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2007.08.03

米国の葛の話

 先日VOAを聞いてたら「カッズー(Kudzu)」の話があり、聞いていると「葛」のことらしい。日本でよく見かける、つる性の多年草のクズだ。その根は葛粉や葛根湯のもとになる。葛は花が美しい。これから葛の花の季節だ。

photo
葛花
by Wikipedia
 VOAに書き下したスクリプトがあるか調べてみたらあった。”VOA News - Goats Employed in Fight Against Kudzu in US South”(参照)である。初心者向け英語なので、一部歌詞以外は読みやすい。話のポイントは表題にあるように、葛を食う山羊だ。米国南部で葛がはびこって困っているので、山羊に食わせて退治しようというのだ。
 私は小学生ころから自然観察小僧だったので葛が米国を困らしている帰化植物だとは知っていたし、以前「極東ブログ: セイタカアワダチソウ」(参照)にも書いたことがあるのだが、貿易の過程で自然に繁茂したのだろとなんとなく思っていた。そうではなかった。

The Japanese brought it to the United States in eighteen seventy-six. It grew well in the warm, wet climate of the southeastern states. People planted kudzu around their homes to hide things like fences.
(葛を日本人が米国に持ち込んだのは1876年である。葛は米国南部の温暖で湿潤した気候で繁茂した。米国民は、家を隠すフェンスのように葛を植えたものだった。)

In the nineteen thirties, during the Great Depression, the government put people to work planting kudzu for soil protection. Between nineteen thirty-five and the nineteen fifties, the government even paid farmers to plant it. The kudzu also provided cattle feed.
(大恐慌の1930年代には、米政府は土壌保護のために国民に葛を植えさせもした。1935年から1950年代の間、米政府は農家に葛植え付けの助成金も出した。葛は家畜の飼料にもなった。)


 米国が葛を積極的に植えていた時期があったことはうかつにも知らなかったので、ウィキペディアの同項目参照したところ、きちんと言及があった(参照)。

北アメリカにも1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾り、さらには緑化・土壌流失防止用として推奨され一時は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたため、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげ、有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。なお、葛の英語名は日本語から「クズ[kudzu]」である。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。

 なるほど「フィラデルフィアの独立百年祭博覧会」に意図的に持ち込まれたものか。ちなみに1876年は明治9年で萩の乱(参照)のあった年だ。野口英世が生まれた年でもある。
 「フィラデルフィアの独立百年祭」が少し気になるのでついで調べてみるのだが、まずフィラデルフィア(参照)。

1682年、クエーカー教徒のウイリアム・ペンが同志とアメリカに渡来、この地に居住区を建設したのが市の起源。ペンはこの地を古代ギリシア語で「兄弟愛の市」を意味する(Φιλαδ?λφεια、フィロス=愛、アデルフォス=兄弟、ア=都市名につく語尾形)「フィラデルフィア」と命名した。

18世紀を通じてフィラデルフィアは北米最大の都市で、アメリカの独立前にはイギリス第二位の都市だった。独立戦争時、州議事堂(現独立記念館)で大陸会議や独立宣言の起草が行われた。また1790年に合衆国の首都がニューヨーク市からフィラデルフィアに移ってくると、新都ワシントン特別区の建設が一段落する1800年までの10年間合衆国連邦政府の首都だった。


 1876で百年祭だから起源は1776年だろうと推測するだが、フィラデルフィアでは照合しない。まあ、当然といえば当然で、これは「フィラデルフィアの独立」ではなく、米国の独立なので1776年なのだ。ついでに、英語版ウィキペディア”Centennial Exposition”(参照)に独立百年祭博覧会の解説がある。

The Centennial International Exhibition of 1876, the first official world's fair in the United States, was held in Philadelphia, Pennsylvania, to celebrate the 100th anniversary of the signing of the Declaration of Independence in Philadelphia. It was officially the International Exhibition of Arts, Manufactures and Products of the Soil and Mine.
(1876年の国際百年祭は、米国初の世界祭であり、フィラデルフィアとペンシルバニアで開催され、フィラデルフィアでの独立宣言署名の百年記念であった。公式には、大地と鉱山の技術・生産の万国博である。)

 話をVOAの葛に戻すと、米国50年代以降、葛は困った雑草ということになり、駆除の対象となるのだが、葛にしてみると米国南部は住み心地がよいようだ。なのでなかなか駆除できない。そこで山羊の登場となる、ということで、VOAでは葛駆除山羊のカントリーソングが流れる。関連で調べていくと、”4/3/2007 - Kudzu Goats And Friends Getting To Work On Missionary Ridge - Breaking News - Chattanoogan.com”(参照)というニュースもあり、山羊以外にラマ(参照)も使われているらしい。
 VOAでの葛の話の結びでは、葛には今でも愛好家もいるとなっている。少し調べると、”The Amazing Story of Kudzu”(参照)に葛工芸の話などもあった。日本では葛工芸って聞かないなと思ったが、これも調べてみるとあるようだ。

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コメント

ニューディール政策の治水工事の際に、土手の強化のために葛を植えたという話を聞いたことがあります。

同時期に渡米したマメコガネがJapanese beetleとして駆除対象となっています。

外来種の問題は頭が痛いですね。

投稿: | 2007.08.03 17:42

はじめまして
英文対訳を勉強代わりに時々読んでます。
すでに誰かが指摘してるかもしれませんが、間違いと思うところが。
“・・・100th anniversary of the signing of the Declaration of Independence ・・・”のところを『・・・フィラデルフィアでの独立宣言を歌う百年記念・・・』としていますが、“singing(歌う)”ではなく『サイン』ですよね。

投稿: ぼんびか | 2007.08.05 09:44

ぼんびかさん、誤訳のご指摘ありがとうございました。修正しました。

投稿: finalvent | 2007.08.07 19:57

いつも興味深い内容ありがとうございます
葛は含有Nが多く、わりかし家畜の飼料として質が良さげなので(URL参照)、積極的に飼料として利用できたらおいしいかも、と思いました

刈ってもすぐ生えるから、被食圧にもつよそうですし

投稿: baque | 2007.08.08 09:00

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