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2007.10.08

ブラックウォーター事件メモ

 ブラックウォーター事件は、日本でまったく取り上げられていないわけではないが、米国での扱いに比べると小さい。少なくとも大手紙の社説では取り上げられていない。日本の問題ではないということかもしれない。数日前赤旗でべた記事を見かけたが、日本のいわゆる平和勢力による論評もあまり見かけない。ニュースの引用に一言コメントというタイプのブログでは、ブラックウォーターが悪いのは当たり前で別段今回の問題は取り上げるほどでもないといった印象も受ける。もちろん、そうしたことは私の印象に過ぎず間違っているかもしれない。いずれにせよ、私はこの事件は重要だとも思うので時代のログとしてメモをしておきたい。
 ブラックウォーターは戦闘地域などで米国関連の要人の警護や輸送を行う民間警備会社だが、実態からは傭兵と見てよいだろう。イラクでの活動が目覚ましい。ウィキペディアでは、「民間軍事会社」(参照)とし、粗っぽく記載している。


 民間軍事会社(みんかんぐんじかいしゃ) "Private Military Company, PMC"または、"Private Military Firms PMF"と主に表記される新しい形態の傭兵組織。
 主な業務としては軍隊や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した戦闘員を派遣しての直接戦闘業務に加え、兵站・整備・訓練など旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多域に渡る。民間軍事契約業者(Private Military Contractor)ともいう。

 ブラックウォーターが国際的に注目されたのは、ブラックウォーター社員4人がテロリストに殺害され、黒こげの遺体として橋に吊るされた、04年の事件だった。この事件は「ファルージャの戦闘」(参照)の背景となる。なお、この事件も今回の事件の関連で見直しされている部分がある。9月28日付CNN”ブラックウォーター、警備員殺害事件で調査妨害の疑い”(参照)より。

 事件では、損傷した遺体が橋からつり下げられ、その衝撃的な映像が全世界で報じられた。当時、米軍はこれを受けて、ファルージャで大規模な武装勢力掃討作戦を実施した。
 同委員会の報告によると、ブラックウォーターの内部文書から、殺された4人の所属するチームは、人員や装備が不十分なまま、地図さえ与えられずに同市へ送り込まれていたことが分かった。同社は米当局との正式な契約が成立していない時期に、見切り発車の形で業務を開始していたとされる。
 しかし、同社は今年2月の議会公聴会で、こうした文書について「政府が機密扱いとした」と偽ったうえ、国防総省に対し、実際に機密文書として指定するよう繰り返し求めていたという。

 今回の事件は、9月16日に起きた。3日付けCNN”ブラックウォーター事件、目撃者2人が惨劇を語る”(参照)より。

 米警備会社ブラックウォーターUSAの従業員が先月16日、イラクの首都バグダッド市内の銃撃戦で民間人を死亡させた事件で、当時現場で交通整理をしていたイラク人警官が1日、CNNに対して、民間人に発砲したブラックウォーターの警備員らが「テロリストに攻撃されていないにもかかわらず、テロリストと化した」と語った。

 結果、イラク民間人17人が殺害され、24人が負傷を受けた(参照)のが、今回のブラックウォーター事件だ。イラクはこれを受けて、足下にブラックウォーターのイラク国内の活動を禁止するとしたが、米政府から否定された。というより、現実的に不可能だろう。1日付けニューヨークタイムズ”Subcontracting the War ”(参照)より。

There is, conveniently, no official count. But there are an estimated 160,000 private contractors working in Iraq, and some 50,000 of them are “private security” operatives --- that is, fighters.
(わかりやすい公式統計は存在しない。だが、イラクには16万人の民間下請け作業員がいると推定され、うち民間警備員として携わっている5万人は実際は戦闘員である。)

 この機にブラックウォーターへの過去の問題も注目されるようになった。2日付ワシントンポスト”Other Killings By Blackwater Staff Detailed”(参照)より。

Blackwater security contractors in Iraq have been involved in at least 195 "escalation of force" incidents since early 2005, including several previously unreported killings of Iraqi civilians, according to a new congressional account of State Department and company documents.
(議会報告書及び同社文書でによれば、イラクにおける下請け警備員は2005年までに195件の逸脱武力行使に関わっており、これには未報告のイラク民間人殺害が含まれている、とのことだ。)

 同種報道だがフィナンシャルタイムズはもう少し手厳しい。3日付”Blackwater and the outsourcing of war”(参照)より。ちなみに、フィナンシャルタイムズが社説で扱うのだから、今回の事件は米国のドメスティックな問題でもない。

Blackwater, which has earned nearly $1bn from the Department of State for protecting its officials, is notoriously trigger-happy: opening fire first in 163 out of 195 shooting incidents since 2005, according to a report by Congress. A Blackwater employee killed a bodyguard of Adel Abdel Mahdi, an Iraqi vice-president Washington favours as a possible prime minister, in an argument last Christmas.

Neither he nor any other mercenary has ever been charged, under a 2004 US decree making them immune from Iraqi law.
( 要人警護で10億ドルを国務省から得てきたブラックウォーターは、むやみに銃をぶっぱなすことで悪名高く、議会報告によれば2005年以降の発砲事件195件中、163件で先に手を出している。昨年のクリスマスでは口論が元で、ブラックウォーター社員がアブドルマハディ・イラク副大統領の警護員を殺害している。
 だが、彼も他の傭兵も、イラク法に服さないとする2004年の米国法により訴追されていない。)


 ブラックウォーターはイラク国内で何をやっても法に問われないという状態であり、構造的にはここに最大の問題がある。このことがようやく米議会で問題となり、歯止めがかかる見通しとなった。5日の時事”イラクの「傭兵野放し」に歯止め=米国内法による訴追法案採択-下院”(参照)より。

イラクの首都バグダッドで米外交官らの警護を委託されている米民間警備会社武装要員の銃撃の巻き添えで、少なくとも11人のイラク市民が死亡した9月16日の事件を受け、米下院本会議は4日、政府請負業者が海外で犯罪を起こした場合に、国内法で訴追することを定めた法案を389対30の圧倒的賛成多数で採択した。

 ある意味で、これが今回のブラックウォーター事件の意味だろう。
 法案は民主党主導なので、選挙戦の文脈もあるが、それが主文脈と見ることはできない。
 ところで、2004年に出されたとされるブラックウォーターの不逮捕特権の由来だが、ニューズウィーク(10・3)”米兵より横暴なアメリカ人傭兵”ではこう説明されている。

 アメリカ軍法の適用外にある民間警備社が問題を引き起こす事態を、ブッシュ政権は以前から危惧していた。03年には、当時の国防長官ドナルド・ラムズフェルドが、「戦争の民営化」に必要な法規制を考える委員会を招集。だが委員会が出した勧告を実行するところまではいかなかった。
 そして04年6月、当時の連合国暫定当局のポール・ブレマー代表の判断が状況をより面倒なものにした。ブレマーはイラクを離れる2日前、イラクにいるすべてのアメリカ人の訴追を免除するという命令にサインをしたのだ。
 ブレマーの元側近は本誌にこう語った。イラクへの主権委譲後も「アメリカの軍人や民間人、請負業者がイラクの法律に縛られないようにしたかった」

 経緯は一応そうことなのだが、振り返ってみて、諸悪の根源のように言われている懐かしのラムちゃんだが、どうも彼自身いろいろ足をひっぱられてこんなはずじゃなかったがありそうだし、ブレマーはどうもわからない。
 イラク戦争をブレマーの視点から見直すとどうなんだろうか。つまらない陰謀論に落ち着きそうでウンザリ感が先行するが気になる。

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コメント

>>米下院本会議は4日、政府請負業者が海外で犯罪を起こした場合に、国内法で訴追することを定めた法案を389対30の圧倒的賛成多数で採択した。

議会は、民間武装会社が海外活動することまでは反対していないようだけど、ここがポイントかも。ただ判らないのは米国政府のPMFの位置づけで、テロ組織のような非国家にはPMFをぶつけろということか、そもそも戦争を民営化してやろうという一部のダークサイドの動きなのか・・・。ラミーが前者ならブレマーは後者の代理人ということなのか。まあこれ以上考えると陰謀論の罠に陥るか。


投稿: 相関研 | 2007.10.09 15:54

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