« 米国の兵器産業が対外的に弱体化しているらしい | トップページ | 遠藤武彦農水相の辞任についてぼんやりと »

2007.09.02

アフガニスタンのケシ生産と貧困の関係は薄い

 先日ラジオで、アフガニスタンとケシ栽培について、貧困が重要な要因ではないという話を聞いて、え、そうなの?と疑問に思った。
 というのは、アフガニスタンでは治安が悪化し、産業が衰退し、それが貧困をもたらし、それゆえに、国際的に問題となるアヘン生産の元になるケシ栽培も生きるためにはしかたなくしていると、なんとなく思っていたのだ。なんとなくではなく、例えば、JVCの「混迷のアフガニスタン 谷山博史報告会  : JVC - アフガニスタンの復興と治安課題を考える (イベント報告:議事録要約)」(参照)では次のように今年付で語られていた。


 「2007年2月12日、文京シビックセンター(文京区)にて「アフガニスタンを知る」と題した報告会を開催しました。

 そこでは、タリバンの攻撃活動に触れこう説明されている。

 そのような攻撃活動には「お金」が必要ですが、資源の乏しいかつ貧困で生活が圧迫されているアフガニスタンでは、お金になるのは「ケシ栽培」、つまり「アヘン」の原料です。国際的には概ね非合法的なケシの栽培とアヘンの密売により得た闇の収入源で、タリバンの攻撃が行なわれているということです。資金源を断つためには「ケシ栽培」を撲滅することが先決ですが、ケシに匹敵する収入源となる代替作物が見当たらないのが現状であり、またケシ栽培が盛んな東・南・北の地域では治安が悪化しているため、支援国(イギリス)による撲滅運動も遅々として進まない難しい状況を強いられています。

 つまり、やっぱり貧困が原因という主張がある。
 しかしそうではないとするラジオの話が気になって、ニュースまわりを調べてみると、AFPのニュース”アフガニスタンのアヘン生産量、前年比34%増”(参照)があった。

【8月28日 AFP】アフガニスタンにおける2007年のアヘン生産量が前年比34%増となり、アヘンの供給を同国がほぼ独占していることが27日、国連(UN)の発表で明らかになった。


 「2007 Annual Opium Survey」では、アフガニスタンが世界のアヘン市場の93%を占め、「実質的にアヘンの供給を独占している」との事実が示されている。

 それはすごいなと読み進めるが、「なぜ」についての言及はなく、唐突にこう締められている。

 UNODCは、タリバンがアヘン取引で得た資金を武器購入費用などにあてており、ケシ栽培はタリバンと「密接な関連」を有すると述べている。

 タリバンがどう関係しているかはなぜかこのニュースではわからない。なんか変な感じがしたので、オリジナルソース、UNODC(国連薬物犯罪事務所)の文書を当たってみた。
 すると、”Afghanistan Opium Survey 2007 Executive Summary”(参照PDF)という公式文書があり、関連事項を読んでいくと、こう記載されている。

Insurgency, greed and corruption

This North-South divide highlights three new circumstances. First, opium cultivation in Afghanistan is no longer associated with poverty . quite the opposite.
(南北の分断は3つの新状況を際立たせた。第一に、アフガニスタンでのアヘン生産はもやは貧困には関連付けられない。事態は、逆である。

Hilmand, Kandahar and three other opium-producing provinces in the south are the
richest and most fertile, in the past the breadbasket of the nation and a main source of earnings. They have now opted for illicit opium on an unprecedented scale (5,744tons), while the much poorer northern region is abandoning the poppy crops.
(ヘルマンド、カンダハルおよび南部のその他の3つのアヘン生産地区はもっとも、裕福であり、かつもっとも肥沃な土地であり、かつては国家の穀倉地帯であり、収入源でもあった。今や、彼らは、前代未聞のスケールで不正なアヘンを選択しているが、他方より貧困である北部地域においてケシ栽培は放棄されている。)


 けっこうはっきり言っている。やはり、貧困問題ではない。
 こうしたUNODCの報告になんらかの偏向があるのかもしれないが、そこまで疑うのも妥当ではないだろう。いずれにせよ、事態はそういうこと、つまり、現在のアフガニスタンのアヘン生産は貧困の問題ではないのだろう。
 なんとなく、この世界の諸悪の原因は悪政による貧困であり、善政があれば貧困なくなりそしてすべてが薔薇色に解決されるみたいな感じをついデフォで持ってしまいがちだが、どうやら、この事例でもそうではない。
 アフガニスタンの現状と貧困とケシ生産についていえば、一義に悪いのは通称タリバンであり、次にそのマーケットの存在なのだろう。

|

« 米国の兵器産業が対外的に弱体化しているらしい | トップページ | 遠藤武彦農水相の辞任についてぼんやりと »

「時事」カテゴリの記事

コメント

先日はありがとうございました。

なるほど。とても参考になりました。
貧困がなくなっても、人間が行う悪は残り、やはり悪いことを悪いこととしてなくしていかなければどうしようもないというところでしょうか。

投稿: fussyvet | 2007.09.02 21:25

以前、NHKでヘロイン精製工場をアメリカ兵が壊してまわるが、使用する部材(ドラムカン等)がどこでも調達できるので、壊してもすぐに新しい工場が出来てしまうというようなニュースを見ました。これにタリバンが関与しているとの内容でしたが、そのヘロインの消費国は、テロ撲滅を掲げる先進国が大部分と推測します。テロの資金源はテロ撲滅を推進する国々が提供しているという事になりそうですね。

投稿: haha | 2007.09.03 16:44

ご都合主義で,かつ微妙な話と言ってしまえば身も蓋もありませんが,記憶では,かつてのタリバン支配下でのアフガニスタンではケシ栽培は禁じられていたように報道されていたと思います.タリバンが半製品のアヘンを集めて焼却処分にしている映像もあったと思います.これらは北部軍閥の資金源を断つ目的もあったのでしょうが,どういうことだったのでしょうか.finalventさんは中近東や中央アジアにお詳しいようなので,この記事は意外でした.テロ対策支援法(でしたっけ)の問題もありますので,アフガニスタンで今本当は何が起きているのかを,9.11 以前から初めて確認しておく必要があるのではないでしょうか.

投稿: matheux-naif | 2007.09.06 08:37

タリバンがケシ栽培からの利益で継戦能力を維持しているならば、衛星や偵察機を飛ばしてケシ畑を調査し、枯らすような攻撃をすればよいのに何故か行っている様子がない。何故でしょう?
>アフガニスタンの現状と貧困とケシ生産についていえば、一義に悪いのは通称タリバンであり、次にそのマーケットの存在なのだろう。
これは拙論の気味があるかと思います。


☆NATO not to fight poppy cultivation (イラン「プレスTV」)
NATOおよびISAF(国際治安支援部隊)が「アフガニスタンのケシ栽培根絶には協力しない」と表明。
http://www.presstv.com/Detail.aspx?id=22897

☆US, UK hand poppy seeds to Afghans (イラン「プレスTV」)
米英軍が、ケシ栽培をさせるために南部アフガニスタンの農民たちにケシの実を配っている、とアフガニスタンNational Congress Partyの議員であるBashir Bizhan氏が爆弾証言!
http://www.presstv.com/Detail.aspx?id=21728

許すな!憲法改悪・市民連絡会主催「私と憲法」市民憲法講座
第24回 国際協力は9条のこころで (要旨)
伊勢﨑賢治(東京外国語大学大学院教授)
http://www.annie.ne.jp/~kenpou/news2/ns75.html#koza
■米国の戦争の中での武装解除という制約
>その軍閥は代々その地域の庄屋さんみたいな大変裕福な家系で地元の大地主です。のどかな農村地帯で、畑がいっぱいあるが、奇妙なことに気づかされる。なんか畑がおかしい。よくみると、米も小麦も食い物らしきものが全然植わっていない。ケシとハッシシです。これらを密輸して食料をパキスタンから持ってくればこの農村地帯は自分たちで食料生産する必要がないわけです。もちろんこれは非合法ですが、中央集権が及ばないところで、これがまさに軍閥が支配する王国です。

投稿: ゴンベイ | 2007.09.15 18:24

パキスタン在住30年、現地でNGO活動をするオバハンからの気まぐれブログ
カルザイ(アフガン大統領)の論法
http://blogs.yahoo.co.jp/kimagure_obahan/19128897.html

さて、アフガンのカルザイ大統領が、アフガン国内で急増するアヘンの生産について、「国際社会を非難した」との報道には、唖然としているオバハンだ。
「国際社会はアフガンの麻薬に対抗する努力を、一段と調整しなければならないと強調した」と言い、「アフガン政府軍が支配を強めている州ではケシ栽培が減少、またはゼロになっている」いうが… カルザイ自身もアヘン生産で儲けていると言われている、その張本人が言うセリフかい!! また、オバハンが知っている限りでは、政府軍の支配地でもケシ栽培はイッパイあるからなぁ~

投稿: ゴンベイ | 2007.09.23 01:30

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アフガニスタンのケシ生産と貧困の関係は薄い:

» [中東]アフガンで麻薬生産が拡大していることについて、国際社会が結束した対策を打ち出せていないと批判 [navi-area26-10の日記]
英フィナンシャル・タイムズ紙ヘッドライン(30日付)より http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070830-00000336-reu-int ★アフガニスタンのカルザイ大統領、同国で麻薬生産が拡大していることについて、国際社会が結束した対策を打ち出せていないと批判。[カブール、ロ... [続きを読む]

受信: 2007.09.03 07:15

» アフガニスタンの現状に関するメモ [forrestalの回顧録]
■まず、お知らせです。左のリンク欄を見て頂ければ、わかると思うのですが、「当ブロ [続きを読む]

受信: 2007.10.19 02:25

« 米国の兵器産業が対外的に弱体化しているらしい | トップページ | 遠藤武彦農水相の辞任についてぼんやりと »