米国がなぜか今時分ヘッジファンド規制に頑張っているのに
新潟県中越沖地震被災者の皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。
今日のFujiSankei Business i.の記事”米議会でヘッジファンド包囲網 税金倍増・監視強化へ法案”(参照)が気になるので、思うところを取りあえず書いておこう。話の行きがかり上、また中国への批判のようになるかもしれないが、タメに中国バッシングをしたいという意図はない。なんとなく日本のメディアにとって中国問題はタブー化しているのかなとも少し思う。ブログでもタブー化してくるのだろうか。
同記事の話は表題からもわかるが、冒頭を引用しよう。このこと自体はまあそんなものかなくらいの話ではあるが。
日本企業を標的にM&A(企業の合併・買収)を繰り返す米大手ヘッジファンドが、米議会から激しい突き上げを受けている。上下両院は、ヘッジファンドの活動が金融市場の安定を阻害しかねないなどとして、監視強化や大幅な増税に向けた法案づくりに着手した。実現すればヘッジファンドには大きな痛手となり、日本での活動にも影響しそうだ。この一方、ロンドン証券取引所がヘッジファンド誘致計画を打ち出し、金融監督当局からは「ヘッジファンドが海外に逃げ出しかねない」と懸念の声が上がっている。
記事としては日本の経済で「ヘッジファンドが海外に逃げ出しかねない」と懸念ということなのだが、ちょっと待て。なんで米国が監視強化や大幅な増税に向けた法案づくりをしているのかということと、日本では規制はどうよ、というのが先に問われるべきではないのか。
米国議会はなぜヘッジファンドを批判しているのか。
野党、民主党内では、ヘッジファンドの経営陣らが投資家の利益を搾取しているとの批判が高まっている。現在、ヘッジファンドの利益への課税は株式譲渡益税と同じ15%となっているが、これを一般企業の法人税並みの35%に引き上げる案を軸に検討が進む見通しだ。報道によると、ボーカス財政委員長(民主)は公聴会後「増税には十分な支持が得られると思う」と述べ、実現に自信を示した。
この記事の説明だと「投資家の利益を搾取している」からいけなのだということなのだが、じゃ、日本はどうなの? というのと、なんで民主党が頑張っているのか。そのあたりがよくわからない。
ところで冒頭私が気になったのはそこではない。こっちのほうだ。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)などによると、上院財政委員会など3委員会が先週、金融監督当局の代表らを呼び、合同公聴会を開催。ニューヨーク市場で6月下旬に株式を公開したブラックストーン・グループや、同社に続き、株式公開を計画しているコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、オク・ジフ・キャピタル、カーライル・グループ、アポロ・マネジメントなど大手に対する増税案を話し合った。
それって、基本的にブラックストーン・グループが筆頭の問題ということなのではないか、というあたりで、黒石って、あれだよな。あれだ、先月21日付けロイター”米上院議員、中国によるブラックストーン出資に懸念表明”(参照)。
米上院のジム・ウェブ議員(民主党、バージニア州)は20日、米プライベートエクイティ大手ブラックストーン・グループ[BG.UL]が40億ドル超規模の新規株式公開(IPO)を控えるなか、中国によるブラックストーンへの出資が「国家安全保障」問題をもたらすとして、これを検討するよう米当局者らに求めた。
ブラックストーンの中国マネーの背後の動きが気になる米民主党ということなのだろうが、全体の構図としては、中国マネーによるヘッジファンドへの警戒が米国を覆い出しているということではないのか。
このあたりは先月23日付け産経新聞”潤沢な外資…中露が運営 米「国家ファンド」警戒”(参照)がわかりやすい。
輸出増で潤沢な外貨準備を抱えた中国やロシアが運営する「国家ファンド」に対し米政府が初めて懸念を表明した。22日に上場した米最大投資ファンド、ブラックストーン・グループに中国が30億ドルを出資するなど、外国政府がファンドを通じて米企業を買収することを恐れ、米政府は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行による国家ファンドの監視や規制の検討を求めている。
そういえば先日のヒルトン買収も黒石でした。4日付けCNN”ヒルトン・ホテルズ、投資会社に身売り”(参照)より。
米投資会社ブラックストーン・グループは3日、ホテルチェーンを展開するヒルトン・ホテルズを、現金約260億ドルで買収すると発表した。
ブラックストーンは先月、新規株式公開(IPO)で41億ドルを調達した。今後はヒルトンのブランド力を生かし、海外ホテル事業を強化していく。
この買収ってなんかメリットがあるとも思えないし、もともとヒルトンなんかただの格調のブランドだけなのに、中国様の思惑があったのでしょうか。って、妄想?
黒石はかなり目立つし、たぶんヒルトンとかに手を出すのもまずかったのではないかなとちと思うが、目立たない部分でも中国マネーはこれまで動いていたのではないか。そのあたりどうなんでしょうね。どうって、日本がということなんだけど、という疑問が参院選の騒ぎのなかでフェードアウトしていくのであった。
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コメント
全然なんの根拠もありませんが、青木建設のホテル買収を思い出しました。
投稿: ひでき | 2007.07.18 17:50
基本的に現在の米政治は大統領選を目指してるので、庶民の味方をアピールするため、設けすぎてるファンドを何とかしようって意味合いが強いと思う。
でも、どの候補もファンドから寄付金をいっぱい貰ってるので、
それなりの所で妥協するんじゃないでしょうか。
むしろ、中国への牽制としてはIMFの為替政策監視の新基準で為替操作国への認定が拡大したことの方が強いかと。
投稿: うps | 2007.07.20 08:03