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2007.10.28

最近の米価下落についてのメモ

 先日NHKの朝のラジオで農政学者大泉一貫宮城大学教授が、最近の米価下落について話していて興味深かった。備忘を含めてメモ書きしておこう。
 まず現状だが、公設の米入札機関、米価格センターでは、米価は今月に入って昨年比で8%下落しているとのこと。従来も米価下落はあったが3%前後だったので今年は異例ということになる。なぜ米価は今年がくんと下がったか? 豊作だから下がるという単純なことではないらしい。
 大泉によれば、問題の基軸は米価に市場の需給動向が反映されるようになったということだ。従来は、生産調整政策や、米価格センターが希望価格・入札制限で高値誘導をしていてその影響が強かった。しかし生産調整効果は薄れ、米価格センターの改革も進んだために市場が機能しているらしい。
 生産調整の背景には3つの要因があるとのこと。(1)消費量の減少速度が速い、(2)今年は適性需要より20万トン上回っていた、(3)海外から義務的に輸入する7.2%の米があるがUSAライス連合会によるサラダ感覚のコメの市場で圧迫を受けた。
 売れる米と売れない米の問題も関連しているらしい。売れる米を作っている人は最初から生産調整とは距離を置いていてもっと増産したい。が、売れない米のほうは当然市場からはじかれ、これが過剰感を出している。
 具体的に今年の米価下落問題の背景として見ると、この夏の全農概算金7000円ショックと呼ばれる事件が大きいらしい。全農概算金の仕組みはこうだ。農協は夏頃に概算金を農家に渡し、一、二年後実際の販売価格との差額を精算する。だが、実際には近年のその差額が小さくなり、実質概算金がイコール価格になっているとこと。つまり、全農概算金はお金の先渡し制度と言っていいだろう。なお、現実には7000円は低すぎるということで、1万円程度になっているらしい。
 大泉は、こうした状況でもっとも厳しいのが専業農家だと主張する。兼業なら他の収入がありそこれで緩和されるからだ。さらに、米の専業農家の救済することを検討しなければならないと論じ、その対策として、輸入米を減らすことや、販売強化、専業農家への補助金を多くすべきという話になる。
 私は話を聞いていろいろ学ぶこともあったのだが、奇妙な感じもした。
 単純に言えば、この問題は売れる米を作る農家の問題ではないのではないか。むしろ、比較的容易にできる兼業農家が従来どおり作れば入金されるから作ってみたら、え、そんなに価格が少ないのということに見える。ちなみに7000円という金額はどのくらい少ないのかよくわからないが、「全農 内金」で検索すると例年の半額というような意見も見かけた。
 ところでこの「全農米内金ショック」だが7月末日のニュースだったらしい。そこでふと参院選を思い出したのだが、だいたい時期が重なる。正確にいうと参院の蓋を開けて以降のショックなのだが、がというのは、このショックはまったく想定されていないわけでもないから、内金が低いぞというのは参院選挙に大きな影響を与えていたのかなと思った。
 こうした背景で、政府によるコメの買い入れを考えるとまた味わい深い。27日西日本新聞”余剰米44万トン買い入れ 800億円 自民、農水省と合意”(参照)より。


 米価下落問題で自民党は26日、備蓄用と飼料用合わせて44万トンの余剰米を政府が買い入れる方向で、農水省と基本合意したと発表した。買い入れ額は約800億円とみられ、同省は今後、財務省と財源確保の方策を探るとしている。
 自民党は、余剰米買い入れによって市場が引き締まり、米価下落に歯止めがかかると説明。農業関係者からは「下落が続けば、農家の離農が進みかねなかった。食料自給率の視点からも危機回避につながる」と好意的な受け止めが聞かれる。
 だが、今回の米価下落問題では、今年から導入された新たな需給調整方式が機能していないことが指摘されており、財源確保とともに課題として浮上している。

 政府の買い上げで米価が上がり、内金との差額が出るということなのかなと思うがこのあたりは私はよくわからない。また、全農も1万円に引き上げる方針を明らかにしたが(参照)どういう対応があったのだろうか。ただ、「今年から導入された新たな需給調整方式」が問題らしいということは、よくわかった。なお、同記事にもあるが、現食糧法では米価対策を目的とした政府の買い入れが認められないので、備蓄が目的となる。
 この話は物騒なんでブログなんぞであまり言及しないほうがいいようだ空気をすーっと吸い込む、と。それと私は農家の補助金は仕方ないんじゃないのと考えている、というか、兼業農家の農地転用で土地の資産性を高めてもっと兼業農家のかたにお金を使ってもらうといいんじゃないかと30%くらい真面目に考えている。じゃ、そのくらいで。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

>兼業農家の農地転用で土地の資産性を高めてもっと兼業農家のかたにお金を使ってもらうといいんじゃないかと30%くらい真面目に考えている。

 そんな眠たい真似せんでも、非農家の方は日本の食材買わなくていいですよ。海外の安い食材輸入してなさい。毒が入ってようが何だろうが安いに越したことはないんだから、喜んで買って食ってりゃいいじゃない。
 というより、兼業農家の実勢なんて「親戚に食わせる分だけ確保してれば十分」なんだから。小遣い稼ぎ以上のレベルで売る気も無ければ売る体力も無いわけですから。
 個人ベースでやってるような零細農家なんか無視して、1軒あたり50町歩クラスでやってる東北・北陸・北海道の大農家さんと仲良くしてればいいじゃない。

 と思いました。食い物平気で残す馬鹿に食わせる飯は無いんで、勝手にさらせとしか思いません。どーぞご勝手に。

投稿: 渡辺裕 | 2007.10.28 16:14

>兼業農家の実勢なんて「親戚に食わせる分だけ確保してれば十分」なんだから。

だから、さっさと専業農家に土地をゆずれってことですよ。

だいたい、兼業農家が豊かな生活ができるようになったのは、農業以外の産業が大もうけした結果ですよ。

投稿: ほるほる | 2007.10.28 21:53

農業以外の産業が貿易で為替水準を変えてしまったので国内農業がペイせず、零細農家はやむを得ず現金収入を求めて働きに出ることになり、ムラは雇用を確保するために産業施設を誘致し、ますます兼業比率が高まる、この悪循環。
兼業農家として残っているところは機械を入れて大規模経営できないところだから、そんな兼業農家が放棄した農地はほとんど雑草育成にしか使われてませんね。そんな兼業農家でも地域の用水路や道の整備には人手を出すので専業農家もその恩恵にあずかっているわけだけど。
日本国が大正~昭和にかけて国民の食料確保のために満州や朝鮮や台湾に出て行ったことはすっかり忘れて「安いんだから輸入したらいいじゃん」ってのは、自国の防衛を他国の軍に頼るのと同じような考え方なんですよ。
いつまでも自分の国の都合だけでおいしいところだけをつまみ食いすることはできないもので、やがては食料を輸入するために国外の戦地に(他国の覇権戦争のために)兵力を送り出すことになるのでしょう。

投稿: 国破れて山河あり | 2007.10.29 06:54

>だから、さっさと専業農家に土地をゆずれってことですよ。

 ウチはとっくにやってるんですけどね。自分ちで入用な2反くらいは確保して、あとはお任せ。農業法人でも夢見て帰農家でも、それぞれの状況に応じて必要な分だけ、いつでも破格値で貸し出し中で御座いますよ。大規模営農やるには不適な土地をウチで面倒見てやり易~い土地を優先的に提供してるんですけどなぁ。

 集約して大規模運営がいいと言ってもモノには限度があるんでね。やる気(笑)出して頑張ってるつもりがいつの間にやら自転車操業なんて珍しくもなんともないですから、いざとなったときのスーパーサブ・リザーバー的な存在って必要なんですけど。大規模にやってるから生き残れるってもんでも無いのよねえ。

>兼業農家が放棄した農地はほとんど雑草育成にしか使われてませんね。
>地域の用水路や道の整備には人手を出すので専業農家もその恩恵にあずかっているわけだけど。

↑このへんも、毎年のように合力しておりますなあ。

 合理化や大規模営農にも限度があるし、グローバル化とそれに伴う価格水準の下落で農村部が疲弊するのは世界各国共通ですからなあ。それで都市部がどんだけ豊かかってーと、疑問も多く残りますしねえ。
 どうなんでしょね?

 まぁ、机上の理屈ばっかりで実勢知らない人が「こうすれば間違いないんだなんでやらないの?」って言ってるだけのような気もしますんで。あまり期待せず、ということで。

投稿: 渡辺裕 | 2007.10.29 07:14

失礼します。
農業関係の仕事をしていますので、
私の対応している現場の感覚からコメントさせて頂きます。
集積による大規模化、売る努力、コストカット等稲作農家の方は頑張っておられます。
しかしこれだけ米価が下がると
経営者の努力だけでは
如何ともし難いのが現状であると思います。
消費者の皆さんのご理解を頂いて
最低価格保障等でどこかで下支えしなくては
やっていけないように思います。
失礼しました。

投稿: 波多野 | 2007.10.29 22:30

なぜわざわざ高いお金を出して米を買わなきゃならんのか理解できない。
安くてよいものを世界中から買うほうが国民のためになる。
売れない米を政府が買い入れるから、それに甘えた農家が作ってしまうという悪循環。これをきっぱり切ってすべて自由競争にすればよい。
食料自給率とか意味のない概念を持ち出して国内農業を擁護するのはもううんざりだ。石油も自給できないのに農業なんかできるはずがない。外国と仲良くして貿易をするしか日本の生きる道はないのである。

投稿: 常識人 | 2007.10.30 18:23

農水省は厚労省に吸収させればいいと思うよ。

投稿: 杜甫は食い過ぎで死んだのよ | 2007.10.30 19:57

 目先の小銭で、そこまで落ちぶれるか。情けなや。

投稿: 渡辺裕 | 2007.10.31 00:55

>>ほるほる
>だから、さっさと専業農家に土地をゆずれってことですよ。

 寝言は寝て言えハゲ。実勢知ってて言ってんの?
 何十年前の概念論かは知らんけど、脳みそバージョンアップしないで十年一日のようにお題目唱えてるのは、俺かあんたか、どっちなんだ?

 俺たちが助けてやってんだって言い張るくらいなら、今後一切助けて頂かなくて結構ですから、外国の食料品を勝手に購入して勝手に食って勝手に長生きしてください。

 どうぞお大事に。

投稿: 渡辺裕 | 2007.10.31 19:01

最低価格保障なんて馬鹿な政策打ったら、消費者はますます米から離れるだけだけどな。結局、農業厨は近視眼的な小銭稼ぎしか眼中にない訳で。

日本の農業なんて所詮は衰退産業なんだから、とっととリアロケートすればいいものを。嘆息。

投稿: おいおい | 2007.10.31 22:02

>外国の食料品

と比べて、日本の食料品は安くて安全でおいしいですよね。


とか言ってみるwww

投稿: シロオニ | 2007.11.01 16:04

>おいおいさん
農業厨がどのような人間を指すのかわかりませんが、
現場で生活をかけて農業している農家を前にして
嘆息だけしているわけにはいかないのですよ。
所詮は衰退産業というのは分かってはいますけど。

投稿: 波多野 | 2007.11.02 10:47

 産業馬鹿が湧いてるみたいなんで一言言っとくけど、リアロケート(←プギャー)ってーのは、どこもやってんの。とくに兼業農家は率先してやってる。その結果が
>兼業農家の実勢なんて「親戚に食わせる分だけ確保してれば十分」なんだから。
↑コレなんだっつうの。それまでの経営規模が大きすぎて収益的にも依存しきってて、今さらリアロケートできない大規模専業農家ですら価格破壊現象で窮地に立ってるから、波多野さんみたいな人が
>現場で生活をかけて農業している農家を前にして
>嘆息だけしているわけにはいかないのですよ。
>所詮は衰退産業というのは分かってはいますけど。
↑こう言ってるわけじゃんか。その点で私はリアロケート(←プギャー)なんかとっくに済ませてるから「外国のご飯たくさん食えば?」って言ってるわけだ。

 ただし、最近の原油価格高騰問題もそうだし世界的な穀物不足もそうなんだけど、食い物ってのは別に余ってるわけじゃないんだよ。ましてや「市場経済」に依存すれば、余らせるわけにはいかない。キャベツ農家がキャベツ踏み潰したりするでしょが。そらぁ市場経済である以上、当然なんですけど。このエントリーの次では魚の話なんかやってるけど、魚だって近海ものだけではやってけないから世界各地に獲りに行って、日本獲りすぎ! って漁獲規制されてるだろうに。

 なんでもかんでも市場経済にばっかり依存して、たまたまそういう体制の中で有利か上位かキープ(?)して、お前ら俺様たちが稼いで生活費確保してやってるんだから俺たちの都合のいいように働けや(平たく言えば高性能低価格を追及しろやってことなんだろうけど)って言ったところで「出来ません諦めてください」って言われたら、どーなるんだか分かってる? って感じなんですが。

 差し当たって外国産の安くて旨いの食えば? としか言いようが無いし、それで手詰まりなら都市住民同士で殺し合いでも奪い合いでもやって、適切な消費人口調整やってちょうよ、としか言えんのね。昔みたいに大量生産大量消費が美徳じゃないんだから。
 なもんで、もうお前ら知らんから好きにやってちょーだい、としか言いません。グルメ万歳・爆食上等・ギャル曽根最高で、好きなように生きてくださいな。

 おりゃもぅ10年以上前から「降りた」状態で、ずーっと世間様眺めてるわけですけど。それで何年経っても状況変わらんわけですから、むしろリアロケートしなきゃならんのは「今や都市部」なんだっつう。そういう現実も弁えなさいなってことかな。

投稿: 渡辺裕 | 2007.11.03 12:32

 都市部の下町なんか小汚い町屋ばっかりで美観も悪いし衛生環境も住民民度もさぞや悪かろうから、そっち大掃除すれば? 町っ子はコンクリ長屋にでも住んでればいいのよ。都市計画も何も立てないで野放図に林立して、そっちのほうが日本の効率化を妨げてる要因としては大きいっつうのに、まだ農村苛めやって溜飲下げようとしてるんだから、どうしょうもないよね。

投稿: 渡辺裕 | 2007.11.03 12:40

世界的に不安定な気候が増えている中、明日の天気予報も外れる事が多い中、食糧等、アリとキリギリスのような様相を呈してしまうかもしれない、今→未来、の状況がとても不安です。脅迫観念で済めばよいのですが。次世代に伝えるものがなくならないように、誰もがその責任を請け負っていることを忘れてはいけないと思います。

投稿: 米屋 | 2007.11.08 17:45

安い食材を買えといっている人がいるけど、食料自給率についてはどう考えているのかな?
中南米のどっかの国では、国策で米をすべてアメリカからの輸入に変更して米作がなくなったあと、食料価格高騰で米の輸入が出来なくなって、たいへんな状況になっていると聞いています。
日本もそうすれば良いということでしょうか?
欧米では農業に多額の補助金を出しているので安く上がっているんですよ。
日本もそうすべきだと思います。
大量に生産して米価を下げつつ余った米は備蓄して、2年以上過ぎた米から家畜用に流せば問題ないんじゃないかと。
他にも、食料が不足している国に米を支援と言う形で外交のカードとしても使えますよね。
太平洋の島々は穀物が不足するでしょうから、この方法で日本の経済圏にとりこめるかも。
太平洋の島なんてと思う人がいるかもしれませんが、米の代償として海産資源や海底地下資源を確保できるなら、日本にとってはかなり有利に働くでしょう。

投稿: KIM | 2009.03.27 13:21

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受信: 2007.11.18 23:01

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