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2007.10.06

パソコンは基本ソフト込みで販売してはいけない?

 話は昨日のエントリ「欧州裁判におけるマイクロソフト敗訴について」(参照)の続き。ただ、少しテーマが違う。EUは結局、パソコンは基本ソフト込みで販売してはいけないと言い出しているようだということ。
 まず、前エントリのまとめだが、3年に渡るEUの判定では、マイクロソフトはウィンドウズという基本ソフトにアプリケーションをバンドルして販売してはいけない、という主張を持っていることはだいたい明らかになった。そしてその背景にはコンピューターにおけるウィンドウズのシェアを減らしたいという意図があることもだいたい明らかになった。さらにぼんやりした線ではあるが、EU市場を制御する可能性のあるIT分野の知的財産に歯止めをかけようとする意図もありそうだ。私なりにまとめるとこの3点ということに、とりあえずなる。
 EUの主張をマイクロソフトが仮に丸呑みしたとする(実際には不可能だけど)。するとどんなウィンドウズが見えてくるか。まず、ウインドウズは基本ソフトだけのすっぴんになる。英語の世界ではnakedと表現されている。ということは、ハードウェア対基本ソフトという線がくっきりと見えてくることで、いわばパッケージのアプリケーションのような輪郭も与えられる。そしてそれは他のパッケージと並列されるというイメージもある。
 このイメージを敗訴に追い打ちをかけるようにEUは事実上出していた。というのは厳密にはEUから出たのではなく、その独立系シンクタンクとなるグローバル化研究所(Globalisation Institute)が、”Unbundling Microsoft Windows”(参照PDF)を打ち出した。


This paper’s recommendation is that the European Commission should require all desktop and laptop computers sold within the EU to be sold without operating systems.
(デスクトップ型コンピュータとラップトップ型コンピュータはEU内においては基本ソフトを抜いた状態で販売されるべく、欧州委員会が規制するよう、本稿は推奨する。)

 この提言の日時がよくわからないのだがPDF文書では9月20日となっており、事実上マイクロソフト敗訴と並んだスケジュールになっていたことがわかる。
 ジャーナリズムでの扱いは、ワシントンポストにも転載されたPCワールドの”Stop Preloading Windows, Business Think Tank Says”(参照)が簡素にまとまっている。次の点も興味深い。

The report is gaining attention partly because the Globalisation Institute usually advocates a hands-off approach to business regulation. It researches and develops policy options that are sometimes championed by politicians.
(このレポートが注目された理由の一つは、グローバル化研究所は通常ビジネスの規制には手心を加えるからである。同研究所はしばしば政治家に指導されて政治オプションを調査・開発する。)

 私が文脈を読み違えているのでなければ今回は異例だったということなのだろう。
 この報道だが、ワシントンポストを含め欧米では一応取り上げれたのだが、日本国内では今回の判決からしてそうなのだがあまりフォローされていないように思える。と調べ直すと、マイコミジャーナル「欧州では全PCをOS非搭載で販売すべし! シンクタンクが欧州委員会へ提言」(参照)があり、ファクツの線はきれいにまとまっている。

 同シンクタンクは、現在、EU域内のほぼ全てのPC販売店で、Windowsを搭載するPCが圧倒的シェアで販売ラインナップに並んでいる実態を憂慮。PCを購入したいと考える人に対しては、Windowsのソフトウェアライセンス料金を支払って、Windowsが搭載されたPCを購入する選択肢以外は用意されていない状況が当然のこととして受け入れられているものの、今回の提案が実施されるならば、無料または低価格の他のOSを導入する人が大幅に増加すると分析している。
 OS市場での競争促進によって、Windowsの圧倒的シェアの前に、新規参入が困難だった他の数々のOSにもチャンスが訪れ、技術革新が進むメリットは大きいとされている。また、これまで欧州企業がWindows購入のために支払っていた膨大なコスト削減につながり、欧州経済の発展にも寄与することになるとの判断が示されている。

 いくつか疑問点が自然に浮かぶのではないか。たとえば、マッキントッシュはどうか? この点についてはビジネス・ウィーク”Think Tank Calls for 'Naked' PCs”(参照)に示唆がある。

He said the institute's analysis excluded Apple's OS X because the Mac is a "premium, niche product, like a Bang & Olufsen television, which is difficult to justify in the business world outside of the publishing sector".
(グローバル化研究所所長によれば、この研究所の調査にはアップルのOS Xは含まれていないとのことだ。マッキントッシュは、プレミアムでニッチな製品であり、バング&オルフセンのテレビのようなものだ。この手の製品は、出版部門を除き、公平化の対象にしずらい。)

 マックはコモディティではないがウィンドウズはコモディティだろということのようだ。
 その先から考えるなら、マイクロソフトとしては、コモディティのラインをできるだけ拡大した地点で、EUについては基本ソフトから事実上撤退するしかないだろう。
 私はこんな疑問ももった。グローバル化研究所の言い分が正しいのはアプリケーションが社会的に正規化というか、適応可能な状態が想定されるからであって、その状態の意味はなんだろうか?
 私のようにパソコンを長く使ってきた者にしてみると、ウィンドズの登場はアプリケーションに統一プラットフォームを与える市場形成の点でプラスの要素だったなという思いが強い。しかし、現在、グーグルがMITなどと共同で推進しようとしている100ドルパソコンもだが、ようするに基本の通信機能と、世界にただ一つのCPUみたいなイメージでアプリケーションは保証できそうにも思える。という比喩は反って誤解されやすいか。
 別の言い方をすれば、ウィンドウズなんてなくてもいいでしょっていう世界でしょ、っていうことだ。
 技術的にはすでに世界はそういう水準にあるのかもしれないが、ちょっと微妙な違和感は残る。

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コメント

ケータイで全部出来ればPCなんてイラネ

投稿: ぷっく | 2007.10.06 21:22

ぷっく氏のコメントに、なんの、と思ったが、
なんとなく本筋とずれているようだったので、こじつけてみよーか。

まぁ、はっきりしないので、間をぶっ飛ばして適当に出力。

というのも、携帯電話業界に限って言えば、
MS、つまり米よりもEUの方が影響力は上だと感じてます。
MacとWinの扱いの違いでも思ったけど、携帯はコモディティなの?
って話で、ようするにPCが携帯化(電話でなく、「携帯」)出来る傾向にあるんだから、
最終的には普及するのはPCじゃなくて、何でも出来る携帯ってことになる。
そこからMSを締め出してしまえば、携帯業界加えてEUの天下。

ってなことになるんじゃないか、という妄想。
と、短期スパンでどうなるかについては全然考えてないですけども。

携帯の基本ソフト?
無きゃ動かないんだから、抱き合わせ上等ですよねー

投稿: みきぬー | 2007.10.06 22:59

Linux ユーザとしてはありがたい話。
ただ、Linux が普及するための土台をマイクロソフトが地ならしした、という背景まで考えると、マイクロソフトに同情する。
同情はするけれども、現状を考えると、欧州裁判の結論はもっともな気がする。

投稿: kawasaq | 2007.10.07 01:23

自分ではくわしく書けないことを書いてもらえるから
ありがたいでちゅ
でもスマートフォンとかMSもケータイに触手を伸ばしているよね
でもぜーったい使いたくないな

投稿: ぷっく | 2007.10.07 23:16

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