« モラルの低い人を傍観する時 | トップページ | [書評]催眠誘導の極意(林貞年) »

2007.06.21

ガザ状況メモ

 ガザの状況だがひどいことになったなという率直な感想と、事態がよく飲み込めないこともあって、まとまったことが書けそうにもないが、「極東ブログ: パレスチナ自治政府アッバス首相辞任はしかたがない」(参照)、「極東ブログ: スーハ・アラファト(Suha Arafat)」(参照)、「極東ブログ: 国連がハマスに資金供与の疑惑?」(参照)、「極東ブログ: シャロン後メモ」(参照)、「極東ブログ: 軍服もどき」(参照)といったエントリの延長になにかメモを書いておくべきだろう。
 現状について、基礎的な解説は省略したい。本当はそこをきちんと書くべきかもしれないのだが。
 さて、この問題についての私の基本的な視点だが、ハマスをできるだけパレスチナの政治プロセスのなかに取り込んで和平実現に向けていけばいいし、イスラエルもその対応ができないものでもないだろう、ということだった。長期的にはなんとかそれなりの和平の線が見えてくるだろうとも思っていた。そんな自分なりの理想もあってか甘い読みといえばそうだが、可能なら平和であってくれよと思っていた。まあ、現状ではダメでしたね。
 現状では、ガザをハマスが占有したとも言えるし、アッバス側ファタハと決裂を決定的にしたとも言える。流血の惨事が続き悲劇は悲劇だ。これで「パレスチナ国家」という看板の夢が遠のくと言えないこともない。
 が、すでに米ライス国務長官もつぶやいているように、ガザにハマスを押し込んだのだから、残りのファタハ=パレスチナ国家で、いわゆるパレスチナ問題がその線上で解決しないわけでもない、という見方もできないわけでもない(ギャグみたいな文章になったが)。また振り返ると、ここに至る一連の動きはハマスの欧米による追い込めであったと読めないわけでもない。
 ただ、ではガザはどうなるの? というあたりで、シャロンがガザを捨てたとき、実は彼の脳裏には今日の日の予感があったのかもしれないなと私は少し思って背筋が寒くなった。そうだったのだろうか。正直私はそんな想定はしていなかった。
 国内の大手紙の社説を参考までに振り返る。
 朝日新聞社説”パレスチナ―分裂より和解への努力を”(参照)はなにか意図的に焦点がずれた印象がある。というか、船橋洋一的なぼよよんとした話になっている。それでも論点的には欧米批判ということだろうか。欧米のアッバス支持路線は危険だと言いたいようだ。


 今回の危機で、米欧はアッバス議長支持を打ち出し、制裁を解除して支援再開を表明した。ハマス排除を歓迎してのことだ。しかし、それでは分裂が固定化され、危機を深めることにならないか。
 第一に、欧米の支援を受けたファタハが、西岸でハマス排除を強めると予想される。しかし、ハマスは西岸でも支持基盤を持っており、抗争がますます激しくなる危険がある。
 第二に、ハマスが支配するガザが封鎖されて孤立化すれば、飢餓などの人道的な危機が進む。イスラム社会全体に反米欧の機運を生みかねない。
 ハマスは、イスラエルとの和平を目指したオスロ合意を受け入れず、イスラエルの存在も認めようとしない。それが政権を握ってしまったことへの、米欧などのいら立ちは理解できる。

 率直に言って二点ともそれほど説得力はないだろう。そしてたぶん誰もが思うだろうがガザとエジプトはつながっているのに、表向き誰も言及しないのはなぜなんだろうか。
 産経新聞社説”パレスチナ分裂 両派和解以外に道はない ”(参照)は、ちょっと読むと朝日新聞社説みたいだが、わかりやすい。

 ハマスは選挙により評議会の多数を握ったとはいえ、和平交渉の前提となるイスラエル承認を拒否し、今回は武力でガザを制圧したとあっては、国際社会の支持を得られるはずがない。日本政府もアッバス議長支持だ。
 ハマス支配のガザ地区に対してはイスラエルが早くも封鎖の動きに出た。国際社会からの経済支援も得られない状況では、同地区は早晩、経済的に行き詰まることが必至である。

 たぶん、ガザは行き詰まるだろうし、ハマスは壮絶に自滅するというのが見えないわけでもない。そしてそれゆえに、「両派和解以外に道はない」という産経にはリアリズムがあるが、ただ私は受け入れがたいものも感じる。たぶん、そのリアリズムの先にはガザの民衆が事実上ハマスの人質のようになるという絵が待っているだろうから。
 日経新聞社説”パレスチナ分裂、和平外交の再構築急げ”(参照)は論旨が混乱しているように思えた。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は危機管理内閣を立ち上げたが、ファタハ主導の自治政府は事実上、ヨルダン川西岸地区の政府にすぎなくなり、ハマスが実効支配するガザとの分裂状態は長期化する可能性が大きい。

 つまり、日経はガザが維持できると想定している。理由はハマスは孤立しないだろうというのだ。

ファタハ側へのテコ入れによって、ハマス支配下のガザを孤立させ、ハマスの弱体化を進める狙いだが、米国やイスラエルの思惑とは逆の展開になる可能性も小さくないだろう。
 昨年1月のパレスチナ評議会(国会に相当)選挙でハマスが勝利し、ハマス主導の内閣が生まれた後、武力闘争放棄やイスラエルとの共存の意思を明確にするようハマスに迫る形で国際的な対パレスチナ援助凍結の動きが広がった。だが、“兵糧攻め”によってハマスの力が弱まったわけではない。むしろ援助凍結によって経済力の弱いガザの状況がさらに悪化して政治的な反発も強まり、ファタハの地盤沈下が進んだ。

 そういう読みなのだが、ちょっと弱い。ガザに追い詰められたと見るべきだし、地理的にはやはりエジプトにかかっているとしか見えない。

|

« モラルの低い人を傍観する時 | トップページ | [書評]催眠誘導の極意(林貞年) »

「時事」カテゴリの記事

コメント

イスラエルがファタハを支援して、ガザでの戦闘が長引くように介入しなかったのが不思議だ。

投稿: K | 2007.06.22 12:40

イスラエルが分裂していると考えてよいのでは。シンボリックだが善良なアインシュタイン派と財団にみられるファンド金融支配派の対立。アメリカがそうではないか。

投稿: 赤木 | 2007.06.22 20:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ガザ状況メモ:

« モラルの低い人を傍観する時 | トップページ | [書評]催眠誘導の極意(林貞年) »