ポールソン&ウー、国際熟年男女デュエット、熱唱して引退
タイトルに懲りすぎたかな。大した話ではないけどなんとなく気になっているんでブログに書いておこう。話のきっかけはブログ「債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら」(って書いてみてすごいタイトルだよね)のエントリ”正念場”(参照)。私の関心はというと、ごく余談的に触れられているところ。
一方、あまり報じられていませんがポールソンは北京に行ってます。この一大事に東京では無く北京です。ここでも散々申し上げてきた"JAPAN PASSING" がいよいよ現れてきました。いくら球を投げても反応しない日本を相手にするくらいなら、中国の方がはるかにリライアブル、という判断が出ても仕方ないですよね。
違和感というほどではないけど、ふーむと思った。読み進めてさらにふーむ、と。ちょっといわく言い難いのでぼそぼそとエントリで展開してみる。
ポールソンの訪中だが珍しいことではない。けっこうしょっちゅう北京に行って鴨食っているじゃないや向こうの人脈と懇親を深めている、のでそれほど注目されていない、というわけでもない。13日付けFujiSankei Business i.”中国・アジア/為替・貿易で応酬「政治問題化」と中国/米中戦略対話開幕”(参照)に比較的まとまった報道がある。さすが香織丹。有花丹・梯子丹といまやブログ界で注目の萌三丹の一紅。
【香河(中国河北省)=福島香織】人民元問題や貿易不均衡問題、食の安全など米中間の懸案事項について経済閣僚が話し合う「第3回米中戦略経済対話」が12日、北京郊外の河北省香河で開幕した。米側共同議長のポールソン財務長官が冒頭から人民元政策の弾力化を要求。これに対して中国側共同議長の呉儀副首相が、「貿易を政治問題化する試みに断固反対する」と応酬するなど、激しい攻防となった。13日に米中が、それぞれ声明を発表して閉幕する。
というわけで、ポールソン&ウーの国際熟年男女デュエット熱唱ということだった。そのあたりはもうちょっと先で触れるとして。金持ちまっしぐらのぐっちーさんのエントリだがこう続く。
中国政府は絶対にアメリカ国債を売らないし、安くなったら膨大な外貨準備を使って更に買い増す、位の声明は出るのではないでしょうかね。もしかしたら救済基金を中国が作るかもしれない。日本は完全に乗り遅れ。つまらんことでもめてる場合じゃねーだろ、君たち、と政治家の先生たちには申し上げたい次第です。
中国が米国債を売る売らないの話は「極東ブログ: [書評]もう一つの鎖国―日本は世界で孤立する (カレル・ヴァン ウォルフレン)」(参照)で少し触れたことがある。頂いたコメントやトラバなどからまあ売らないでしょうという常識的な話に落ち着いたようだったが、私は多少ウォルフレンに近い考えがいまだにあり云々。
話を戻して、米国債を絶対に売らないし買い増しもするというのは日本でしょとか思った。日本はそれだけ米国に信頼されているからPASSINGに見えるだけで、米中間の問題はけっこうやばいんでないと、つまり逆じゃないかな。いや異論とか批判ではないんですよ、とまいどまいど口癖みたいに言うのだけど。
因みに今回の訪中には中国経済最高顧問でおられるマンデル先生も同行されているようですし、表向きは人民元の切り上げとかが話題に出てきますが、裏ではかなりディープな話になっているのは間違いありません。
私も「人民元の切り上げとか」は表向きの話題に過ぎず、裏があるんじゃないかとなんとなく思っている。ぐっちーさんのディープな話は先のとおりなんだけど、私は、あれ、放言になるし裏が取れてないので言うのもいけないんだけど、サブプライム関連で中国がけっこうババを掴んでいるっていうことはないんだろうか、と疑問。一応ネットとかで識者の意見とか見るとそんなことはないよが出てくるのだが、そもそもサブプライム問題というか米国住宅ローンバブルが潰れるのはわかりきったことだったけど、火の手が欧州から上がったあたりはわからなかった。それってみなさん予測できていたのかいな。欧州がババ掴んだのは米国の田舎みたいに土地勘のないものにカネをツッコンだからで博打みたいなもん。そういう、博打みたいにっていうか、博打っていうと人生変わるタイプの国民性って言えば、みたくつらつらと思っていた。
まあしかし、問題というのは表面化するから問題なんで隠蔽したり先延ばししておけば安心できる。いいんじゃないかみたいな。話をポールソン&ウーに戻す。そちらが本題。香織丹記事の解説欄に米中戦略経済対話があるが。
【用語解説】米中戦略経済対話
ブッシュ米大統領と胡錦濤・中国国家主席が2006年に創設を決定した、財政、金融、貿易、環境、厚生、農業などの閣僚級が一堂に会する経済協議の枠組み。半年に1度のペースで米中交互に開催しており、今回が3回目。ポールソン財務長官と呉儀副首相が共同議長を務める。短期的成果を目指す交渉とは異なり、長期的視野に立って中国の貿易黒字の元凶である輸出主導の経済構造を内需主導に転換することを目指す。ただ米議会の関心が高い人民元の柔軟化は遅れており、戦略経済対話(SED)を基軸とするポールソン長官の対話路線は目に見える成果を上げていないとの批判は根強い。(香河 時事)
ポールソン&ウーが主役です。ポールソン、成果を上げていません。ウーさんはもうすぐ引退しまーす。
仇役ポールソンはどう考えているのだろうか。日本版ニューズウィーク(12・9)periscope”中国通の米財務長官を阻む壁”より。
アメリカの対中交渉の舵取りを行うという条件で、ゴールドマンサックスのCEO(最高経営責任者)を辞めて財務長官に就任したが、北京ではしかるべき人物に会うことすらままならない状態だ。
温家宝首相は対米交渉の責任者になることを拒み、代役を押しつけられた呉儀副首相はもなく引退する見通し。さらに彼女の後任と目される張徳江広東省党委員会書記は、北朝鮮の金日成大学で経済学を学んだ人物で自由主義経済主義者には程遠い。
というわけで、東洋の国にありがちな、いざとなったら要人はバックれ状態になっている。どうするのだろうか。
米財務省関係者は、最終的に李克強遼寧省党委員会書記が中国側の交渉責任者になるのを期待している。
という文脈で李克強が出てきた。
というあたりで、私は少し溜息をつく。このブログでは彼に注目してきた。「極東ブログ: 胡錦涛政権の最大の支援者は小泉元総理だったかもね」(参照)、「極東ブログ: 中国共産党大会人事の不安」(参照)、「極東ブログ: 小沢民主党辞任問題で些細な床屋談義でもしてみるか」(参照)。こうした流れで見ると、米中戦略経済対話が創設されたころは胡錦濤から李克強という流れで米国と協調できる線は見えていたのかもしれない。だが、その線はもう潰れたんじゃないだろうか。
ニューズウィークの記事はこう締められている。
だが、今回の対話が米中関係の永続的な枠組みになるというポールソンの構想は崩壊した。優位に立つ中国が他国に恩恵を与える気配はない。
こうした中国への試みは09年にブッシュ政権とともに消え去る運命にあるらしい。
危ない中国 点撃! 福島香織の「北京趣聞博客」 |
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コメント
>話を戻して、米国債を絶対に売らないし買い増しもするというのは日本でしょとか思った。日本はそれだけ米国に信頼されているからPASSINGに見えるだけで、米中間の問題はけっこうやばいんでないと、つまり逆じゃないかな。
日本は多分、出すことになるんでしょうけど、ぐっちーさんの言っているのは出す、出さないじゃなくて、「出し方の問題」。アラブが出して、中国が出して、EUも出してきた後、日和見で出してきても、感謝されないし、最初に出してきたアラブのような好条件も出ない。
ぐっちーさんの以前のエントリーを読んでほしいんですけど、ここはどーんと50億x3のオファーを出されているんなら、逆にトータル300億だすから、条件はこっちの言い値、と最初に手を上げるんです。
そうすれば、相手に感謝されますし、積み上げる金額が多ければ多いほど出す側の勝算も高くなりますから有利です。
投稿: F.Nakajima | 2007.12.16 22:44
極東ブログさんの炯眼にはいつもうならされます。ジャパンパッシングをわめいている人達はややポジショントークが露骨に過ぎませんかねと疑ってしまいます。今回はそうとうきついことになることは必定のようですから、下手に動かずにダメージ最小化につとめるのが吉かと。
投稿: bb | 2007.12.19 04:47