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2007.06.13

[書評]セブン-イレブンおでん部会(吉岡秀子)

 私はセブン・イレブンのヘビーユーザーということもあってか、「セブン-イレブンおでん部会 ヒット商品開発の裏側(吉岡秀子)」(参照)はとても楽しく読めた。
 私がセブン・イレブンを好きなのは近所にあるということもだけど、食べ物が美味しいと思えることが一番の理由だ。もちろん全部美味しいわけではないが、お弁当は美味しいなと思うし、私はセブン・ミールも使っているのだが、いままでこれは味を外していると思ったことはほんの数例しかない。ただ、最近は少し味が画一的な感じがしてつまらないなと思うようにもなった。

cover
セブン-イレブン
おでん部会
ヒット商品開発
の裏側
吉岡秀子
 一日最低でも二回は巡回するセブン・イレブンだが、そうなんじゃないかなと推測していたことが本書に解説があって、やはりそうだったのかと頷いたりもした。まったく知らなくて感心したエピソードなどもあった。ところどころに、例えば、セブン・イレブンのメロンパンの変遷史のように歴史年表もあり、これも面白かった。歴史とも呼べないような些細な歴史だが、こういうものの累積が大きな民衆史になっていくのだろう。
 読んでいて思わず笑ってしまったのが二〇〇五年に実施された「どんなパンが好きですか」一万人調査だ。総合の結果は、一位メロンパン、二位クリームパン、三位デニッシュと、うーん、私は食べないなというリストだったのだが、これが年代別になると興味深い。

10代男性 1位メロンパン、2位あんぱん、3位チョコパン
10代女性 1位メロンパン、2位チョコパン、3位菓子パン
20代男性 1位カレーパン、2位メロンパン、3位クリームパン
20代女性 1位メロンパン、2位クリームパン、3位チーズパン
30代男性 1位カレーパン、2位メロンパン、3位クリームパン
30代女性 1位デニッシュ、2位クリームパン、3位メロンパン
40代男性 1位カレーパン、2位あんぱん、3位メロンパン
40代女性 1位クリームパン、2位デニッシュ、3位メロンパン
50代男性 1位カレーパン、2位あんぱん、3位メロンパン
50代女性 1位メロンパン、2位あんぱん、3位フランスパン
60代以上男性 1位あんぱん、2位メロンパン、3位クリームパン
60代以上女性 1位あんぱん、2位クリームパン、3位サンドイッチ

 このリストを見ているだけで現代日本人というものが彷彿としてくる。ちなみに私は今年五〇歳になるのだが、ワタクシ的ランクだと、1位カレーパン、2位あんぱん、3位クリームパン、かな、だいたいこの統計の範囲に入っているといってもいいし、実はカレーパンが好きなことは身近な人にしか知られていない内緒だったりしたのだけど、それがずばっと暴露されているようで笑い出してしまったのだった。
 私自身はメロンパンが好きではないので関心を持ってなかったのだが、セブン・イレブンのメロンパンはオリジナルらしい。

 あたりまえのことだが、セブンのメロンパンはセブンでしか買えない。いまさらのことようだが、コンビニにはどこも同じと思っている消費者も多く、実はなかなか気づかない点である。
 ローソンのオリジナル菓子パンシリーズ「とっておき宣言」は大手製パンメーカーが作っていることが多いが、そのメーカーは、ファミリーマートやサークルKサンスクなど、複数チェーンのパンも作っていることがある。原材料や製法は各社オリジナルだから間違いないし、だからどうだと言及するつもりもない。が、セブンのように全国24ヵ所の焼成工場が、年がら年中「セブンのパンしか焼かない」システムは、ちょっと特異なのである。

 それは知らなかった。そしてそうなった経緯も面白かった。

 当時、菓子パン担当だった商品本部のMD・小池邦彦は、1991年に山崎製パンと組み、4ヵ月をかけて消費者アンケートを神奈川県内の店舗でおこなったという。結果、客がパンに望んでいるものは「味」や「鮮度」と判明。製パンメーカーが長年、商品の安全面から最重視してきた「日もち」は、二の次だったのだ。

 なるほどねと私は思った。私の世代が子どもの頃パンを食っていたのは、それが日持ちがして空腹を満たすことができたからでもあるだろう。もちろんメリケン粉が安かったせいもあるのだが。
cover
「買ってはいけない」は
嘘である
日垣隆
 そして、以前読んだ日垣隆の「「買ってはいけない」は嘘である」(参照)を思い出した。なお、この記述は一九九九年のものであって現在がそうであるという意味ではない。

 なお、私は個人的にヤマザキ製パンをできるだけ避けようと思ってはいる。なぜなら、他社にくらべて合成添加物が多く入っているからだ。が、そのような保存料が入っているおかげで、田舎の小さな雑貨屋さんがヤマザキ製パンを長く在庫しておける。「週刊金曜日」は、都会より田舎、大企業より小さなお店の味方ではなかったのかな。
 たまたま私が『買ってはいけない』を読んだのが、アフリカから帰った直後だったせいもあるかもしれない。食中毒や感染症や飢餓が日常であるアフリカ各地で、防腐や保存にすぐれた日本製のパンや菓子が、いかに多くの命を救っていること。防腐剤や保存料に対する『買ってはいけない』の過剰な憎悪は、実に日本的な現象だと私は感じた。

 私はうまく表現できないのだが、菓子パンの歴史のなかに、日本の現代かと地方の暗喩もあるように思える。私もまたかつてはアフリカの状況とまではいえないせよ、食中毒が日常的だった時代、また田舎とも言えるような空間のなかで保存性のよい菓子パンを食ってきた。しかし、今ではセブン・イレブンのヘビーユーザーになっているし、およそ都市民の嗜好はそのようになっている。セブン・イレブンはコンビニだから、コンビニ=便利の視点からそれを極めていけばいいのだが、実は同じような変化は行政サービスなどにもあるべきなのだろう。
 少し違ったエピソードだがへぇと私が驚いた話をもう一つ紹介しよう。セブン・イレブンのメロンパンはこっそり脱トランス脂肪酸になっていたのだ。トランス脂肪酸については二〇〇四年時点で「極東ブログ:パニックを避けつつマーガリンとショートニングを日本社会から減らそう」(参照)で小さな警鐘を書いた。ポイントはそれの健康被害より社会パニックを避けて移行してほしいということだった。それをセブン・イレブンは静かに実行していたのだ。

 「メロンパンの油脂をガラっと変えたんだけど、まだ大々的に発表できない」
 取材中、そんな声が商品本部から聞こえてきたので口外しなかったが、いまはHP上でも公表しているので、どうやら解禁になったようだ。
 セブンはメロンパンをはじめ「焼きたて直送便」ブランドのパンに使う油脂を”低トランス油脂”に変更した。


「確定でなくても、少しでも不安材料があったら使わない」(品質管理部)ことから、セブンはひそかに油脂を変えていた。
「なぜって? おおぴらにいうと、相場があがっちゃうんです」

 私は健全な市場というものが機能するならこういう現象は各所で起きるのではないかと期待したい。だが、現実はそういう問題でもないのかもしれない。
 いろいろ楽しく読めて、示唆深い本だった。さて、昼飯セブン・イレブンに買いに行くかな(それともバーミヤンに行くかな)。

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コメント

実はカレーパンが好きなことはオッサンの証しなのだけど、それが自分にもぶっすりと刺さって笑い出してしまったのだった…。

でもサンライスも食べます。メロンパンちゃうよ。

投稿: 無粋な人 | 2007.06.13 18:12

セブンのチョコ系菓子パンは此処十年洩らさず食べています。
町のパン屋のクドイ甘さも好むのですが、
セブンのパンの残らない甘さは間食にピッタリで、ふっと湧く「もの欲しさ」の手当てに重宝しています(次点があんぱんですね)。

ちなみにカレーパンは、1998年~2000年の味付けが一番好き。

投稿: 夢応の鯉魚 | 2007.06.14 12:56

やっぱり!
他のコンビニと比べて図抜けて美味しいもんなあ。

投稿: key | 2007.06.14 21:19

30代男です。
やっぱり、1位はカレーパンですね。いや、ピロシキかな。いい勝負です。他のパンはほとんど食べません。
ちなみに、コンビニには1年に5回行けばいい方です。今年はおそらく、まだ1回しか利用していません。

投稿: 朝霧 圭太 | 2007.06.15 09:53

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受信: 2007.06.19 00:37

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