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2007.10.24

中国共産党大会人事の不安

 中国共産党の党大会が終わった。眼目は端的に言えば、胡錦濤派と江沢民系上海閥との人事の戦いで、私は焦点を曽慶紅の引退に当てていた。結果から言えば甘い読みだった。流れ的に胡錦濤側が優勢だと見ていたのだが、結論から言えば、曽慶紅とバーターのように江沢民系上海閥の勝利に終わったかのようにさえ見える。
 私の読みはすでに昨年「極東ブログ: 胡錦涛政権の最大の支援者は小泉元総理だったかもね」(参照)で書いておいた。率直に言って内部抗争に私が詳しいわけもないので、NHK系の解説員の見解に同意したに等しいものだった。


具体的に政治局常務委員会のメンツを並べるとこうだ。

胡錦濤 中共中央総書記、中華人民共和国国家主席、中共中央軍事委員会主席、中華人民共和国中央軍事委員会主席
呉邦国 全人代常務委員長
温家宝 中華人民共和国国務院総理
賈慶林 全国政治協商会議主席
曽慶紅 中華人民共和国国家副主席 中共中央書記処書記第一書記
黄菊  国務院常務副総理
呉官正 中国共産党中央紀律検査委員会書記
李長春 意識形態を主管。
羅幹  中央政法委員会書記

 で、来秋にはこういう構図になるだろうと推測されている。

胡錦濤 バッチグー
呉邦国 全人代常務委員長
温家宝 中華人民共和国国務院総理
賈慶林 引退か?
曽慶紅 引退か?
黄菊  引退
呉官正 引退
李長春 意識形態を主管。
羅幹  引退

 温家宝はすでに胡錦涛寄り。李長春はむしろアンチ上海閥。上海閥は呉邦国だけといってもこのオッサン・エンジニアみたいな人。残るはあと一年足らずで、江沢民派の賈慶林とべたな江沢民派の曽慶紅の追い込みか、と。
 ほいで、上海閥の穴ですでに事実上埋まっているのはこのあたり。

李克強 遼寧省委書記
劉延東 中共中央統一戦線部部長
李源潮 江蘇省委書記

 他の穴も中国共産主義青年団(共青団)など胡耀邦チルドレンで固めることになるだろう。
 ということは、今見ておくべきことは。来秋の中国共産党の第17回党大会まで、上海閥が窮鼠猫を噛むの行動に出てくるか?


 ハズしたのは上海閥欠落に胡錦濤派が埋まるくらいに思っていたことだ。
 なので、党大会前産経新聞中国総局記者福島香織が”江沢民さん、まだ若い?:イザ!”(参照)で賭けたときほおと思った。(ところでブログ本はどうなったんでしょ。)

さて、党大会において、国内外メディアの一番の注目は、政治局常務委員の人事です。とくに曽慶紅副主席の去就についての報道が、前触れでもりあがりましたが、「留任」と打ったのは、日本メディアでは産経新聞と東京新聞だけ?ふふふ、ギャンブラーですね。でも、私も曽慶紅留任に1000元(ぶんのご飯)くらいかけています。

 というわけで、福島記者がハズして、またハズした(またというのは段ボール肉)けど頑張れとか微笑んでいたのだが、曽慶紅のバーター人事みたいのを見ると、江派の強さをきちんと読んだとも言えるかもしれない。というのも、実際はこうなった。ついでに、比較的直前の5日付”中共政治局員9人体制維持 曾慶紅氏ら3人引退へ”(参照)による香港紙明報読みは正確だった。
 なお、江派とした今回の抜擢だが必ずしも江派ではないという意見もあるだろう。

胡錦濤 バッチグー →ショッペー(64)
呉邦国 全人代常務委員長 (66)
温家宝 中華人民共和国国務院総理 (65)
賈慶林 引退か? →残留 全国政治協商会議主席 (67) ハズレ
曽慶紅 引退か? →引退
黄菊  引退  →死去
呉官正 引退  →引退
李長春 意識形態を主管(63)
羅幹  引退  →引退

胡錦濤派から1名
李克強 遼寧省委書記(52)  →常務委入
劉延東 中共中央統一戦線部部長(61)  →ハズレ
李源潮 江蘇省委書記(56)  →ハズレ

江派から3名
習近平 上海市党委書記 (54)  江派・太子党
賀国強 党中央組織部長 (63)  江派
周永康 公安相 (64)  江派


 いやひどい図柄だなと私は思うものの、中国に未来があるすれば、江派上海閥派の先にあるわけないと思っているので、なるようになれというウンザリ感がある。しかし、今回の中国権力配置で日本の対日外交もまたショッペーことになってくることは確かだ。
 それにしてもこの人事、これから来る中国ハードランディングに中国一丸というか北京主導で対応する気があるのかおまえら、みたいな感じもしたのだが、実際の経済クラッシュではカネのある部分に衝撃がくるので、なかなか微妙な意味合いもあるかもしれない。それと、”極東ブログ: 遼寧省の鳥インフルエンザ発生からよからぬ洒落を考える”(参照)で触れた問題も以前好転しているとも思えないし、どうも微妙に日本が絡まってきている感じがする。
 さて、今回のハルマゲドン党大会を日本のジャーナリズムはどう報道したか。
 率直に言って見ものだったのは、朝日新聞の不気味な沈黙だった。人事決定以前に読売・毎日・朝日がどうでもいいような儀礼的な社説を繰り出してきたので、その流れでひとまずなにか朝日新聞も言うのかと思ったらだまり込んだ。朝日新聞を腐すつもりはないが、こういうところが朝日新聞の有り難いところで、すでに今回の人事の荒れ具合を独自ルートで織り込んでいたのだろう。そうした中、”極東ブログ: ブット帰国後のパキスタン情勢メモ”(参照)で触れたが、パキスタン関連でとんでもない社説を出してきたので、もしかすると朝日新聞内で江派・太子党路線みたいのが出てきたのかという不安もあった。
 こうした流れで、正直意表を突いたのが昨日の毎日新聞社説”中国新指導部 上海派巻き返しなら…=論説委員・金子秀敏”(参照)だった。金子論説委員はチャイナスクールじゃんみたいな声も聞くがこれは、私にしてみれば、ここまで書けるのか日本の新聞はと目が覚める思いがした。引用が長くなるが、まさに今回の人事の問題はここにある。

 総書記代理格の筆頭書記として中央書記局を握ったのは、共産主義青年団で胡氏の後輩である李氏ではなく、北京勤務の経験もないダークホースの習氏だった。李氏は筆頭副首相で次期首相候補だ。習氏が政治局の実務を取り仕切り、事実上、次の総書記となる準備をする。
 両氏ともこれまでの政治手腕は高く評価されている。問題は、次の総書記が胡氏の人脈でなくなることではない。まったくのダークホースの抜てき人事の背景に、一般の中国人は、きっと党規約を超えた「天の声」が作用したのだろうと思うだろう。太子党の起用に、共産党はまだ「人治」の党なのだと失望するだろう。それが党の信頼度、統治力の根源にかかわる問題なのだ。

 「天の声」をべたに書く必要はない。まさにそういうこと、つまり、「党の信頼度、統治力の根源」に疑問符が付く。
 もう一点、金子論説委員が胡錦濤系の権力闘争のこれまでの主砲が崩れたことをくっきり述べた。

 もう一つの眼目は、規律検査委員会書記の人事である。前の第16期政治局常務委員会も4対5で江氏系が多数だったが、それにもかかわらず胡総書記が上海市ぐるみの汚職や、聖域といわれた海軍の汚職を摘発できたのは規律検査委を押さえていたからだ。
 ところが今回、公安・検察部門を押さえる政法委員会書記だけでなく、規律検査委書記も胡派がとれなかった。江氏の腹心、曽慶紅国家副主席は定年で常務委を引退したが、賀国強、周永康の江系2氏が規律検査委書記、政法委書記として常務委に入った。

 端的に言えばもうトップの悪者退治的な権力は振るいづらくなってきた。
 こうして昨日の時点で毎日新聞社説がほぼ決定打を出してしまった後、朝日新聞はどう出るのか? それが今朝の社説”中国共産党 新指導部に寄せる大波 : asahi.com:朝日新聞社説”(参照)だったのだが、意外と言ってはなんだが、穏当なあたりに出てきた。

 胡カラーでは側近の李克強氏のほか、共青団系から新たに3人を政治局員に起用した。同時に、何かとあつれきが伝えられる江沢民前総書記系も常務委員など重要ポストに残り、発言力を保った。
 江氏の人脈は、政府から地方幹部まで幅広く連なっている。2期目の政策を進めるにあたって、今後も慎重な利害調整を求められることになりそうだ。
 胡氏は人事で妥協したものの、党の憲法ともいえる党規約に自らが提唱する「持続可能な発展」戦略を盛り込んだ。この意味は小さくない。任期途中に自分の路線を書き込むのは異例のことだ。

 結果論からすれば、そういう見方もできないわけではないし、党規約という言質が重要なんだというあたりは、「この厄介な国、中国(岡田英弘)」(参照)ではないが、日本人とは思えない中国人的な発想だ。
 というわけでこれなんかもさらりと読ませてしまうのだが。

 共産党独裁という体制を維持しながら、国民の声を政策決定に反映させる道を広げていく。至難の業というよりないが、それ以外に胡氏の描く「持続的発展」を実現する方策はないことを覚悟すべきだろう。

 つまり、金輪際中国は民主化できないですぅ、軍曹さん、ということだ。朝日新聞とも親和性の高い見解なのかもしれない。

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コメント

あのデカイ国、中国の頭脳、権力の構造はどうなってるのだろう。洗練されるのか、バラバラになるのか、考えただけでも恐ろしい。日本の隣にジレンマを抱えたデカイ国があるという事を常に日本人は頭の片隅においておかなければならない。

投稿: itf | 2007.10.29 11:34

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