十歳以上になってしまった。その意味で、そうした背景を語らず、狙撃もありだよねというばっくれ方には疑問を持つ。
 この問題の歴史背景について、いくつか資料を探しているうちに、そうだウィキペディアにあるのではないかと検索したらあった。瀬戸内シージャック事件(参照)である。

瀬戸内シージャック事件(せとうちしーじゃっくじけん)とは、1970年(昭和45年)5月12日に発生した、旅客船乗っ取り事件である。また別名を「ぷりんす号シージャック事件」ともいう。

 事件の季節が今頃に近いのが因縁深く思えるが、この事件には後に小説化・映画化されるなど、いろいろと奥行きがあるものの、市民社会との関わりでは、日本で戦後初の犯人狙撃・射殺だった点が重要だ。

この事件は単独犯による犯行であり、日本で戦後初の犯人狙撃・射殺によって人質を救出した事件となった。

 戦後初の犯人狙撃・射殺という点はその後も尾を引いた。

事件後、自由人権協会北海道支部所属の弁護士(下坂浩介、入江五郎)が、狙撃手を殺人罪で広島地検へ告発した。広島地検は狙撃手の行為を刑法36条の正当防衛及び刑法35条正当行為として不起訴処分にしたが、弁護士側は不服として広島地裁に準起訴処分を取ったが棄却され無罪が確定した。これ以降起こった日本の事件では、犯人が銃器等で武装している場合でも、なかなか射撃命令が下されなくなり、1972年のあさま山荘事件では、犯人からの一方的な攻撃で、警察官が殉職するといった事態を招いた。

 射撃命令が事実上禁忌とされたことも遠因となり、警察官殉職になった。もう少し引用を続ける。

この事件を教訓とした結果、1979年に発生した三菱銀行人質事件では、一人の狙撃手ではなく、大勢で一斉に狙撃をすることにより、誰が致命傷を負わせ、射殺したのか分からなくするようにした。世界的には珍しい対応である。

この事件以降、日本の警察は、狙撃の態勢は取るものの、射撃の命令には極めて慎重になった


 実際上、こうした事件の担当者としては、狙撃命令を回避して済ませるなら済ませたいだろうし、毎日新聞”愛知立てこもり:重傷の巡査部長、防弾チョッキ着用せず”(参照)などを読むと、やはり今後も犯人狙撃・射殺という手法を上位の解決手法とするような動向にはならないだろう。

 元警察庁警備局長、瀬川勝久さんの話 警察は早く動きたかったろうが、人質もいるし、倒れた警察官は無防備だからまた撃たれる危険もあった。夜の救出はギリギリの判断だったのではないか。容疑者を無事に逮捕し、裁判にかけるのが第一目標だ。今後、類似事案が起きたときにどう対応するかだ。

 元内閣安全保障室長、佐々淳行さんの話 最初の通報で駆け付けた巡査部長が撃たれた後の対応は納得できないことばかりだ。約5時間も巡査部長を救助せずにいたことは信じられない。警察官の人命は尊重されないのか。さらに、SAT隊員が撃たれた際も、どうして反撃や突入をしなかったのか。


 佐々淳行元内閣安全保障室長のコメントには多少問題への煽りの印象も受ける。だが、現場の警察としては、俺たちの人命は尊重されるわけないよなという空気が満ちてくるだろうし、おそらく今回の事件は、類似の事件が連鎖しなければ、そういうこともあったというふうに風化していくのだろうと思う。

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2007.05.18

[書評]120%人に好かれる! ハッピー・ルール 即効! 1分間で自分を磨く本(中谷彰宏)

 実はこの歳になるまで中谷彰宏の本を一冊も読んだことがなかった。先日、駅の売店的な本屋で平積みみたいになっていたのを見たら、書名「120%人に好かれる! ハッピー・ルール 即効! 1分間で自分を磨く本(中谷彰宏)」(参照)の、そのあまりな超論理性にくらくらと来て気が付いたときは買っていた。はっ!

cover
120%人に好かれる!
ハッピー・ルール
即効!1分間で
自分を磨く本
中谷彰宏
 120%人に好かれる!というのは、たぶん20%の折り返し地点で嫌わるということではないかとかぼんやり考えて、まあそれでも半々よりもいいし、なにしろ一分間で自分を磨く本っていうのもすごいなと思った。自動車のスピード洗車だって一分じゃできないし、急ぎの散髪スタンドだって十分間。で、じゃあ一分読んでみようと読んだら、またまたくらっときた。くらくら。すげーことテンコモリで書いてあるぞ。少し紹介しちゃうぞ。
 まず、恋は、反射神経だ、だ。なんか、もっとフォントサイズを上げたり、べたに朱色にしたい感じもするけど、そういうブログじゃないんだよここ、っていうか、恋は、反射神経だ、だ。

 恋愛においても仕事においても大切なのは、反射神経です。


 親しい人から「あっ」と髪の毛にさわられる。
 その伸ばした手を引っ込めつつ、「髪、すごくきれいだね」と言われるのは、悪くありません。
 でも、いくら親しい人でも「髪の毛、触ってもいいですか?」と許可をとられるのは、気持ち悪い。
 人によっては、痴漢かセクハラと同じだととらえます。
 スキンシップがうまい人は、軽くタッチしたあと「あっ、すみません。さわっちゃった」とすぐに言葉が続きます。
 こういうさわり方には、好感が持てます。

 な、な、な、わけねーだろぉぉぉ。
 と脊髄反射してしまった私はだめだめの反射神経なんですよ。で、こう続く。

 こういうさわり方には、好感が持てます。
 これは、反射神経が鋭いか、鈍いかの差です。
 気がついたらキスしていた、気がついたらベッドの中にいたというのも、全部反射神経の連続で起きていることです。

 いや、そーかもしれん、それ、私が、50年の人生で、知らなかったことの一つかもしれない、ってか、フツーの青春っていうのは、そーゆーもんだったのか?
 ついでに、外人が挨拶で抱き合っているときは、本当は強く抱き合ってないという国際マナーの説明なんかもあってとても勉強になります。そりゃプーチンと金正日がぎゅっと抱き合うかなと疑問に思っていたし。
 この先も説得力あるぞ。

 「キスしていいですか?」と聞くのは、前もって相手に許可をとることで、自分のリスクを回避しようとしているのです。
 「していいと言ったのは、あなたでしょ」と弁護するためです。
 同じように、「君はどうされたいの?」と聞くのも、ずるい言い方。

 ああ、このあたりは、そうでしょう。うんうん。いや経験ないけど、そーゆー。いや、頭で理解できるっつうことですよ、つまり、恋で傷つくかもしれない自分のリスクっていうのを回避していてたら、恋はできないのでしょう、っつことで。なので、恋というのは、反射神経でというのになんか納得するなというか。納得していいのか、俺。
 でも勉強になるなぁ。他に「デートの直前に、確認してくれる男性に、女性は安心感を覚える」とか、ああ、そうなんだろうな。

 男性は、「○月×日△時、ごはんを食べましょう」と言うと、その時間まで、もう連絡しません。
 「時間も場所も、ちゃんと確認しているでしょう」というのが男性の言い分です。
 でも、女性の感覚は違うのです。
 リコンファームが欲しいのです。

 そっかぁ、中谷彰宏って女性だったのか。違う。
 あともう一例。「恋愛と戦争は、メンテナンスが勝負」とか、わはは、痛いな、痛いぞ、世銀のウルフォウィッツ君。いくら頭が良くて、モテても、中谷彰宏を読んでないから人生失敗したのだぞ。

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2007.05.17

日本もカザフスタンのウランにはなりふり構わぬ資源外交

 背景がよくわからないのでためらっていたのだが、とりあえずブログしておこう。話は、先月末の甘利明経済産業大臣によるカザフスタン訪問だ。公式なアナウンスはカザフスタン大使館の”2007年4月29~30日 甘利明経済産業大臣がカザフスタンを訪問
”(参照)があるが、表向きの話ばかり。
 この訪問で、日本のウランの全輸入量に占めるカザフスタンから調達の割合が現在の現在1%から30~40%と大幅にアップする。エネルギー全体の依存度を石油から原子力に転換しないといけない日本のエネルギー事情を考えると、日本のカザフスタンへの依存が洒落にならないくらい大きくなるといえるだろう。
 それでいいのだろうか、というのがまず素朴な疑問で、そこからいろいろと思うことがある。今回の合意はすでに前年小泉元総理の訪問で十分に足固めはしてあるので驚くほどのことはなく、たぶんその筋の専門家にはあたりまえの事実がいろいろあるのだろうが、ニュース報道やネットのリソースを見ている分にはあまり全体像が描けない。なお、カザフスタンは全世界で第二位のウラン埋蔵量を持つ。ちなみに一位はオーストラリアだ。
 「それでいいのか」と思うのは、端的に言えば、カザフスタンはヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(参照)による事実上の独裁国家だ。ただし国情は、同じく甘利明経済産業大臣が今回のどさ回りに行ったウズベキスタンとは比べものにならないくらいと言っていいだろう、安定している。懸念なのは、今回の日本の行動は、中国様と同じように、あるいは中国様を真似て、なりふり構わぬ資源外交やってやがんな日本も、としか見えないことだ。この手の資源外交がろくでもない結果になりがちなことについては言うまでもないだろう、というあたり、いいのか日本。
 カザフスタンを取り巻く資源外交で、かつてフィナンシャルタイムズがグレートゲームと評したのは石油のほうだった。この問題については、「極東ブログ: ペトロカザフスタンまわりの話」(参照)で触れた。ベタに言うと中国とウイグル自治区の関連や、米国とロシアの関連もある。このグレートゲームと、今回の日本のウラン外交がどう関連しているか、はっきりとはわかりづらい。単純にいえば、ロシアも中国もカザフスタンについて石油だけではなくウランも狙っていたので、一見日本が二国を出し抜いた形にも見える。
 日本側では、少し調べればわかるように表向き、商社や電力会社が関連している。いちおうニュース記事も引用しておこう。4月30日付け共同”ウラン輸入4割確保へ カザフと共同声明 ”(参照)より。


 世界的に資源獲得競争が激化しウランの価格が急騰する中、埋蔵量が世界2位のカザフを官民約150人で訪問、ウランの安定確保への道筋をつけた。安倍晋三首相も原油の安定調達を目指し財界首脳らと中東を歴訪中で、官民挙げての異例の資源外交が展開された。

 訪問団には電力、商社、メーカーなど29社のトップらが参加。丸紅の勝俣宣夫社長らがウラン鉱山の権益確保で、東芝の西田厚聡社長は原発建設事業での協力で、それぞれ国営「カザトムプロム」と合意。日本側がカザフのウラン燃料加工や、軽水炉建設計画に技術協力をすることでも一致した。


 カザフスタンといえばかつてソ連時代の原爆実験(セミパラチンスク)との関連や「極東ブログ: [書評]沿海州・サハリン近い昔の話―翻弄された朝鮮人の歴史」(参照)で触れた高麗人のネットワークなども連想される。ただの連想に過ぎないのかもしれないが。
 話が粗くなるが、カザフスタンは事実上中ロ同盟のようにも見られた上海協力機構、中国・ロシア・カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・ウズベキスタンの六か国中の一国である。その枠組みは現状どのようになっていて、またカザフスタンはどのような位置にあるのか。もし今回の日本・カザフスタンのウラン合意が、中ロを出し抜くとすれば、どういう図が描けるのか。このあたりがよくわからない。
 上海協力機構についてだが、ウィキペディアを参照すると、説明にちと疑問にも思えた点がある(参照)。まず、02年時点については上海協力機構(SCO)はこう描ける。

2002年6月7日、サンクト・ペテルブルグにおいて、SCO地域対テロ機構の創設に関する協定が署名された。SCO地域対テロ機構執行委員会の書記局は上海に、本部はキルギスの首都ビシュケクに設置する。また同時に、同年初頭の米ブッシュ大統領の悪の枢軸発言に始まる、対テロ戦争拡大の動きを牽制した。

 そしてこの路線で日本で考えられることが多い。ウィキペディアへの疑問点は以下の部分だ。

SCOへの加盟の希望については、モンゴル、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランが表明しており、2004年にモンゴル、2005年にインド・パキスタン・イランがSCOのオブザーバー出席の地位を得て、2006年6月の会合によってこれら4カ国は正式に加盟する見込みである。これによって、SCOは中国の国境対策の機構から、中国・ロシア・インドといったユーラシア大陸の潜在的大国の連合体に発展することになり、アメリカに対抗しうる非米同盟(反米ではないことに注意、また当事者がそう断言しているわけではなく、同盟の強制力はない)として成長することは、アフリカや南アメリカの発展途上国・資源国から歓迎されている。また、印パ両国が加盟することで、中印パ3国間の対立の解消も期待されている。2005年にはロシアが中国・インドと相次いで共同軍事演習を行った。

 ウィキペディアの説明が間違っているというのではなく、むしろ括弧内の「反米ではない」という補足のあたりの微妙なブレ感への疑念だ。
 あまり妥当ではないかもしれないが、私の印象を加えれば、反日デモなど反日攻勢を推進していた上海閥の弱体化と、ロシアの資源戦略の好調から、非米同盟な要素はかなり弱くなっているし、カザフスタン側でも、ロシアや中国と微妙な距離を取りたがってきているのではないか。
 英語版の説明には日本語版にない次の言及がある(参照)。

In some Western sources, the Organisation is sometimes referred to as the "Shanghai Cooperative Group" to imply that the organization lacks coherence and authority, usually in the context of the petrodollar.
(西側の報道では、SCGは、上海協力グループとして参照されることがあり、その含みは、通常オイルマネーを背景とした、一貫性と権力の欠如を意味している。)

 この言及は現状ではソースの指定がなく不確かな情報になるようだが、現状の上海協力機構の実態を示しているだろう。
 話が少し飛躍するが、米国はカザフスタンについて資源に目が眩んだかのようにその独裁制について叱責していない。米国がどのようにカザフスタンを巻き込む利権に関係しているのかもよくわからない。ただ、けっこう複雑な図柄になりそうだ。

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2007.05.16

米ペットフード事件に関連した人間の食の問題についてメモ

 米ペットフード事件については特に取り上げてこなかった。単なる中国バッシングでは意味がないことと、化学・医学面でよくわからない点があることだった。後者については、ニュース報道ではあまり見かけないように思われるが、日本語版ウィキペディアのメラミンの項目にあるように、毒性は、メラミン単独ではなくシアヌル酸との化学反応によるものらしい(参照)。


なお2007年に、メラミンが混入された中国企業産ペットフードがアメリカ等に輸出されて犬や猫が主に腎不全で死亡する事件があった。メラミンはペットフード中のタンパク含有量(窒素含有量)を多く見せかけるために混入されたものとみられる。 この毒性はメラミン単独ではなく、シアヌル酸との化学反応により得られた結晶にあったと考えられている。

 より科学的な詳細については、英語版ウィキペディアのMelamineの項目にある”Focus on melamine and cyanuric acid : Melamine”(参照)が詳しい。
 ネット上のリソースとして日本語で読めるものとしては、ホームページ「猫のIBD」(参照)にある”リコールの件”(参照)が詳しい。
 現状の日本人の問題意識としては、このペットフード事件が日本人の通常の食とどう関わるかという点だが、先の”リコールの件”に詳しいが、それほど心配することでもないさそうだ。

人間の食物経路へメラミン流入

リコールで回収されたペットフードが豚や鶏の飼料として処分されていることがわかり、人間の食物経路へのメラミン流入危機について波紋が広がる。まだ市場へ出回っていない分については出荷自主規制。

5/7 FDAとUSDAが合同ニュースリリースを発表。多くの政府機関からの科学者を集めたチームによりメラミン汚染飼料を食べた鶏や豚の肉を人間が食べても、極めて低いリスクしかないことがあらためて確認されたと報告。その他すべての影響評価の報告を受けてから、今週中には現在一時留め置き中の鶏、豚をどうするかが決定される由。 5/14同様内容の公表

メラミン汚染飼料原料は魚用飼料原料としてカナダへも運ばれ、出来上がった魚用飼料はアメリカへ持ち込まれて養殖に使われた。魚への影響については、先に調べられている豚や鶏と同程度とみられる。 中国からの小麦粉については、小麦粉は小麦粉であり内容を偽装する必要がないため、汚染されている可能性が高いとは考えられないとの事。 魚用飼料原料にもケムニュートラ社が関わっていた。


 基本的には、家畜を介した食物連鎖で人間が毒性の影響を受ける可能性と、人間が食べる加工品材料に同質の毒性があるかという2点だが、どちらもそれほど深刻ではなさそうだ。
 英語版ウィキペディアには、今回のペットフード事件についてかなり詳細なまとめである”2007 pet food crisis ”(参照)が上がっており、ざっと見た感じ新書一冊分くらいの情報が含まれている。
 この中に、”Impact on human food supply(人間食物供給への影響)”(参照)という項目もあり、今後の参考にもなるかもしれないので、簡単に訳しておきたい。エラーがあれば、コメントでご指摘を。できれば、バーカバーカといったノイズは少なめに。

Impact on human food supply(人間食物供給への影響)

While U.S. officials say they don't believe melamine alone to be harmful to humans, they have too little data to determine how it reacts with other substances, in particular, the combination of melamine with cyanuric acid, a similar chemical known to be found in the waste product of at least some methods of melamine production[121], and which combination some American and Canadian scientists have suggested may have led to the pet deaths through kidney failure.[122][67][123]
(米政府当局者はメラミンは単独では人間に有害ではないと述べているが、メラミンが他の物質、特に、シアヌル酸とどのように反応するかについて、当局者ほとんど情報をもっていない。シアヌル酸は、メラミン製造手法によっては廃棄物のなかに存在することが知られている。米国またカナダの科学者は、腎不全でペットを死に至らしめたのはメラミンとシアヌル酸の化合物であると示唆している。)

In the United States, three potential vectors of impact on the human food supply have been identified. The first, which has already been acknowledged to have occurred by US FDA and USDA officials, is via contaminated ingredients imported for use in pet foods and sold for use as salvage in animal feed which has been fed to some number of hogs and chickens, the meat from which has been processed and sold to some number of consumers: "There is very low risk to human health" in such cases involving pork and poultry.[124][125][126][14] On May 1, the FDA and USDA stated that millions of chickens fed feed tainted with contaminated pet food had been consumed by an estimated 2.5 to 3 million people.[12]
(米国では、人間食物供給への影響について潜在的な3要素が特定されている。第一は、汚染された原材料によるもので、これは米国FDAとUSDA担当者によってすでに認められている。これらの原材料は、ペットフード用に輸入され、豚や鶏用の餌への廃品として販売されていたものだ。この豚や鶏肉が加工されすでに消費者に販売されていた。しかし、豚や鶏肉を介した場合では「人間の健康へのリスクは非常に小さい」とされている。5月1日、FDAとUSDAは、汚染ペットフードを含んだ何百万もの鶏が250万から300万人に消費されたされたと述べている。)

The second potential vector is via contaminated vegetable proteins imported for intended use as animal feed, which has apparently been acknowledged to occur with regard to fish feed in Canada,[127][128] while the third possible route is via contaminated vegetable proteins imported for intended use in human food products, and the FDA has issued an import alert subjecting all chinese vegetable proteins to detention without examination."[11][4]
(第2の経路は、養殖用の餌として輸入された植物性たんぱく質の汚染によるものだ。すでにカナダでの魚の餌に利用されていたことが解明されている。第3の経路は、人間の食物に利用するために輸入された植物性たんぱく質の汚染によるものだ。FDAはすでに検査なしで中国製植物たんぱく質を引き留める輸入警告を出している。)

A fourth potential vector is referred to in the May 10 FDA-USDA press conference, viz. incorporation of contaminated vegetable proteins into products intended for human use and subsequent importation.[128]
(第4の潜在的要素については、5月10日のFDAとUSDAの記者会見で言及されているが、汚染された植物性たんぱく質が意図的で人間の利用や今後の輸入品に混入されることだ。)

The original Xuzhou Anying wheat gluten was "human grade," as opposed to "feed grade," meaning that it could have been used to make food for humans such as bread or pasta. At least one contaminated batch was used to make food for humans, but the FDA quarantined it before any was sold. The FDA also notified the Centers For Disease Control and Prevention to watch for new patients admitted to hospitals with renal failure. There have been no observed increases in human illnesses and little human food has tested as contaminated, however the FDA still has not accounted for all of the Xuzhou Anying wheat gluten.[129]
(元来、徐州安営生物技術開発公司の小麦グルテンは人間食向け品質であり、飼料品質ではなかった。つまり、人間が食べるパンやパスタに利用可能なものであった。少なくとも一塊は人間食向けに利用されたが、FDAはそれが販売される以前に隔離したとしている。また、FDAは疾病対策予防センターに対して、新患者に腎不全が認められるか注意するよう通知した。人間の疾病は観察されておらず、人間向け食材の汚染についてはわずかだが、FDAは依然徐州安営生物技術開発公司の小麦グルテンすべてを認可していない。)

Reports of widespread melamine adulteration in Chinese animal feed have raised the possibility of wider melamine contamination in the human food supply in China and abroad.[10] Despite the widely reported ban on melamine use in vegetable proteins in China, at least some chemical manufacturers continue to report selling it for use in animal feed and in products for human consumption. Said Li Xiuping, a manager at Henan Xinxiang Huaxing Chemical in Henan Province: "Our chemical products are mostly used for additives, not for animal feed. Melamine is mainly used in the chemical industry, but it can also be used in making cakes." [130]
(中国製家畜飼料へのメラミン不純物混入拡散の報告は、中国内のみならず海外の人間の食の供給に対する幅広いメラミン汚染の可能性を喚起した。中国で植物性たんぱく質にメラミンを使用ことは広く禁止と報告されているにもかかわらず、化学品製造業社によっては、人間が消費する食品となる家畜の飼料として、その販売を継続すると未だに報告している。河南省の河南新郷Huaxing化学社の管理者Li Xiupingによると、「私たちの化学製品は添加物に利用されますが、家畜飼料用ではありません。メラミンは主に化学産業で利用されますが、同時にケーキを作るにも利用されます」とのことだ。)


 ウィキペディアとしての公平性に欠ける印象もあるが、事実の点において大きな間違いはなさそうだ。潜在的に日本人にとっても警告となる指摘もあるかと思われる。

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2007.05.14

2つのスキッピー、NO TRANS FAT

 いつか解決されるに違いないけど、それはいつなんだろうと、困りながら長いこと待っていたら、先日偶然解決されているのを発見。すげーハッピーになっちゃったよ。何って、ピーナッツバター、スッキピー(SKIPPY)の NO TRANS FAT、つまり、トランス脂肪酸なしのスッキピーがあったのだ。ないわけないと思っていたんだよ、うるうる。些細なことなんだけどね、だいたいにおいてハッピーなんて些細なことが原因だから。
 簡単に言うと、健康によくないトランス脂肪酸なしのピーナッツバターが売っていたということ。嬉しいのなんのって。恥ずかしながら、私、ピーナッツバター大好きなんですよ。それでいて、私、健康オタクだし、ってほどのことはない。健康オタクだったらピーナッツバターなんか食わんでしょ、フツー。でも、トランス脂肪酸ってなんか好きじゃないんだよ。その話については「極東ブログ: パニックを避けつつマーガリンとショートニングを日本社会から減らそう」(参照)にも書いたけど、それほどパニくるほど危険ではない。ただ、国際的に加工品にはトランス脂肪酸の含有を明記しようという流れを日本がいまだに無視しているのはどうかとは思うが。

 左のブルーのスキッピーがトランス脂肪酸入り。楽天のショップとかでよく見かけるやつ(だからアフィリのリンクできねーじゃないか)。原材料名を見ると日本語で、ピーナッツ・砂糖・植物油(大豆油を含む)・食塩と書いてある。どこにもトランス脂肪酸って書いてない、かというと、英語のINGREDIENTSを見ると、ROASTED PEANUTS, SUGAR, PARTIALLY HYDROGENATED VEGTABLE OILS(COTTONSEED、SOYBEAN AND RAPESEED) TO PREVENT SEPARATION , SALTとある。このPARTIALLY HYDROGENATED VEGTABLE OILSというのがつまり、部分的水素添加による硬化植物油というやつ。つまり、こいつが、トランス脂肪酸。しかも、綿実油まで入っている。ということで、ちょっとずつ食べていたのだけど、今回右の茶色のほうを発見。詳しいNutrition Factsがあって、Trans Fat 0gと明記されている。INGREDIENTSは、ROASTED PEANUTS, SUGAR, PALM OIL, SALTとシンプル。パーム油もよいなぁと思う。ラベルには、Good source of Vitamin Eともある。ビタミンEの量は10%とのことだがいくらトランス脂肪酸なしでもそう食べるもんじゃない。でもナチュラルソースのビタミンEはちょっと嬉しい。あまり詳しい説明はしないけど、ビタミンEはどうやら洗練されたサプリメントだと身体は有効に利用しないっぽい。
 もうちょっとブログのエントリっぽく書くと、食品について、日本の原材料名からはトランス脂肪酸の含有がわかんないということ。とりあえずマーガリンとショートニングは避けるとしても、単に植物油とあっても、トランス脂肪酸が含まれていることがある。もうちょっというと食パンにはほとんどトランス脂肪酸が含まれていると言っていい。そうでない食パンをどう探すか私は方法がわからない。幸い私は自分の食べるパンは自分で作る。いや、バターピーナッツも自作しようと思っていたのだけど、案外難しい。
 もひとつおまけ情報。ピーナッツバターっていうのは、パンとかに塗るだけじゃなくて、ガドガドに使える。ウィキペディアを見たら項目があった(参照)。


ガドガド (インドネシア語:Gado-gado) はインドネシア料理の伝統的なメニューで、温野菜にブンブ・ガドガド(bumbu gado-gado)と呼ばれるピーナッツ・ソースをかけたものである。

 特にホウレンソウのおひたしにかけるとうまい。好みによって醤油をソースに混ぜてもいい。ピーナッツバターが固いときは、荏胡麻油でのばして使うとよい。

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2007.05.13

杜子春の話の裏バージョン

 いつからか杜子春の話には裏バージョンがあるような気がしている。オモテのバージョンはあれだ、芥川龍之介名作杜子春というやつで、青空文庫で無料で読むことができる(参照)。筋書きは誰もが知っていると思うが、ウィキペディアにあるように(参照)、こんな展開だ。と引用するにはちと長いし、概要からはわかりづらい意外なディテールが面白かったりするのだが、まあ、いいでしょ。


 ある春の日暮れ、洛陽の西門の下に杜子春という若者が一人佇んでいた。彼は元々金持の息子だったが財産を使いすぎたために今は惨めな生活になっていた。
 杜子春はその門の下で片眼すがめの不思議な老人に出会い、大金持ちにしてもらう。しかし、杜子春は三年後また財産を使い果たし一文無しになってしまう。杜子春はまた西門の下で老人に出会い金持ちにしてもらい同じことを繰り返す。
 三度目、西門の下に来た杜子春は変わっていた。金持ちになったときには友達もよってくるが、貧乏になるとみな離れていく、杜子春は人間というものに愛想を尽かしていた。
 杜子春は老人が仙人であることを見破り、仙術を教えてほしいと懇願する。そこで老人は自分が鉄冠子(三国志演義などに登場する左慈の号)という仙人であることを明かし、自分の住むという峨眉山へ連れて行く。
 峨眉山で杜子春は試練を受ける。鉄冠子が帰ってくるまで口をきいてはならないので、杜子春はじっと試練に耐える。しかし、親が畜生道で苦しんでいるのを目の当たりにしてつい「お母さん」と一声、叫んでしまう。

 単純に言うと、仙人というか超人たらんとしたトシシュン君は、最初の試験で落第してしまった。だめなやっちゃなぁ、凡人だな、オメー、ということだ。鉄冠子もいろいろトシシュンを釣ってみて導いてきたのに、いざ試してみてら初手からダメだよ、こいつ、使えねーな、とがっかりしているのではないか。と思いきや、オモテの物語ではうるうる慰めちゃっているわけだ。

「どうだな。おれの弟子になつた所が、とても仙人にはなれはすまい。」
片目眇の老人は微笑を含みながら言ひました。
「なれません。なれませんが、しかし私はなれなかつたことも、反つて嬉しい気がするのです。」
 杜子春はまだ眼に涙を浮べた儘、思はず老人の手を握りました。
「いくら仙人になれた所が、私はあの地獄の森羅殿の前に、鞭を受けてゐる父母を見ては、黙つてゐる訳には行きません。」
「もしお前が黙つてゐたら――」と鉄冠子は急に厳な顔になつて、ぢつと杜子春を見つめました。
「もしお前が黙つてゐたら、おれは即座にお前の命を絶つてしまはうと思つてゐたのだ。――お前はもう仙人になりたいといふ望も持つてゐまい。大金持になることは、元より愛想がつきた筈だ。ではお前はこれから後、何になつたら好いと思ふな。」
「何になつても、人間らしい、正直な暮しをするつもりです。」

 ダメで良かったんだよ、もし合格していたらそんな人間の風上にもおけないヤローは殺すつもりだった。トシシュン君、きみは偉い、走れメロス……ってなべたな慰めなんだが、そりゃもうダメダメのトシシュン君だからして、こんなべたなお言葉で、まるで中谷彰宏「サクセス&ハッピーになる50の方法」(参照)を読んだみたいに元気になってしまってさ。毫も、微塵も「待てよ、それってダブスタでねーの、鉄冠子」とかはまるで思わない。ちょっと考えたらわかるのに。仙人試験に合格していたら殺されるってことは、じゃあ、どうしたら正解なわけ? ここはアレです、仙人になる12の方法、とかリストにしないといけないんじゃないか。
 という感じで、杜子春の話の裏バージョンは膨らんでいくわけですよ。
 そもそもだ、なぜ鉄冠子は杜子春に目を付けたのだろうか? カネをたーんと持たせてそして念入りに人間不信という確固たる仙人たらんとする基礎能力を築かせたわけですよ。まるでユダヤ人富豪の教えのメンターなんてもんじゃないわけですよ。鉄冠子にはなにかファウストの悪魔のような意図があったに違いない。それは何か? いろいろ考えてみる、が、やはり、トシシュン君を仙人にさせたかったのではないか。
 とするとやはりこの試練はベタに通過すべきだったのではないか。畜生道の母はそのあたりちゃんと理解しているし。

「心配をおしでない。私たちはどうなつても、お前さへ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何と仰つても、言ひたくないことは黙つて御出で。」
 それは確に懐しい、母親の声に違ひありません。杜子春は思はず、眼をあきました。さうして馬の一匹が、力なく地上に倒れた儘、悲しさうに彼の顔へ、ぢつと眼をやつてゐるのを見ました。母親はこんな苦しみの中にも、息子の心を思ひやつて、鬼どもの鞭に打たれたことを、怨む気色さへも見せないのです。大金持になれば御世辞を言ひ、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、何といふ有難い志でせう。何といふ健気な決心でせう。

 母だってそう言ってるじゃん、なのに母を裏切ってトシシュン君は挫折する。

 杜子春は老人の戒めも忘れて、転ぶやうにその側へ走りよると、両手に半死の馬の頸を抱いて、はらはらと涙を落しながら、「お母さん。」と一声を叫びました。……

 あれです、この瞬間、トシシュン君の母のがっかりした顔を浮かびませぬか。
 だめだわ、このドジ息子……あちゃー。まったくワタシみたいに畜生道に落ちるようなタマでもない根かっらの善人ってやつか。いったいこのバーカマヌケ的善人の父親はどの男だったのだろ……。
 いやいや、違うかな。
 この母親の「私たちはどうなつても、お前さへ仕合せになれるのなら」っていうのはあれだな。岸田秀「唯幻論物語」(参照)みたいに、子供に無意識の罪責感を持たせることでその人生を支配しようとするありがちなダブスタ心理戦略だともいえるのではないか。トシシュン君は「親の毒 親の呪縛(岸田秀、原田純)」(参照)を読んでおけばよかったのに。いやそうでもないか。アマゾン素人評とか。

この本から伝わるのは絶対的な親批判だ。
共著の原田氏は父が亡くなった祖母を尊敬してるのをわざわざ否定する。
その内容で怒った父を再びこの本でも非難する。
親であろうとも、心の中にまで踏みこむのはどうだろうか。
人の好き良しに対して、訂正させたいと執拗な行動についてゆけいない。
故人に対しての冒涜は、親云々ではないように思う。

 そうきたか。オモテの杜子春の話のほうが、リアル社会的には★★★★☆かもな。
cover
親の毒 親の呪縛
岸田秀
原田純
 しかし、この畜生道の母親がダブスタだと考えると、鉄冠子の意図もすーごくわかりやすいじゃないか。ってか、トシシュン君、分かれよ、お前の母親はダブスタなんだ、エリック・バーンの交流分析だってこのダブルバインドはテンプレなんだってばさ。「人生ドラマの自己分析―交流分析の実際(杉田峰康)」(参照)にちゃんと図入りで解説されているから、ってか、それ以前に、そんな愛情深いと幻想している母親が畜生道に落ちているということを少し考えれば、分かれよ、……というのが鉄冠子の思いだろう。
 ところで、今日、なんの日だっけ。

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