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2007.08.27

[書評]2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?(西村博之)

 書名のパクリ元になっている「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?(山田真哉)」(参照)では、表題の問い掛けが出版社側の企画上のフェイクであり、内容は単なる会計学の初歩のお話だけというのと際立って異なり、「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?(西村博之)」(参照)では、表題の問い掛けに真摯に答える内容になっているのだが、ではその答えはというと、収入モデルとしての広告収入がしっかりしているから潰れないとのことだ。なるほどそうかと納得させられる、ずばりの回答である、ということで、ときおり噂されている、社会的要因及び法的要因によっては潰されないということが縷々主張され、偏見的にも思える意見、例えば、アマゾン読者評にも見られるが、


知りたいのは・・・, 2007/8/21
By 東十条 (東京都赤羽) - レビューをすべて見る

こんな内容じゃなく、もっと2ちゃんねるが実際やっているどす黒い部分を書いて欲しいです。例えば、アクセス数を上げるためにサクラを使っての誹謗中傷の書き込みとか、個人情報晒しとか、掲示板を閲覧している人のPCからの情報抜きとか・・・。
買ってまで読む価値はないような気がします。


 といった感想を読後持つ人は少ないだろう。
cover
2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?
西村博之
 むしろ「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という実態を著者山田真哉が知らなかったのかそこは捨象してよいとしたか、「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」についても広告モデルの実態と来歴については踏み込まれていないが、重要なのはやはり収益ということになる。
 本の仕立てとしては語り本として口述されたものを別途編集者が構成したものらしく、私の世代に近い人でないと使わない表現などもあるもののそれによる違和感は気にならず、むしろすっきりと主張がまとまっている印象と、抜群の企画屋さんにある、心地よく催眠術にかかるような語りの印象とに統合され、つい編集上のミスだろうと思われる些細なツッコミも忘れて読み進めることができる。たとえば。

『ウェブ進化論』の梅田さんに対して、カリスマプログラマーである小飼弾さんが、ブログ上で、「それで梅田さんは、『はてな』でどんなコードを書いたの?」という反論をしていましたが。僕もそれだと思うのです。

 だが、元ネタはおそらく404 Blog Not Foundのエントリ「君たちの感動的なお言葉」(参照)ではないかと思われるが、ここでは、

梅田望夫テンプレートは以上。次。

>>  [あとで消す] 梅田望夫さんの感動的なお言葉
>> ところで、お前はてなのコードどんだけ書いたの?

*.hatena.ne.jpのコードなら一行も書いてないだろう。しかお前にとってのコードってそれだけか?ちいせえなあ。

梅田望夫は、株式会社 はてなのコードを書いているんだよ。それがトリビアルな仕事だと思うか?オレは今も両方のコードともチンタラ取り組んでるけど、両方ともガチで取り組むのは2年が限度だったぜ。


 とあるように、「どんなコードを書いたの?」疑問を発したのは、blog.bulkneets.netのブロガーさんで、小飼弾さんはむしろ逆の意見を述べているように普通は読めるので、おそらくこの部分は口述を取り違えた編集上のミスがあったのだろう。もっとも、本書では小飼弾さん本人が対談で登場していることから、こうした編集上の手違いは些細なことになっているだろうし、実際こうした諸点についていちいち気にする必要はない。
 予言的に読める示唆が多いのも本書の特徴かもしれない。たとえば、マイクロソフトについて触れた部分だが。

 しかし、マイクロソフトは、ビスタが売れなくなったとしても問題がないと考えているのだと思われます。
 それは、マイクロソフトはOSではなく、ビジネスソフトのオフィスで儲かっている企業だからです。


 マイクロソフトのオフィスが企業ユーザーに使われなくなる心配は、僕はないと考えています。新しくビジネスソフトが誕生したとしても、オフィスをビジネスツールの中心とするために一太郎を潰したときと同様、マイクロソフトは実力行使に出るでしょう。

 本書では、グーグルドックスについては触れているものの、無料で配布されているオープンオフィスについては言及していないが、それがマイクロソフト・オフィス2007に匹敵する機能を装備したときは、消される運命にあるのかもしれないなという示唆を受けた。
 もっとも、アマゾン評にある、

暇つぶしにはなるけど, 2007/7/8
By ハスキルfan (愛知県) - レビューをすべて見る

今抱えている裁判を考えると、やはりいずれ潰れるような気がします。
なぜ潰れないかなど書いていますが、この著書は最後になるのでは・・・

10年後に読み直してみたい本です。


 という点についての予言的な要素は本書にはない。十分に答えられたからだろう。ただ、GMOについての示唆深い言及などを含めて、ドッグイヤーのIT業界のことだから、10年経たずして読み返す日もあるかもしれない。
 最後にまったくどうでもいいことだが、ジャーナリスト佐々木俊尚さんと著者との対談の写真が一点含まれていて、その和やかな会食の雰囲気のなかに、ジャーナリストとして腹の据わったようすが伺われ微笑ましかった。

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コメント

つか2ちゃんねる発の炎上を最近とんと見なくなった。
潰れることもないけど影響力もない、という意味では実質潰れてるとも言えなくもないのだけど。

投稿: cyberbob:-) | 2007.08.28 09:05

>>cyberbob
いや今も現在進行形でお祭り(炎上)がありますよ。
ただ2chという場の存在感は以前に比べ薄れてるかもしれませんね。
2chスレまとめサイト(finalvent氏がはてなでもよく取り上げてるような)やJ-Castなど、ネットイナゴ誘導機能を持つサイトが増えてるからでしょうかねぇ?

投稿:   | 2007.08.29 09:40

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