ベネズエラ国民の選択に賛意を表したい
よかった。ベネズエラでの大統領無期限再選を可能にする憲法改正案が国民投票で否決されたことだ。結果は僅差だった。憲法改正支持者も多数であり、その人たちの考えも単純に否定できるものでもないし、今回の改正が直接、チャベス大統領の独裁制につながるというわけでもない。だが、その傾向への懸念はあった。
民主主義というのは手順によっては独裁者を生み出しかねない。憲法というのはそうした強い権力への最終的な歯止めとして存在する。今回の事態は、憲法のそういう本質が揺るがされる可能性(公益が個人の利益に優越し公益認定で国家に接収が容易となる、報道の自由が優先されなくなるなど)がある例となって困ると不安な気持ちで見ていた。
ブログには書かなかったが、私は冷静に見れば、今回のベネズエラ国民投票は改正案可決に向かうのではないかという予想を立てていた。今朝の産経新聞”国民投票締め切り、大接戦に ベネズエラ憲法改正”(参照)は、当初”ベネズエラ国民投票実施、チャベス氏勝利か ”という表題だった。
ロイター通信によると、現内閣の複数の閣僚が、暫定的な開票の結果、可決の見通しとなったと述べた。首都カラカスではすでに一部のチャベス大統領支持者が勝利を祝う集会を始めている。
国民投票を前に行われた各種世論調査のなかには、提案の否決を予想する結果もあらわれ、チャベス大統領の敗北の可能性も予想されていた。
今朝はそうした結果になったかと気を揉んだ。が、逆になった。ロイター”ベネズエラで大統領権限強化めぐる国民投票否決、チャベス大統領は敗北宣言”(参照)より。
選挙管理当局者によると、反対票が約51%だったのに対し、賛成票は約49%だった。
チャベス大統領は敗北を認めながらも、「社会主義建設に向けた闘いを継続する」との考えを表明。改革は「とりあえず」失敗したが「依然として生きている」と述べ、再び憲法改正を目指す意欲を示した。
僅差を理由にごたごたした状況に持ち込まれるかという懸念もなくなった。というか懸念があったのだった。1日付けAFP”ベネズエラ大統領、妨害工作あれば対米原油禁輸を宣言”(参照)より。
ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領(53)は、権限集中を目指し2日に行われる改憲を問う国民投票で、米国が画策していると同大統領が主張する混乱が発生した場合、米国への原油輸出を停止すると発表した。
そうした懸念はなくなった。
それにしても今回これだけチャベス大統領が支持されるのは、それなりの理由もある。米国への反感もだが、貧困層への所得の配分が大きいだろう。2日付産経”今の生活、チャベス大統領のおかげ 原油収入で貧困改善”(参照)より。
ベネズエラで2日、大統領の無制限再選を可能にする憲法改正案の是非を問う国民投票が行われる。チャベス大統領は最高値圏で推移する原油の収入を原資に、「ミシオン(任務)」という名の社会開発計画を次々と実行、貧困層の生活水準のかさ上げを図ってきた。「ばらまき」との批判も強いが、首都カラカスの一角では、恩恵を受けた市民が大統領に「忠誠」を誓っていた。
日本でもこうした政治が望まれているのかもしれない。あるいは望まれていくのかもしれない。清廉潔白で貧困層にカネを撒く政治家こそ日本のあるべきすがたと考えているとしか思えないような意見も見かける。
日本国内ではあまり報道を見かけなかったようにも思うが、今回の否決はベネズエラの学生たちによる抗議デモも成果を上げていたようだ。元国防相ラウル・バドゥエルも学生側についた。
あるいはもっと貧困層の支持が得られなかったのはなぜかという問いのほうがいいのかもしれない。新興財閥を潰すことでテレビ局も潰れ、大衆の娯楽も低減させたことも貧困層に反感を買ったようだ。
インフレ率は17%を越えていた。もっとも、チャベス大統領としては今回の改正で中央銀行の独立性を剥奪することで解決可能だったのかもしれない。
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コメント
イギリスは帰納法的なのかな
集団は無意識的に潜在能力を抑制されてる
憲法は何を恐れてるのか
投稿: itf | 2007.12.03 19:53
この結果は意外した。デノミ来年からみたいです。
まだ需要先経路が出来てないうちから原油対米禁輸は自殺行為としか思えん。
投稿: abekoji | 2007.12.03 23:37
近代的な国と周辺の偏狭なナショナリズム国家か・・・・。そういえばある在日が、俺は帰属意識がない、限りなく日本人だ、と言いながら歴史や政治となると、何故か朝鮮側に立ってたな。普段は論理的な奴なのに。血は憲法では制御できない。
投稿: itf | 2007.12.04 06:31